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閑話休題4『私、これでも母親なんですよ』

 はじめまして、私はセリアナ。セリアナ・ファンテールと申します。私はとある理由から公都の本邸から離され、辺境の別邸に幽閉されていたのですが……。先日、心待ちにしていた娘が野盗に襲撃されたと聞き、絶望に暮れていました。

 ですが、私は奇跡により幸いの娘と再会を果たしました。

 私を助け出してくれたのは小さな妖精さん。真っ黒く愛らしい妖精さんでした。

 その妖精さんはとても不思議な雰囲気をしています。私を城から連れ出し、あの気難しい事で有名なカレッサ師の魔道具店へ迷わず案内したのです。私や護衛のヨハネス、メイドのハーマは面識があるので問題無いのですが、初対面からあの方に興味を持たせるとは凄いです。さすが私の救世主ですね。……え? こんなに可愛らしいのに、この方は魔物なのですか? 見た目によらないものですね。

 可愛らしい私の救世主は魔道具に興味があるようです。カレッサ師の誘いは断ったようですが、この子もその関係の職人なのでしょうか? こんなに小さいのに凄いです。


「エリ? エリッ!!」

「お母様っ!!」


 ああ、私の可愛いムスメ、エリアナ……。生きててくれた。こんなに嬉しい事はないわ。死んだと言われた私の娘。ああ、……よかった。私のエリ。よかった。本当によかった。

 ……。え? カレッサ師はエルフ? 本当に?

 それすら看破した彼はいったい何者なのでしょうか? エリアナも可愛がっているところを見るに、エリアナを助けてくれたのもこの妖精さんなのでしょうけど。……それと、先程からいらっしゃるこの御仁もあの妖精さんの関係者でしょうか? ……うっ、恨めしい。

 メリハリ効いたお胸に腰つき……お尻、女性としては憧れます。私は……未だに10代と間違われる童顔に、発育の薄い幼児体系なので。凄く羨ましいっ!! 自己紹介をいただいたこのツェーヴェさんは魔人だそうです。もう御伽噺の大盤振る舞いですね。妖精さんの次は魔人さんです。どうりで美しい訳ですね。魔人はエルフ種と並び立つ美男美女の種族と伝承があります。ツェーヴェさんは社交界に出れば、怨嗟の視線にさらされること間違いなしの超絶美人ですからね。私も遠慮なく怨嗟の視線を送りますっ!


「今日は狐のお宿に泊まって、明日ここを脱出します。それまでは私とこのクロで警護しますので」

「ご配慮感謝いたします。よろしくお願いいたします」

「はい。クロも了解とのことです」


 魔人のツェーヴェさんと妖精のクロさんは会話できるようです。羨ましい。私は彼? 彼女? の声が『クェ』としか聞こえないので……。

 今夜は久しぶりの我が娘と語らいます。護衛にヨハネスもいますから夜も安心してベッドに入れますね。あの城では針の筵で、ハーマとヨハネス以外は信用できませんでしたから……。あそこでの生活は疲れました。それにこれからはエリアナと一緒です。私の宝物。

 ……エリアナ、さすがに異種族での婚姻はハードルが高すぎるのでは? え? クロさんはツェーヴェさん以上の存在? 必ず魔人化するので問題ない? ちょっと娘が夢見がちに育ちすぎている気もしますが、……まぁ問題ないです。大人になるうちにその辺りは解ることですから。


 ~=~


 おはようございます。…………亡命者がお一人増えてませんか? カレッサ師が亡命者グループに加わり、狐のお宿を出ました。そこからは不思議なことの連続です。裏路地でツェーヴェさんが認識疎外の魔法をかけて下さったらしく、周りの人々に見られても気づかれません。凄い魔法があったものですね。

 そして、いざフォレストリーグから脱出するのですけど、……え? 地面を掘る? 今からですか? ……あら、こちらも可愛らしい。エリアナのローブがモゾモゾ動いたかと思いきや、胸ポケットから小さな蜥蜴さんが顔を出しました。可愛い。可愛いのですけど。蜥蜴さんが一鳴きしたかと思えば、地面に下り階段が現れ、地下通路が一瞬でできました。……この子も魔物なんですね。ちょっと御伽噺の大安売りで疲れてきましたね。私の娘、エリアナが少し羨ましい。こんなに胆の太い子だったかしら? 

