閑話休題9『女だらけで秘密の会談』
ここは王祖の迷宮、エリアナ城のとある大会議室。円卓と高い背もたれの物々しい雰囲気の会議室は数本の蝋燭の明かりで照らされ、独特の雰囲気を醸し出している。その席には……多くね? っという人数のマスクを付けた者達がぎっちぎちになり集っていた。
マスクの額にはナンバーがふられており。誰が誰だかわかるように……いや、ナンバーをふっても多すぎで解らなくなっていますね。……この会合はこれで10回目程。とある事情からどんどん人数が増えました。最初は4人。次に5人まではいいんです。そこから怒涛のような人数が増えました。さすがに私はモノ申したくなり、議長にマスクを投げつけます。
「お母様?! 娘の恋敵を量産するなんて何をお考えですの?!」
私がマスクを投げつけるのを機と見たのか、ちょっと痛そうにマスクを取る集団があります。マスクを取ったのは獣人族の集団です。代表が獣人族総代表のホノカさんとその娘さん三人。あと、各氏族のお嬢さん達が数名。皆トンガリフルフェイスマスクで耳がつぶれて痛かったようですね。可愛らしいお耳を皆さんピコピコしています。
そして、暑苦しそうにマスクを取るのは、議長の膝の上で抱っこされているスルトちゃん。その隣のゲンブちゃん。彼女らは完全に面白半分の参加です。
さらにその横に座っていたツェーヴェさんとヴュッカさんもマスクを取り、その後ろにズラッといらっしゃるそのお母様方々も興味深くはあるようですが、既にとってます。その横のお方も耳が痛かったようで鬱陶しそうにマスクをいじっています。エルフの代表カレッサさんと数名のお弟子さん。私の後ろにはマスクを既にとっている侍女のリリアが居る。
他にも個人参加が数名。ドワーフ族代表の娘さんでキールさん。ノーム族代表の孫娘のレレさん。羽妖精族代表の娘ヴィレッタさん。他にも小妖精族の代表者の娘が何人もいます。ほとんどは面白半分の参加ですね。ここからはオブザーバーというか、まとめ役? のはずのメンバーです。シルキー代表のエルンさん。お母様、お母様の侍女であるハーマさん。各種族の族長だったり奥さん達。
「え~? いいじゃないの。クロちゃんならこの人数を孕ませて、たくさん子を生ませても何の問題もないと思うわ~」
「お母様は何でそんなに開けっ広げに言えるんですかッ?! もう少しオブラートに包んでくださいまし!!」
ちなみに、この会議のお題目はクロの妻候補選別会議です。
私はそれはもうすぐに確定。ここの領主ですし? 人族では私が一番一緒に居ますから。あとリリアも。……次にツェーヴェさんも満場一致で確定しました。ツェーヴェさんは確かに頼りになるので……。仕方ないです。そして、私とお母様が承認したような物なので、九尾のホノカさん以下数名の獣人の皆さんはほとんど確定。
ここからは未定ですが、可能性が非常に高いメンバーです。……というか、この段階で非常に多くないですか?
まず、エルフ族のカレッサさん。ツェーヴェさんからの推薦です。
ドワーフ族のキールさん。ノーム族のレレさん。羽妖精のヴィレッタさんまでは確実にクロにメスの視線を向けています。
ここからは微妙ですが、蛇魔人のヴュッカさんと未婚の数名、火妖精のフォルテ、水精霊のウェディ、雷精霊のルカ、木精霊のツバキなどなど。各族に厳選していますが、クロの魅力を知る者は多く……。まだまだいるらしい。私としてはこんなに居ては回るものも回らなくなると思うのですけどね。しかし、異を唱えるのは……お母様と蛇魔人の二代表、クォアさん、リャエドさんが言うには魔人を舐めてはいけないとのこと。
「どういう事ですか?」
「魔人と言うのは基本的にいろいろなことが超越しています。それはお分かりかと存じます」
「はい。それはもう」
クロの爆裂魔法や人の姿でも凄い勢いで走れる肉体の強靭さ。魔人はそれだけ規格外で計り知れない種族なのだ。人の枠に当てはめていると、酷い目に遭う可能性が非常に高いとのこと。
クロはまだ未成年というか、性的に成熟しておらずまだまだ子供だ。しかも、野生生物が元の種族である魔物から魔人化していることから、繁殖期という概念を忘れてはならずその際のことも考えなくてはならない。
それから根本的な話として、この会議は一応公式な会議らしい。……知らなかった。
ここに居るのは自分から立候補している者は選別されているが、各代表から差し出された娘はほぼ強制だ。年齢が幼かったり種族としてそういう種族も居るけれど、ここに居る者は皆仲良く妻扱いらしい。あ、既婚者や魔人の姉妹など何名かは除かれますけど。
「貴族の義務と言うのからは離れるけれど、やっぱり果たすべき血筋の者は果たす義務が生じるのよ。もちろん貴方も」
