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クロはお休み。今日はスルトの日

 う~い。スルトだぞ。

 これから数日間はパパはお休み。最近のパパはちょっと尋常じゃないスケジュールをこなして休みなしだったという事が判明したんだぞ。スルや他の兄弟姉妹には休めと事ある毎に言うくせにパパ自身が働きすぎなことは見逃せない。という事で、パパはママ達監視のもとで趣味の工作を日がなしてもらい、スル達で兄弟姉妹の親睦会をする期間をもらった。外に縄張りを拡げるのもいいけど、内側をおろそかにするのはよろしくない。最近生まれた子だけではなく、ユミルに至ってはその組成のせいで氷室から出られなくて、スルの縄張りだけじゃなくて他の兄弟の縄張りも見てない。だから、今日から数日間はパパにはお休みしてもらって、そこの管理者全員で見せ合いっこする日取りを取るのだ。

 その最初は何でかスルの『豊穣の迷宮』と『豊穣大農園』だ。

 最初は『エルフ王国』に嫌気がさし、外に出たエルフ族を受け入れるための暫定自治区だったけれど、今ではそれこそいろいろな人種が入り乱れる広大な農園地帯になっている。あんまり詳しく説明されることはなかったけれど、スルが開拓を始めてから現在に至るまでで、フォレストリーグに隣接するところまで農園は拡大した。それに見合うように集落もエルフ族だけでなく、様々な種族毎に作るように推奨して作らせている。それだけだと他種族婚夫婦のためにならないから、種族混合の部落ももちろんある。


「すっげ~……。さすがスル姉や」

「違うぞ。これはスルが企画はしたけど、拡げたのはここに暮らす住民。スルはその手伝いをしただけ」

「そういう風に言えるからスルト姉ちゃんは尊敬されてるんだぜ。皆そういう所は真似してこうな」


 スルよりも仕切りやとしての才能はタケミカヅチの方がある。タケミカヅチはスルの次の子。今では人化してないと生活しにくいくらいのサイズだな。全長が50mを超え、体長も20m。翼を広げると80mくらいになるって居るから凄いよね。

 そのタケミカヅチの背中に乗せてもらって、スルが管轄している大農園を上から見ている。端はアポロンの縄張り付近からもちろんスルの『豊穣の丘』方面まで拡がり、『ハープランド分領』のおおよそ半分が広大な農園地帯になっているのだ。スルの権能のせいか、土地が肥沃でちゃんとタイミングを間違えない事さえ理解していれば、土地の負担も落ち着き農耕がしっかりと循環している。こっちでは人がしっかりと根付くことが重要だからまずは売り出すことよりも堅実な生産が目標。目標の数字は既に超えているけれど、『エリアナ女王国』の全てが食料生産をしている訳でもない。そこに回し、別の特産品と好感するっていう循環も重要だ。

 それにまだまだ開発中の下の兄弟姉妹の縄張りにも回してあげなくちゃね。

 アポロンの縄張りの『太陽の大地』の生産品は鉱石と魚、あと鬼ヶ島特産の陶磁器だ。野菜なんかは足りてないし、シェイドの縄張り『鬼の里』と『タクザムルの聖域』も、まだまだ穀倉地帯の開拓を目指している段階。上手い事回すには時間がかかる。コンゴウとハムシーンの縄張りなんか立ち上げたばかりだから支援は必須。必要があるからと拡げるのはいいけど、パパも急ぐからな~。スルも大忙しだぞ。


「『豊穣の迷宮』の内部も大きく変わりましたね」

「うんむ。まずアレが大きく変わった。そのせいか最近よくヨルが来るよね? なんで?」

「お茶のお供にはちみつが欲しいの」

「あ~、魔蜜蜂(マナ・ビー)の魔はちみつが目当てか。ダフネが植えた世界樹に巣を作って、カサブランカ一族の酒造用作物農園から蜜を集めてるからね。魔素も豊富で甘み濃厚、かんきつ系の花からの物はさわやかだし……欲しいなら取引はちゃんとするから」


 ダフネやパパのお嫁さんに立候補した数名の樹龍族以外は、あの世界樹に作った洞の家に住んでる。世界樹も葉や樹液が薬剤の触媒になるし、スルが作った温泉になんでか世界樹の聖氣が流れ込んで回復作用の強い温泉になってるんだよね。世界樹は周囲の土壌環境は樹龍が管理しているから悪化はあり得ないし、常時豊作。それどころか迷宮の外の自然サイクルをぶっ壊す速さで作物が成長するから、ちょっと困ってる。そういうデキの良すぎる作物はお金持ちの龍族にお買い上げいただいているけど、殆どがカサブランカのお酒用に使われるからね。まぁ、バランスはとれているのかな?

 あと、食べ物ばかりピックアップされるけど、アルセオヴィチという真祖吸血鬼の一族が贈答用の花を生産することも進言してくれているから、実験的にそれも行ってる。まだ食うに困るところが多いからそれなりの販売だけど、売り上げが悪い訳じゃない。スルも綺麗な花は好きだから。花畑を作ってお気に入りのお昼寝スポットも華やか。

 おひるごはんを『豊穣食堂』という大衆食堂で食べる。ここはアルセオヴィチの一族がメインで働く食堂で午前9時から夜の10時までは食堂兼喫茶。夜の10時以降は完全な酒場になる。なんでかというと、ここはお酒を飲む人の人口が多いから、酒場があちこちで満員になってしまうから。カサブランカの一族が嬉々として経営しているからそれ程問題ない。スルも桃の漬け置き酒が好き。桃美味しい。


