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燃えよ  作者: 帽子男/Hatt
入学不正編
11/36

ジェゼノベ

 「第一回学校祭実行委員会議を始めるっっ!! 委員長のジェゼノベだっっ!! よろしくっっ!!」

 今年の実行委員達も、どこ他無くやる気が無い。二年生などは小さな足を椅子からブラブラさせて、退屈そうにしている。各学年ごとに第一寮から二人、第二寮と第三寮からは一人づつ、第四寮と通学者から合わせて一人選ばれる。合計五十人の大所帯だが、それでも人手が足りなくなることの方が多い。毎年、この第一回の空気と直前会議の空気がどれくらい違うのか僕は楽しみなのだ。といっても僕は毎年参加はしているものの、委員長としてはまだ二回目なのだが。

 「正直に手を挙げてくれっっ!! 役割を押し付けられた者っっ!!」

 僕がそういうと、ぽつぽつとてが上がり始め、やがて四分の三ほどが手を挙げた。やはりそうなのだ。残念な事に、皆なぜか学祭実行委員をやりたがらない。しかし、この僕が委員長として皆を引っ張って行き、団結力でもって成功させて見せる。学祭にこそ、この世のすべてが詰まっている!

 「ありがとうっっ!! しかし! 安心してほしい!! この僕が! 絶対にやってよかったと思わせて見せるっっ!!」

 去年も実行委員だったペペロチに目線で指示をする。打合せ通り、各人員に資料を配り始める。内容は主に学祭までにしなければならない事と、その流れだ。

 「資料に目を通した者!! 何か意見や改善案は無いかっっ!! 次回までなら何時でも受け付ける!!」

 大抵、ここではだれも何も言わないか、質問がいくつかある程度だ。もちろん抜かりは無い。ここで意見が言いやすくなるようにあらかじめ簡単な意見を出すものを仕込んである。

 「案でーす。」

 「どうぞっっ!!」

 「六年生のジバルでーす。外部から有名人を呼ぶのはどうですかー。」

 「すばらしいっっ!!」

 ここまでしても、意見が出ない時は意見が出ない。特に、新入生からはめったいに出ない。学祭の具体的な様相がつかめないのだから無理もない。しかし、うれしい事に今は二人の新入生が手を挙げているではないか!! これほど嬉しい事は無い!! よく思い出せば、この二人は押し付けられたかどうか聞いた時も手を挙げなかった! 積極的に学祭へ参加する意思があるのだ!

 「ではそちら側の君っっ!!」

 「新入生のリーアです。この資料は前回までの学祭をある程度踏襲した物だと思うのですが、今年しかないような突飛な事でも意見して良いのですか?」

 「もちろんっっ!!」

 すごい! すごいぞ! この新入生!! ここまでしっかりした意見が出そうだと、他の委員が怖気づいて案を出せなくなる事などが危惧されるが、それを補って余りある積極性だ!!

 「学祭にあたっていくつか露天商が出るとありますが、ここへ食料品を扱っている商会からの融資を募り、また売り上げに応じて融資を還元する即席の取引博打のような物を用意してはどうでしょうか。」

 「すばらしすぎるっっ!!!」

 化け物だ!! 確かに僕もそれに似たことは考えた事があった。しかし、これの意味を誰もあまり理解していない為うまくいかなかったのだ。教皇様や枢機卿様など、権力を持った方々や、一般人の見物客などは今までも学祭に参加してきた。ところがこの案は、そこへ普通の商業層だけでなく、影響力を持った商業層を巻き込もうというのだ。露天商がある程度浸透すれば次の段階として考えていた事なだけに、新入生でここまでの意見が出せたことに驚きを隠せない。部屋へ戻ったら泣こう。うれしすぎる。

 「次はそちら側の君っっ!!」

 「新入生のワロゼリオです。これほど大きな祭典なのです。何か思想を持つべきではないでしょうか。収穫祭であれば実りを祝う意味がありますし、送りの日は死者を弔います。それほど大きな意味でなくても、祭りにあたっての意義が欲しくあります。」

 「す、すばらしいっっ!!」

 これほど……。これほど学祭に対して紳士に向き合う姿勢を見たことが無い。僕でも思いつかなかった。学祭は皆で楽しむ物であるという固定観念に縛られていた。ああ、涙があふれて止まらない。なぜ僕がこれに気が付かなかったのだろう。悔しくてたまらない。何が後悔はさせないだ。学祭のすべてを知り尽くした気持ちになって奢っていた。彼女に敬意を払おう。そして学祭へももちろん敬意を払おう。学祭はいつでも僕をさらなる高みへ導いてくれる! 学祭バンザイ!!

 「そこまで言ってくれるとなると! 何か意義の提案まであるのかいっっ!!」

 「神学科志望の身ですから……『静粛と秩序』とかですかね。」

 「すばらしいっっ!!」

 ああ! 皆が! 手を挙げている!! 案が! 意見が!! どんどん集まってく! これはすごいことになった。過去部位を見ない素晴らしい学祭になることは間違いないだろう!!

 「ジェゼノベさん。泣きすぎて鼻水が垂れてますよ。キショイです。」

 ペペロチがハンカチを差し出してくれた。まちゃめちゃ嫌な顔をしている。しかしありがたく鼻をかませてもらおう。フーンと鼻をかむとペペロチはもっと嫌な顔をした。良いのだ。今の僕にはそれすら輝かしく見えるのだから。

絶対後悔させないから!!後生だから!!ブックマークつけてくだされ!!

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