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移入者のいろいろ 下

 移入者の全員が僕らの管轄、迷宮に来た訳ではないけど。迷宮に来た人間の皆さんを中心にピックアップしていきたいと思う。エリアナが統治する迷宮領の主な産業で、資格やこれまでの研鑽、知識の面で農耕、鍛冶、薬師や医師と言った皆さんだが……。こっちに来てから完全に新たな仕事に就いた人々も多い。他の迷宮でいろいろな範囲に分かれた移入者さん達を見て行こう。


 ~=~


 次は軍人系の職に就いた人々の話である。元から衛兵だったり、領兵として勤めていた人々も基本的には迷宮の入出管理を行う門番へと再就職した。元からの経験者だけあり、やり方さえしっかり理解してしまえば淀みない。

 問題というか、完全に関係ない人々がゲンブの管轄する軍部へ編入した。

 予想はしていたが、初日から阿鼻叫喚だった。次の日は誰も動けずにリャエドさんからの叱責の嵐だったとの事。それでも誰一人心が折れないというから、ここに来た人々の覚悟が感じさせられる。ゲンブ曰く、軍部に来た人々の多くは父親を戦や大暴走で失った若い子が多い。次男、三男、中には女の子もいた。家族を失う悲しみを間近で感じた彼らは本当に真剣に訓練に向かう。ただ、全員が軍人に向いているかと言うとそうでもない。とくに女の子に関して言えば、やはり特別なこ子と普通の子とで大きく差が出てしまっている。

 そこもゲンブのおかげでそれ関係の仕事に回されているらしいので僕はあまり触ってないけど。

 それでも怖すぎる。日に日に軍人志望の子達はがっしりしてきているし、執務班に回された女の子達はもう一級の秘書のような挙動をし始めている。この変化の理由を聞くのがとても怖い。


「皆さんは過酷な環境から、自ら地獄へと足を踏み入れ、その地獄を踏み越えました。その覚悟と、耐え抜いた意地をこれからも絶やさず、エリアナ領の正規軍人として誇りと規律を守り、領民を守るのですッ!!」

「「「「「「Yes!!!! Mam!!!!」」」」」」



 ~=~


 蛇神神殿は何も軍部が多くを占めているわけではない。どちらかと言うと、その軍部をしっかりと健全に維持するための食料生産と騎獣や荷引き動物の増産維持が主業務だ。

 軍人に志願した子ももちろん多かったが、旦那さんを戦で亡くした女性や元から農家だったり畜産をしていた人の中にはこちらへ配属された人も居る。軍人には向かず、こちらへ回された男の子も少ないとは言えない。やはり、命を奪う仕事なのだ。敵とは言えね。そういう子達は騎獣の管理や、荷引き運搬の任務を行う軍務随行部隊に配属されている。

 それから、意外と重労働で大変なんだけど、稲作やサトウキビ生産は女性に志願者が多かった。

 お菓子が好きなのかと思ったけど、砂糖は高い。彼女らは食べられる訳もない。……だからこそ食べられると踏んでか。実際、精製途中に出る低品質品などの一部は、彼女らへのご褒美として出るから間違いとは言わないけどね。

 あと、お年を召したご婦人方もここに多い。料理を長年してきた老年のご婦人は本当に手際がいい。基本業務はお菓子のレシピ研究だ。基本焼き菓子なんだけど、時たまぶっ飛んだおばあちゃんが居て、生菓子なるものを開発。新たにパティシエールという称号を得て、おばあちゃん軍団のお菓子屋さんは今やエリアナ領の重要な稼ぎ頭だ。まぁ、中には若い子もいる。おばあちゃんたちは志のある若者を快く受け入れている。……見る限り凄く過酷だったけどね。お菓子作りなのに、お店の中は凄く体育会系なのがなんとも……。


「こらぁ!! クリームの泡立てが足りないよ!! あんたに玉はついとらんのかいぃッ?!」

「ぃ…Yes Mam!!」

「ほ~ら小娘ぇ、あんたももっと鼻を鍛えな? これはまだ焼きが微妙だよっ!! 次の準備を急ぎな!!」

「Yes Mam!!!!」


 これがなんの影響なのかは考えたくないけども、なんとなくわかる。オープンテラスで最新の揚げ菓子『ドーナツ』を頬張るゲンブがガラス張りの店を見つめてるし。最近のゲンブのお気に入りがカカオパウダーにミルクとバターでとろみをつけた物だ。それをドーナツに付けて食べている。うん。絶対あの子関わってるな。ほどほどにするように言っとかないと。


 ~=~


 それから軍人と比べても最初から志願者の多かった畜産系の仕事の志願者。特に多かったのが騎獣の管理と繁殖の班だ。中でも人気なのが以外にも巨大な鳥の騎獣の『ガヴトヴォン』。黒馬の騎獣の『スレイプニール』は見た感じ通り気難しく、乗りてを凄く選ぶ。対して鳥の騎獣のガヴトヴォンは原産地のククルカルナ大砂漠でも、長らく荷引き動物とされているため大人しく表情は愛らしい。扱いやすいのだ。ただ、ガヴトヴォンばかりでも困るので、一部にはスレイプニールの育成もお願いしている。白兵戦での防御力と速度、圧倒的な風格はスレイプニールの方が段違いだからな。速度はどちらも同じくらい。ただし、馬力はスレイプニールの圧勝。扱いやすさはガヴトヴォン。こういう訳だ。

