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閑話休題5『従者夫妻の心中』

 某はヨハネス・カーナム。我が主、セリアナ様のお部屋に異変を感じ、馳せ参じた次第。しかし、そこには昔の晴れやかな笑顔を取り戻したセリアナ様のお姿があった。直後、某の妻、ハーマもセリアナ様の居室に様子を見に現れた。いつも仏頂面の妻が泣き崩れ、楽しそうに黒い蜥蜴と筆談するセリアナ様の笑顔に、喜びから嗚咽を漏らしている。

 その空気をぶっ壊したのも我らが主、セリアナ様。元第三王女であり、現公爵夫人ながらお転婆さが抜けない28のお嬢様です。

 某もセリアナ様が幼き日は何度このお方に振り回されたことか。何度となくお部屋を脱走し、好き嫌いも激しく、お薬は吐き戻し……。某や妻はこの方に振り回される毎日が、とても楽しかった。先日、この辺境の城にセリアナ様のお嬢様であるエリアナ様がおいでになるというので心待ちにしていたのですが……、そのエリアナ様が野盗に襲撃され行方不明。もはやなくなっていてもおかしくないと、我が主は塞ぎ込んでいた。しかし、黒い蜥蜴が持ってきた国宝級の魔道具には、しっかりとご健在のエリアナ様のお姿が映っていた。某も、涙を流しながら喜ぶセリアナ様と共に喜びを噛み締めている。


 ~=~


 私はハーマ、ハーマ・カーナムと言う。私は元近衛兵のメイド。基本的な雑務はなんでもできる。そうやって娘子をなくした主を慰めることしかできない自分が……情けない。

 しかし、どんでん返しが待っていた。いつも窓際に座り、ぼ~っと空を眺めている失意の主。その主が急に立ち上がり、最近見ない軽快な歩みで中に向かった。私は気になり、セリアナ様の居室へ走る。何かあったのだ。そこには既に夫のヨハネスが居て、目に涙を溜めている。何事だろう? と中を見やると……机にかじりつき、笑顔で小さな蜥蜴と筆談する主人の姿を目にした。夫も私も、幼き日のお転婆なセリアナ様を思い出し、涙を流していたが。セリアナ様は私達へとんでもないことを言い出した。


「二人とも何をしているの?! 早く立って準備なさい!! 亡命するわよ!! はやく(エリアナ)のところへ行くのっ!!」


 私と夫は顔を見合わせ、ついにおかしくなってしまったのか? といぶかしんだ。

 しかし、机の上で墨棒をいそいそと走らせる小さな生物は木の板を立てる。なになに? 


『エリアナ様はご存命です。僕がご案内いたしますので、脱出にご協力ください』


 私は再び夫と顔を見合わせました。すると、黒い蜥蜴は国宝級の魔道具を操作し、エリアナ様のお姿を投影した。間違いない。録画された時の魔力がそれほど古くないしな。信じてみよう。夫と共に涙を流し、主人の娘子の存命を噛み締めながら、私と夫は自室から少ない荷物を引っ掴んで脱出計画を見せてもらう。……この蜥蜴、いや、この生物は何だ? こんな本格的な作戦はいっぱしの軍人でもそうそう考え付く作戦ではないぞ?


 ~=~


 脱出できてしまった。怖い程簡単に……。

 某と妻は我々を先導してくれた黒い蜥蜴について行った。時々、反対側の城壁で爆発音が聞こえる。この蜥蜴には協力者でもいるのか? しかし、それにしては蜥蜴が指示するタイミングと爆発のタイミングが合致し過ぎていた。……まさか、この蜥蜴がやっている?

 蜥蜴は城から脱出すると、カレッサ魔道具店への道を示した。中に入ると陰険そうな老婆が1人。変わらないな。我々は一応面識があるため入れてもらえたが、本来ここは紹介制の魔道具店だ。それだけ高価な魔道具を扱っているということもあるが、カレッサ師が人嫌いというのも大いに関わっている。しかし、そのカレッサ師が蜥蜴に強い興味を示している。本当にこの蜥蜴は何者なのだろうか? ただならぬ存在であることは確かだ。そもそも二足歩行する蜥蜴など聞いたことがない。

 ま、魔物……この蜥蜴はあの『魔の森』から来た魔物だという。驚きはしたが、この蜥蜴の行動を見ていればそれほど強くは驚かない。もう、大抵のことは驚かないと思う。


 ~=~


 夫と私は狐のお宿と言う獣人のご婦人が経営する宿に宿泊している主の警護についている。娘子のエリアナ様と楽しくお話をした後は揃って同じベッドでお休みになられていた。……セリアナ様の方が身長こそ大きいものの、セリアナ様はもうすぐ30の大台に登ろうかという年齢の母親には見えない。それほどに童顔です。……ご本人の前で口にすると見栄のためにお召しになっている15㎝のピンヒールで足の甲を攻撃されます。お気をつけください。セリアナ様は大絶壁のスルン、ストン、スルン……の幼児体系ですからね。どう見ても姉妹にしか見えないです。

