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対照的な親子“母の巻”

 うむ、くるしゅうない…くるしゅうない。私は元獅子王国第一王妃のセラである。私は一応公爵家出身の娘だが、堅苦しい風習や政治は嫌いでな。常に剣を佩き、お供を巻いて遊び惚けておった。その私は父の策略にはまり、半ば無理やり王家に嫁ぐことになってしまった。旦那は優しく、王としてはあまり好ましくない男だったが、生きていてくれるといいが……。娘のケイラを連れ出すだけで精一杯であの人の子とまで手が回らなかった。

 そして、私は亡命し『エリアナ領』なる隣国のファンテール王国……だった場所へと居を移すことになった。

 しかし、そこは想像をはるかに飛び越した世界だったのだ。これは私の体験したごく一部ではあるが、この世界では普通あり得ないことだから意識して聞いて欲しい。まず、国境を越えた段階で瀕死に近かった私の腹心で、昔からの遊び友達だった近衛騎士のアルマだが……『エリクサー』を使われて完全復活。それどころかこれまでの古傷まで全部消えて、肌までつやつやの卵肌に……。羨ましい。私も寄る年波には勝てなくて最近は……げふんげふん。そうではなく、『エリクサー』というのは今ではエルフ王国でも失われて久しいと言われる秘薬中の秘薬。死んでさえいなければどんな外傷や病、ある程度の呪いすらも解くと言われる伝説の秘薬だ。それを……私の従者に使った? 私は常識の崩壊という事もそうだが、その秘薬の代金に関して……戦々恐々となった。しかし、これはあくまで茶番だった。


「ん~? そのお茶、襟草のお茶。襟草は……エリクサーの主原料。雑草だから、どんどん飲んで」


 私は価値観が崩れる音と、自分もエリクサーもどきを飲んでいた事に衝撃を覚えた。私の後ろでアルマのお気に入りの2人が咽ているのも気にできないくらいには、私はここでのことに衝撃を覚えていた。だが、私に訪れる常識の破壊はまだ始まったばかりだったと……。この時はまだ知る由もなかったのだけどな。

 次に私を震撼させたのはヨハネス殿が一度、領都より連れてきてくれた足の代わりの騎馬兵が駆る馬だった。……ナニコレ、デカすぎ。馬じゃなくない? え? ナニコレ、マジでナニコレ。

 私の目の前で女性の騎兵に手を引かれ、娘のケイラがすんなり乗るったことにも戦慄したものだが

……私はその馬の速さと悪路への耐性にもう言葉もなかった。ほとんど道とも言えないような森の中を、平原を走る通常の軍馬と同等の速さで駆ける巨大な黒い馬……。心ここにあらずなのはアルマも同じようだ。……この状況でも自分の前に座っているクロ殿を抱きしめ、悦に浸る我が娘の度胸が恨めしい。言っておくがその存在は魔人だからな?


「美しい森だ。まさに絢爛豪華といっていいだろう」

「そうでございますね。この紅の森はとても肥沃な土地のようです。土地の恵みにも満ちています」


 そこに、また新たな魔人が現れ、私とアルマ、近衛2人はビビり倒した。彼女はヨルムンガンド殿と似ているが彼女には尻尾?がある。紫色の焔が燃えている……。見た目はドワーフの少女のようなのだが、体から漏れる魔素の量は桁違いだ。……彼女もクロ殿の娘とのこと。

 そのスルト殿の案内で彼女の迷宮へ入る。『豊穣の迷宮』と言う迷宮でとても美しい洞窟を抜け、草原へ出る。これが迷宮……。凄く不思議だ。地下に降りたのに、中には薬草畑や野菜畑、居住区などが並び皆が笑顔で会話している。普通仲の悪いエルフとドワーフが共存していると言うのも凄く不思議な光景だけども。それよりも、あのドワーフが握っている槌ってアダマンタイト製では? あのエルフの魔法発動体は総ミスリル製?

 ちょっと待て、ここって何なの? というかあそこのあのエルフ。あのエルフだけ魔素の放出量が桁違いなんだけど? あれ、ハイエルフじゃない? アルマも気づいたらしく、私にそれとなくアイコンタクトを取ってきた。ついでに言うと、あちこちに獣人の希少種が居るんだけど……。何なのココ……。ちょっと想像の埒外とかそんな話ではない。

 そこからさらに移動。面会の許可を取ってもらったとのことで、私とケイラ、アルマと2人は『爆走トロッコ?』なる乗り物に乗せられた。スルト殿の運転で関係者以外立ち入り禁止の区画へと入る。盛大に酔って私と近衛3人は勢いそのままにリバースしたのに、娘のケイラはケロッとしていた。それどころかいつも無表情な娘の顔が心なしかキラキラしていた気もする。若いっていいな~……。


「お初にお目にかかります。私はセラ、こちらが娘のケイラ。護衛のアルマ、キティ、ミアーです」

「こちらこそ。ご丁寧にありがとうございます。私はセリアナです。領主の母になります。領主が諸事情で遅れていることをまず、お詫び申し上げます」


 ……。なんか、この『ロリ母』とは凄く近い臭いがする。お転婆で、おつきのメイドや騎士を振り回したお嬢様の臭いがする。たぶん、目の前のロリ母のセリアナ殿も私から似たような物を感じたのだろう。凄くがっちりと握手を求められたので、私もがっちり握手をしておく。……でも、凄く謎なのだが、この方は何歳だ? お肌がつるっつるで、髪もツヤツヤ、体形はお察しだけど……領主に慣れる年齢の娘が居る母親としては規格外の若々しさ? いや幼さで羨ましい。私も娘を生んで16年。今年で36だからね。肉体美はどうにかなっても、お肌の年齢は……エリクサー、分けてもらえないかしら?