 それから元から畜産関係で生計を立てていた人も居て、改めてここでその仕事に就けるというのは嬉しいことだったらしい。

 とはいってもここは迷宮。ここの畜産物は特殊だ。魔物ではないけど、魔物レベルの魔素を保有しているから基本1.5倍サイズ。牛、豚、鶏など。基本的な家畜は当たり前だが、それ以外も一律にデカい。肉にする鳥系が多いけど。


「デカい……デカくね?」

「うん。大きいですね」

「でも、普通の家畜より大人しいですから、慣れれば何とかなりますよ。私も2日~3日で慣れました」


 迷宮に入ると人間もそこに順応しやすい効果でもあるのか? ……と、僕も疑いたくなる速さで移住した皆さんはこの非日常へ順応した。非日常も毎日見てしまえばその段階で日常である。最初は僕も不安だったけど、今では普通に任せているし。ここも大きな問題はない。小さい問題はあるけど。


 ~=~


 蛇神神殿はこの辺りかな? 目立つのはこの辺り。

 ここからは水源の迷宮から、虹色湖畔の湖底に広がる市街地にまで成長した魔境『水の都』への移入者の仕事だ。ここに住まう元陸上の種族はそのほとんどが結婚移入。結婚移出もあるけどね。その水中のどこに人間の皆さんの仕事があるかと言いますと……。

 最も人気だったのが僕プロデュースの『工場』だった。中でも小さな孤児の女の子達に大人気だったね。

 僕が生産性向上のために魚の解体工場や、加工の工場、缶詰工場など。なんでもかんでも『ライン・ファクトリー化』したんですね。それの保守管理の簡単さと、人魚族などの水中の種族が長時間の立ち仕事に難があったことによる需要と供給の一致が起きた。孤児の女の子には寮と三食おやつ付き、班回転ローテーション制勤務。7日に3日休みで1日の平均勤務を5時間と決めた。なんせ平均年齢が小さい事と、人数が多い事もある。それにそれだけ日給を出しても、まだ利益が出る程魚はまだ高級品なのだ。

 簡単な作業が多いだけに孤児の小さな子はこの『工場エリア』に集中して雇用されている。面倒を見るにも塊を管理する方が効率がいい。兄弟姉妹が居る場合も一緒に努めている場合が多いし。それに加工品工場は増やそうと思えば種類はまだまだ増える。いくつ定員が埋まっても、工場の管理をしている人魚族の発想が底をつかない限りは雇用できるしね。


「皆楽しそうだね」

「単純作業ですから。ある程度のルールさえ守っていただければ、あの子達くらいの年齢でも難なくできます」

「だね~。小難しい知識が必要ないのがいいね。ボタンをポンッてするだけでできるし。クロ様もよく考え付くよな~。こんな効率的な物を」


 それから飲食の職業についている人々も結構多い。特に水上レストランと庶民層とちょっとお高いお店に務める人が増えている。ここの食材に感動した元料理人さんが継続して厨房を切り盛りしているという。僕は庶民層のレストランへはセキュリティ云々で行けないらしいので又聞きだけど。

 まだ水中の食文化と陸上の食文化は完全な融和がなされていない。

 水中、陸上の両種族共にまだ物珍しいのだ。……というか、物によっては食文化の問題で受け入れられないとかいろいろあるらしいけどね。特に魚の卵系だったり、魚類の生食は陸上の食料としては危険な食し方とされているから。ちゃんと処理されてるから安全だしうまいよ。逆に水中にない食材、特にスパイス系だったりは、味が独特過ぎて受け入れられないってのは多い。どっちも美味しいけどね。

 この問題もあり、まだ各レストランやバーなどでは水陸の各料理人やバーテンダーを用意している。だからこそそれだけ雇用の口もあるんだよね。食料の融和が進んだとて、この分だとそのまま雇用は続くと思う。


 ~=~


 他にも目立たないというか……。一応できた仕事がある。爆走トロッコや快走トロッコの運転手。乗る人数が増えたので外部の人間に暴走させる訳にはいかないからね。ちゃんと管理している。それ関連で各迷宮の入口についているトロッコ運航の際の管理担当なんかも増やしている。衛兵さんとか門番さんとは別に。

 あと、これが一番増えたかな? セリアナさんが優先的に選び出した優秀な文官候補。大量に王祖の迷宮で日々作りだされる膨大な量の書類仕事をこなしている。これまではどう考えてもオーバーワークが続いたこともあり疲れていた皆さんだったが、ようやっとその苦行からも解放されて笑顔が戻っている。特に一番忙しいエリアナもようやく楽しい迷宮の改装を行いつつ、僕の執務室へ遊びに来るようになった。次に忙しい政務と法務の兼任をしていたセリアナさんも政務長官の任をホノカさんに押し付けて、法務に専念。ようやっと時間が作れるようになり、彼女が前々から気にしていた水源の迷宮の観光に行けるようになってめちゃくちゃ喜んでた。


「……ですけどね? 夜に僕の部屋に押し掛ける人数が増えてるのは何でなんです?」

「え? それは人数が増えたからですけど……」

「あのですね? 僕の人数は増えないのでできる限り常識的な判断をお願いしたいのですが」


 ここはどうしても解決しない問題だった。僕は世界に1人だからね。トホホ……。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後120日~125日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長9.5㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


 ~=~

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