対照的な親子“娘の巻”
はじめまして? 私は、ケイラ。元獅子王国の姫だった。別に姫という立場はどうでもいい。私は最低限生活できて、そこそこ幸せで、愛する旦那様の所に嫁げれば。そんな私とお母さん、近衛のアルマとキティ、ミアーで国を逃げ出ました。とても怖かった。私はお母さんと違って武器は握ったことはないので……。
お母さんが見つけた建物で、瀕死の重傷だった近衛のアルマが完全復活した。良かった。
アルマが居ないとお母さんは酒浸りで遊びまわるダメダメだから。
それに……。クロ…様?可愛い。抱っこしたいけど、お母さんが私を抱きしめるので無理。途中でクロ様が魔人と解ってからはお母さんも低姿勢になって丸く収まった。美味しいお茶を出してくれたヨルちゃんも抱っこしたい。可愛い。……今、エリクサーって聞こえた。うん。ここなら何でもありそうだし、それくらいなんともない。というか、あの重症だったアルマが古傷まで消える回復をしたんだからね? それくらいしか選択肢はないと思うのだけど。上半身と下半身がギリギリ繋がってる様な怪我なんて上級ポーションでも治らないし。
「それでは我々が騎手を務めますので、まとまってお乗りください」
おお、凄く大きなお馬さん。一応私も乗馬の訓練はしましたけど、こんな大きなお馬さんは初めて見ます。凄くカッコいいです。最初はそっけない感じのお馬さんでしたけど、ちゃんとお願いすれば、それに答えてくれるお馬さん。プライドは高いようですけど、そのプライドに見合った仕事をするタイプのお馬さんのようです。……ふふふ、クロ様を抱っこできて幸せ♡
お母さんやアルマ、キティにミアーはかなり怖がってるけど、速くてとても快適。お馬さんって結構揺れるんですけど、このお馬さんの走りはとても軽快で滑らか。この悪路をなんでもないとでも言うように軽やかに駆ける。この子達気に入りました。私もヨハネス様に教えをいただいて騎手になれるように頑張りたいですね。
山道を走って30分しない頃から森の様子が変わりました。紅色の森はとても美しいです。新緑の森も良いですが、この紅い森も趣があります。そんなことを考えていると、到着したようです。名残惜しいですが、クロ様と離れて……また可愛らしい子が現れました。さっきの建物に居たヨルちゃんに似ているけれど、尻尾?がある。紫色に燃えるフニフニ尻尾をたまらず触ってしまいましたが、特に嫌がる様子もなく受け入れてくれました。彼女はスルトちゃんと言うらしい。ヨルちゃんのお姉さんで、この子もクロ様の娘さんとのこと。つまり、魔人ですね。魔人ってこんなに可愛いんですね。
「はい。プレゼント」
「ありがとう。いいの?」
「うんむ。パパが嫌がらない人は歓迎。ケイラも仲間ッ!」
「ありがとう」
スルトちゃんから……たぶん、ミスリルとダイヤモンドを加工した髪飾りを頂きました。可愛らしいデザインですけど、これは国宝レベルの魔法発動体ですね。ふふふ。嬉しいです。
この『豊穣の迷宮』から、スルトちゃんに案内を受けて『爆走トロッコ?』に乗って『王祖の迷宮』というところに向かいます。楽しいです。速い乗り物は大好きです。ものの30分で到着。そこには……領主様の娘さんでしょうか? お一人お嬢様が立っている。あ、違いました。自己紹介からそのお母上様とのことです……。何歳なのでしょうか? 気になり、スルトちゃんに聞いたら28歳とのこと。ほう、あれがかの有名な『ロリババア』ですか? いえ、違いますね。セリアナ様はまだ年齢としてもお若いので『ロリ母』でしょうね。可愛らしいので撫でたくなるのですけど、さすがに対面もあるので無理です。
そこに来たのが……娘さん。10歳の領主であるエリアナ様だった。
私は胸の高まりを感じました。私、実はとても妹が欲しかったんです。身分や高価な贈り物なんていらないので愛でられる妹が欲しかったのですよ。でも、お母さんは次を設けるつもりもなく既に36歳。獣人としてはもう最後のチャンスが有るか無いかです。でも、ヨルちゃんにスルちゃん、……エリアナ様が妹になってくれるなら天国ですね。
「エリアナ様、私はケイラです。できれば仲良くしていただけると嬉しいです」
「お初にお目にかかります。エリアナです。そんなにかしこまらないでください。私も仲良くできるお友達ができてうれしいです」
きゅんとなります。可愛すぎる……エリアナ様。きゅんきゅんですね。
そこから再び爆走トロッコで別の迷宮へ。そこはとても不思議な雰囲気です。ポヤッとした魔人のヴュッカ様に案内をしていただき、美味しいごはんに舌鼓をうちつつ、この領のことをエリアナ様から聞きます。どうもこの領はまだ運営開始から1年たたないとのこと。クロ様ともうお一人いる魔人のツェーヴェ様の所に、エリアナ様とずっと一緒に居る侍従のリリアさんがここに転がり込み、ここの基盤ができたとのこと。
そこからのお話はとても面白かったです。ここにはたくさんの魔人さんが居るのですね。
それに驚かされたのが、クロ様の妻事情?ですね。なんとエリアナ様を始め数名の魔人さんや他の種族から選りすぐられた奥さんがたくさんいらっしゃるとのこと。クロ様は魔人の中でも数段飛びぬけて強く、様々な知識や技術をお持ちの存在。それだけの男性に女性が群がるのは当然と力強く語る10歳の領主様。おませなところも可愛いポイントですね。……後ろではしたないとリリアさんが注意していますが、そのリリアさんも奥さんのお一人とのこと。
「このお風呂、最高ですね」
