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第39話 任命。生徒会役員ですわ!


「ノアさんとエリンさんが生徒会に入るのかぁ。入学したばかりなのに誘われるなんて二人とも凄いね」

「そんな褒められるようなことじゃないわよマックス。私なんて厄介事を押し付けられただけよ」


 五大貴族の一つ、ブルー公爵家の後継者であるロナルドに生徒会室に呼ばれた翌日。

 今日も大勢の生徒で賑わう食堂の一角で私はいつものメンバーとお昼休みを過ごしていた。

 話の話題になっているのは勿論生徒会についてだ。


「生徒会ってそんなにスゲーのか?」

「凄いよ。魔術学校の生徒会に所属していた人はみんな出世したり大成をしているんだ。僕らだって無関係じゃない。五大貴族の当主やそれに連なる者は基本的に生徒会メンバーだそうだよ」

「アタシは聞いたことあるぜ。オヤジが学生の時は生徒会長だったってさ!」

「確か僕が聞いた話だとその時の生徒会にシュバルツ公爵も在籍していたらしいね」

「何それ怖っ」


 歩く筋肉ダルマのヴァイス公爵と悪の親玉みたいに人相が悪いお父様。

 学生時代だから若いとはいえ、逆らったら秘密裏に処刑されそうな雰囲気がある。独裁政権の圧政政治みたいなことしていても不思議じゃない絵面だ。


「よし決めた。次の生徒会選挙にオレは出るぜ! そんでもって全員倒してやる!」

「貴方、生徒会を何だと思ってるのよ。それにティガーは生徒会長って器じゃないでしょ」

「兄貴は精々が番犬とかだな! 今だって姉御の犬みたいだし」

「おう。その言葉をそのまま返してやるぜ!」


 至近距離で顔を近づけて睨み合い出すヴァイス兄妹。

 お互いが人のことを言えないのに馬鹿にするのはいつものこととはいえ仲裁は骨が折れるからマックスにパス。

 私は生徒会の話をそっちのけでキッドと会話しながらメモをとるエリンに話しかけた。


「何の話をしているのかしら?」

「キッドさんから次の小テストの範囲を教えていただいているんです」

「貴方そんなの知ってるの?」

「先生や先輩にこっそり話を聞いたんすよ。実技はともかく、筆記の範囲はいつも大差ないみたいなんで」


 得意気にそう言ったキッド。

 まだ入学してから一週間とちょっとしか経っていないのにそんな情報を仕入れる相手が出来たのね。


「まぁ、オレがちょっと本気出して尋ねればコレくらい楽勝ってわけですよ」

「キッドさんはよく女性の先輩や先生と話されていますもんね」

「その言い方は誤解が……事実だけどさ」


 悪気はないエリンの発言に言い淀むキッド。

 私も放課後にチラッと見たことがあるけれど、キッドは大変にモテる人間だ。

 話しかけやすいし、ちょっとワイルドな容姿で五大貴族のような重い立場もないただの私の従者だ。


「ふぅ〜ん。キッドはモテるのね」

「お嬢。まさかオレの人気に嫉妬して、」

「ズルい! 私だって次の試験内容知りたいわ!」

「デスヨネー」


 キッドは分かってましたよと言って普段飲まないブラックコーヒーを一気飲みした。

 あーあ、女の子が寄って来てテスト範囲教えてくれるとか羨ましいわ。

 先生にも色仕掛けが通用するなら採点でオマケしてくれそうね。


「ノアさま。わたしが聞いた限りで良ければ教えて差し上げますね」

「助かるわエリン。キッドは引き続き情報収集頼んだわよ。生徒会は二人で頑張るから心配しないで放課後は女の子と遊んでらっしゃいな」

「ヘーイ」


 どうしてか棒読みで返事をするキッド。

 実はエリンのことが気になっていたりするのだろうか。

 前から思っていたがエリンとキッドの二人はどこか似た雰囲気を感じるのよね。一緒にいるとお似合いというかしっくりくるというか。

 エリンもチラチラとキッドを気にしているし、実は恋愛フラグが立っているとか?


