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駐屯地の設営

 う~い。今日も元気だ。クロですよ~。

 『グマンナ首長連邦』の瓦解は僕の方策で遅滞。敵に勘付かれないように防疫結界をあちこちに張り巡らせてあるので、思ったほど効果が出ないのだ。『グマンナ首長連邦』は土地に清浄な魔素が満ちていた土地で、大昔は人が住みよい場所だったのだろう。だが、現在の状況は芳しくなく、グマンナの民も人であるので、不安に感じたり生存するためになりふり構わない者は出る。結果、『サーガ王国』方面に亡命を試みる集団が出たり、元『アルジャレド通商連合国』方面に逃げ出る者が散見し始めた。

 自然信仰の深いグマンナの民が外を目指すとなると、そこそこ逼迫の度合いは上がっているのだろう。しかし、自然信仰と土着の土地神崇拝が根深いが故に、古来より地位を持って来た首長一派は根が生えたように動かないだろう。……と思っていた。

 そんなことはなかった。その辺りをグマンナの民で現在をスパレンティナ氏族の氏族長のアザガに聞いてみた。自然信仰も崇拝も首長一派の考え方で異なるので、全てがそうではないという。ただ、多くの民を支える首長一派であるので簡単に土地を捨てることはないはず。その中でも頭の柔軟な者が『サーガ王国』伝手にアザガにコンタクトを取って来たのだ。


「ひ、久しぶりだな。アザガ……というか、本当にアザガなのかい?」

「まあな。いろいろあったんだ。それで、お前はどうしたんだギュベウ」

「簡単なことだ。民を飢えさせる訳にはいかん。君が隣国で健在と聞いた。君の旗下に入れば民を飢えさせることはない。私は土地を捨て、新たな居地を求めたのだよ」

「ふむ。俺は構わないが、我らが主に目通りと手続きなどがいろいろあるぞ? 俺も一つの氏族を預かる長に過ぎない。結果がどうなるかはそれ次第と理解してくれないか?」

「解っている。元からそのつもりだ」


 アザガの言う通り全ての首長家系の当主が頭の固い精霊信仰や自然信仰、英霊信仰に染まっている訳ではないのだな。今回来たのは3つの大族を代表し、その中で一番大きなアイガレスバ氏族の若族長ギュベウという男。彼はアザガの幼馴染だ。アザガと比べると小柄で身長は170㎝程。普通の人間種と考えれば普通に高身長な方だが、アザガがデカいからね。ゴツさ加減からも子供と大人が会話しているように感じてしまうが、実はアザガよりも年上らしい。

 ギュベウの氏族、アイガレスバ氏族は最近に首長が代替わりした。病没した首長に代わりギュベウが首長になった段階でギュベウは周辺の情報収集と、これまで適当というか首長しか触れなかった様々な収支や土地の情報を確認。絶望したという。このままではアイガレスバ氏族とそれに使えている2氏族を植えさせ餓死者が多く出る。彼は岐路に立たされた。いきなりのことで混乱のさなかだったギュベウだったが、ギュベウは施政者としてはとても有能だったようで、強行軍となることは織り込み済みながらも確実性を残して旅への準備に踏み切った。まだ旅を行い隣国にたどり着くだけの食料はある。あくまで移出に同意した者だけを引き連れて行くというスタンスで緊急の連絡を回し、頑なな老人世代が残る判断をしたが背に腹は代えられない。族滅するか、転居してでも生き永らえるか。ギュベウは家族を死なせたくなかった。

 腹の足しにもならない信仰や土地にしがみつくよりも、たとえ大きな賭けになろうとも生き永らえる方策へ舵切りしたのだ。結果的に『サーガ王国』とアポロンが管理している『アルジャレド難民』が再興させている港湾の街にたどり着いた。そこからアザガの名を出し、取次を願った結果……、悪魔族からの侵攻に対する出撃準備で『空飛ぶクロの島』に搭乗し、近くに居たアザガに連絡が飛んだという訳だ。


「それにしてもかなりの数になったな」

「以外にも転出する方に好意的な者が多くてね。父の代の老体は皆残ったが、若い世代は皆ついて来たよ。世代の違いで考え方の乖離が進んでいたのは、君の所だけじゃなかったってことさ。あの時の僕にはその勇気はなかったけど、……今の僕は首長だから」

「そうか。ギュベウも変わったな。それより、ギュグゾクフが負けたんだって?」

「いや、正確には圧倒的な数の不利を感じて狭所での奇襲に切り替えたんだよ。押し込まれたことは事実だけど、負けというには被害も少ないようだったし相手の士気の低さもあってそんなに苦労はしている印象はなかったよ」


 アザガの出身部族、ギュグゾクフ士族は戦士の家系で様々な局面を戦えるように男子も女子も関係なく幼い頃から戦闘の技術を叩きこまれる。そういった一族であるので戦場での判断も鋭い。軍団での戦闘を基本にする『バール魔王国』の軍人とは異なり、個人戦闘を主軸にしているギュグゾクフ士族の戦士は今も一進一退の戦いをしているだろう。……とギュベウが分析した。

