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ククルカルナ大砂漠へ

 蛇神神殿第でゲンブと僕はとある相談をしている。完全に当てずっぽうでどっちに伸ばしていいか解らないのだけど、度重なるしょぼい夜襲に飽き飽きしてきたので、何とか砂漠を奪取するためにそろそろ迷宮を伸ばさないか? という事だ。

 ちなみに今日はちょっと前に生まれたオオヨロイトカゲのモデルをしているジオゼルグを連れてきている。どうもジオゼルグは砂魔法と言うレア魔法スキルを持っており、ついでに水魔法も持っている。左肩で胸を張り、仁王立ちしているジオゼルグ。勇ましくはなくただただ可愛らしい。サイズが小さいからね。そのジオゼルグの勘に任せることになった。ゲンブの水魔法で掘るのだけど、どの位置から掘るかも問題だ。ククルカルナ大砂漠はかなりの年月を砂漠だった土地で、どれくらい深い位置まで砂なのかが解らない。それもジオゼルグにお任せ。むしろジオゼルグに全部お任せしたいのだけど、生まれたばかりのジオゼルグは魔素の吸入量が少ない。つまりすぐにバテる。仕方ない。

 ジオゼルグの言うままに迷宮を降りていくとおおよそ18階層で合格の判断が出た。これなら20階層で掘っても変わらない気がするので、20階層からジオゼルグの指示する方向へ掘削を開始。ただ、まっすぐは掘れない。どうも、場所によって砂が深いところまで達している場所があり、そこだけ避けている。


「これはなかなか骨ですね」

「だね。ジオ、そっちの方向には何があるんだい?」

(迷宮だよ)

「め、迷宮ですか?」

(そうだよ~、姉上。あれえ? 迷宮に行きたいんじゃないの~?)

「ま、まあ、それならそれで問題ないけど。このまま行こうか」

「解りました」

(れっつご~)


 ジオゼルグは凄く勇ましい名前だけど、これでも女の子。ジオゼルグはゲンブに懐いているのでここに配置が決まっている。ちなみに、アミメニシキヘビのヨルムンガンドは豊穣の迷宮でスルトと見つめ合っているらしい。不思議ちゃんと無口がかみ合うとああなるのか……って感じだった。アレがどう変化するのか凄く興味深い。

 それはなんでもいいけど、生まれて二日でジオゼルグも二足歩行を開始。この子はスルトよりも自分で歩きたがるので尻尾に迷子鈴がついている。つけていないとふら~っとどこかに行ってしまうので。

 現在は昼夜関係なく、気の向くままにジオゼルグの向くままにゲンブが岩盤を掘削している。掘削と同時にゲンブが迷宮を拡張しているのでここも自陣の扱いだから、エリアナからはちゃんと念話が来る。僕は通信と一応の警備係だ。時たま、ワーム系の魔物とエンカウントするので……。大概は掘削中のゲンブが出す高圧の水の振動で集まるために、そのまま岩盤と共にマッシュワームになるのだけどね。それは一応魔法の鞄に全部収納している。ワームに関してはワーテルローが好んで食べるので。食費が浮きます。


「ジオ、こっちでいいのよね?」

(うん。そろそろつくよ~)

「近いのか?」

(うん。近いというか、もう迷宮にぶつかってるはず~)

「おいおい。この深さで迷宮にぶつかると何階層にぶつかるんだ?」


 こんな方法でいきなり迷宮主の居室にぶち当たるとかは嫌だけどね。……なーんて思っていたんだけど。ジオゼルグが何やら首をかしげ始めている。気になり聞いてみると、もう迷宮の真ん中食らいには食い込んでいると言うではないか……。まさか、地上階オンリーの迷宮ってあるのだろうか? 無きにしもあらずではある。けど、まさかこんな時に当たらくても。

 僕とゲンブは顔を見合わせて、とある方法でこの階層から脱出を試みる。蛇神神殿の迷宮をここにもう一つ作るのだ。

 もう一つというと誇張し過ぎか。ようは同じ迷宮ではあるんだけど、かなり延長した場所に迷宮が作れることは既に確認済み。何故なら、スルトが地上に作ってあるエルフの開拓村はそのまんま豊穣の迷宮の支部のような扱いだから。一応、通路や何かしらの階層との直通路があり、間に他の迷宮や魔境が無ければ製作可能なのだ。

 まぁ、迷宮の真下では無理なので僕とゲンブ、ジオゼルグの三体でできるだけ戻り、蛇神神殿の新階層を作る。一番狭いか階層を垂直に重ねて地下から20階層分上に上がった。うん。そりゃそうだ。ジオゼルグはのんびりと(お~!)などと言っているがこれはちょっと予想外。これまで掘り進んだ方向は完全に何もない砂漠だけど、目の前にはオアシスがあるのだ。しかも、石のゴーレムだと思われる犬頭で槍を持った物が巡回している風である。この先に見えるのは黄金の四角錐と思われる巨大建造物がある。


(お~ッ! でっか~ッ!)

「これは壮観ですね。しかし、このような大規模な迷宮は初めてですが……どうしましょうか? 父上。応援を呼びますか?」

「そうだね。スルトとヴュッカ、ツェーヴェを招集しよう。ゲンブにはこの入口を守ってもらいたいし」

「そうですね。その問題がありました。私は一度蛇神の神殿へ帰ります。ジオはどうしますか?」

(ここ欲しい)

「ははは、生まれたばかりで旺盛だね。こう少し大きくなってからだよ」

(わかった!)


