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029 これからに期待

 アリアたちに付いて王都の大通りを歩いていく。大通りというだけあって広い道だ。余裕で馬車がすれ違える。大通りの左右には、背の高い建物が並び、通りには人や馬車が通っていく。どうやら道の真ん中は馬車の通り道らしい。人々は道の端によって移動している。我らもその例に習って道の端、一段高くなっている歩道を歩いていた。


「最初は何から買うの?」

「まずは水と食料かしら?」

「そうですね。水と食料があればなんとかなりますし、水と食料から買いましょう。ただこの辺りは貴族や富裕層向けの高級品を取り扱ってる店が多いので、今の私たちには手が届きません。下町の方に向かった方が良いと思いますが、いかがいたしますか?」


 レイラがまるでお伺いを立てるようにヒルダを見た。レイラもヒルダを上位者として扱っている。


「そうですね。レイラさんの言う通り、予算が足りません。下町に向かいましょう」


 レイラの問いにヒルダが決定を下す。いつの間にか4人のリーダーはヒルダに決まったようだ。アリアがヒルダはボスのような存在と言っていたからな。まぁ妥当だろう。


 四人に続いて道を歩いていくと、更に幅の大きな道に出た。今まで通って来た道も、馬車が余裕をもってすれ違える程大きかったが、出くわした大きな道はその倍はありそうだ。その道が左右にずっと遠くまで続いている。


「この通りの向こうが下町です。すみません。私、下町には不案内で……」

「じゃあどうしましょう。私なんて王都に出たの初めてよ」

「同じくー」

「わたくしも下町の事はよく分かりません。とりあえず、大通り沿いに歩いて店を見つけましょう」


 コイツ等、こんなことで大丈夫だろうか? 一行は目的地も分からないまま下町へと踏み出した。



 ◇



「うーん……。どこも高いわね」

「そうですね。質は良いようですけど、こうも高いと……」

「王都の人はどれだけお金持ちなのよ!」


 大通り沿いの店を覗いては、買うのを断念するアリアたち一行。こんなことで、今日中に必要な物が集まるのか? なんだか時間を無為に消費しているようで、徒労感ばかりが募る。


「あたし、安い店がないかちょっと訊いてくるね!」


 そんな状況を打破しようと、ルサルカが一行を離れ、道行く老婆に突撃していった。良い情報があればいいのだが……。我はもう歩くのに飽きたぞ。


「あ? なんだ嬢ちゃん。ここはオレの縄張りだぜ」


 ん?


 何の声だと思って辺りを見渡すと、リノアが猫に絡まれていた。痩せた猫だ。ふむ、戦闘力3ってところか。我が手を出さなくても、ヒルダが蹴散らすだろう。場合によってはリノア自身が蹴散らすかもしれない。


「あら、猫だわ」

「リノアと友達になりたいのかしら」


 どこをどう見ればそうなるのだろうか。アリア達が頓珍漢なことを言っている。リノアも助けを求めればいいのに、縮こまっているだけだ。ひょっとしてアレが怖くて震えているのか?そんなバカな……。


 相手の痩せた猫が前足をゆっくり振り上げる。殴ろうというのではない。頭を押さえつけてどちらが上位者か思い知らせようというのだろう。


「その辺にしておけ」


 我は介入することに決めた。だって誰も助けないんだもん。ヒルダも動かないのは予想外だ。興味深そうに痩せた猫を見るばかりで介入しようとしない。


「な、なんだおめぇ!?」

「我の連れに手を上げるとは良い度胸だな?」


 我は痩せた猫に近づいていく。相手の猫はタジタジだ。あ、逃げた。良い逃げっぷりだ。敵わないと見れば即逃げる。アイツ長生きするな。良い猫だ。


「あ、ありがとうございます……」


 そしてこっちは悪い猫だ。我はリノアを見る。リノアは小さく震え、安堵の表情を浮かべていた。


「なにクロ。やきもち~?」


 アリアがニヤニヤと頓珍漢なことを言ってるが無視だ、無視。


「今の場面、助けを求めるなり、ケンカするなり、取れる手段なんていくらでもあったろ」

「すみません。わたくし、怖くなってしまって……」

「それで動かないでは、相手の良いようにされてしまうだけだぞ。お前も使い魔だろう? 魔法を使えば簡単に撃退できるのではないか?」


 リノアがシュンとうなだれてしまう。


「その……怖くて……動けなくなってしまって……」

「はぁ……」


 たまにだが、リノアのような猫が居る。たぶん根が優しすぎるのだろう。ケンカにも消極的で、かといって逃げることも出来ない。猫社会の底辺を生きる猫だ。


 リノアにとって、使い魔として人間の庇護を得ることが出来たのは幸運かもしれない。おそらくリノアでは厳しい野良猫生活は無理だ。まったく、今までどうやって生きてきたのやら……。


「次からは……自分で動けるように、がんばります……!」

「あぁ」


 まぁリノアはまだ子どもだ。これからに期待だな。


「リノアが助けられたようですね。ありがとう、クロ」


 やっと事態が読み取れたのか、ヒルダにお礼を言われる。鈍いな。ヒルダに限らず、アリアたちは猫の機微に対して鈍い気がする。相手の猫の顔や態度を見れば、友好的ではないと気付きそうなものだが……人間には難しいか?


「皆ー! 聞いてきたよー」


 一悶着あった後、ルサルカが老婆の元から戻ってきた。なにか有益な情報があればいいのだがな。


「大通りからは少し外れるけど、向こうに地元の人が使ってる商店街があるみたいだよ! 値段も安いみたい!」

「でかしたわ、ルサルカ!」

「そうですね。ルサルカさん、お手柄です。早速行ってみましょう」


 ルサルカの言葉にアリアとヒルダが大きく頷いた。我らはヒルダの号令に従って、一路、商店街を目指すのだった。

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