表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
315/322

北方行脚の始まり

 ういうい。クロです。

 北方行脚は平和裏に終わってくれるに越したことはないわけだけども。そうもいかない可能性は大いにあり得る。そのためにエリアナにもちゃんとした装備をさせることにした。女性のトリブロノータス族の機密工房班員が採寸し、最近成長著しいエリアナの専用装備ができあがった。エリアナは体術戦闘と射撃戦闘の適性が同じくらいで、僕らのように元からの戦闘員という訳でもない。なのでエリアナの装備は敵を散らし、自身に集中攻撃を向けさせないことと、急接近からの一撃ノックアウトをコンセプトにトリブロノータスの若技師たちが悪乗りした。最近ではトリブロノータス族の成人と判断された個体がそれなりの数になっており、ここもかなりの大所帯となっている。その技師たちの夢が詰まった近未来チックながら、フォーマルな感じを失わないというバトルドレスは見ていて凄く怖かった。

 こうしてエリアナの装備も整い、いざ北方行脚に出発となったのだけど。僕が考えていたよりも同行者が非常に多い。

 僕とエリアナ、タケミカヅチは『王祖の迷宮』から向かう。今回はメンバーの安全性と速度も重要なので、スミオ達には全員待機を命じてタケミカヅチに送迎を頼んだのだ。スミオ達の飛行が危険とは言わないが、僕の眷属でも上位のタケミカヅチの保護魔法の方が優秀なので、こればかりは仕方ない。僕の第1夫人である女王様を運ぶわけだからさ。

 そして、追加の同行者が女性のトリブロノータス族で構成された女性王族親衛隊。他国の王族で言うところの近衛に相当するポジションを自称する女性トリブロノータスの小隊が3小隊だ。もちろん僕にもつく。男性のトリブロノータスで以下同文。


「君達、僕の護衛らしいけど、僕には要らないんじゃない?」

「いえ、王族の身辺に何が起きるか解らない以上我々のような戦力は必須かと」

「何を言ってもついて来る気だね……。自由にしていいよ。その代わり、滅私的な行為は無しで。皆各自の命を大事に」

「御意!!」


 このメンバーでまずは『王祖の迷宮』を飛び立った。その後に『ドルツェンハイム分領』でニナリアとハムシーンが待って居るので合流する。今回予定になかった同行者。トリブロノータスの連中だけど、2人は物々しいながら愛らしい仕草の連中にほっこりしていた。

 また、ここから『ドルツェンハイム分領』から今度はほとんど真逆の『星の聖地』へと飛ぶ。コンゴウを拾うためである。ここでアースさんからの願いがあり、同行者がまた1人増えた。アースさんの長子で次期大地守護龍のアールという名の青年龍を連れて行く。見聞を広めるためと護衛としての訓練でもあるらしく、断る理由も無いので問題なく連れて行く。そして、最後の場所に到着した。ユミルの治める『氷の国』の中枢であり、家でもある『氷の城』だ。ユミルとここで一応情報の擦り合わせというか、前提条件を纏めておく。今回は一応平和裏にことを進めたい。別に先制攻撃されるようなら受けて立つのも一興ではあるが、この戦力に勝てる戦力はそうそう無いので……。そもそもの話、タケミカヅチに勝てると考えるだけのバカが居るなら、既に攻めて来ててもおかしくない。

 馬鹿に付ける薬もないので、先制攻撃を受けた場合はこちらからも規格外の戦力をお見舞いしてしんぜようとも思うし。トリブロノータスの軍隊の事は魔王領方面では徐々に浸透しつつあるけれど、こちらでは全く意識されていない。雪原仕様なのか全身を白い顔料で塗って、白い隠密の外套と消音ギミックマシマシながら、殺傷力の高い狙撃銃とサブマシンガンを装備しているこの連中に攻め込まれた時のことは僕でもあんまり考えたくない。一応強襲はしないけれど、応戦は視野に入る。そういう事だ。

 自分が先頭に立つ気満々だったユミルが凄く残念そうな顔をしたが、同行すると言うエピカが慰めているのであちらはエピカに任せた。それからオーランド君。君さ、ユミルの傍付きのカトレアと距離近くない? え? 結婚を前提にお付き合いしている? 後はユミルが結婚するのを待って居ると……。別に先に結婚してもユミルは何も言わない気がするし、普通に喜んでくれると思うよ。


「まぁ、とーちゃんの存在を感じ取れない程度の雑魚だった場合は居残す価値もないと思うぜ~。ユミルは見てくれに反して相当力の強い魔人だからな。その内縄張りを否応なく呑み込まれて終わっちまう。それこそ、ユミルは早めに氷龍を眷属に引き入れておく方がいいぞ」

「ん~……タケミカヅチ兄ちゃんの言いたいことも分かるんだけどさ~。順位付けみたいであんまし好きになれなくて、眷属化ってヤツ」

「それはユミル様のお考えが少々ズレておりますね。我々はユミル様にお仕えすることを誇りとしております。我々、ガイガルト派でありました氷龍族はユミル様の眷属と成れることを誇りと思います」

「あ~、でしたらついでに僕もどうです? 確かギル叔父上が陛下の影響を受けて変異されたらしいじゃないですか。私もそれに近い状況ですし」


 ユミルが抜けているというか、執務能力がゼロであることをまざまざと思い知らされた。なので、早急に縄張りの氷龍の名士全員の眷属化と、『氷の城』の内部状況を管理する専属の内政官をカトレアに選任してもらった。カトレアの妹でカミラと言う氷龍が起用されることになるらしい。

