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燃えよ  作者: 帽子男/Hatt
入学不正編
16/36

キノコ

 観戦者の捨てたゴミの中からキノコが見つかったという報は、蟲相撲部全体を震撼させた。ある者は相棒の蟲の体の隅々まで磨き上げ、ある者は蟲の泊まる厩舎を徹底的に清掃し、ある者は原因とキノコの種類の特定を急いだ。幸い、生きた蟲に寄生する様子が知られていないキノコだったので、皆一様にほっとしたが、それでも蟲相撲部内は観戦者のゴミの投機に対する嫌悪感が高まっていった。やがて、蟲相撲部は全体の意見として生徒会へ解決を依頼した。これが、生徒会が学祭委員へ勅令を下した大本である。ではなぜ生徒会が直接取り締まることをしないかというと、蟲相撲の最も大きな露出機会が学祭であるなどの、強い結びつきがあるからである。しかし、今回学祭委員が行った対処に対して不満の声を上げる部員も多い。ジェゼノベは「キノコが生えれば大変だ」などと言っていたが、キノコはすでに一度生えているのである。当然、相撲部員からみたジェゼノベは、危機意識が足りないのではないかという風に映るわけである。

 「私は断固として約束しよう。ジェゼノベ委員長にこれまで通りのやり方では蟲が被害にあ合うのは時間の問題であると伝える。」

 ロゼは、アリバイ工作に奔走する必要がなくなったのをいいことに、各所にて謀略を実践中である。今日は、蟲相撲部へやってきて、自分の一派へ取り込むための種をまいている。

 「ぜひそうしてくれ。我々は蟲がキノコに食われないか考えると夜も眠れないんだ。」

 代表として話す眉の小さな上級生へリーアは真剣な顔で頷いた。別に嘘を言っているわけではないので、堂々とこんな顔だできるのである。しかし実際は、観戦者へ食事を提供することが大きな商機であることを各人にほのめかしたのはロゼである。賭けの頭取はフウワンとロックであるし、自分でつけた炎を自分で消している用に見える。息をふうふうと吹いて、消そうとしているように見える。


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 技術連では、ロゼが来なくなった事による問題ごとなどは起きていなかった。あらゆる作品の被写体としてこき使える人が一人いなくなったとしても、今度は人でなく物を描くだけである。しかし、技術連の作品を楽しみにしていた一部の連中は別である。ある日からパタッと、ヌード系のデッサン作品が新しく描かれなくなったのだ。もちろん最初はただ残念に思っただけであった。しかししばらくすると、どうやら学祭実行委員の御触れの直後から描かれなくなった事がわかってくる。そうすると必然的にその連中は学祭実行委員からの見える御触れの他に、見えない御触れがあったのであろうと邪推したわけである。実際のところ、ヌードなどを恥ずかしげもなく堂々とした姿で描かせてくれる人物はロゼしか技術連には居なかったので、巡り巡ってあながち間違いでもないのではある。

 その一部の連中は学祭実行委員を深く恨み、「かくなる上は!」と凶行に走ろうとした者もいたほどである。この学園にいると思われる、脅迫状の送り主ももちろん一部の連中に含まれていた。とんでもねぇロリコン野郎だぜ。

 連中は水面下で団結し、ゆっくりと狼煙を挙げる機会を待つ事になる。異常な団結力と秘匿性をもったこのグループはロゼの全くの想定外ではあったが、最もロゼの思惑通りに動いている連中なのである。

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