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北方山脈の向こう側の姿

 はい。仕事が雑でよく怒られます。クロです。

 今回の輸送に関してはクロノーサのおかげで、以前と同様に物凄い効率を上げて完了することになるだろう。ただ、その前に他に脅威が無いかだけをいつまでも拘束して申し訳ないが、ヤガンドラさんに案内してもらいつつ探索を行う。何度目であるかは数えてないから知らないけれど、今回この北方山脈以北に来たのは危険な因子が僕らの知らないところにあると怖いので、それを認知可能ならば対処を行うためだ。

 普通ならば魔境に居る主を潰すとかそういう感覚なんだけど、生命神など他人に言えない僕のナビゲーターが言う『堕ち神の因子』があるようでも困る。さっき植えた『オリハルコンの大樹』があれば大概の事は問題ないけれど、それでも面倒事はごめんだ。何よりここは遠いので僕が事態の急変に動けないのは困る。誰かを縄張りの主にするのもいいのかもだが、現状は僕達の人員は酷い不足状態。こんな状態で新たな縄張りを割譲するとか頭がおかしいと思うからね。


「実に用心深い考え方だな。貴殿程の強者なればここを丸々焼いても問題なかろうに」

「それは考え方の違いかな。僕はこの地を統治する気は今のところない。けれど、ここに禍根が残れば後々に害になるとも限らない。僕は急造の橋は嫌いなんだ」

「ふむ。堅実で手堅く、安心感を求めるという事か」

「そういう事。それに僕でしか解決できないような物が微粒子レベルで眠っていて……、ふとした時に芽を出し、害を出す。それが一番怖い。ヤガンドラさんも言っていただろう? 自然は……世界は僕達小さき者の事情を斟酌などしない。100年かけて建造した橋も、大洪水で一日にして崩れ去ることもある」

「また深淵なことを考えるのだな。貴殿は」


 ヤガンドラさんは戦闘力だけでなく、索敵能力や機動能力も非常に高いようだ。現在は雪原というか氷原の上を滑走中。寒い地方に特化しているユミルと僕、この地のガイド役のヤガンドラさんで隅々まで調査している。北方山脈の反対側の“陸地”は狭く、陸地に見えるほとんどが氷魔素の影響で出来上がった氷山と氷塊だそうだ。それに合わせた生態系もあるので陸地と氷上では完全に別世界。ヤガンドラさんもあちらにはいかないとのことだ。一応あちら側に数人、正しくは数家族だけだが面識のある者が居るとのこと。その中で一番話がしやすい人物を尋ねる予定らしい。シロクマの獣人族で元々氷原やこの地方に家族単位で暮らす独特の民族だそうだ。他にも数家族いるらしいが、温和でまともな会話になるのはその家族のみ。今の時期だとシロクマ獣人は大アザラシの魔物を狩るため、この付近に転居してきているはずなので一応来てみたようだ。

 彼らはこれ以上の厳冬にも耐え、問題なく生活できるので敢えて先ほどの会話では出さなかったのだそうだ。彼らには彼らの生活環があるしね。ただ、僕らの現状として優秀な人手が欲しいと言うなら彼らは特別優秀な狩人だし、力自慢でもある。交渉の方法はいくらでもあるので、声をかける方が得になる。……ともヤガンドラさんは言う。彼らも食料を得る方法が採集と狩りに依存しているので、安定した生活が行えるならば、そちらに住むに越したことはないだろう。ただ、それは頭の柔らかい者だけで、誇りだなんだのと気にする者も居るのであくまで個人とのやり取りらしい。


「来た来た」

「ヤガンドラ殿ではないか。この時期に温泉から出ておられるのは珍しい。しかし、本日は何用で?」

「うむ。こちらのお方がだな。我々に移住の話を持ち掛けてくれたのだ。貴殿ならわかるだろうが、この方は我々など一ひねりにできる存在。話だけでも聞いてみぬか?」

「……貴殿のお名前は?」

「クロと言います。それからこちらは僕の眷属であり娘のユミルです。北方山脈……、あの山の反対側の魔境を統べる長がこの娘で、今回僕達は魔境の変化に伴い様々な調査を行いに訪れました。ヤガンドラ殿に協力していただき、危険な物が無いかを検分している最中です。移住のお話ですが、我々は新興の一族でして。現状、魔境の環境管理に手いっぱいになり人手が欲しいのです」


 オズワルドと言うらしいシロクマの獣人族男性はかなり興味深げに僕を見ている。自己紹介の後に彼の口から出たのは…食事と文化の事だった。それに関しては何ら問題はない。現状、スルトが悲鳴を上げているのでそれを各所に急いで分配しているレベルで生鮮の…特に野菜と果物は充実している。肉類と魚類に関しても過剰なレベルで不足はない。最近では魔物も食料として狩猟もしていないけれど、魔牧畜による生産物だけで十分に保存食の生産まで行えている。魚もほとんど養殖もの。

 最近のマタギ班は狩猟成績よりも冒険者の救出や、時折現れる強力な種類の魔物の討伐に限られるし。改めてあちこちの生産物関連の記録を思い出しているけど、食料生産に関しては何ら問題なかったはず。土地を蘇らせている『ハープランド分領』や『ドルツェンハイム分領』でも、徐々に問題ない土壌の範囲が拡大してきている。『ハープランド分領』に至っては、インフラ整備に力を入れ始めている段階。うん。何ら問題ないな。

 僕はそれを正直に伝える。すると、オズワルドさんは僕に土下座してまで一家で移住できないかと言って来た。う、うん。……別に問題ないよ。一応国家間の移動になるから形式的に思想調査とかはされるけど、僕が話した感じ人柄的にも何ら問題を感じないし。というか、一族とかじゃないんだね。