「ですね……。あのつかぬことをお聞きしますけど。ケイラさんのお胸はいつからその……」
あぁ、いえ10歳のエリアナ様です。まあそれくらいなら正常ですよ。獣人はモデルや血の濃さにもよりますが基本的に早熟です。なので私も16ですが既に子を産み育てられる準備は終わっています。下手をすれば今のエリアナ様の年齢には子を設ける種族も居ます。
種族差もあるので一概には言えませんけどね。
ここで私もとあることを提案されました。私も、クロ様に嫁がないか? とのこと。何故だかエリアナ様の目が凄く真剣なのが不安を呼びますけど……。凄く私からすればよい提案です。クロ様のことはこの短時間ですが、エリアナ様が仰るように、とても良い男性であると感じています。生まれて100日前後と聞いてさすがに驚きましたけど。それでも魔人さんとの子は精強に育つという伝承はどの国でも伝わることですし。……いいですね。そろそろ私も婿を取るなり降嫁するなりと周りが五月蠅いというのもありました。すでに王族という身分は捨てましたけど、これを機に自分の幸せを夢見てもいいかもしれません。ついでに、セリアナ様の所で法務関連の仕事を教えてもらえれば、私もあそこで働きたいです。
お母さんのように剣を持つことは私にはできませんから。人を傷つけるより、私は人を守る法という物に興味を持っています。セリアナ様はその代表とのことです。エリアナ様とのよしみもあり、私の立場も保てるいいポジションとも取れます。
「ほあ~……凄い神殿ですね」
「ここは蛇神神殿です。でも、あれは神像ではなくてここの代表のゲンブちゃんの像です」
「???」
疑問はありますけど、あの像はかわいらしいので有りだと思います。神殿の雰囲気が仰々しいより、可愛らしくて落ち着いている方が人気も出るでしょう。その証拠にゲンブさんの像を民間人と思われる皆さんが拝んでいます。軍人さんが敬礼しています。
……軍人さんが一段高いところに居るゲンブさんに敬礼しています。
ゲンブさんもクロ様の娘さんで、可愛らしいと言うよりは幼綺麗という感じの魔人さんです。少し危ない雰囲気もありますが、その少し秘めた雰囲気がとてもいい塩梅にミステリアスですね。こういう場所の視察はお母さんに任せて、私とエリアナ様は地下にある牧場で大型の荷引き動物のレンタルに行きます。そこに入ると以前乗せてもらった大きな黒いお馬さん『スレイプニール』や、エリアナ様が連れてきた目がくりくりして可愛らしい大きな鳥『ガヴトヴォン』などが居ます。奥には10m級の大きな竜が寝転がってお昼寝してます。見る限り可愛いのですけど、あの大きな竜がこのエリアナ領軍の防衛では主戦力になるとのこと。あ、起きた。目がくりくりして可愛いです。
そして、厩舎からガヴトヴォンを2頭連れて来た女性から手綱と鞍を借りて設置。エリアナ様も慣れてらっしゃる。ちなみに、護衛としてキティとミアーが居ますが、2人ともガクブルと震えています。こんなに可愛いのに。私はエリアナ様が騎手をする方に乗り、護衛の2人ももう1頭の方に乗りました。そこからは街を爆走し、エリアナ様のお気に入りスポットを案内してもらいました。特によかったのが甘味処です。いろいろな味がありました。香辛料などもかなりの種類があるようです。甘味と言っても単に甘いお菓子ではなく、いろいろなバリエーションがあって飽きません。
「でも、あまりここにいすぎると太ってしまいそうですね」
「大丈夫ですよ。それが気になるならエルフ謹製のダイエット増進薬を飲んでからランニングすれば数日で元の体系に戻せますから」
エリアナ様が太っている姿が想像できないんですけど……。それはそれで可愛らしく……。うん。女の子に贅肉は天敵です。特に愛する男性の居る女の子に体形の維持は必須。私も今は獣人らしく筋肉が少し浮くくらいのシャープな体付きを保っていますけど、お母さんくらいの年齢になる頃まで維持していられるかは微妙です。私はお母さんみたいに剣を振りませんし、運動はそれ程得意でも好きでもないですから……。
美味しいスイーツを食べながら、エリアナ様ののろけを聞いて……。凄く羨ましくなってしまいました。そのことをエリアナ様に相談すると、エリアナ様は普通にクロ様の寝所へ私を連れ込みました。……何の躊躇もなかった理由は直後に知りましたけど、エリアナ様が夜の営みに参加できないからと、リリアさんや直前に知り合ったカナンカさん、その侍女のゼビオラさんを無理にけしかけるのはやめてあげた方が……。たぶん、御三方は明日はグロッキーです。私も頑張りましたが……グロッキーです……。もう、一歩も動けません。
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NEW
ケイラ・ゼラード=グランデール
女性 16歳
セラの娘
取得称号
・元王女 ・博識姫 ・床上手
獣人族
身長165㎝
取得スキル
+速読 +高速計算 +経理作業 +法学 +経済学 +医学 +寝技
元獣王国の姫。母親の誘導により武芸が一切使えないなりにうまく立ち回り脱出。ヨルムンガンドの縄張りで護衛のアルマが負傷。直後ヨルムンガンドと邂逅し、紅宮に保護される。母と共にグランデールでの一切の身分を捨ててエリアナ領へ移入。エリアナを気に入っており、よき友人となる。かわいいもの好きであらゆる自分より小さく可愛らしい物を愛でることを生きがいにしている。
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