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食べるor食べない

 今日は凄い物が採集できた。まぁ、それで少しトラブルもあったんだけどね。

 なんてことはない。今日はいつも行かない方向に向かい、木に登って新しい果物の採集とその辺で育っている野草で食べられそうなやつを持ち帰る予定でいた。肉は昨日の馬肉が氷室に入れてあるからね。僕は肉や小エビだけでいいんだけど、ツェーヴェは蛇なのにグルメで意外と山菜を好む。その点からもバリエーションは多いに限る。あと、新しい住民、リリアさんとエリアナの食事はバランスがいい方がいいんだろう。そんなこんなで僕は果実を集めていた。たまたま柑橘系の木と、油が取れる実の木が生えているのを見つけて採集してたら、……卵を見つけた。


(卵か。確か人は茹でたり焼いたりして食べるんだよね。持ってこう)


 こんな感じで採集してたら、まさかの親鳥と鉢合わせ。とはいえ、僕の相手じゃないんで、舐めプしてたら巣が傾いて真っ逆さま。転げ落ちて地面で再戦。番の親鳥もゲット。したんだけど……。今、僕の目の前には再び例の物がある。……あるんだけど。……卵を見つけた、再。

 これはどうしようか。僕はこの卵に見覚えがある。見覚えがあるというか、僕が破って出て来た卵と似た感じだ。多少の違いはあるけどほぼほぼ同じ。爬虫類の卵。周囲に親の姿はない。僕も周囲に親の姿はなかった。そもそも爬虫類は子育て期間があるものはほとんどいない。一定の大きさまで親の縄張りに居ることを許される場合もあるけれど、基本的には生れ落ちたら即独り立ち。鳥のように餌を与え、巣で守ってくれるようなことはない。

 ……これ、生きてるね。こんなところじゃ長くはないだろう。何せ、この巣、何かに荒らされた跡があるからだ。体液の匂いが残っているから、この卵の親は何かにやられたのかもしれない。野生下ではありふれたこと。卵が生きているなら持って帰ろう。途中で死んでしまうようなら食べてもいいし。


「それで、持って帰ってきたの?」

(うん。この卵は僕の炉の近くで孵化を待つことにするよ。鳥の卵は確か、ツェーヴェが浄化の魔法を使えたよね? 一応よろしく)

「はいは~い」


 ツェーヴェは2人の新たな住人が来てから常に人の姿だ。リリアさんには正体を明かしたらしいけど、エリアナにはまだ早いとのこと。確かにな、お世話になってる相手が実は化け物だったとか、10歳の子供には恐ろしい事実だろう。

 ……僕を見て大丈夫なら、特に問題ない気もするだろうけど。

 そんなことは露知らず、お昼までツェーヴェと遊び尽くしたエリアナは疲れたのかまだ寝ている。僕は日が暮れる前には帰るようにしているから今、ツェーヴェとリリアさんに手伝いを頼んで夕食の仕込みをしてる。本当なら昼食もしっかり用意したいんだけど、2人が来て食糧事情が少し変わったから。ツェーヴェ先生の講義も中止して、僕は食料集めに邁進している。そうしておかないと、彼女らが体調をいつ崩してもおかしくない。……というか、2人には魔法使いの素養があるんだろう。

 ツェーヴェ曰く、魔法使いになれる人間には魔素を体に取り込み、魔素を吐き出すことができる体質があるらしい。それが全くない人間は、そもそも魔素溜まりには近づけない。特に体が脆い人間は魔素に晒されることで体調を崩し、いずれ死に至る。2人は魔素に耐性があるんだろう。だから、ツェーヴェは魔法が使えると判断したらしい。


「はい。私は魔法を使えますよ」

(へ~)

「エリアナも?」

「はい。エリアナ様や私の血筋は、代々魔法使いを輩出してきた家系なので」

「人間も大変なのね~」


 リリアさんはそれからいろいろ教えてくれた。エリアナの家系はお父上が魔法師団の師団長で、リリアさんのお父上がその参謀。その繋がりともとより互いの家が友好的である故、エリアナとリリアさんは主人と専属メイドの関係になったそうな。その話を聞くうちに、ツェーヴェが難しい表情になっている。ツェーヴェはそういう意味では僕よりも世事に強い。僕はこの森から基本的に出ないから、外のことには詳しくない。というか生後20日の爬虫類。身長3㎝のオスが外に出て、積極的に情報を得たところで何に使うんだよ。って話しな。

 ツェーヴェの蔵書を僕が読むのは基本的に生きていくための知識を構築するため。

 僕の頭の中に時折流れる記憶のような物。生まれる前から染みついた習慣のようなものだから、僕は『本能』と呼んでいる。その『本能』は朧げで、ツェーヴェの本を読むまでは何を作っても中途半端だったし。素材がなかったことや、ツェーヴェという強者の庇護ができたことも、僕の生活水準向上に大きな影響を出しているのは言うまでもない。


(ご馳走様。それじゃ、洗い物はリリアさんにお願いするよ。僕はこれからちょっと試してみたいことをやってるから)

「はーい。何をするのかしら?」

(鍛冶。鉄を打って、人間サイズの包丁が打てないかを試すんだ)

「へ~。リリア、洗い物はよろしく。私も手伝うけど」


 リリアさんとツェーヴェが水場に行く。ツェーヴェは水魔法が得意だからね。地下水脈を見つけるのも得意だった。だから、ここにはかけ流しの水場や温泉がある。とま、僕はこのサイズだから、湯につかることはない。お湯をツェーヴェに汲んでもらって体を洗ってるだけだよ。本当は小さい浴槽を作ってもいいんだけどさ。