「そういえばゲンブは何モデルの魔人なんだ?」

「……私は魔人モデルの魔人のようです」

「まんまなんだな」

「そうです。まんまなんです」


 スルだけではなく、他の兄弟姉妹も眷属にできる種族傾向で魔人の人化した時の姿が変化する。これがモデル依存の影響だろうと学者気質の妹、ヨルが言っていた。実験的にゴードンとかのドワーフを眷属化したら……ちょっとむさくるしくなりすぎて後悔したけど。金属製品の品質が向上したからそこは我慢した。

 今更だけど、スルの兄弟姉妹もかなり増えた。最初はパパの子はスルだけで、次に大きい弟のタケミカヅチ、三番目に妹のゲンブと生まれて、ジオゼルグ、ヨルムンガンド、ユミル、イオ、アポロン、シェイド、コンゴウ、ハムシーン、アフラ、マンユ、ケイオス、クロノーサ、ポセイドン、ネプチューン。15以上の眷属を持つパパはかなり特殊な親だと思う。龍族の一族を掲げる親でもこれ程の高スパンで眷属を生み出すことは難しい。それに魔人とはいえ、スルや他の兄弟も力が度を越してきているからな。スルは最近戦ってない。たぶん、スルが戦うと周辺被害が大きすぎるから。それにスルはクリエイティブ系魔人なのだ。今では大魔人とか言われてるけど……。

 武器に限らず、いろいろ作るのは楽しい。今では薬品関連はヨルに譲ってるけど、それでもスルの作る製品はプレミアがつくらしいよ。稼ぐ事よりもスルの場合は作ることが重要。パパが面白い材料を掘り当てた時なんて心躍ったし、新しい眷属のトリブロノータス族の皆が坑道に住んでからなんてたくさん出て来る。パパが有用と感じたり、危険と感じるような物も多いから最近も楽しい。ワクワクがたくさん。

 新しい移民の皆もいろいろやってる。龍族の宝飾班の売り上げも物凄い。最近じゃわざと低いランク帯の宝飾品を売り出さないと高価すぎて一般の人が買えないなんて言う事態にもなってるし。


「へ~、ここで武器が作られるんだ~」

「うんむ。ポスやネプの武器も欲しいならこさえてやろう。この姉に任せるがいいぞ」

「「ホントッ?!」」

「あぁ、スル姉ちゃんの作る武器は特級品だからな。訓練時は使わない方がいいぞ。周りの被害が尋常じゃないから」

「そんなに凄いんだ……」

「お兄ちゃんやお姉ちゃんたちも皆持ってるの?」


 残念ながら全員がスルの作った武器じゃない。半分くらいはパパが作った物だ。というか、武器とも言えない子もいる。僕が作ったのはタケミカヅチ、ゲンブ、ジオゼルグ、イオの武器まで。他の子はスルの作品を他の子に宛がわれてとかもあった。シェイドに至っては自分からパーツの製造を依頼して来て自分でカスタマイズしてるし。そういう意味じゃスル達兄弟姉妹は皆自由だ。

 それから、一番最近できあがった部署。アグニアスの叔母にあたるヴォルティアーカが和鬼の蓮華と共に勝手に始めた部署だ。確か高精度魔道動力炉の開発をしてるはず。パパが最近奇怪な乗り物を作って遊んでいる。アポロンが鬼ヶ島を手に入れた頃に、面妖な金属船を造船したけどそれの小型版のような物。その中であの2人に受けたのが空飛ぶ乗り物だ。ヴォルティアーカは自分で飛べるのに、わざわざそれを作ることに毎日蓮華と喧嘩しながら議論している。

 その机の上には無理やり連れて来られたらしいトリブロノータス族の機密工房班長が難しい顔をして図面を見ている。たぶん、あの構造だとどこかに負荷がかかって爆発するんだろう。スルも事故死する職人は出したくないので、彼にお菓子の差し入れをして2人をある程度矯正してもらえるように頼んだ。さむずあっぷをもらったので何とかなるだろう。


「とーちゃんの分体。トリブロノータス族の皆は本当に直ぐに馴染んだな」

「タケの所には少ないんでしょ? スルの所も少ない。一番多いのはゲンブのとこだと思う。覚悟した方がいいぞ」

「お、お父さんがたくさん」

「違いますよ。アレはお父様の眷属、トリブロノータス族の皆さんです。見た目は同じですが、氣を見れば違いが分かります。徐々に慣れましょう」


 ゲンブ……いつ化けの皮がはがれるか……。僕の『豊穣の迷宮』でコンゴウの杖とハムシーンの武器、ポスの三又鉾とネプのブロードソードの相談を受けて、今日は『秘境スルト温泉』に宿泊。明日は眷属ではないけど、奥さんだから繋がりのあるヴュッカの所、『水源の迷宮』に行く予定。海底の勢力の関係からポスとネプにはヴュッカは大先輩だ。あののほほん蛇から学べるかは微妙だけど、ヴュッカもヴュッカでいろいろ考えてる……はず。行くことは前もって説明してあるし。さて、スルも今日はゆっくりしよ。パパも休めているはずだし。スルもたまにはまったりしよう。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(210日~215日)

伴侶 エリアナ・ファンテー

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~


取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

スルト

メス 生後160日~165日

伴侶 ???(卵)

身長120㎝

全長15㎝……身長11㎝

 クロの最初の眷属。生まれた当初は天真爛漫で何事にも興味津々なところが強かったが、現在では大魔神と呼ばれる強大な力を持つ存在に急成長している。親方気質で現場管理を主軸に、自身の縄張りの管理と周囲への出荷に精力的。縄張りに別荘を持つ古龍族一族から婿をもらう事もあり、管理業務だけに留まらず、周囲との調和も考えられるようになるなど、とてもしっかりとしてきた。


 ~=~

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