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山と砂が動く時

 ジオゼルグとヨルムンガンドの姉妹がパフォーマンスを交え、僕に穏健?なやり方を見せたように思わせた夜の事。獣人国の軍機関と財務省の庁舎は阿鼻叫喚の様相を見せた。それは夕暮れ時に幕が上がることとなる。その時、対応させられた軍人達や財務省の職員達の証言は、嘘だろうが本当だろうがそれが事実ならば頭がイカレテいると言われてもおかしくないことだった。

 ことの後に関係者は全員口をそろえて『山が動いた』と言っていたのだ。

 ちなみに、僕はその阿鼻叫喚の中を無傷で、実行犯の娘達に気づかれる事なく観察してるよ。ははは、アレはちょっとやりすぎだ。うん。見ている僕は知っている。本当に山は動いたよ。山がいきなり形を崩し、巨大なゴーレムが数体できあがり、夜であっても防衛の手を緩めない軍部の防衛部隊や迎撃部隊を……還付無きまでの差で打ち破った。まず、初激がおかしい、ゴーレムの動きは普通緩慢なんだが、ヨルムンガンドのゴーレムはとても速い。通常ならゴーレムは遅いから多人数で高火力の魔法を用いて焼きつぶせばいいのだけど。ヨルムンガンドのゴーレムに魔法は効かない。何枚もの防壁を食い破り、軍の中核施設へ突入した。その頃、財務省の建物の中では人の身長の半分程のサボテンが大挙し、外には先ほどの山が動いた事件のゴーレムの数体が迫っている。


「ちょっとおいたが過ぎるけど。これくらいならまぁ……いいか。何も言わずともいいか」


 まず、軍の中枢施設を襲撃した理由は『脅し』も含め、昼の『牙』を回収するためだ。それ以外にも国宝級のブツがあるならそれも欲しいという事だ。ヨルムンガンドが作ったゴーレムは巨大なニシキヘビ。動きが速いだけでなく、その鱗は鋭く何故か解らない切断能力まである。

 軍の施設は大量の軍人の死体と血しぶき、切り刻まれた軍の防衛施設の瓦礫ばかりが目立つ。そこをつまらなそうに歩くのはジオゼルグ。ケペシュをもてあそびながら彼女はおもむろに声を上げる。そこに来たのは……昼間にジオゼルグの世話をしていた少女だった。真っ黒ながらスッケスケの衣装に身を包み、その後ろにはまた見覚えのある少女が十数人並んでいる。うん。言いたいことができた。……けど、今は言うべきじゃないね。その少女達はおよそ素人とは思えない動きで部屋から部屋へ移り、次々に資料や物品を魔法の袋へ突っ込んで行く。何をさがしているのかは解らないけど、あの少女達のことをまず説明しないといけないね。

 あの少女達はアンデッドの一種だ。おそらく、口減らしの際に死んでしまった少女のミイラだよ。それをジオゼルグの砂による権能、『砂棺』で彼女の魔素で包み彼女の眷属化している。それをカムフラージュする意味でも継続して口減らしの少女を買い続けているんだろうし、砂漠の真ん中に捨てられた少女を拾い集めているんだと思う。ジオゼルグも根幹は優しい子だからね。気づいて上げられなくて、自分の庭で死なせてしまった少女達を『枷』と引き換えに彼女の眷属にしてしまったのだ。


「ジオ様、地上階には特にめぼしい物はありません。やはり既に無いか、地下にあるのでしょう」

「ん~……面倒な。わかった~。じゃ、いくよ~」


 ジオゼルグの周辺に砂嵐が巻き起こり、床が円状に抜ける。地下階への行き方が豪快過ぎる……。まぁ、やり方はどうであれ、下階に降りるっていう目的は果たせているのだから良いんだけど。

 あ、み~つけた。なんで僕の前でそれをやろうとするのかな?

 たまたまなんだけどね。僕の目の前で隠し扉が開いて中に牙を持った軍人が入って行く。でも、ダメだね。ジオゼルグには気づかれてる。砂がある場所を動けば察知されてもおかしくない。しかもこんな狭い範囲ならなおさらだ。僕の目の前で勝手に回転扉が回り、中で絶叫が響き渡る。そして、うん。本物だね。特殊な魔力を纏った大きな牙が勝手に動いていく。傍目から見ると凄く奇妙な光景。砂が下にあって動かしてるんだけど、知らない人だと床の上を物が独りでに動いているようにしか見えない。

 ジオゼルグは外でそれを少女達から受け取り、牙を持って要塞の外へ走って行く。もう変な魔力を放つ器物は無いからね。こんな物々しいところに居ても仕方ないのだろう。今すぐ帰って湯浴みをし、侍従の子にマッサージしてもらって寝るつもりなんだろうね。まだヨルムンガンドが仕事してるんだけど……。まぁ、2人は仲は良いがペースは全く違う。ゆっくり確実なヨルムンガンドと、ちょっとルーズなところがあるジオゼルグだからね。仕方ない。


「ん……ジオは終わりか。ってことは牙はあっちに有った。なら、こっちのこれは何?」


 僕も動いてヨルムンガンドがどういう作業をしているかを見ている。現在、攪乱の為だろう。獣人の軍関連の施設を大蛇ゴーレムで襲撃させ、財務省の建物から目線を放している。実際、ジオゼルグと使用人の女の子達が荒らしまわった要塞ぐらいボコボコにしておけば、軍の再起も時間がかかる。加えて、ヨルムンガンドの調べでは地下に潜っているレジスタンスは軍部とも交戦しているとのことで、軍が弱まるなら御の字。レジスタンスがどういう組織かは微妙だけど、どちらが勝とうが結局疲弊させられる。武装蜂起した時点でレジスタンスにも何らかの思惑があるはずなんだ。それが穏健か過激かはそれから見極めればいい。

