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南方の不和

 はい、僕です。クロです。

 今回は久しぶりの問題発生に僕が組織した龍族の斥候部隊と共に、情報を探りに向かった。最初の問題というのが、よく問題にぶち当たるスルトからの報告によるものだ。スルト曰く、人間の集団がスルトの新たな縄張りとなっているアルジャレド通商連合国の北に位置する森を抜けようとすることが増えたとのこと。現状のスルトの縄張りは広すぎて掃除が間に合わず、そこそこ死なせてしまっており、イオとシェイドに救援が来たのだ。イオは対魔物よりも対人特化だ。魔物も倒せなくはないが、時間がかかる故にあまり好まない。今回はこの『夜の森』と言われるスルトが権勢を奪取しかけている縄張りを譲るでことの様子を見ていたのだ。

 そのイオとスルトが揃って現れた。いきなりの奇襲を受けるという報告だ。

 エリアナに報告し、僕や既にエリアナ女王国の国民となり、愛国心もある龍の斥候が動いたのである。結果、整合性が取れたので完膚無きまでに叩き潰す処置がとられた。相手はアルジャレド通商連合国。風龍族が人に紛れていた時に所属していた国だったとのこと。アルジャレド通商連合国は広大な国土を持つ大国である。軍事的な話は聞かないが、それだけの国が防衛に関しての武力のような物を持っていない訳がない。


「よ~し。確認できた?」

「はい、隊長。完全に森を抜ける体勢ですね」

「なら僕らは退こう。この森の恐ろしさを身を持って体感してもらった方がいいと思うから」

「了解しました。マタギ隊は後退。夜の森のエリアナ領外縁まで」


 僕の部隊がついに構成された。龍族を中心に斥候に突出した獣人族やグランデールの元住民に居た、鳥人(ハルピュリア)族と猛禽人(ホークマン)族の偵察が可能な皆さんである。元々グランデールでも偵察系の任務に就く事が多かったので飛行可能な龍族1人に付き鳥人、猛禽人を一人ずつ付けた。

 この辺りは種族差もあるからね。メンバー構成はマタギ隊の中でもいろいろ違う。僕は地上斥候部隊のマタギ隊のリーダー。空を見る鷹狩隊の隊長が気龍族のカーム。彼女が一番滑空音が小さく、機敏な飛行が可能だったからね。龍族は防御力がある分だけ機動力に劣る。そういう意味では急襲能力と瞬間最高速度は、猛禽人の方が小回りは小柄な鳥人のほうがきく。あと、魔法兵の適性も鳥人の方が高い。

 僕らは念話魔法を使える龍の誰かに連絡を取り、『夜の森』の外縁。スルトの農園側の陣地に集まった。各所に飛んでもらった鷹狩部隊の報告だとやはり一点突破。最近の森の安定感から『大暴走(スタンピード)』は怒らないと考えている様子とのこと。なので、斥候隊や鷹狩隊には後方へ引いてもらい、ゲンブの率いる重兵隊に交代。

 大盾を持つ龍族や魔人、大型モデルの獣人が中心の重量級防御部隊である。必ず大暴走は起こるので、僕を含めて森からすぐに出て来た魔物はなるだけ綺麗に倒してもらう。いい素材になるので。この森は獣系の魔物意外にも虫系や植物系が多く存在し。鳥人の外見に似ている魔物も居る。区別するためにハーピーと呼んでいるが、それらも問題だ。


「どうしましょう、父上。ここは後々イオの縄張りになるのでしょう?」

「その件については問題ない。既に主はイオが追い詰めている。だからこれまではこの森の魔物が大きく暴れることはなかったんだ。尾の森は主が暴れるタイプでスルトも面倒がってたからな」

「姉上が面倒がる魔物ですか」

女帝蜂(エンプレス・ワスプ)だよ。ちなみに旦那(カイザー・ワスプ)も居るし、女王蜂(クイーン・ワスプ)もわんさか居た」

「あー……。ワラワラするタイプですね。そういうまどろっこしいのを嫌う姉上だと森ごと焼きそうですもんね」


 その通り。蜂の魔物もいろいろ種類がいるが、スズメバチ系やアシナガバチ系は百害あって一利なし。特にこういう薄暗くて深い森の場合は面倒この上ない。ミツバチの魔物の魔蜂(マナ・ビー)なら、こちらが攻撃しないならば共生できるので益虫として飼うんだけどな。既に薬の材料にヨルムンガンドが飼ってる。

 今回、僕らはイオが中で蜂の駆除と突っ込んで来る人間が追い立てた、……もしくは追い立てられた人間の処理をする。捕虜に取るのも身分がそこそこある物だけでいい。そもそもこの森の生物分布上、普通に生きて居られるかは微妙だけど。

 この森は凄く面倒。僕や手練れの斥候ならいいけど、初心者をここに入れると即食われる。ここは所謂『女王(クィーン)』系やその上の『女帝(エンプレス)』系が営巣している虫系統の森なんだ。なんで僕らがアルジャレドとこれまで交易を持っていなかったかというとこういう理由がある。ファンテール王国もエルフ王国から迂回してきたアルジャレドの商人との商売だったらしいし。

 虫系統は音や振動に敏感で、それ自体が天然のトラップだと考えていい。発見に遅れると面倒な『蜘蛛(スパイダー)』系はもちろんのこと、擬態する虫なんてそれこそ普通に居る。野生下ならば蜜を吸う蝶すら人の血を吸う個体が居るし、甲虫も人間種だと相手にできるか怪しい。『黒の森』は森の組成のせいでそれ程強い虫も居なかったが、この森は違うんだ。これまでスルトが手を出さなかったと言うか、無茶しなかったのもこういう理由がある。