 ……階段からこの部屋に向けて足音が聞こえてきます。

 2人? 片方がツェーヴェ様です。もう片方は……カレッサ師? なんとカレッサ師も亡命することになり、この部屋で匿うらしいです。ガハルト公爵家の長男、ケンベルクから暗殺者を差し向けられた? 何という事だ……。あのクズはここまでの能無しだったとは。

 襲われたカレッサ師はあの黒蜥蜴、……クロさんに救出されたそうです。私はツェーヴェ様が指さす窓から注意深く外を見ました……。暗部と暗殺者です。その暗部、暗殺者、一部の冒険者から雇われた斥候が頭を撃ち抜かれ、次々に動かなくなっていく。ツェーヴェ様曰く、クロさんは凄まじい狩人だそうです。……彼だけは敵にしてはいけませんね。闇の中より何の兆候もなく殺される。……なんて恐ろしい。


 ~=~


 某と妻は主と共に『魔の森』へ連れ込まれた。亡命先は魔の森の奥地。その中に奥深い穴蔵があり、その奥には大扉がある。迷宮の扉……。

 それを開いたのはツェーヴェ様でもなく、クロさんでもなく、エリアナお嬢様です。エリアナお嬢様は何事もなく扉を開錠し、何事もなく押し開いて某や妻、お母上、カレッサ師を引き入れようとしましたが……。セリアナ様は少々心労が重なってしまい、気を失われてしまいました。

 セリアナ様は低身長を気にされていて、見栄を張るためにかなり高いピンヒールをお召しになっている。それをツェーヴェ様が目にして苦笑いしています。ツェーヴェ様は魔人とのことで、その外観は妖艶な美で包まれている。恐ろしくもあるが艶に満ちているのだ。それをセリアナ様が怨嗟のこもった視線で見ていたことに、この方は気づいていたようだ。妻がさりげなくフォローしている。うん。このお転婆な主はそろそろ大人にならないものだろうか?

 ツェーヴェ様は我々を案内し、エリアナ様が整備なされたという堅固な城塞の各所を案内してくれる。物凄い数のリビングアーマーに敬礼され、各師団の長だろうデュラハンが剣をアーチ状にかざし、物々しい歓迎を受ける。……そうだな。さすがセリアナ様の娘子。やることがぶっ飛んでいる。


 ~=~


 私はセリアナ様や私共に用意された豪華な居室に荷物を置いて、私は厨房へ、夫は武器工房へ向かいました。……あちこちに小さなくぼみや意味の解らない段差があるのですがこれは?

 あぁ、そこにクロさんが梯子状の窪みを掴みながら上がってきました。なるほど、ツェーヴェ様はお料理はされないようです。あの体格ですからクロさんもそれほどと……舐めていたら、あらまぁお上手。美しい手つきで料理をこなし、ちょこちょことあちこちを動き回って手際よく手早くタスクを片付けていく。一メイドとしてメラメラと対抗心が燃え上がります。私は盛り付けを行い、配膳を行う。……厨房の入口では我が主親子が調理中のクロさんを見つめていました……。いつになったら大人になるのやら。ツェーヴェ様には『これからもお子様であろう』と少々誇張して伝えましたが、これは本格的に教育し直さねばいけません。お転婆なまま大人になってしまったのは、教育係でもあった私の不始末。さぁ、覚悟なさいませ。『お・じょ・う・さ・ま・が・たっ!!』


 ~=~


ヨハネス・カーナム

男性 58歳

主人 セリアナ・ファンテール

取得称号

・元竜騎士 ・元近衛教導官 ・龍の声を聴ける者 ・一心同体 ・亡命者

人族

身長185㎝

取得スキル

+竜騎 +竜騎槍術 +竜騎剣術 +騎馬槍術 +騎馬 +騎馬剣術 +礼儀作法 +攻城戦 +籠城戦


 ~=~


ハーマ・カーナム

女性 50歳

主人 セリアナ・ファンテール

取得称号

・元近衛騎士 ・戦闘メイド ・元史上最強の剣士 ・元剣聖 ・亡命者

人族

身長170㎝

取得スキル

+剣術 +盾術 +社交 +礼儀作法 +聖剣技 +風魔法(中級) +護身柔術 +護身暗器術


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