第41話 黄金のスタチューはハバナ葉の煙をまとう
「オホロシュタット!?それは本当か!?」
「モールスが各都市に張り巡らしておりますラッパの報告ではオホロシュタットの裏社会で名を馳せる情報屋と接触した可能性があるとのことでございます」
「これを」
コンスタンチンは女王の目のまえに小型の魔法陣を展開した。
魔法陣の中に映像が映し出され、そこに見慣れぬ少女が映し出された。
「旅の行商人の娘?何だこれは?」
「シュヴァルツの解析ではこの娘から微弱ながら強大な魔力反応があるとのことでございます。これだけの反応は恐らく第一級魔導士クラス。見事に隠してはおりますがとても一介の行商人の娘の者とは思えませぬ。シュヴァルツの力がなければ国内治安騎士局も到底見破れませんでした」
「つまり・・・」
「ええ、第一級魔導士は数えるほどしかおりませぬ上、今、我々が行方を把握しきれていないのはベルリオーネだけです」
「とうとう馬脚を現し始めおったな、ベルリオーネ!」
コンスタンチンは一息ついた。
女王も机の上の小さなガーゴイルの彫刻が施された銀製のケースに手を伸ばす。
ガーゴイルの装飾は印鑑のようにケースを開けるときのつまみになっている物だった。
それを右手の人差し指と親指でつまみ、中からハバナ葉を取り出した。
コンスタンチンは女王の真横に移動し、どこからか葉巻専用のはさみを取り出して女王が手にした葉巻の先を切った。
すかさず執事は王国の紋章が刻印された金色のジッポーを取り出し、金属がはねるような鈍い特徴的な音を室内に響かせた。
内蔵された火打石が擦る音がした後、部屋に上品でまろやかで煙が無音で広がっていく。
満足気な表情へと変わっていく女王。
コンスタンチンはすぐに元の机の前に戻る。
「ベルリオーネ。若くして“あっち“で適性を認められて我らのグループ入りを果たした時から妙な違和感を感じることもなかったが、やはり教祖様の”事業“を探るネズミだったというわけか・・・?」
「以前よりあの娘は我らが全能の教祖様への絶対服従をあいまいな態度でのらりくらりと避け続けておりました。その姿勢を改める意思が見受けられぬ以上・・」
「“桔梗”の者どもが放ったスパイの可能性あり、というわけか?」
「全能の主であらせられる我らが教祖様に逆らう愚か者どもは“あっち”でとうに全員始末したと思っておったが、未だに息をしておる者どもがおるとは・・・。八つ裂きにされてもまだのたうち回る毒蛇さながらの執念深い奴らめ!」
「おっしゃる通りでございます。すぐに捕縛して“高度な尋問”にかけましょう」
「いや、まて」
「はっ!?」
「ベルリオーネが我らの“秘密”を探り当てるまで泳がせておけ」
「シュヴァルツらに気づかれぬように監視を続けさせろ。そして、あの小娘が何かを見てしまった時を・・・な」
「そこの段階でベルリオーネを“高度な尋問”にかけよ。間違っても殺してはならぬぞ」
「御意に」
「ところでスドウはどういたしましょうか?奴も次回の北部地方攻略が命じられるまで約2週間の待機期間中、どこへ行っているのかこちらも把握しきれておりません」
「奴がどれだけ成長していようと、私にはまず勝てぬ。今は捨て置け」
「“思考の浄化”ができたならばそれでよし。できぬならば始末すればいいだけの事よ」
「ふううううーっ!!」
シャンデリアの華麗な輝きの中を舞うハバナ葉の煙がコントラストを描く光景を見上げた女王の目にシャンデリアの中心に取り付けられている黄金製の像が目に入った。
犬の頭が数個になまめかしい女体を持つ怪物。
それが光り輝いているのを見て、女王の口はニヤリと歪んだ。




