宮森華、立川書店で村上玲に会う
「華さん、お茶しませんか?」由美の落ち着いた声が両耳からスーッと入り、華の頭の中で軽やかに響いた。
「はい」華は『雹』と書かれた画集を持ってソファーのある場所に向かった。
「やあ、宮森さん、久しぶり」黒いソファーには亜麻色のコーヒーカップを持った林田勤が座っていた。彼は白いTシャツに黄土色のハーフコート、色落ちした空色のジーンズという出で立ちだった。
「アッ、林田主任さん」華はAFZ社員の斜め向かい側のソファーに座った。
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
「うん、まあまあかな。あれっ、それより宮森さん、ちょっと雰囲気が変わったね。大人っぽくなったよ」勤は亜麻色のコーヒーカップを同じ色のソーサーに置いて、斜め向かいの女子高生の顔をじっと見た。
「それは髪型を変えたからかもしれないですよ。以前会った時はポニーテールで今はストレートにしていますから」華は少し照れながら答えた。
「アッ、ホントだ」勤はポカンと口を開けて驚いた。
「もぉー、林田さんはーっ」華はそう言いながら微笑んだ。
「華さん、ホットレモンティでいいかしら?」由美がクリーム色のトレイから亜麻色のソーサーをテーブルに置き、それから同じ色のティーカップをその上に置いた。
「ハイ、ありがとうございます」華は嬉しそうに答えた。そして勤のカップの置いてある横にも亜麻色のソーサーとティーカップがあることを確認した。
「あらっ、林田さん。今日は一人じゃないのですね?」
「あっああ、まあ、そうだな、うん」AFZの男性社員の言葉は歯切れが悪かった。
「へぇー」興味津々な女子高生はホットレモンティを一口飲むと、下から覗き込むように勤の顔を見た。
「今日、一緒に来た人は職場の同僚だよ」勤は平静を装った。
「ふーん、そうですかぁ」華は少し意地悪な笑みを浮かべた。
「アラッ」華の右後ろから若い女性の声がした。ストレートヘアの女子高生が振り向くと本を手にした、白いブラウスに灰色のレディーススーツブレザーとスカートを上品に着こなした村上玲が立っていた。




