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魔の森の中

 今までは『本能』に従うのみで、自分の有り方や状況の理解ができていなかった。今、僕やツェーヴェ、リリアさんとエリアナが居る『魔の森』の概要をそろそろ調べようと思う。

 ツェーヴェの縄張りで『魔の森』と呼ばれているエリア以外にも人間が『魔の森』と呼んでいるエリアはある。だから、ツェーヴェからも勧められ、ちゃんと準備をした上で森の調査と『開拓』を行おうと思う。どうしても開拓せざるを得ない状況になっているんだよね。

 ツェーヴェの縄張りは広大だ。けど、その南西側に人間の都市があり、それ以上は広がらない。これからは人間の領域と呼ぶけど、その人間の領域を拡げられる可能性は高いからね。人間は農地を拡大し、食料生産力を向上させながら安全な居住区域を拡張する。その内、森の南西側から浸食をうけることは目に見えているのだ。


「ただ、人間ごときだと、ある程度のところまではいけても、魔素の濃い場所は無理ね」

(そうなの?)

「えぇ、リリアやエリアナは特殊なのよ。これほどの魔素耐性を持つ人族は極一部よ。普通の人間では今の領域でも辛い。……でも、今の人間の状況をリリアから聞いたけど、その内南西の森エリアを切り拓こうとするでしょうね」

(なんでまた急に? 領土を拡げる必要が出たってこと?)

「えぇ。今まではこの森を迂回する形で、交戦していた国との戦争を有利に推し進める為、侵攻路を作るつもりなのよ。通り抜けるだけなら大したことはないから」


 ツェーヴェの苦々し気な表情を察して、僕も動く。避難できる場所はあるに越したことはない。

 あと、森の食性調査は僕らがしておく方がいいのだ。この森は生きている。僕も軽率だったと最近気づいたんだけど、この森が『魔の森』と呼ばれる理由がまだいくつかある。ツェーヴェの縄張りにはいないけど、ツェーヴェの縄張りを避けるようにして、円状に大量のトレントが生息している事が解った。もっとも、僕は小さすぎてトレントではとらえきれず問題にはならなかったけど……。他にもツェーヴェの縄張りの外には、かなりの数の魔物がうようよしていることも解った。

 そんでもって、凄く困るのが比較的近くに『魔獣』の存在を確認したこと。

 『魔獣』とは、魔素が何らかの理由から凝縮して生まれた異形の存在。既存の生物の枠には属さず、より凶暴で理性はない。近づく生物を区別無く襲い、魔素や生命力を吸収することに貪欲。討伐には魔法依存の攻撃が必須であり、まさに災害のような存在だ。たぶん、あの程度ならツェーヴェが行けば倒せる。僕じゃまだ無理だろうけど。


(まさかあんな化け物が居るとは……。ツェーヴェに報せないといけないね)


 とはいえ、魔獣が確認された地点はかなり遠い。魔力での身体強化が可能になった僕が、半日かけていける距離だからおおその直線距離で約30㎞。しかも、その間には激流の流れる川があった。こちらからのアプローチも現状することはない。危険な存在が居ることが知れただけでいい。それで、これからは南東の動きを注視しながら、開拓を交えつつ生活を送る事になるだろう。

 リリアさんとエリアナが来てから、思う様にツェーヴェも街に行けてないからね。その内、情報を仕入れてもらわねばならない。その間に僕は武器の開発や……農耕の準備、その為の道具造りと忙しい。

 それから昨日リリアさんが見つけた洞窟の奥にあった扉。

 それの中を調べる事もついでに行わねばならない。かなり抜けてるツェーヴェは、これの存在を完全に忘れていた。知っていたのに、忘れていた……。僕は推察していたけど。

 ツェーヴェが大量に所蔵している娯楽小説。特にお姫様と勇者のラブロマンス系の娯楽小説には、必ずと言っていい程『魔素溜まり』と『迷宮(ダンジョン)』の存在が描かれていた。だから、どこかに有るだろうとは踏んでたけど、まさかねえ~……。


(まったく……。なんでこんな重要な物の存在を忘れるかなあ?)

「仕方ないでしょ〜? 見つけたの何百年前だと…はっ!! おほほほほほ…………」


 ツェーヴェが少なくとも数百年は生きてる事が判明した。

 問題はこの迷宮は安全かどうか。森のざっとした調査を終えた僕は、報告も含めてツェーヴェの穴蔵に帰って来た。そこでリリアさんに相談されたので、街から帰って来たツェーヴェを問い質したわけさ。リリアさんにも森の情報は教えねばならないからちょうど良かった。

 ツェーヴェ曰く、この迷宮には入れないらしい。誰がこの迷宮の主なのか分からず、入る為の方法も不明。普通の迷宮は来るもの拒まず去るもの逃がさず。……なのだけど、この迷宮は来る者を拒んでいる。ツェーヴェがこの迷宮にいろいろ試してみたのは数百年前で、そのために書物や魔道具を収集し始めたらしい。……待て待て、物凄く目的ズレてんじゃん。今じゃ面白そうな魔道具や、趣味の合う娯楽小説を収集するだけじゃねーかよ。勘弁してくれ。

 ちなみに僕もいろいろ試したけどダメだった。

 何が目的なのかは解らないけど、この迷宮は鍵がかかった状態で開けない。見つけた時に触ったリリアさんにも反応はなく、開く資格はなかった。……この場に残るのはエリアナだけだ。エリアナを呼んでもらい、前に立たせた瞬間。エリアナの体を包む様に円筒型の魔法陣が展開。鍵が開いたような音がして……あはは。開いた。エリアナもキョトンとしている。なんで開いたかは今は置いといて、中を調べよう。

中に2人と2体で入ると、中にはでっかい球体が浮いていて、玉座と黄金か何かでできている台と篝火しかない凄く狭い部屋しかない。


(これが迷宮の内部?)