 タケミカヅチもこれには頭を抱え、コンゴウも少し遠い目をしている。そして兄弟は揃って頷き、隣の領を支える者として、気をかけることを誓い合ったようだ。そもそもユミルはゲンブに近い。防御特化のゲンブと異なり完全な攻撃一本のユミルだから違うタイプと勘違いされやすいけれど、ユミルは将軍職に向いている。しかも自身で先陣を切り拓く『猛将』の類だろう。機動戦闘で翻弄するタケミカヅチとも違うし、守りからのカウンターが適格なゲンブともまた違う。攻撃こそ最大の防御と言えるような存在だね。その辺りもいろいろ教育は必要だろう。うん……あんまり好まない方法だけどこことハムシーンの縄張りに関しては、ユミルとハムシーンと同系の兄妹を増やしておく必要があるかも知れない。

 僕も最近は拡げ過ぎた縄張りの管理を行うだけで精一杯だった。各地の仔細を纏めるに至らず、中央との兼ね合いや連携を重視し過ぎたかも知れないね。個々の機能が破綻する様子では連携もクソも無い。ここは思い切って増やすとするか。方法はヨルムンガンドが確立したし、僕が近くに居る今がちょうどよい機会だろう。なのでユミルとハムシーンにこのタイミングで何人の兄妹が欲しいかを聞いておく。必ず生まれて来るかはわからないけどね。欲しい人数分の鱗をもらい、とりあえずこれで事務的な問題は終了かな?

 今日はここでお開き。ハムシーンやニナリアはエピカとは初めて会うらしく親交を深めて欲しい。明日もそれほど早く動かずともゆっくりと動いて行けばいいだろう。


 ~=~


 翌日、タケミカヅチによる送迎で北方山脈を越えて行く。北方山脈以北の土地は基本的に凍土に閉ざされており、龍族か魔人のような超常生物、もしくは土着の種族でしか生存が確認されていない。つまり人間種の存在はほとんど皆無という事だ。稀に命知らずの冒険者が行方不明になることはあれど、この周辺では強い生態反応はその2種に限られ、中堅どころが魔物から成り上がった主であるとのこと。

 ユミルはこの辺りの勢力分布を中心に先に調べていたのか。

 以前のいきった魔人が格上にも関わらずこちらへ攻撃を仕掛けて来たことを鑑みてユミルはちゃんと考えていたらしい。ユミルはあの土地をガイガルト殿から引き継ぐにあたり、平和な凍土を目指したいと言っていた。人々の熱気で賑やかなのもいいけれど、それはそれ。その土地はその土地の姿という物があり、けしてうら寂しい土地にしたい訳ではないが……。この土地にあまりに強い熱気は似合わない。心根の暖かな人の慎ましい寄り合いが助け合える土地にしたいのだと言う。でも、そのためにはちゃんと守りの手を固め、非戦闘員を護れるだけの地盤が確約されていなくてはいけない。ユミルらしい足場固めが堅実なところが、情報通信の遅延を引き起こしていいたのか。

 ここはユミルを褒めつつも少々のアドバイスを混ぜ込む。確かに足場は重要だけど、その足場を組上げているだけでは物事は解決しない。ユミルの速度で間に合わないのであれば、僕らに相談することもまた重要な管理官としての仕事なのだ。魔人化して何かしらの働きをしている中ではユミルはまだまだ下の方の娘だからね。娘としてはクロノーサが一番下でその上がハムシーン、その上にユミルが居る。本来1人で治めるには過酷な土地を人が足りない故にユミルに任せきりにしている僕の不甲斐なさもあるんだが……。これは本格的にテコ入れが必要になるかも。たぶんこの調子だとコンゴウの方も何かある。上位の管理官は足りていてもその手足となる文官が全く足りていないのだろう。アースさんが優秀過ぎて気づくのに遅れたが、コンゴウもそれには苦笑いした。初期の眷属の地盤堅めは何とか物になりつつあるので、今度は新参の皆の所に本格的なテコ入れをしに動こう。まぁ、とは言えまずは北方行脚が先だ。はてさて、どれくらい穏便に済むかな?


「魔物の縄張りは殲滅する方が楽だと思うよ。基本的に知能の低い連中が多くて対話にならないから。一部会話はできたけど、聞く耳持たぬって感じだったし」

「ふ~ん。なら、周辺の魔人や龍族の縄張りを回ることから優先していこうか。ユミルにそのあたりのチョイスはたのんでいいかい? できるだけ大きな縄張りの所から行きたい」

「は~い! んじゃ、タケ兄、もうちょっと東に進路取って。山裾の方向に進みながらの方がわかり易いと思うから」


 タケミカヅチからの了解という声を聴き、ユミルが巨大なタケミカヅチの頭部に乗る。何に関しても基本鷹揚なタケミカヅチ。頭部に妹が乗ろうと特になんとも思っていないようだ。もう少し怒ってもいいと思うが、これもタケミカヅチの良いところか。とりあえずユミルが指し示す、北方山脈の奥側で最大級の縄張りを持つ存在が居るところまで向かおう。何が出るのかね~。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(250日~255日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~


取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