 途中から僕も会話に加わりスキルなどを駆使して思想調査もかねた世間話をしていく。

 アザガには先に言い含めてあるが、僕が『エリアナ女王国』の代表の一人であることは伏せてある。これも思想調査の一環だ。その中でアザガとギュベウの会話から出たのが、ギュベウは念話魔法のような物を使える一族の出……というか今は長で、老人達が残ったのは今も戦線を支える士族の若者を生かすため、むしろ老人達はギュベウの判断を推し、動けるうちに動かすように取り計らってくれたのだと内情を明かす。いろいろな事情があることは分かった。他のインディゴ氏族の皆や淫魔族の皆からも大枠の思想調査が終了し、特に問題ない事が僕の所に報告された。……その前にもう僕が『殲滅の大魔人』だとバレていたようだけど。

 ギュベウは頭脳派の人物で、殴る蹴るなどの実力行使となればアザガに勝つことはできないが、口喧嘩なら負けはない程度に頭が働く。それから僕一人が代表でない事も彼は理解している。彼も首長連邦の政治というか、統治の体制を理解しているからね。受け入れる云々はたぶん問題はない。『女王会議』でどう判断されるかはわからないが、移入が認められないことはないと思う。僕の措置で『サーガ王国』の疫病の兆しは急になりを潜めたとも聞いている。やはり動物による間接的な罹患者が多かったんだろう。それに『瘴気』を触媒にした脅威度の低い疫病だったようだからね。これからはヨルムンガンドも気ままな生活に戻れるだろう。


「それじゃ、悪いんだけど吸血鬼の皆は『王祖の迷宮』で『女王会議』への目通りの許可を取るために半分先行して。残りの半分は淫魔族と吸血鬼族の残りで防衛しつつアポロンの縄張りからマンユ、スルトの縄張りを経由して同時に帰還と報告もよろしく。そこからこっちに再配置になるかはエリアナの判断に任せるから」

「御意のままに」

「了解いたしました」


 ギュベウの氏族と残り2氏族を送り、グマンナの地理に一番詳しいアザガに現状の報告をする。属性妖精や精霊が転出していることで自然からの加護が弱まり、病魔への抵抗力が低下し自然環境下での増殖も加速。それで倒れるほど軟な種族ではないが、土地の精霊の加護が以前より弱まってしまっている現状では、食料問題や自然環境の荒廃が進んで行く可能性が非常に高い。

 もう少し感傷的になるかと思いきや、アザガは特にそういう考えはないようで淡々と状況の推移についてを考察してくれる。

 アザガが居た頃の『グマンナ首長連邦』では医療が発達しておらず、それほど長くは持たないだろうとも言う。『エリアナ女王国』に参入してからはとても恵まれていて、以前までの根性論での生活には正直戻りたくないと苦笑いも漏れている。小さい子供もいるアザガとしてはもう以前までの生活には戻りたくないと言うのは本音だろう。ギュベウは『グマンナ首長連邦』の通信を担う一族で優秀な男だった。考えをまとめるのが上手く、状況の推察を取りしっかりと後方支援を回す手堅い軍師肌だった。その男を欠いた場合いくら個人主義の戦闘スタイルのグマンナの戦士とは言えども、どこかで兵站がまとまらなくなり瓦解するだろう。そういう縁の下の力持ちがあそこは少ないとのこと。

 そうなると本格的にやるかな。僕は懐のがま口財布のような物から迷宮核を取り出す。アザガがめっちゃ驚いてた。そりゃビビると思う。普通に考えて体積おかしいからね。

 その迷宮核で僕は簡単な城塞を作る。『グマンナ首長連邦』と元『アルジャレド通商連合国』のアルジャレド側にだ。そこにアザガ含めたスパレンティナ氏族と希望者の長期駐屯任務を与えると宣言し、詰めてもらう事にした。僕もいろいろしなくちゃいけないので、ここにかかりきりという訳にはいかない。僕のすること? それは簡単さ。まずは『バール魔王国』が何を求めており、何が最終的な目的なのかという事だ。つまり、調査である。


「国王陛下が御身自らいかれるのですか?」

「僕は魔人戦力が居なくなった時のことを考え、防衛戦争を魔人なしに行えるようにと考えてるよ。でも、他のメンバーでもできる事ならば僕がやっても何ら問題ない。それに今回の『バール魔王国』はどうも様子がおかしい。兵士の士気が明らかに低いことまで解らない訳ないだろう? なのになぜ戦争を続けるのか。そこが大いに疑問なんだ」

「確かにそうではありますが……」

「ははは。心配してくれるのは有難いけど、僕にも譲れないことは時折あるからね。僕は僕で追い求めている物があるのさ」

「は、はあ……」

「不思議に思ったことはない? 僕がこの世界で飛びぬけておかしいこととか。僕はその理由を知りたい。知ってその先どうのこうのとすることはないけど、僕は知りたいんだ。自分のことを知らないのは気持ち悪いだろ?」


 ここまで言うと、アザガや志願者の駐屯兵の皆が整列し、轟音になる程の揃った送り出しの言葉を叫ぶ。ははは……うん。大げさだけど、心配してくれているんだ。僕も安全に物事を解決しよう。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(225日~230日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~


取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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