「じゃあ、これからの放課後はノアさん達とあまり過ごせないわけなのか」

「そうなるわね。どうしても最初は手間取って時間がかかってしまいそうだもの。ごめんなさいね」

「ううん。気にしないでよ。僕やティガーくんも他の貴族の子達からお茶会に誘われていてね。集まる機会が減りそうなんだ」

「オレは参加したくないけどな!」

「ダメだぞ兄貴。アタシを置いて逃げたらオヤジにチクってやるからな」


 マックス達も忙しくなるのかぁ。

 ゲームではここら辺から各キャラ毎にルートが分岐して行動コマンドを選択することでイベントが発生してシナリオが進むんだものね。

 この後も雑談をしながら、私達はそれぞれ放課後に集まれないのならせめて昼休みは集まって昼食をとろうという事にした。




 ◆




 そして放課後がやって来た。

 会長のロナルドに言われていた通りに私とエリンは今日も生徒会室へ向かう。

 二日連続ともなれば顔を覚えてもらえたようで着くとすぐに扉を開けてくれた。


「待っていた。よく来てくれた二人共」


 昨日と同じように椅子に座っているロナルド・ブルー。

 彼はどこからか腕章を取り出すと私とエリンへと手渡した。


「生徒会の証だその腕章は。裏地に名前が刺繍してあるから大丈夫とは思うけれど失くさないようにしてくれたまえ」


 手に取って裏側を見ると確かに金の糸で刺繍がしてある。

 これを身につけた時点で私達は生徒会のメンバーとして活動が出来るようだ。


「では教育については別の者に任せる。すまないが私には会長職があるんだ」


 ロナルドはそう言うと手元の書類に取り掛かった。

 それと同じタイミングで彼の隣でお茶を淹れたり書類整理をしていた生徒が立ち上がり、私達の前にやって来た。


「やぁ、後輩諸君。これから拙者が君らの教育担当でござるよ」

「「…………」」


 分厚い瓶底の眼鏡に焦茶色の髪を古い音楽家みたいなぐるぐるカールと巻いた髪型にした細身の男性がいた。

 口調もおかしいが、なんだか感じる雰囲気が胡散臭くて怪しさ満点だ。


「おやおや。黙ってしまったでござるな。もしや拙者から溢れんばかりのパイセン的オーラに気圧されて喋れないとか? そんなのは気にしないでいいでござるよ。拙者、頼れるパイセンとして後輩と積極的にコミュニケーション取りたい派なんでそこのところはシクヨロで!」

「生徒会長! この人チェンジで!!」


 謎に圧が強い変人のせいでエリンが私の腕にしがみついて来たので我慢出来ずに挙手した。


「何か問題があったのか? 急に大きな声を出して」

「問題の塊のような先輩がいるんですけど他に手が空いている方いませんか?」

「諦めてくれすまないが。そこのファウストはナリはふざけているが、成績は上から数えた方が早いくらい優秀だ」

「この人がですか?」

「あれれ〜。もしかして拙者疑われている? 嘘だと思うなら教師陣に聞くといいでござる。半笑いで答えてくれますぞ!」

「「……いえ、結構です」」


 私とエリンの声が重なった。

 同じ生徒会室の他の子達は忙しそうに仕事に取りかかり出した。まるで逃げるかのように。

 ロナルドが嘘をつくとは思っていないから成績が良いのは間違いないのだろうけれど、成績さえ良いからどんなやつがいてもいいってわけじゃないからね!?


「改めまして拙者はヨハン・ファウスト七世でござる! ヨハンでもファっさんでもナナチでも好きに呼んで欲しいでござるよ!」

「「よろしくお願いしますヨハン先輩」」

「ファっさんとかナナチーでもいいのでござるよ?」

「「……ヨハン先輩でお願いします」」


 こうして私達と原作のエタメモに影も形もない(あったら困る)キャラの濃い先輩との交流が始まったのだった。


 やっぱり来てよキッド! 一人じゃツッコミきれないわ!!











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