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一方その頃→タケミカヅチとツェーヴェ

 縄張りをこんな長距離で離れるなんて何百年ぶりかしら……? ふふふ、お久しぶり。蛟の号を受けた蛇龍のツェーヴェです。……いいえ、クロの未来の妻の方がいいかしら? 

 こほんっ……。今回は二方面作戦をとらざるを得なくて、クロの子の一匹。飛竜なのか翼竜なのか解らないタケミカヅチに掴まって、件の高地へと飛行中。センテン高地。あそこは私の一族を追い詰めたらしい魔獣がのさばっている。面倒だったから放置してきたけど、今回のお掃除で片づけてあげるわ。私、こういうお掃除は大好きなの。

 タケミカヅチの飛行速度は本当に速い。いずれはエリアナの騎竜になる予定らしいけど、普通の人間では無理そうな気がするのよね。成長すれば大きさは問題なくても、タケミカヅチが保護系の魔法を覚えないと人間には厳しいと思うわ。だって、徒歩なら数日かかる道程が半日で到着したんだもの。


(俺、ツェーヴェ姉さんが獣化してるの初めて見た気がするっす)

(そう? 蛟形態は見た事あるでしょ?)

(神龍形態を獣形態と一緒にするのはどうかと思いますぜ~?)

(そう? まぁいいけれど、気を付けてね。アイツ、気づいたみたいよ)

(ほいさ~)


 私とタケミカヅチの接近に魔獣、キマイラが気づいた。タケミカヅチと私めがけて三種のブレスが乱れ撃ちされる。火炎弾、風の衝撃波、毒の粘液。全く面倒なヤツ。全然変わってないわね。この鬱陶しさはッ!!

 私も思いもよらなかった。魔獣の定義が迷宮主の管理を外れた疑似魔物であると……。そりゃそうよ。疑似魔物ってもともと迷宮内の主が出す指令以外に従わない存在。自我を持たせるなんて非効率だし、扱いにくいわ。それなら外に出して管理から外れればいう事聞かずに暴れるわよ。

 私も一族から離れて長いから知らなかったけど、私の一族はあのキマイラに追われて滅んだようだ。一族が管理していた迷宮があったはずなのにね。まだ幼かった私は魔物化したくなくて、一族から離れた。迷宮の近くに居なければ魔物化しないはずだから。魔物化は一種の賭け。力を得られるかもしれないが、自我を失うようなことまでして得るような力ではない。私は蛇知れず放浪の旅に出た。何度も死に目を見ながら、私は現在私の縄張りとなっているあの森、あの洞窟にたどり着いた。……そして、結果的に魔物化した。……してしまった。

 ……体感50年分の記憶が無いわ。けど、急に私の意識がはっきりとした。私は素っ裸の状態で洞窟内に座っていたのよね。記憶があいまいでうまく動かせないけど、私の体に大きな変化があることが解った。その時意識が覚醒し、私は理解したのよ。私は魔人化した……と。それからの100年はつまらなかった。狩りは簡単になり過ぎ、大抵の魔物は一撃で殺せる。張り合いが無くて……気まぐれに森の浅層に行って、何か面白い物が無いか探すようになった。たまに見る人間。見た目は同じなのにとても脆く弱い人間。狩りの相手としては物足りないけど、人間の行動は面白かった。

 そして、森の中で死んだ人間を見つけた。なんで死んだかなんてどうでもいいけど、荷物は興味深かった。人間の遺物を拾った時、私は考えを変えることになる。知識の探求という趣味に目覚め……500年。蛇龍となった。そこからさらに300年。今の私は……タケミカヅチに振り落とされないように、必死にくっついていた。


(大きいの来るわよ!!)

(あいさ~!!)


 乱射されるブレスが当たらないと判断され、大きい収束ブレスを撃ち込まれる。気の抜けたタケミカヅチからの返答と同時に、私の体も凄い圧力にさらされた。防御魔法が間に合ってなかったら引き千切れていたかもしれない。乱発される巨大火炎弾を回避しながら、凄い速さで急上昇。もう火炎弾は当たらないし、どうするのかと思った。そのままタケミカヅチは真下を向く……。え? ちょっと待って? このまま垂直降下する気?