 エリアナやクロさん、ツェーヴェさんに先導されて、向かう先は……『魔の森』?


 ~=~


 魔の森に入りました。生きた心地がしません。ヨハネスやハーマですら緊張から武器に手をかけて私のそばから離れません。……というか、ツェーヴェさんは誰も護衛に付けずズンズン進んで行く。それに森に入ってからクロさんが見えません。ツェーヴェさんのお話では、クロさんは探索や狩りが得意なお方で、先行して露払いしてくれているみたいです。

 それにエリアナの胸ポケットに居るスルトちゃんも、可愛い顔して攻撃力だけならばこのメンバーで随一らしいですよ。心強いです……。本当に。

 そして大きな口を開いた洞窟へ到着。その入口前にクロさんが居ます。右手を挙げて……きゃわぃぃぃぃぃッ!!!! こほん……。ツェーヴェさんに案内され、洞窟の奥で扉の前に立たされました。……謎の行動ですが、クロさんとツェーヴェさんの間では解りあったようです。ぐぬぬ。私もあんな風にクロちゃんと……。

 なんて思ったら、私の隣にエリアナが立ち、魔法陣に包まれました。な、何が起こっているのっ?! エリアナが何事もなかったかのように前進し、扉を押し開けます。あっれ? 解ってないの私だけ? 良かった。ヨハネスとハーマも置いていかれてるわ。カレッサ師は何か知っているのでしょうか?


 ~=~


 私の可愛い娘が迷宮の主になっていました。娘まで御伽噺の住民になっていました。ちょっとショックです。いいえ、凄く驚きました。小一時間程気絶していたらしいです。

 凄く快適ですね。この迷宮。

 いつの間にか私も迷宮の住民になってました。どうも、エリアナが王祖の血を濃く出したというのは本当だったようです。そう、これが私がこの子と引きはがされた一番根深い理由。暗殺こそされませんでしたが、私は夫ともめにもめて幽閉されてしまいました。自分の娘を殺戮兵器として育てるなどと認められません。私は……娘にはただただ幸せであってほしいのです。それが私の想像の遥か彼方だったとしても、私の娘が幸せならば私も幸せなんですよ。

 それにここはとても面白い物がたくさんあります。あのカレッサ師が唸るような魔道具の数々。それに合わせて配置されている小さな梯子や渡り台、魔道具を改造したらしい作業場……。そこをちょこちょこと動き回るクロちゃん……、きゃ、きゃわいぃぃぃぃぃぃっ!!!!!


「ねぇ、この人…大丈夫なのよね?」

「はい。通常運転です。セリアナ様は子供がそのままお年を召したようなお方なのです。おそらく、天寿を全うされるまでお子様のままです。姿も、心も……」

「それは別の方向で大丈夫とは言わない気がするのだけど」

「それ以外は優秀なお方です。政治経済……特に法学に関しては専門家よりもお詳しいです」


 え? 私が何歳かですか? ふふふ、今年で28歳ですわよッ♡ 解ってます。見えないですよね? 大丈夫。これでも一児の母です。怒ったりしません。なのでクロちゃん、抱っこさせてくださいませんか?


 ~=~


・記録

セリアナ・ファンテール

女性 28歳

取得称号

・エリアナの母 ・法の番人 ・元第三王女 ・元公爵夫人 ・亡命者 ・クロちゃん大好き ・蛟を羨む者 ・ピンヒールは武器

身長150㎝

人族

取得スキル


+舞踏 +社交 +謀略 +法学 +内政

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