 で、僕はと言うと、ツェーヴェの穴蔵に彼女に頼んで穴を掘り込んでもらい、鍛冶用の魔道具を詰め込んでそこで鍛冶仕事と、魔道具製作をし始めていた。僕の『本能』にあり、この世界に無い物が再現できないかを試行錯誤している空間にいる。

 詳しいことは解らないのだけど、坩堝のような形状の魔道具が奥にある。それに金属や鉱石を入れると溶ける。それに気づいてからは、それを改造して鋳造をするのに使っている。この魔道具の怖いところは少量しか入れらないけれど、その金属の純度をかなりあげられる事にあるんだ。たぶん、錬金術系の魔道具なんだろう。


「ふわ~……。あっついね~」


 鉄はただ純度が高いだけだと固く脆い卵の殻みたいになる。それを防ぐために、頃合いを見はからって坩堝の排出口の下に鋳型をセットしておき流し込む。流し込んで、冷えるまで待つ必要があるんだろうけど、僕の工房ではそんな物は必要ない。鋳型の注入口を魔石を練り込んだ粘土で固め、漏出を止め横倒しにして引きずり運ぶ。

 運んだ先には地下室のようにしてある空間があり、そこの中心部に鋳型をセット。実はこの空間も魔道具。これは施工に苦労しましたよ。苦労したのはツェーヴェだけど。その空間から急いで出て、部屋の前にある魔力注入口に魔力を流す。僕は人間の片眼鏡の魔道具越しに魔力の抜けを見る。この魔道具は魔力を見る片眼鏡だよ。なんのために作られたかはよくわからないけど。

 ……というか、エリアナは何してんの? ずっとこっち見てるよね?


「何してるの?」

(刃物を作ってる……というか、僕の言葉は解らないよな~)


 仕方ないので、製作途中の僕用の刃物を叩くジェスチャーをする。それでも知識が無いのでわからないらしい。……この子、文字は読めるんだよね?最終手段。木の燃えカスで文字を書いて教える。要らない大き目な木の板に書いて見せると、納得したらしい。……納得したならあんまり見つめないでほしいのだけど。

 お、こんな事してたらちょうどいい塩梅。地下室に組み込まれた魔道具を停止して、鋳型を取り出し中にある刃物の形にした鉄の塊を取り出す。この魔道具は完全に原型が無いからね。元は箱型の魔道具で、中に入れた物の成分や魔力量、熱などの要素を調節する魔道具なんだよ。これも錬金術師の魔道具だと思う。それを使って熱を奪い、ある程度の形になるところまで整形。ここからもう一回焔を出す魔道具で加熱。クッソ熱い……。で、自作のハンマーの魔道具で叩いて……叩いて……叩く。片刃のナイフの原型が完成。冷たい水を出す桶にぶち込んで『じゅわっ………』。あとは火傷しない程度の温度になるまでちょっと休憩。待って……砥石で研ぐ。


(ま、こんなもんだよね~。グリップつけるくらいはリリアさんにお願いしよう。できないことはないけど、中途半端になりそうだし)

「すっご~い!!」

「エリアナ様? どうかされましたか?」

「クロ凄い!! ナイフ作ってた!!」


 リリアさんにそれを掴んでまだグリップのついてないペティナイフを渡す。僕の体格だとどうやってもこのサイズが限界なんです。所詮は小さき者。身長3㎝の爬虫類ですから。でも切れ味はいいはずだよ。僕の実力というよりは、ツェーヴェが収集した魔道具の性能が良いだけなんだけどね。

 それを見て察してくれたのか、リリアさんがぼろ布を巻いた上から、僕が削りだしたグリップ用の木柄に押し込む。戦闘用ではないから無理に引き抜こうとしなければ、アレでもぐらつきは無いと思う。これで街に行くまでの道具ができた。森や林の探索に刃物はあった方がいいからね~。包丁を調達したあとも使えるし、作っておいて損もない。

 どっちかと言うと魔道具をフル活用したから、また魔物を探して魔石を取りにいかなくちゃいけないのが面倒だ。魔物は野生動物みたいに簡単には狩れないからね。魔力を通した攻撃じゃないと、大きなダメージは与えられないって言う最大の難点もあるし。最悪、ツェーべに頼んで蹂躙してもらえばいいんだけどさ。


「ふ~。私はそこまではしないのよね~。集めるのは好きなのだけど。それで興味が他に移っちゃうから」

「確かにそうですね。あの数の蔵書には驚きました。そういえば本棚も都合しなくてはいけないです」

「岩棚を削って作るから良いわよ?」

(ホントに規格外だよな~。水魔法限定とは言え、あの力は凄すぎる)


 ツェーヴェの力には本当に驚かされる。リリアさんがそう思うのも当然だ。その内2人には街へ行ってもらわなくちゃいけないけども。それまでに僕も何かできることを増やしておこう。いろいろできれば、生きていくのに苦労はしないから。


 ~=~

・成長記録→経過

クロ 

オス 生後20日程

取得称号

・森の調理/狩猟担当 ・蛇娘のお気に入り ・稀代の鍛冶師 ・稀代の魔道具師? ・未来の開発王 NEW・令嬢のお気に入り ・森の救済者

???族

全長5㎝……身長3㎝→全長7㎝……身長4㎝

+身体強化 +弓術 +解体術 +技師 +鍛冶師

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