「魔物が住みよいってことはそれだけいい環境なんだけども……。それも考えようによっては大問題なんだよな~」

「ですね。来ましたよ。父上大物です」


 この森の魔物は基本夜行性。そんで森からは出てこない。虫系の魔物は魔素の吸入量がかなり多い上で生命維持にもかなりの量を要する。理由はよくわからないが、虫の魔物の魔素回路は人間のように網の目にはなっておらず、単純な形だからだろうとエルフの学者は言ってた。

 虫の魔物は魔素の薄い土地では長時間活動できないので、ここで食い止めて時間稼ぎ、もしくは僕らで倒してしまえばいい。攻撃力と防御力は龍族の加入でかなり増強できた。魔法武器の完成度も以前とは格段に違う。さて、ショータイムだ。

 最初に出て来たのは本当に大物。ゲンブが全力で踏み込んだ防御をする巨大な魔物。百足の魔物だ。基本的に虫の魔物には分類名以外はない。危険なので人間種では調べられないと言うのが本当の所。

 特にコイツのような魔物は危険なので、ゲンブに受け止められて上から抜けようとしたソイツの魔石部分を魔砲で砲撃して倒す。魔石はもったいないが、こいつの生命力は尋常じゃない。活動をすぐに止めないとヒュドラ並に面倒なんだ。しかも毒もち。

 それからもバラバラと虫系の魔物が現れる。巨大な蝶に巨大な蛾、巨大トンボに甲虫系もまばらながら。かなりいるんだな。これだけ高密度だとそれだけ魔素も濃い。イオがこの『夜の森』の主となれば、直ぐに人化できるだろう。


「あ、父上。お気づきになりましたか?」

「うん。イオがやったようだ。毒で弱らせる戦い方だから時間がかかったんだろう。けど、毒煙幕で一網打尽にしていたみたいだからね。それでこの時間だとかなりの数の巣を潰したんじゃないだろうか……」


 倒した虫魔物の甲殻は意外といい素材になるので回収。ただ、解体に注意が必要な毒持ち系の魔物は、ヨルムンガンド率いる錬金術師の専門班が解体する。それ以外はゴードンさんに預ける為に魔法の袋に吸い込んでいく。そこに真っ暗なこの森に不似合いな、水色とオレンジの水玉をしているクラシックなメイドさんが現れる。

 一瞬龍族の皆さんや獣人の戦士が身構えたが、いつもの掌メイドが大きくなっただけだと気づいたらしく武器を降ろす。イオは『ヘンゲの術』でいつも人の姿をしていたので大きくなっただけだけども。

 それでも氣が大きくなるとその存在感も桁違いになる。特に僕の眷属はそれが顕著だと古龍の皆さんに言われていた。通常、魔境の奪取であってもこれだけ一気に強くなる位階上昇と進化は、その個体や親の素質に左右される。これまでのスルトからイオまでの全員が、既に古龍並に強いだろうと言う龍までいる。

 そこからはイオからの報告を受ける。虫魔物の多くはイオの猛毒煙幕にやられて死んだ。虫って意外と毒に弱いからね。それでも殺せない魔物も直接殺したそうだ。ただ、反対側に抜けた虫は通しているとの事得で、現在のアルジャレドの奇襲部隊は良くて相打ちし全滅。最悪アルジャレドの町村に小規模な魔物の暴走が突っ込んだだろうと言われた。中にはそれにいい感情が無い者も居たが、どのみち連中が奇襲部隊を森に入れた場合は同じ結果を生んだということは理解できているのだろう。こちらが親切に手助けしてやる意味はない。


「ついでにいろいろ調べてみましたが、どうもアルジャレドと隣接している四国と海を抜けた先にある島国と険悪になっているようです」

「ほう~。もしかして風龍族の離脱が関わってる?」

「そうですね。考え方にもよるのですが……」


 アルジャレド通商連合国は商人の国というだけあり様々な物を取引している。しかし、議会制の政治体制ながら腐敗が酷く、あくどい商売を国家ぐるみで行うような状態だった。そのアルジャレドの行動を制御する意味で風龍族がついていたのだけど、その風龍を怒らせるようなことをアルジャレドの有力諸氏の数軒がやらかした。怒り心頭の当主のベルトールさんと奥方のカルディーナさん。政略結婚でまだ行先の決まっていなかったニンニル嬢を欲しがった。……その時の態度があまりにも目に余るものであり、ベルトールさんのお爺さんから続けた人間との面倒な付き合いも潮時だと感じたようだ。それで僕らの所に来たのか。タケミカヅチはベルトールさんともニンニル嬢とも、挨拶の時に顔を合わせていたらしいし。なるほど。これは他人事ではなくなってきたな。

 拠点をタケミカヅチの居城に移しているベルトールさん一家にちゃんと聞き込みしないといけない。まぁ、あの人は嘘偽りを言う龍には見えないので、今回は事情を聴いた上でこの件にどれだけ首を突っ込むかを考えるだけだな。イオも魔人化した。そのイオなら一人でいろいろ考えさせ、いろいろやってくれると思う。スルトと緊密に連携してもらい、何とかしてみよう。


~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後135日~140日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


 ~=~



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