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山は続くよどこまでも

 僕はジオゼルグとヨルムンガンドがやり過ぎないように、セーブ役として居たつもりだったんだけどね。それは逆効果だったようだ。我が子らは何でか僕の前だと皆張り切る。最初の三人、スルト、タケミカヅチ、ゲンブもそう。ゲンブはまたちょっと違う気もするけど、あの子もはっちゃけるので要注意なのは変わらない。

 今回、獣人族の国である『グランデール獣人国』を2人がお仕置きするというので、それを見に来た。うん。もう始まってた。

 最初にやってくれたのはヨルムンガンドだった。ヨルムンガンドの権能をフルに使うと、『山』を延長できるとのこと。僕は耳を疑ったけど、よくよく考えたらそれもあり得る話だ。ツェーヴェはどこからともなく水を湧きださせるし、ゲンブも雨を降らせる。ヴュッカは少し毛色が違うが、水中での行動を可能にする力があるし……。土地の加護を持つ魔人の権能はその方向へ特化させればそれだけ強力なのだ。他のメンバーもやろうと思えばいろいろあるんだろうけど、見たいようで見たくない。特にタケミカヅチは風や雷ってことは嵐に起因するだろう。スルトも鉱石と火炎の半々……。あの子の地盤溶解から見て解るが溶岩系だ。

 僕の好奇心で見てみたいとか言うと、大変なことになりそうなので言わないでおく。


「で、ヨルムンガンドはどうして山をこっちに伸ばしたの?」

「まずは魔境荒らしの対策。ジオの縄張りには美味しい果物や珍しいサボテンが多い。軍需物資系は少ないけど、妙薬になる薬草や果物が多いの。ジオはその辺興味ないから美味しいヤツ以外は管理してないけどね」


 ふーん。ジオゼルグのオアシスは単に水場という訳ではなく、果物や珍しいサボテンが多いとのこと。しかも、よく聞けばその中にエリクサーの材料の1つがあるとのことで、ヨルムンガンドも何株ももらって自家栽培しているとのこと。

 薬の材料は高価で販売ルートによっては国家予算並に稼げる。特に製法は失われているが、エリクサーの必要素材と割れているサボテンの花は需要過多。他にも上級ポーション系統の材料になるそのサボテンの花は、魔境荒らしが狙う第一候補らしい。それをジオの縄張りまで行かせない為に切り立った山を作り出し、ヨルムンガンドの本来の縄張りまで迂回しないと砂漠へ向かえないようにしたそうな。

 ここで終わるヨルムンガンドではない。ヨルムンガンドはスルト並にこだわる。そんでもってかなり几帳面。ここを閉じたとなると、アルジャレド通商連合国へつながる渓谷の道を閉ざしていることだろう。あそこはある意味グランデールの生命線だ。生き物が生きていくのに塩分は必要不可欠。その塩の購入ルートを絶ったのだ。グランデールでは塩は特権階級…貴族の専売となっている。いつ頃からかは解らないが、財務派閥系の貴族が経営する商会が独占販売しているとのこと。ケイラからその情報を先に入手しているヨルムンガンドは優先的に『財務派閥』を叩くつもりらしい。

 その上で、ヨルムンガンドが獣人のメンバーへ内々にお願いをし、斥候部隊が既に潜入中。少数民族や虐げられているモデルの獣人族にかんしては、ケイラからリストと大まかな位置を聞いているので、徐々に救出の目途も立つとのこと。


「よくやるね。いったいいつの間にそんな段取りを」

「ん? ケイラはよく僕の所に来る。ケイラは獣人医学に詳しいから、お仕事の合間にいろいろ聴いてる。万能薬も良いけど、特化型の薬があれば病人、怪我人、死者は減る。それにお母さんとも仲が良いから」


 ヨルムンガンドがお母さんと呼ぶのは、ハイエルフと発覚したカレッサだ。カレッサの知識量はツェーヴェに比肩する。ただ、カレッサの知識は古い方に偏っていて、ツェーヴェとはまた異なる。それにツェーヴェが歴史や文学、魔道具に傾倒しているのに対し、カレッサはエルフらしく植物や薬品にも深い造詣がある。ヨルムンガンドはカレッサから知識を絞り出すことに余念がないからね。

 例のエリクサーもヨルムンガンドがカレッサの知識とレシピを元に再現したらしい。どうもエリクサーは製作者によってしあがりに違いがあるらしいのだ。

 完全版エリクサーは少なくともハイエルフレベルの魔素還元力……。つまりかなり高い魔力効率が必要で、とても一般エルフやその他の種族では作れない。能力低下版エリクサーならエルフでも作成可能とのこと。この前アルマにぶっかけたのは完全版をヨルムンガンドが錬成した物。あらゆる病、外傷、内傷、疲労、毒物、呪いに効果がある。果ては若返りの効果までもがあるとのこと。今の所10歳が最高で、アルマは運良く10歳ほど若返っているとのこと。恐ろしい物を作るな、ヨルムンガンド。ただ、若返り効果は安定しないらしく、今検証中。

 エリクサーばかり会話に出るが、彼女の製薬班は、他にもいろいろな薬を作っているらしい。

 山を作るのとどちらが簡単かと聞いたら。山を作る方が簡単とのこと。薬は意外と効能を安定させるのが難しく、物によっては気軽に臨床試験には回せない。エリクサーのようにある程度完成されていて副作用が無い薬ならいいけれど、まっさらの状態からの新薬となると、かなり綿密な調査と試行錯誤、動物実験が必要なんだって。今はセリアナさんから依頼されているらしい。セリアナさんに依頼されている薬はどう頑張っても副作用というか、……体に副反応が出るので悩みどころなのだと言う。……セリアナさん、どんな薬を作らせてるんですか。ヨルムンガンドに聞いても『守秘義務』と口の前で✕を作られて教えてくれない。こんど直接……聞くのは怖いな。どうしよう。