 ……それからのことは一瞬たりとも思い出したくない。

 人間形態だったら間違いなく粗相をしていただろう。蛇姿でよかったと思いつつ。ブレスなど物ともせずに貫通し、そのまま一撃でキマイラの体を突貫飛行したタケミカヅチの力にも驚いている。垂直降下時、タケミカヅチの体には雷と風の渦が螺旋状に広がり、複雑な気流が渦巻いていた。一つの渦を構成するように何千、何万の小さな渦が彼の体を取り巻いていたのだ。

 スルトの熱砲も大概だけど、タケミカヅチのこれも本当に危険。私も蛟なんて地名を受けているから自分の力の危険さは重々理解しているけど、この幼い竜に身の丈以上の力が宿っているのは見過ごせない。この子は間違いなくあの子の眷属。私が愛する天上の存在。『黒龍』の眷属だ。

 それにファインプレーって言うのはこういう事なのかしらね? タケミカヅチの作った大きなすり鉢状の穴。その真ん中の底に迷宮の入口を見つけたのよ。意図的か、経年的な浸食作用により埋まったのかは解らない。


(まったく……。バディが私じゃなかったら死んでたわよ?)

(め、面目ねえっす)

(ホントに困った子よ。……まぁ、でも、今回は凄い功績に免じて許してあげるわ。いいこと? 皆が私達魔人のように堅固な体じゃないのだからね?)

(は、はい。気を付けます)


 タケミカヅチは体は大きいのに、かなりビビりでおっちょこちょいなのよね。やる時はやるから信用はあるけど、時折こういう事があるから気を抜けない。

 私が人の姿を取ると、タケミカヅチも最近覚えた小型化で私の左肩に乗る。右肩はいつもクロが乗る特等席だと認識しているようで、彼の眷属の子らは誰も乗ろうとしない。……というか、彼の臭いがついているせいで森の小動物はおろか、獣人の皆さんも絶対に触ったりしないのよね。そこまでクロは気にしないと思うのだけど。

 そのまま私はタケミカヅチを乗せたまま、光球の魔法で明かりをつける。……これは死んだ迷宮かしら? クロからの報告で聞いている。迷宮の中には休眠状態の迷宮や、完全に機能停止した核が残る迷宮もあるとのこと。迷宮は器物のように見えて魔物だ。魔物であるからには魔素を外気や土地から得る。それ以外にも引き込んだ生き物から奪取する。迷宮はその中でもかなり特殊な立ち位置で、今の私が一番気になる研究対象なのよね。

 この迷宮の魔物は鉱物系ね。メタルスライムが居るわ。基本的にスライムは食性が分かれていて、危険か安全かがすぐに判断できる。メタルスライムは安全なスライムの代表格。食性が鉱物だからよ。肉食性や死肉、雑食性が危険。最も危険なのがその最大級の大きさで貪欲な『キンググラトニックスライム』。ここには居ないようね。居るのは……機能停止しているアイアンゴーレム……、ブロンズ、シルバー、ゴールド……ミ、ミスリル…………アダマンタイトもう驚かないわ。オリハルコンゴーレム。


「これは凄いわね」

(そうなんですか? 姉さん)

「えぇ、ここまでの疑似魔物を召喚できる迷宮は稀よ。ここまでの迷宮が死んでいるとは考えにくいわね」

(そうなんすか? なら、俺達ヤバくないっすか? ここ、たくさんありますよ。それ)


 うん。私もうすうす思ってた。……けどもう遅い。私も久しぶりにリミッターを外して本気モードで蛟を振るう。このクロが作ってくれた長杖、『蛟』。蛟は長さ2m50㎝の長大な魔法杖。ミスリルという魔法媒体としては最高質の物を惜しげもなく使い、私の魔素流紋を解析してもらってオーダーメイドしたものだからね。この杖は私の体のように動く。そして、私の体のように動くという事は、体外に魔素を放出する必要がないという事。もっと言えば、この形態でなら私の膨大過ぎる魔素を解き放って戦えるのよっ!! 大暴れできるっ!!

 私のローブの中にタケミカヅチを押し込み、360°全方位から攻撃をしてきたゴーレムの攻撃を飛びあがって回避。私は天上に水を付着させてそこに足を付ける。こうすることで天井に張り付ける。けど……、あ゛~っ!! 鬱陶しい!! オリハルコンゴーレムが目からビームを放って来る。寸出のところで回避し、私は蛟に纏わせる水を両刃斧の刃のように造形し直す。それだけでミスリルゴーレム以下の耐久力のゴーレムは切り裂かれる。

 これが水の特性。流れる水は石や鉱石すら削り取る。どんなに硬い鉱石の鎧を用意しようとも、私に断てない物はない。……形の無い物は無理ね。

 しかし、やはりミスリルゴーレムが厄介。ミスリルは魔法流動体であるだけあって私の魔法も流されてしまう。刃が通らない。オリハルコンも同様。というか、確かオリハルコンって比率は知らないけど、ミスリルとアダマンタイトを何かの触媒で合金した金属のはず。それなら魔法は効果がない。どうした物か。……と考えていると、タケミカヅチが飛び出す。


(姉さんばっか楽しい思いはズルいぜ!!)


