第26話 密会
須藤たちが北部地方を攻略し始めてから1か月以上たったある日の夜。
時刻は深夜。
ハイン城から100キロ以上離れた郊外にある森の中。
人目に決して触れぬそこにははるか昔にうち捨てられた廃屋があった。
月夜に照らされた石造りの家。
その壊れた窓の中から青白い光がかすかに漏れていた。
廃屋内の壁には魔法陣の中にテレビのような画面が映し出され、そこに神妙な面持ちの30代くらいの男性の顔が映し出された。
「ゴルフ様、そちらのご様子は?」
「相変わらずだ、ベルリオーネ」
遠隔地との通信を可能にする魔法。
だが、画質は極めて荒く、ノイズが頻繁に入り音声はやや聞き取りにくく、相手の顔もはっきり見えにくい。
魔力を極限まで抑えて通信しているためである。
「君の方はどうか?」
「はい、残念ながらまだ決定的な証拠をつかむには至っておりません」
「現在、私はあえて奴らが行っている転生者を呼び出す儀式にて召喚魔法を駆使し、それによりこちらへ来た少年と組んで冒険をしております。その過程で何らかの証拠にアクセスできると考えており、このまま冒険を進めます」
「奴らが何らかの目的でこちらの世界へ人間を転送しているのは間違いありません。けれど、こちらの世界で具体的に何をしているのかについてはハイン城の者たちから決定的な証拠をとれない以上、冒険者としてこの世界の調査を継続する以外現時点では確かなことができません」
「君をこんな危険な任務に就かせてしまっていることを本当に申し訳なく思う」
「だが・・・・、君と初めて出会った時から話しているように、我々としてもこのような現状には耐えられないのだ」
「社会の公器たる存在が闇社会を牛耳る黒幕に支配され、犯罪者さえ黒幕が裏で糸を引いている可能性が高いのはすでに説明した通りだ」
「おまけに黒幕は恐らく推測ではあるが海外の組織と繋がっている可能性が高いと我々は見ている」
「犯罪が意図的に作り上げられ、無実の一般市民がそのダシにされている実態をこれ以上見過ごすわけにはいかない」
「こんな社会は正さなければならない。社会正義を取り戻さねばならない」
「そのためにはそちらの世界で奴らがやっている犯罪の証拠を確保しなければならない」
「そして、そちらへと行方不明者が何の目的で“転生”させられているのか、その実態を暴いて証拠を何でもいいから確保してくれ、頼むベルリオーネ」
「分かっております、それではゴルフ様」
画像が乱れながら閉じられ、次いでその背後の青白い魔法陣も消えた。
廃屋の中は明かりのためのろうそくが一本、壊れかけた机の上で薄暗く周囲を照らしている。
何としても証拠をつかんで見せます、局長!




