受付の二人が宮森華に会って、そして話したこと
(宮森華・・・この子が宮森華か・・・)新潟乙一は記名帳に書かれた文字を見ながら、目の前の女子高生を見た。そして彼女の左隣に立っている高梨尊を横目でチラッと見た。その視線に高梨尊は気づいたようだった。
(さすが高梨営業本部長のご子息だこと)ギャラリーの受付椅子に座っているAFZの男性社員は笑いそうになったが我慢した。
「ゆっくりご覧ください」透き通った音無真澄の声が右隣から乙一の耳に入って来た。
「ありがとうございます」目の前の女子高生が微笑みながら答えた瞬間、乙一は彼女の周囲が白い光に包まれたように見えた。彼の右隣で立ち上がってパンフレットを渡していた同僚の女性は眼を見開き息を飲んでいた。
紺色の制服姿の女子高生は黒い詰襟制服の男子高生と、入り口近くに展示している絵を観るためにゆっくり移動した。真澄は二人の後ろ姿を見ながらパイプ椅子に座った。
「どうしたの、真澄ちゃん?」乙一はおどけるように小さな声で訊いた。
「あっ、いえ・・・」乙一の同僚は少し戸惑っていた。
「城北高校の生徒さんでしょ?」乙一は更に声を潜めた。
「ええ、そうですね」
「友達が描いた絵を観に来たのかな?」
「うーん、そうでしょうか?」真澄も声を潜めていたが、その声は乙一の耳にハッキリと届いた。
「真澄ちゃんは去年もこの絵画展で受付したんでしょう?」
「あっ、はい」
「あの高校生カップルは去年もここに来たのかな?」
「うーん、私は覚えていないです」真澄は少し右に首を捻るとチャコールグレーの髪が右に少し動いた。
「じゃあ、真澄ちゃんが受付していない時に彼女らは来たのかもしれないね」
「あの・・・去年も私、期間中殆ど受付をしていました。私はあまり記憶力が乏しいので」
芸術振興課の二十三歳の女子社員は少し眼を細めた。
「そうかな?」
「だって、私、ときどき意識が飛ぶし・・・」
「うん、まあ、そうだけど。でも普段の真澄ちゃんはしっかりしているよ。仕事もテキパキ出来るし」
「そうでしょうか?」真澄は微笑みながら答えた。