 ヨルムンガンドの頭の中では獣人の国での内紛などどうでもいいのだ。僕やエリアナなどの身内が住みよい形に整形できればそれでいい。最近移入して来て仲の良いケイラが悲しまない形に落とし込めればそれでいい。争いになっている時点で、血で血を洗う戦闘は避けられない。

 そして、ヨルムンガンドは見つけた。異質な魔力を放つ魔道具のようなそれを。それ以外はこの場にはない。なんでそれが財務省の建物の中にあるのかは知らないが、ヨルムンガンドはサボテンゴーレムを暴れさせ、その間に窓から蛇の姿で脱出する。そのまま夜明けまでゴーレムを遠隔操作し、グランデール獣人国の軍事施設を破壊するだけ破壊し、紅宮に帰って行った。うん。いろいろ言いたいがやっていることはそれ程酷くはない。反撃しなければ殺して無いし、標的はあくまで軍人や要人ではなく施設だからだ。


 ~=~


「はい~。ちちうえ~」

「どうぞ、お父さん」

「う、うん。どうしたの。コレ」

「とって来た~。ヨルが~ちちうえコレを欲しがってるって~」

「他にも無いか探したのですけどね。王宮には結界らしき物がありましては入れませんでした」

「ふ~ん。ヨルムンガンドとジオゼルグの力で破れない結界か。どう考えても王家の秘宝系のヤツだよね」

「おそらく。ですが、この魔道具は便利ですよ。迷宮では使えないようですけど」


 ジオゼルグが軽々と持ち上げる牙は、大人の男ぐらいの長さとゴツさがある巨大な牙だ。まぁ、確かにそうだね。ツェーヴェの本気モード、つまり蛟の姿で戦って胴体に大けがを負わされた相手なのだ。『月を食らう者』フェンリル系統の最上位種はそれだけ強かったんと思う。いくら横槍を入れて『月を食らう者』を倒したのだとしても、それは獣人だ。初代の獅子王はそれだけ強かったのだと思う。

 うん。凄いね~。この魔力。獣系の魔獣でもかなり良質でなくちゃこれだけの魔素滞留は起きない。これまでの物より飛びぬけて良質だ。何に加工しようか……。あ~、その前にセラさんとケイラには効かないとね。これを加工していいかを。さすがに何も言わずに国の秘宝を他の何かに作り変えられてもね。僕ならいい物作ってくれたなら怒らないけど、僕には解らない広い意味での人間種の考え方があるかもしれない。

 それをまずジオゼルグとヨルムンガンドにも聞いた。

 2人も了承してくれたので、2人が居る豊穣の迷宮へ向かう。外に出てブラックナイト号に乗って、三人で飛んでいく。ナビ機能というか、学習機能って便利だね。ちゃんと相手をしてあげれば僕に懐いてくれてるっていうおまけつき。到着すると、下でスルトが手を振っている。いつも思うけど察知早いな~。


「どったの? パパ」

「うん。ちょっとね。これを手に入れたんだけど、これを加工して良いかセラさんとケイラに聞きに来たんだ。これ一応獣人国の秘宝だから」


 僕が魔法の鞄から取り出した巨大な牙を見て、スルトが目の色変えて尻尾を振る。その後、ビビビッビ!……って感じに尻尾を震わせ、僕から牙を引っ手繰って下層へ走って行く。ジオゼルグとヨルムンガンドも苦笑いしている。スルトも職人だからね。こんな上物見つけたらそりゃ欲しがるよな~。

 あ、ゴードンさんやカレッサの大声も響いてバタバタと足音が遠のいていく。

 僕らが獣人族の居住区に付く頃には呆れた表情のセラさんと、牙には興味ないとばかりに僕を見つめてくるケイラが居る。一応何があったのかは聞いたけど、予想どおり。スルトやゴードンさん、カレッサやレレ、キールなどが加工の許可を取りに詰め寄ったらしい。セラさんはさすがに見慣れているのか、この牙が何なのか解るようだ。それでもここの技術力を既に見ているセラさんは、何の感慨や振り返りもなく許可をくれた。


「別に問題ないぞ。それに耳よりな情報もやろう。王城の地下に獣人の鍛冶師では加工できなんだ『月を食らう者』の骨や牙、毛皮などの全てが綺麗に安置されている」

「へ~。いい事聞いたね。じゃ、その牙一本は豊穣の迷宮でいろいろやってみてくれ。僕も参加するけど」

「い~っよしゃーッ!!! 聞いたかスル嬢ちゃん!! こんないい素材がまだまだあるらしいぞ!!」

「んッ!! 張り切って作る。何作ろう? 何作ろう?」

「牙となれば刃物が扱いやすい部位ではあろうがのう……。削りだすのみでは面白みも無い」


 豊穣の迷宮の工芸家連中が挙って意見を出し合い。最終的に決まったのは牙を削り出す途中で、オリハルコンの機構錬成で変形ギミック付きの魔素放出系の大剣を作ることになった。そうなるとその魔道具使える唯一の存在の僕は参加確定ですね。はてさて今日は眠れるかな~……。


~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後120日~125日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長9.5㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


 ~=~

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