 のんびりした性格のジオゼルグ。本当にのんびりしている。あと、魔法がめちゃくちゃ上手い。僕もその気はあったんだけど、スキルを意識さえしていれば、魔物は生まれた時から本当に強い。特に魔法スキルが生まれながらに生えている個体はとにかく強いようだ。ジオゼルグも僕が何を言わずとも、砂魔法で雑魚は既に狩る。僕は例の犬頭の黒いゴーレムが近づいて警戒し続け離れない時のみ迎撃している。

 そのまま丸一日が経過した頃に、エリアナ、ツェーヴェ、ヴュッカ、スルト、ゲンブが現れた。

 まぁ、エリアナは迷宮を取り込むのに必須だからね。仕方ない。集まってくれたメンバー間で一度食事にし、そこから攻略に関しての話題になる。この迷宮は完全に生きている。生きているんだけど……。この迷宮、エリアナが違和感を感じるというので、何かあるのだろうとは思う。

 今回の迷宮攻略に関してはどうなるかは解らない。僕は迷宮の組成やいろいろに触れることは少ないからね。完全に門外漢だ。それでも違和感は感じる。この整備の行き届いた感じは人間による手が入っていることが見えるのだ。まぁ、その方が僕にとっては都合がいい。犬頭のゴーレムもそうだけど、守備範囲が一定で汎用性が無いからね。人間が機械的に処理したようなこの場は僕にとって凄くやりやすい。

 空を飛んでいる隼頭のゴーレムも犬頭のゴーレムも僕の魔法狙撃銃、PSG-44で次々に潰していく。


「たぶん、相手の迷宮主さんはさぞ恐ろしい体験をしているでしょうね……」

「え? なんで~?」

「ツェーヴェ姉は認識阻害と完全認識阻害の違いって判る?」

「そりゃ~私の領分だもの~」


 僕もこの前初めてエリアナから言われて知ったのだけど、僕の外套に付与されている完全認識阻害は迷宮主の権能すらも掻い潜るのだ。認識阻害の魔法だと、迷宮主の権能で魔素板に映し出せるマップですぐに見つかる。しかし、僕が外套を着ていると背後に来られても見つからない。一度、それでエリアナを泣かしたことがあるので、僕も気にするようにしている。

 その完全認識阻害の付与がされている外套を着込んだ6人組。ゲンブはここに残るが、他の5人はこのまま迷宮へ入っていく。迷宮主は一応眷属や疑似魔物と視界を共有もできるが、それだとしても恐ろしい。僕のPSG-44は無音、無反動で排煙や魔素の流動を派手に乱すこともない。それで200m程の距離を置いて外部の監視ゴーレムを次々に潰されルートクリアされてしまうのだ。そのまま僕らは難なく入口から入る。

 そして、僕が斥候職のスキル持ちで良かったと感じる日が今日になりとは思わなかった。何なのだろうこの迷宮。ヴュッカの迷宮とは別の方向でめんどくさい。人間が施設に使えるありとあらゆる罠を詰め込んだ感じの一本道。

 落とし穴はテンプレとして、壁から飛び出す槍や矢もテンプレ。

 釣り天上もテンプレ。

 三日月型の巨大な刃のついた振り子もテンプレ。

 ……テンプレだらけだ。魔法系の罠ももちろんある。けど、ここに居る体温が高い存在ってエリアナしかいないんだが、そもそも完全認識阻害の外套を着ていると物理的に踏み抜く事さえなければ、基本作動しない。体温や赤い光線に触れると認識される罠も、フリーパス。罠? 何それ美味しいの? と言った感じである。


「クロが居るとこういう遺跡系迷宮も楽々ね。私でも見抜けないような罠も見抜いちゃうんだもの~」

「そうですそうです。一家に1人クロ様です」

「一家に1人て……。僕はこの世に1人しかいないよ。ヴュッカ」

「でしたら皆でシェアです!」

「……」


 ヴュッカの不穏な発言は聞かなかったことにし、僕は淡々と罠を見極めて皆で回避。透明な床とかもあるね。凄く面白いアトラクションだね~……。種が解るとこういうトラップハウス系の迷宮は面白くない。この迷宮に入って数個罠を見破った辺りで僕の斥候スキルが変化し罠師(トラップマスター)のスキルが大活躍。

 やっている僕自身が簡単すぎて溜息をついている。現状、それを面白がっているのは目の前で僕が開設付きで罠を解除するのを見ている後続の皆さん。特にツェーヴェとエリアナは凄く楽しそうだ。ヴュッカは持ち前のほんわかのほほんで、ジオゼルグと共にほわほわ空間を作っている。その頃、迷宮主が大絶叫を上げていることなど露知らず……。


 ~=~


「な、何故ッ?! 何なのコレはッ!!?」

「ひ、姫? どうなさいました?」

「迷宮が、……この迷宮が何者かに攻略されているの!! なのにどこにも見当たらないし…罠は全部回避されるし!! どうしよう?! どうしよう、どうしましょうゼビオラッ!!」

「おおおおおお、おちっ、おお落ち着き、落ち着きください姫様!! 私達近衛や諸侯もついております。姫の御身は我らが必ずお守りいたしますのでッ!!」


 それから数時間後、僕らが何の気なしに迷宮を散歩している間、この迷宮の主とその配下達は絶望にも似た恐怖を感じていた。迷宮の中ボスすら難なく突破され、どのような傾向のトラップも何の苦労もなく攻略される。そして、攻略している側もまさか思うまいて……、迷宮主の居室に既視感しかない情景が繰り広げられているとは……ね。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後100日~105日

主人 エリアナ・ファンテール

身長120㎝

全長15㎝……身長8.5㎝

取得称号

NEW ・迷宮の案内人

取得スキル

NEW +罠師 +道程看破


 ~=~

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