 そこに少し疲れが滲んだ……、んっ? はい? えっ? 妹さんでは?

 違った。この方が領の名前も関するエリアナ様だった。しかも、クロ殿の奥様……はい? セリアナ殿も奥方? どういう事? まぁ、考えても仕方ない。流そう。

 亡命の件は秒で承認された。一言も口にしてない我が娘のケイラがエリアナ様と硬く握手をして何やら解りあっていた。何を解りあったのかは解らないが、解らない方がよさそうなことは解る。そして、ここからはこの領の案内をしてくれるとのことで、私達はまたあの『爆走トロッコ』に乗せられてお隣の『水源の迷宮』という場所へと場所を移した。私とアルマは気合でリバースしなかったけど、キティとミアーはヴュッカさんという人? から袋を受け取り、その場でリバース。うん。もう少し鍛えた方がよさそうだね。


「は、はぁ……ヴュッカ殿も魔人?」

「はい~。そうですよ~。ちょうどお時間も良い頃合いですから、本日はお夕飯と宿泊はこの迷宮でどうぞ。この迷宮は主産業が観光と食事ですので、是非ともお楽しみください」


 人魚族の案内が始まり、それからは珍しい高級食材の数々に美味しくてついつい手の伸びるお酒、サービスのいい娯楽施設と水源の迷宮の高級レストランを始めとした施設を堪能。特によかったのがお酒。私、お酒好きなの……。というか目が無い。ここのお酒はまだ若いけど、味が段違い。特にいいのは琥珀色の濃い、トロッとしたお酒。本来は氷を入れたり水で割るらしいけど、私とセリアナ様は香りを楽しみながらストレートを口に含むのがよかった。アルマ含め、近衛の2人は美味しい海産物にくぎ付けだし、娘は珍味系に手を伸ばしていた。ここは天国かしら?

 その次はほろ酔い気分で『リゾートスパ』なる高級施設のはずのお風呂に入り放題な場所へ。ここでクロ殿とヨハネス殿は男湯へ。さすがに分かれる。今日は貸し切りらしいので、クロ殿はエリアナ様やセリアナ殿に腕を引かれていたが、お付きのメイドのハーマ殿に睨まれていた。さすがに節度は必要だな。……そうか、彼らは夫婦か。ならいいのか? いかん。お酒で思考が緩くなっている。

 あ~、お風呂いい。最高、幸せ~。というか、ホントにセリアナ殿の肌は羨ましい。……セリアナ殿は私の乳房に視線が集中しているが。まぁ、……解らなくはない。互いにない物ねだりを理解したのか、再び硬い握手。その時には私の娘とセリアナ殿の娘が、姉妹のように仲良くなっていたとは気づかなんだが……。

 最後はとても気持ちいい絶対高級なベッド。エリアナ様とセリアナ殿の親子はクロ殿に夜這いを阻止されてむくれながら床に就いている……。クロ殿もどうみても幼年だと思うのだが、あの年で多くの女性を囲うとは……魔人、恐るべし。そうとう夜も強いのだろうな。


「こ、これがエリアナ領軍」

「えぇ、あそこで指揮をしている子もクロちゃんの娘で、ゲンブちゃんです。この迷宮領で最凶の女将軍です」

「う、うむ。只ならぬ気配は感じるが……。恐ろしい以外は解らぬな」


 一般人にはここまでの方がいいとのことで観光はここまでとなった。娘のケイラは『生菓子』なる甘味を食してキラキラとまぶしい笑顔を見せ、エリアナ様と手を繋いで楽し気に街を散策していた。しかも、荷引き動物にしては大柄な鳥にまたがり、街中を2人で爆走していたらしい。護衛についていたキティとミアーは即振りきられたらしい。私は法務長官というセリアナ殿の案内で近衛3人と大人しく、つつましく食事や甘味処を回り、最終的に牧場や管理施設、裏側の魔人部隊などを見せてもらい……。私達は運がよかったのか悪かったのか……。良かったと信じたい。

 この数日後、私の旦那の死を聞き、とても仲良くなっていたセリアナ殿がクロ殿に依頼を出して獣人国へ『お仕置き』を始めるとのこと。

 以前から獣人国の某勢力が周辺の魔境に冒険者に魔境での採集依頼を頻繁に出していた。そのせいで魔が荒れて、魔物が暴れることにつながるとのことで……。複数の魔人が嬉々として獣人国を侵食するとのこと。その結果はすぐに私達の目の前に集うこととなる。

 獣人国で虐げられていた層の国民をラザークの新都市やここ、元ファンテール王国の南部で受け入れることになったからだ。その中には私の知り合いも多くいた。良識派の貴族だった連中だね。うん。ここ怖い。けど、味方としてはとても心強い。そして、さらに数日後、娘がクロ殿に嫁ぐことになっていた。……え? 私も? ちょっ、待って!! ケイラッ!! 私未亡人になってまだ数日。……まだ心の準備がまだだからッ!! お願いだから待ってぇッ!!


 ~=~

NEW

セラ・ゼラード=グランデール

女性 36歳

取得称号

・元女王 ・元冒険者 ・お転婆 ・酒豪

獣人族

身長170㎝

取得スキル

+双剣術 +大剣術 +格闘術 +棍術 +槍術 +斧術 +酔拳 +隠密 +脱走術 +獣化(セラ固有)

 元獣王国の王妃。様々な混乱に乗じて不安定な情勢の国からの逃亡成功。ヨルムンガンドの管理する紅の森で紅宮へ避難できた。そのままグランデールでの身分を捨て、エリアナ領へ移入。その直後にいろいろな違いに驚かされることとなる。かなりの自由人で酒好き。セリアナの良き悪友となること間違いなし。既にママ友。


 ~=~

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