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049 レイラ視点 お茶会

「素敵なお部屋ですわね」


 ヒルダ様が感嘆の息を漏らしながら、女子寮の私の部屋を褒めてくださいました。少し恥ずかしいです。


「ありがとうございます。お母様の趣味なのです」


 私には少女趣味過ぎて似合わないのではないかしら、と不安に思っていたので、ヒルダ様に褒められて少し心が軽くなりました。


「本日はお招きありがとうございます。こちら、つまらない物ですけど」

「まぁ、ありがとうございます」


 本来なら、季節の挨拶からするのですけど、本日は無礼講で、ということでした。季節の挨拶は飛ばすようです。ヒルダ様はお菓子も用意して下さったみたいなので受け取ります。お菓子を用意するくらい、ヒルダ様もこのお茶会を楽しみにしていたみたいで、私も嬉しくなります。さっそくお皿に盛ってテーブルの上に出します。ヒルダ様は素朴な色合いのケーキを持って来て下さいました。切る前から強い甘いバターの匂いがします。


「フルーツのパウンドケーキですわ。皆さんのお口に合うと良いのですけど」


 皆のお皿に切り分けると、甘い匂いがさらに強く感じられました。


「私、ケーキなんて初めて」

「うん」


 アリアとルサルカがケーキを前に固まっています。これは食べ方を示した方が良いかしら、と思っていると、ヒルダ様が先にケーキに手を付けました。ひょっとしてお毒見かしら? 貴族のお茶会では自分の用意したお菓子を自分で毒見するという作法があると聞きます。


「美味しいですわ。どうぞ食べてみてくださいまし」


 ヒルダ様に促されて、アリアとルサルカが、おずおずとケーキをフォークで口に運びます。


「うまっ!?」

「美味しい!パンと全然違う。しっとりとしてて、甘くて、美味しい」


 そこからは早かったです。二人とも競うようにケーキを食べ始めました。本来なら、ケーキを用意してくださったヒルダ様にお礼を言うのですけど……二人とも礼儀など知るかとばかりに食べています。私は困ってしまい、ヒルダ様の方を向いてしまいました。そしたらヒルダ様と目が合い、思わず二人で笑ってしまいました。


「その……すみません」

「ふふ、構いませんわ。今日は無礼講ですもの。それに、あんなに美味しそうに食べて下さるんですもの、用意した甲斐がありましたわ」


 今日が無礼講で良かった。ヒルダ様はビックリするくらい寛大な方で、私たちに良くしてくださいますけど、そこに甘えっぱなしになるのは、お友達としても良くないと思います。ここは私がちゃんとしなければ。


「二人とも、ケーキを用意して下さったヒルダ様に言うべき言葉があるでしょう?」


 二人の手がようやく止まりました。



 ◇



 私もヒルダ様に習って、自分の用意したお菓子を食べて毒見し、皆に勧めます。今日、私が用意したお菓子はチョコレートです。チョコレートと言っても、飲み物ではありません。最近新しく作られるようになった固形のチョコレートです。黒く艶々と輝く姿はまるで宝石の様で目で見ても楽しめますし、味もとても美味しいので今日のお菓子に選んでみました。


 アリアとルサルカの二人は、最初は本当に食べ物なのか疑っていましたが、今ではチョコレートに夢中です。夢中で食べる二人の姿はとても可愛らしいです。二人の幸せそうな顔を見ていると、なんでもしてあげたくなってきてしまいます。


「甘くて、苦くて、でも甘くて……ほぅ……」

「美味しい……ッ!」

「このような形のチョコレートがあるのですね。驚きました。とても美味しいですわ」


 ヒルダ様にも喜んでいただけたみたいでホッとしました。ヒルダ様は二人のように顔には出しませんけど、それでも幸せそうに目尻を下げていて、私はそのことがとても嬉しく感じました。


 お菓子を食べながら、お茶を飲みながら、お話にも花を咲かせます。学院の事や、使い魔の事、貴族の事、平民の事、そして恋愛の事も。


「あたし? 好きな人なんて居ないよ。付き合ったこともない」


 活発そうな印象の健康美を持つルサルカの恋愛話が無いのが残念です。本人は色気より食い気なのか、先程からケーキをおかわりしてもぐもぐと食べています。そんな姿も可愛らしいです。


「私は特に好きな人はいないけど……その、求婚はされてみたいわ。騎士様が、一生あなたを守りたいとか、私の王妃になってくれとか、キャー」


 最近恋愛に興味を持ち始めたアリアが顔を赤くして、クッションをギュッと抱き締めながら答えます。瞳を潤ませて遠くを見るような仕草には、女の私もクラリとくるほどの可愛らしさと色気がありました。でも、言ってる内容が恋に恋する少女そのものです。変な男に捕まらないように、私がしっかりしなければ。


「求婚など、そんなに良いものではありませんよ」


 ヒルダ様が言います。なんだか疲れた様子ですし、妙に実感がこもっています。何かあったのでしょうか?


「ヒルダ様?」

「いえ、ただの愚痴ですわ。断っても断ってもしつこく誘われるものですから、つい」


 ヒルダ様がため息をつきます。その憂いを帯びた横顔はハッとするほど美しいものでした。ヒルダ様はスタイルも良いですし、殿方が放っておかないのも分かります。


「情熱的な方なのね!」


 物語ではなく、本物の貴族の恋愛事情に、途端にアリアが色めき立ちます。


「情熱的……相手は本妻から第三婦人まで居る50過ぎの方ですの。その上、妻ではなく妾としてわたくしを囲いたいようですわ。情熱的と言うより節操が無いと言うのです」

「それは……」


 アリアを初め、私も絶句してしまいました。第三婦人まで居るということは、相手はかなりの高位貴族の方でしょう。ヒルダ様のご実家、ユリアンダルス家は男爵位。相手の申し出を断るのも大変でしょう。ヒルダ様の疲れた表情にも納得がいきました。


 パパに頼んでみよう。何ができるかは分からないけど、私は少しでもヒルダ様の力になりたかった。


「ねぇ、メカケって何?」


 ルサルカがぽつんと呟きます。


「えっと、それは……」


 私は言葉に詰まり、アリアとヒルダ様と見つめ合ってしまいました。これは……教えるべきなのでしょうか?

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