第25話 疑念
「ベルリオーネさん?」
「えっ、ははい!?」
「どうしたんですか、さっきからうわの空で?」
「あっ、いや、何でもないですよ!考えごとしてただけで。それじゃ次の冒険計画を立てましょうよ!」
ギルドのカフェ。
今日は何もないオフの日だが、こうしてベルリオーネさんとギルドのカフェでコーヒーを嗜んでいる。
最近ベルリオーネさんはずっとこうだ。
あの塔の戦いを皮切りに俺たちは北部一帯を攻略し続けている。
日記に付けた記録では今月14回北部地域へ出撃した。
おかげで魔物に占拠された地方をかなり解放できたし、ピンチに陥っていた北部地方各地の城塞都市などへも加勢して魔王の軍勢を退けることができた。
だが、なぜか冒険を進めるごとにベルリオーネさんの顔が気のせいか冴えない。
洞窟や敵の砦を攻略するとき、あるいはそのあと、彼女は俺やスコットさんに先に町や駐屯地に戻ってくれと言って陥落したばかりの魔王の拠点付近に一人残ってる様子だ。
何かを探しているかのような気がするが確証がない。
ベルリオーネさんに何気なく話を振ってもはぐらかされている感じでまともな答えは返ってこない。
俺は少し前から疑念を持っていた。
表面上はベルリオーネさんとスコットさんを信用してはいる。
けれど、特にこの世界はやはり何か違和感がある。
ベルリオーネさんと一緒に戦って彼女は人として信用はできる。
むしろとち狂った戦いをするスコットという人の方が強烈な違和感がある。
しかし、スコットという人は人で何か怪しいそぶりを見せている様子は今のところなく、俺が一緒に冒険するとき以外は仕事をしているのか聞いても蚤市に鹵獲したアイテムを売り歩いているとしか答えてくれない。
どちらにも共通するのは俺には言えない何かを隠しているのではないかと感じる点だ。
昔から俺は他人の隠し事を探知する勘が鋭いとよく言われる。
俺は魔法の使い方といい、ベルリオーネさんからも他の冒険者連中からも教えを受け、自分でも成長を実感できる領域にまで達した。
ただ、誤解を恐れずに言えばなぜか物足りない。
ベルリオーネさんは俺に親身に魔法を教えてくれる。
ただ、俺は実戦と修行の両方から、魔法には多くの種類があると思うようになった。
種類と言ってもそれは攻撃魔法とか防御魔法、あるいは魔法の種類とかいう単純なカテゴリーの意味ではない。
魔法にはそれを使った人間固有の周波数が残るとベルリオーネさんは言っていた。
要は指紋のようなものだ。
それ故、魔法を悪用した場合、熟練の魔導士にかかれば必ず使用者が特定されるとのことであるため、何でも魔法で望みがかなうとか、人を暗殺できるとか好き勝手できるわけではないらしい。
だが、それに加えて最近俺はその人の性格も結構魔法には出るということが実感として分かるようになった。
ベルリオーネさんの放つ魔法は基本的にまっすぐのきれいな波長をした光が出ることが多い。
これはご自身が解説してくれていたが、その時々の精神状態や固有の性格で同じ魔法でも威力、性質が変わるらしいのだ。
俺が必要としていると思うのは正攻法、というか正統派の魔法だけではない。
もちろんベルリオーネさん流の正統派の魔法の使い方は当然身につけておかなければならない。
けれど、実戦、それも魑魅魍魎と戦うためにはそれだけでは足りない。
何かひん曲がった根性の敵をもへし折れるような、勝つためには手段を選ばないダークヒーローの精神を体現するような魔法の使い方をもプラスして学ぶ必要があると実戦を重ねるたびに思った。
最初に遭遇したあの黒魔女の何か近づきたくない、それでいて戦わざるを得ない敵という者とも戦わねばならないことへの恐怖心があるのかもしれない。
どこかで何かそういうひねくれた連中に対抗できる魔法を教えてくれる人はいないか・・・。
いざという時に自分の身を守ることができるのは自分だけだ。
ならば自分でリスクヘッジのための行動しなければ!
俺はそんなことを考えながらブラックに温められた牛乳を入れてかき混ぜる。
目の前に座りながらアイスカフェオレを飲むベルリオーネさんの視線は明後日の方向を向き、何か物思いにふけっている。
当面自分の世界から帰ってきそうになかった。
昼下がりのオフの日がギルドと表通りの喧騒の中過ぎていく。