「そうね。でも、本や伝承で聞く迷宮とは全然違うわ。……それに、これが(コア)だと思う」


 僕は玉座によじ登り、部屋を隅々まで観察する。しかし、何の変化もない。というか、解り切ってるけど。この核の部屋の扉がエリアナが触ることで開いたなら、エリアナが何かすることで動くんだろうね。それをツェーヴェに言うと、ツェーヴェがリリアに言伝、エリアナを玉座に座らせる。

 すると、凄く面白い事になった。

 どうもエリアナがこの迷宮の主として認定されたらしく、玉座が小さくなった。エリアナ用のサイズになったというのが正しいかな? エリアナはそれがお気に召したのか、あちこち触っている。その中で、ひじ掛けに手を乗せると、何やら半透明な板のような物が出て来た。これはツェーヴェも使える鑑定魔法を使用した際に現れる物と同じだと思う。どうもこれは玉座に触っていると見れるらしい。僕も見えてるけど、ツェーヴェとリリアさんは最初見えなかったからね。けど、玉座に触ったら見えた。


「へ~、迷宮の管理用魔法道具みたいな物かしら。面白いわね」

「ですが、まさかエリアナ様が迷宮の主だったなんて……」

「ねぇ、エリアナってとっても特殊な血筋なんじゃないの? あなたも含めてだけど」

(確かにエリアナの髪と目は特殊だと思う。……血筋が関わるとツェーヴェが考えるのもなっとくだね)


 リリアさんはまだ話すことを躊躇っている。それを察したのかツェーヴェが謝り、この場はそれで収まった。それよりも、楽しそうに魔素で構築されている板を触り、何かのリストを見ているエリアナの天真爛漫さに2人は和み始めてるし。

 今、エリアナが弄っている魔素の板には数字と絵付きの表示がある。

 それを見てピンときた。何故か、僕の『本能』の中にそういう知識があったのだ。朧げだったので何なのかわからなかったけど、実際に目の当たりにした今ならよくわかる。エリアナが見ているのはこの迷宮の拡張を行える機能の中枢。おそらく、エリアナしかできない。それになんでか物凄い数字の貯蓄と、他にもいくつかの数字が見受けられて、僕は興味がわいた。

 エリアナは絵を見て楽しんでいるようで、僕が見たい物はお構いなしにどんどん下に画面を降ろしてしまうけど……。さすがにことが進まないので、僕がエリアナの肩に飛び乗り、エリアナにそれとなく指示というか指標を示すことにした。


「どうしたの? クロ」

(これ、これをやってみよう)


 まずはこの迷宮の拡張を行わせてみる。それをツェーヴェとリリアさんも興味深そうに見ているね。まず、僕がエリアナにお願いしたのは平原タイプの拡張だ。しかも一番広いタイプ。この迷宮はかなりの時間を放置されていたようで、迷宮内に人が居なければポイントがたまらないはずなのに、膨大なポイントが貯まっていた。

 その時にピンと来たのは、この迷宮を知らず知らずのうちに守っていた『森の主ツェーヴェ』だ。

 魔素の板は何枚かあるんだけど、その内1枚には迷宮の構造が映し出されていた。どうもこの迷宮は2つの層に分かれていて、ツェーヴェの穴蔵が第一層。ツェーヴェは数百年の長きに渡り、この迷宮の第一層に住んでいる。迷宮の仕様を考えると、強い存在、この場合はツェーヴェのような存在が居つけば、それだけポイントが貯まることになる訳だ。

 ツェーヴェは苦笑いしている。

 エリアナはよくわからず疑問符を頭の上に浮かべてポカンとしているけど……。エリアナはリリアとは比較にならないけど、短期間でツェーヴェにも懐いた。ツェーヴェもエリアナを妹のように扱うから、それは相乗的に2人の中を深めていく良い要因になっている。


「でも、なんで第2層に平原を作ったの?」

(それはこれからのことを考えたんだ。ツェーヴェが提案してくれた開拓。このダンジョンの中ってのはどう?)

「ツェーヴェさん、クロさんはなんと?」

「あ~、うん。最近は森の中も外も物騒でしょ~? 私の家も結局はちょっと深い洞窟だから、冒険者とか軍人が来ないとも言えないわ。だから、エリアナが管理できるなら、この迷宮を『開拓』してしまおうっていっているの」


 リリアさんは最初は全然思考がついてきていなかったが、数分考えてやっと思い至ったのか、掌を打った。まさにポンっ……て感じ。この人もそこそこ天然なところあるよね。まぁ、いいけど。リリアさんは僕を見て、凄い希望に満ちた表情をする。何だろう。解んない。けど、凄く期待されている感じはするね。……というか。エリアナさん、空気読んで、次は何がいいかを聞くのはもう少し後にしません?


 ~=~

・成長記録→経過

クロ 

オス 生後20~30日程

取得称号

・森の調理/狩猟担当 ・蛇娘のお気に入り ・稀代の鍛冶師 ・稀代の魔道具師? ・未来の開発王 ・令嬢のお気に入り ・森の救済者

NEW・迷宮の秘書 ・侍従長のお墨付き

???族

全長5㎝……身長3㎝→全長7㎝……身長4㎝

+身体強化 +弓術 +解体術 +技師 +鍛冶師

NEW+交渉

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