 タケミカヅチの高電圧ブレスがミスリルゴーレムを貫通した。……どういうこと?

 考えるより私は鬱陶しいゴーレムをかたっぱしから叩き割り、上階へ迎える階段への道を作る。もう100体ぐらいぶっ壊したはずなのに、どういう事よ……。タケミカヅチも雷ブレスを放ち、私を背に隠しながら後退していく。そのままタケミカヅチごと通路にはいり、動きの遅いゴーレムに追いつかれないよう走る。タケミカヅチ速いわね……。私は蛇化してタケミカヅチにしがみつき、私達は再び迷宮の入口から出た。

 まったく、とんだ腹黒迷宮もあったものよ。

 どうせ今回の私達の任務はファンテール王国からの侵攻軍と、ラザーク王国前の湿原奥に構える防衛軍の動向調査。何か変化があればセリアナに連絡する手筈になっている。セリアナとエリアナ間では念話ができるとかで、セリアナに伝われば迷宮外に居なければエリアナにも伝わるらしい。

 この迷宮と私では相性が悪過ぎる。魔道士殺しと言われるミスリル武器だけでは飽き足らず、オリハルコンなんて伝説級の金属まであるのよ? 確かに近接戦闘が苦手ではないけれど、あくまで私は魔道士よ。魔法を奪われたら力が半減したも同じ事。クロが来るまでは大人しくタケミカヅチとキャンプしながら、下で大戦争を始めそうな両陣営を観察しましょうか。


(にしても、めんどくさい迷宮でしたね)

「ね〜……。さすがに私達だけだと物理的に厳しいわ。ただ、レベリングにはもってこいかもしれないけれど」

(そうなんですか?)

「やり方次第な所はあるのだけどね? 特に貴方は簡単にレベリングできるわ。あのミスリルゴーレムを貫通した技があればね」

(アレは単に魔法っす。姉さんがぶっ壊したゴーレムの破片を雷纏わせたら飛んだんで、吹っ飛ばしたんすよ)

「……そうか、…………そんな抜け穴があったのね? タケミカヅチ、夜になったらレベリングするわよ!!」

「いえす、まむ!!」


~=~


・記録

ツェーヴェ

メス 1000歳超え

主人 エリアナ・ファンテール

取得称号

ミズチ    ・お嬢様の恋敵

・魔の森の主    ・森の大魔導師

・齢千を生きる者  ・森の救済者

・世話好きお姉さん ・迷宮の教師 

・お嬢様の従魔   ・人魔の堺の超越者

人間形態……身長160㎝ 

藍蛇……全長5m 

蛟……全長100m

モンストルスネーク族 #位階進化→蛟 モデル=テキサスインディゴスネーク

武器 長杖『蛟』……2m50㎝の大型魔法杖

取得スキル

+水大精霊の加護 +杖術

+水魔法(特級)  +斧術

+時空魔法(中級) +鉄砲水(フラッド・ブレス)(固有スキル)

NEW +舞踏魔法術 +研究


 ~=~


タケミカヅチ

オス 生後20日程~25日

主人 エリアナ・ファンテール

取得称号

・お嬢様の従魔 ・お嬢様の息子 ・迷宮出身者 ・クロの息子 ・轟雷の翼 ・嵐渦の翼

NEW ・飛翔の魂 ・おっちょこちょい

サルバトールキメラ族 モデル=サルバトールモニター

全長70㎝……翼幅1.5m

取得スキル

+風魔法(上級) +雷魔法(上級) +騎乗飛行 +遠視 +隠密 +立体起動 +雷撃砲ライトニング・スプレッド(固有) +嵐砲ブラストキャノン(固有)

NEW +螺旋穿(有翼種固有) +覇天(有翼種固有)


 ~=~


・攻略中分隊

〇センテン高地

 →隊長ツェーヴェ +タケミカヅチ

〇虹色湖畔・ゼバーニアン大湿原

 →隊長エリアナ +クロ +スルト +ゲンブ

  ●虹色湖畔水源迷宮 clear!!

   →隊長クロ +スルト

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