「……」
「貴族の子女だったあなたに解りやすく言うなら、皆も聞いてね? 一つの文化として。貴方は貴族の家に生まれた娘として、親に決められた男性に嫁ぎ、その男性の子を産み家を守る義務があったの。貴族が特別な身分であるのは、そういった仕組み全てが義務であるから。単純に名誉だけではないわ。皆様も解ってくださりましたか?」
貴族社会のことに付きまとう勘違いと言うか、よく知らない人も居るからね。貴族社会ってお金とコネクションでなんでも解決する訳じゃないの。力を疎まれたり、存在をそのまま亡き者にされてしまう時さえある。それだけギトギトした社会。なんでも権力で自由にできると勘違いしていた皆さんが、思い思いに反応。
まぁ、ここは貴族政治は採用していないし、議会政治でもない。
というか、まだ政治の雛型すらできてないのよね。あ、そのためか……。たぶん、お母様は各種族の娘をクロの嫁に押し込むのを狙っている。権力の一点集中である絶対王政や独裁などではここはすぐに崩壊する。やりようはあるのだろうけど、力による統治になってしまう。他種族の寄り合いだから……。それに合わせた新たな政治思想が求められる。だから、お母様は疑似的な創造神話を作るつもりなんだ。私達を初代の聖母のような物に見立てて、クロという英雄の血を皆が引いている。その団結の下にこの迷宮国家が成り立っているのだと……。
めちゃくちゃ強引なやり方だと思うけど……。時間が無いのは確かだ。ファンテール王国はもうだめだ。テュポーンちゃんが送り迎えしてくれるから、諜報員が忍び込んでいるけど、王都もゴーストタウンみたいらしい。ファンテール王国が壊れてから戦乱が起きる時、ここも改めて団結しなくちゃいけない。
「ふふふ、賢い子は気づいて来たわね? 知らなくてもいいとは思うけど、皆は好きな男の子と結ばれて、その子の子供を産んで育てて……。それがいいと思うわ。クロちゃんはいい子よ? まじめだし、無理強いしないし。……ちょっとやりすぎはあるけど。そこも可愛らしいわ」
ちょっと待ってください。目がハートです。恋する乙女みたいに紅潮して嬉しそうです。お母様? まさか、お母様まで挙手しませんよね? さすがにそれは私も許せるか微妙なところなんですけど。え? クォアさんやリャエドさんと未亡人同盟を組んで参戦予定でいる? あ、お2人もクネクネしてトリップしてる……。いえ、あの……未亡人って、前ガハルト公爵はまだ存命ですよ? 隠居したみたいですけど。
あ、はい。お母様の心の中では死んだ物となっているんですね? ……だとしても、さすがに自分の母親が自分と同列で同じ男性と子供を残すのは~。あ、はい、ごめんなさい。問題ないです。わ~、嬉し~な~。弟かなぁ~? 妹かなぁ~? 弱みを握られているとさすがに勝てませんね。
はぁ、皆さん揃ってもう纏まりが無いですね。
獣人の皆さんももう未来を夢見てか……耳をピクピク、尻尾をフリフリ。ツェーヴェさんはもう、これ程無いってくらいニッコニコ。ヴュッカさんはクネクネしてますね。さすが蛇魔人です。後ろでも数名くねくねしてます。妖精族さん達も反応はまちまちですけど、いろいろ話し合いながらかなり好感触のようです。……悩ましい問題だとは思いますが……私もつくづくお人よしなのかもしれません。皆で仲良く……ハーレムの出来上がりです。……絶対増えますよ。今後も絶対。
「あ、それからぁ~」
「何です? お母様」
「いろいろな古い本を探して読んでみたんだけど。魔人って、夜がすっごく元気らしいの……。だから、皆で相手しないとホントに死んじゃうかもしれないから。気を付けてね?」
一番最後に下ネタをぶち込む我が母は、教育係のハーマさんに引きずられて退場。
それを蛇魔人の方々に聞くと、確かにそうかもしれない……。と、言っている。それは男性だけではなく女性もだそうで、種族的な特徴とのこと。魔人は数が少ないので、出会った時に確実に子孫を残すための進化だとか、単にいろいろパワーアップするから全般的に強くなった内の1つだとか……。いろいろ言えるらしい。クォアさんは後の説を推している。
そこにオブザーバーのシルキー族、エルンさんから一言。
大昔から異種族の結婚の際に子孫の問題はつきもので、さまざまな王朝でも語られている案件とのこと。それは現実にも書物にも実際のこととして記されている。それがどの種族間であろうとも大変な苦難があることはお忘れなきように……と。
うん。覚悟はしておこう。皆の視線がにわかに真剣みを帯びた。いずれは皆結婚して次世代を担わねばいけない子女なのは共通なのだ。この団結は、ハーレム云々は抜きに、結果的にはいい傾向に繋がったのかもしれないです。




