派閥
相撲部観戦の全面的な禁止が言い渡されてから、数日のうちに、観戦を楽しんでいた者達は不満を募らせた。なんとかこっそり観れないものか画策するものや、堂々と観に来て厳しく注意される者、諦めて新たな娯楽を探す者など、対応は様々だった。
「我々も学祭実行委員へ入れてくれないか?」
そして中には、第四回の実行委員会議の扉をくぐった者達が居た。それは、学祭実行委員に対して要求がある者が新たに加わったという噂を聞きつけての事だった。
「おおっっ!! いいだろうっっ!!」
自分達の要求を通すためには、自分達で戦うしかないという前例を見て習うのだ。何とかして彼らを説得し、娯楽をとりもどして見せるという覚悟でやってきたのだ。
「しかし数が多いなっっ!! この教室じゃ狭いっっ!!」
次々とやってくる新たな人員によって、学祭実行委員は最初の三倍の百五十人となっていた。椅子の数も机の数も足りず、リーアとロゼは二人で一つの椅子にギュウギュウになって座っていた。
「はぁ。」
ロゼは思わずため息を吐いた。もっと暴力的で治安の悪い意見のぶつかり合いを狙っていたのに。覆面の者達が、委員への後からの参加という前例を作ってしまったせいで、他の人を入れないわけにはいかなくなってしまったのだ。互いを憎み、住み分け、ねじ伏せて意見を通すさまを求めていたのに、協力し、理解して、説得を試みるなんともおとなしい意見のぶつかり合いになった物である。
「確かにロゼの思った通りにはいかなかったけど、目的は果たせそうじゃない?」
「彼らが思った以上に賢くて驚いてる。流石は世界最高の教育機関だ。」
目線だけすこし上を見て、うんざりしながらリーアは首を傾ける。リーアの言う通り、まだやりようはある。意見のぶつかり合いが行われるなら、意見が共通する場合もある。つまり、派閥が生まれる。
「どうせなら大司教様を招待できないか?」
「例年の聖歌隊のセトリはどこかに無いか?」
「この通りを丸ごと出店なんじゃあ狭すぎる。」
「個人申請と集団申請された店舗書類はどう分けるんだ?」
「当日の警備体制の過去の情報を用意した。確認しておいてくれ。」
「蟲相撲を一番大きい第三運動場でするべきだ。」
「「「賛成。」」」
「どうせ観戦者がくるなら汚れちまうじゃねぇか。そこはどうすんだよ。」
「掃除までが我々の仕事になるな。」
「儀式は祭りの最後であるべきだ。最も人が多いはずだ。」
「どうやったって人は来るんだ。警備が例年通りじゃ少なすぎる。」
「賛成。」
「これは文化の祭典でもあるべきだ。」
「「「「賛成。」」」」
大量の意見と発言は、ジェゼノベとペペロチとジバルの手によって次々と整理されていく。そしてギュウギュウ詰めの中、意見の合うものたちは次第により固まっていた。
「素晴らしいぞっっ!! しかし意見をまとめるのが大変だっっ!!」