「我々シロクマ族は家族主義で、他家との交流をそれほど持ちません。持つとしても危急の場合に共闘したり、亡くなっていた同族を海に返す葬送を慎ましく行う程度という関わり合いですな」

「それは食文化と生態の問題からですか?」

「えぇ、我々は肉食性が強いので、あまりにも飢餓に晒されると我を忘れて仲間内でも同士討ちが起きます。食料が潤沢ならばそのようなことはないのですが、このような不安定な土地ではなんとも」

「まぁ、その辺りはオズワルドさんに任せます。家族での移入なら今頃ヤガンドラさんの縄張りで受け付けていますから。すぐにでも問題ないはずです。ユミル。案内できる?」

「おけまる~! 家族のとこまで案内して! 神獣変化で乗せてくから~」


 目の前ででっかいレオパに変身したユミルに恐れおののくオズワルドさんだけど、大丈夫。ユミルは僕の娘ですから。その後も一番まともだと言うオズワルドさん以外にもそれなりに面識のある家族と個別に面談し、オズワルドさん一家と他に4家族の移入が決まった。他はこちらでの生活を頑なに選んだ者や、猶予が欲しいと言って来た者も居る。猶予が欲しいと言って来た家族には一度、ヤガンドラさんの縄張り付近に転居してもらい、こちらからの食糧支援とユミルとの話し合いをゆっくりと交流や準備をしていくという事で一度話がまとまった。

 それから氷と雪に閉ざされた魔境に住まう種族と数種族遭遇した。ほとんどが食料面で潤沢な居住地の話を出すと大概が即断で移入を決めた。中にはここでの生活に固執する者も居たが、それはそれ。縁がなかっただけだ。

 結局、危険な物は特になく、後入りの家族単位だったり、海洋周辺でしか生活が難しいと言う獣人の皆さんの集団移入が相次いだ。ヤガンドラさんと面識のない種族もかなりの数が居たし、意外と凍土にも人間種に近い種族は多い。獣人族ばかりなのはやはり苛烈な環境で生き残れる強さがあるのが獣人族だけだからだろう。オズワルドさん以下シロクマ獣人が5家族。考え中が3家族。雪原キツネ族という白い毛並みの狐獣人が3家族。フクロウの鳥人族になるのかな? シロフクロウ鳥人族さんが1カップル。キングペンギンの鳥人族?さん達がいコロニー。トナカイの獣人さんが1コロニー丸々移住。ここからが海洋の獣人さんでセイウチの獣人さんも1コロニー丸々移住決定。ラッコの獣人さんが2家族。マッコウクジラの大家族。シロナガスクジラの親子。バラエティーには富んでいる。ただ、海洋からしか移動が難しい種族の皆さんは一度僕が結界魔法で保護し、迎えの者を待ってもらう。ユミルの居住地よりも別の所の方が彼らにはいいだろうから。

 人魚族や魚人系にもどんな拡がり方をしたのか知らないが居た。普通にこちらの海域に住んで居る人魚族。住みやすいなら暖かい海の方がいいらしい。それから変わり種としては人語は解すが、姿は魔物のままの種族。最初は魔物かと思って驚かされたが念話で会話を試みて来るくらいには落ち着いた性格。深海や寒い海に住まう種で、クリオネとメンダコ、ダイオウイカさんが数体。皆でっかい。一番小さいクリオネの魔物さんすら2mはある。


「意外と動いてみるもんじゃのう。しかし、貴殿の言う危険な物はなかったのか?」

「えぇ、無いに越したことはないので。アレがあると非常に面倒ですから」

「貴殿が面倒がるとはな。まぁ、無いならいいのだ。しかしまぁ、なんだかんだ住みにくくとも。……故郷は故郷なのだな」

「郷愁ってやつですね。ここがユミルの縄張りに落ち着いて、生活しやすくなるようでしたらここも拠点にするのはありですよ。今は人手が足りないのでどうしても拡張は厳しいですけども」

「そういえば貴殿たちの縄張りはどの辺りまで拡がっているのだ? あまりこちらから出ぬしその辺りの情報はまだ聞いておらぬよな?」


 尋ねられたので答えたら絶句された。

 もちろん僕個人の縄張りではない。僕個人の縄張り、『黒鋼の森』は便利なこともあってあちこちに出張所を展開しちゃってるけど。南は誰の縄張りでもないけれど一部魔王領方面をも切り取り、北はここの土地が版図に組み込まれれば制覇したことになる。いずれ反抗的な勢力が最後まで抵抗するようならば叩き潰しにかからなくちゃいけないが、できることなら全面戦争となるのは避けたい。こちらが魔人で堅め、身内に死者を出さないことは可能だが、その場合相手は凄惨な状況に陥る。生ぬるいと言われるかもしれないが、やはり僕は争いは嫌いだ。切磋琢磨ならいいのだけどね。蹴落とし合いはロスばかりでプラスに働くことは少ない。その後の成長も微妙になるような戦争をしてまで僕は土地を切り取りたいと言う意識も無い。平和裏に終わって欲しい物だよ。

 思っていたよりも北方山脈の反対側が狭かったことと、ユミルが最初に引き合わせてくれた主が良心的だったことでとんとん拍子に探索は終了。思っていた程問題のある土地でもなかった。魔素酔いとでもいえばいいのか、淀んだ魔素に染まり、いろいろキマっている魔人という問題はあるが些事だろう。僕はユミルに代表を引き継ぎ、タケミカヅチにエリアナ達を先に送り届けてもらい、僕はネプチューンとポセイドンの到着を待つ。ここで海洋の移住者団の案内役を念話で頼んだので、僕はここに残るのだ。他のメンバーは順次移住にかかる。うん。順調で何より。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(245日~250日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~


取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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