「大丈夫。僕もそういう判断はできる。悪い薬ではない。ただ、個人の欲望が表に出てるだけ」

「ならいいけど」

「それに、エリクサーの能力を限定かした薬なら既に出回ってる。特にお母さん達から公表。お肌を若返らせる薬。お風呂に入れて使う。用法容量を守らないと大変なことになるけど」

「まぁ、薬ってそういうもんだよね。でもさ、薬はいいけどこの山を冒険者なら超えるんじゃない?」

「無理無理。お父さんとかツェーヴェお姉ちゃんとかじゃないと無理。あの山肌にはびっしり『吸血樹(ブラッド・ツリー)』と『吸魔樹マナ・ドレイン)』が生やしてある。力技で山を貫かない限りは死屍累々」


 本当にえげつないことをする子だ。あの植物系の疑似魔物は僕も警戒するレベルの物だからね。すぐは死なないけど、僕だって油断はできない。動物のような筋繊維とは違い、植物が自由自在に伸び、撓る動きは予想し難い。また、引き千切るのにもかなりのパワーが必要になるから、一度組み付かれると焼き払う以外に脱出は難しい。しかも今びっしりって言ったから、かなり高密度なんだろ? アレが高密度で生えてるとなると、通常の獣人や人間が抜け出せるとは思えない。本当に山を力技でぶち抜くでもしないと無理そうだ。

 ちなみに、ヨルムンガンドの話だと、あの山はいわば『壁』とのこと。できうる限り薄く作られているので、意外と作って維持するのも魔素を使わない。むしろ現在の回復量であるならば全く問題ないとのこと。

 というか、ずっとヨルムンガンドしかいないけど。ジオゼルグはどうしたの?

 ……このように問うと必ず答えてくれるヨルムンガンド。有能すぎるでしょ、この子。そして、ドヤ顔サムズアップ。たぶんスルトを真似してる。ジオゼルグとヨルムンガンドはどちらも戦闘という面では同じくらい強いが、細かく分類するならヨルムンガンドは『術師タイプ』とのこと。強力な魔物や大軍の相手となると、ある程度準備が必要でスキを作らねば大規模の戦闘は難しい。

 しかし、『戦士タイプ』のジオゼルグさえいればその問題もないと言う。ジオゼルグは二刀流で巨大な湾曲刀のケペシュを振り回す。それに付随して砂の刃を撒き散らす大味な戦いをする。彼女に任せておけば、獣王国の秘宝であの山を抜かれても問題ないと笑うヨルムンガンド。


「獅子王の秘宝ってのがあるらしい。その中に絶大な攻撃力を持つ剣があるらしいけど、……土地持ちの魔人、しかもお父さんの眷属の僕達と戦おうなんて片腹痛い」

「お、おう」

「見ていてくれればいいよ。僕もジオも万全。それに、僕はどっちかと言うと、南西の渓谷側を固めてる。ジオが遠いから嫌がるだろうし」


 ヨルムンガンドの術は『錬金術』。魔術とか魔法よりも薬学や工学、化学の知識も必要となる高等学派になる。だからこそ時間がかかると言うのだ。見せてもらったけれど、確かにこれはね……。サイズのこともそうだけど、ちょっとこの技術はいろいろぶっ飛んでる。錬金術というと無から命を生み出す術とか、永遠の命を追い求めたりとか、石を黄金に変えるとか……。そういう感覚だけどヨルムンガンドの物はさらにその上を行った。

 ヨルムンガンドは何もない状態から呪文と術式を組んで、空中で何かを構築していく。最終的にできたのは小さな翼竜のゴーレム。これはサンプルと言うけども、これだけできれば普通に現状の錬金術の技術など子供のお遊びだ。エリーカの技術も吸収している。ヨルムンガンドは無から鉱石生命体を作ったのだ。しかもこれは魔人の組成をベースにしているので、魔素を空気中から吸えば永遠に動く。知性こそ強くないもののこの行動は神にも至るんじゃないか?


「そんな大げさな……。オリハルコンでゴーレム作っただけだよ。それに迷宮核のまがい物を使わないと無理だから、ブラックボックスは僕にも解らない。ついでに、これはお父さんにあげる」

「え? いいのか?」

「うん。これはエリーカがくれた失敗作の複製迷宮核をベースにした。お父さんの甲殻とオリハルコンを錬成、構築したお父さん専用の騎竜だよ。お父さんの指示で大きさも変わるから気を付けてね。室内で大きくスルト結構大きいから」

「あ、ありがとう」


 スルトの時も思ったけど、この子達が目指す山頂はどの辺りにあるんだろうか? 僕は現状維持でも結構満足してしまうけれど、スルトもヨルムンガンドも技術の探求に余念がなく、まだまだ登山を続けているという。

 そこに山があるのだから! ……なんていうけど、先の見えない登山って厳しいよね。

 時たまそれで暴走する君達を止める為にその登山に同行しなくちゃいけない僕の身にもなってもらいたいものである。そんなことは露知らず、ズンズン進む娘達と僕の頭の中で流れている音楽は違うんだろうな……。と、軽く嘆き節。え? どんな音楽かって? 僕は子牛……。スルトやヨルムンガンドは列車旅かな? 

 まぁ、笑顔で楽しんでるし、苦しくて苦い顔をしているよりはいいか……。


~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後120日~125日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長9.5㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


 ~=~

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