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時を這う蛇

 初めまして、時空龍のピオンです。モブです……。いえ、ちゃんと名前があるだけマシなんでしょうけど、あまりにも目立たないので私のことなんて覚えている人いるのかな~?って時々不安になるんです。それに私の特技である広域の索敵なんて、旦那様の一族の誰かしらがいらっしゃれば事足りてしまいますからね。要らない子とは言われませんが、必ず必要な子とは言われないんです。その私なんですけど、今とても必要とされています。なんでかというと、今回生まれた4体の眷属の内の一体、クロノーサちゃんが覚えたての時空魔法で遊び回ってしまい、どこかに転移魔法でお出かけしてしまう事が多発しているからです。

 クロ様のご一家でも私のように転移魔法の転移先を読むことはできないので、私が先回りして転移し拿捕するんです。まぁ、予想もしやすいので簡単なんですけどね。この子は基本的に『蛇神神殿の迷宮都市』での買い食いをしています。ツケ飲食ですけど。

 店主の皆様もクロ様のお力でこの国が栄えている事を重々承知なので、お店が大赤字になるほど食い漁らなければ笑いながらサービスしてくれるくらいには親切なんですけどね。でも、申し訳ないので私が一度支払います。これが私の仕事と言い含めれば受け取ってくれます。それからこの子に常識を教える教育中であることも、ちゃんと住民の皆さんにお話ししているので。最近では皆さん協力してくれます。

 クロ様の眷属は全員が神出鬼没です。別に意図的に隠れているということはないのでしょうけど、『なんでそこに居るんです?』っていう場所に居たりします。特にトリブロノータス族の子達がそうです。まぁ、彼らはマスコット的な存在ですし、構わないのですけどね。


「クロノーサちゃん。あんまり乱発するなら禁止しますよ!!」

「だって~……お腹減るんだもん」

「解りますよ。時空魔法や光魔法は超燃費悪いですからね。ですからあまり使わないようにすることも覚えなくてはいけません。あと、転移魔法にかなり無駄があるので、帰ってもう一度基礎からやり直しましょう」


 クロノーサちゃんは大食いでグルメな事を除けばかなり真面目でいい子です。特に魔法と私達のような存在が得意とする体術も良く見ている。手足がないのでまだ使えませんが、魔人化も近いでしょうから覚えて置くに越したことはないです。クロノーサちゃんの得意技は未来を見る術や、短時間なら時を渡る事ができる秘術。私や叔母上さま達の様な若輩には難しく、始祖であるティティお祖母様がお使いになる術なのですよ。

 最初、ティティお祖母様のところで荒方の時空魔法を習ったクロノーサちゃんは、数日で実地演習として私やアリアドネの所に預けられました。飲み込みが良いとかそんな話しではなく、クロ一家の特長として凄まじいスキル習得の早さがあり、お祖母様も頭が痛いと言ってました。

 生活教導と一般生活での魔法の効率化が私の担当範囲。アリアドネちゃんが戦闘における教導を行います。正直、魔素と魔力の無駄遣い以外は特に問題もないんですよねー。ご飯第一主義を除けば割と品行方正で、礼儀正しくもあり、暴れたりもしません。なので私の主業務はクロノーサちゃんの買い食いの支払い程度なんですよ。細かく言えば使う魔法ごとにアドバイスもしますけど、さすがはクロ様の眷属。一度指摘するだけで直ぐに改善して発展させる。時折恐ろしいこともしますしね。それはアリアドネちゃんとの戦闘魔法の訓練についている時です。

 時空魔法はけして対人に向けて訓練してはいけません。本当に事故につながった時に取返しのつかない損傷を負う事が確定するからです。それからこれは魔法の全てに言える事なのですけど、その使用者の魔力、または魔素の使用最大量によって威力や規模が大きく変わりますが……。クロ様の眷属は近接戦闘に特化しているらしいタケミカヅチ様やゲンブ様、ジオゼルグ様ですら私達以上の内包魔素量ですからね。自信がなくなるとかそういう次元ではありません。


「う~ん……。正直、もう、教える事ない。時空断裂系もほとんどマスターした。吸収して逆放出もマスターした。時渡りとかの秘術系もほとんどできてる。他に何を教えよう……」

「困っとるようだな……。孫娘よ」


 そこに来たのはガトールお爺様です。ガトールお爺様は外見をおじいちゃん風にしてますが、本当はかなりイケメンの好青年なんですよ。ガトールお爺様はティティお祖母様にゾッコンで、他の女性からのアプローチが鬱陶しいのと、年よりの方が威厳が出て一目置かれやすいのでそういう風に見た目をいじっているんです。それに年寄りだからとなめてかかる阿呆も居るので、メリットは割と多いんだとか。

 そのお爺様の腕にスルスルと登って行ったクロノーサちゃん。クロノーサちゃんはとても人懐こいというか……。お淑やかなのですが強者にも動じません。私達でもお爺様はまだ少し畏怖があるのであのようにスルっと接することはできませんが、度胸というかなんというか……豪胆なところはお父上譲りなんでしょうね。

 というか、お爺様は何でここに居るのでしょう。ここはクロ様のお屋敷の隣にある訓練施設です。ここはクロ様の魔道具があるので、クロ様を攻撃で圧倒できる威力の何等かを放てないと壊せない結界がある。あのスルト様の熱砲(ソーラー・フレア)すら焦げ跡もつかない強度なので、お爺様やお祖母様が暴れても壊れないでしょう。実際にクロノーサちゃんの時空断裂でも切れなかったらしいので、本当に堅牢なようですよ。そのお爺様がクロノーサちゃんに何やら教えている。もしかしてアレを教えているのでしょうか? お爺様しか使えないというかお祖母様でも使えるのでしょうけど、近接戦闘が嫌いなお祖母様は使わないのでしょうけどね。時空魔法は空間と時間を操る魔法です。時間と空間はこの世界を構成するとても重要な要素なので、干渉するための必要魔力や必要魔素は膨大な物となります。なので、普通気軽に使える魔法ではないのですけど、老練の技と経験、何より個体としての相性でお爺様は本当に相性がいいのでしょう。伯母上になるディオお姉様や私、アリアドネちゃんが個々に得意技があり、それ以外をあまり使わないのは消費魔素が多すぎる上に、効果が高くないからです。なら、使える者に任せる方が効率が良い。それを全て解決してしまうクロノーサちゃん。本当に全能の一族なんでしょうね。クロ様の一族は。


「ふむふむ。まっこと不可思議。実に奇怪」

「どういうことですか?」

「うむ。クロノーサ、この童の魔の道は時空を超えし物。黒蜥蜴の主にも見られる超越の姿」

「時空魔法の先という事?」

「しかり……。あ~、ごほんごほんッ……。この口調だと説明しにくい。そうそう。彼、クロ君の使う魔法は『爆破魔法』ではなく『爆裂魔法』だよね? この子の魔法もそうなんだ」


 お爺様の化けの皮がはがれたと言うか、いつもの擬態を続けていると説明がしにくいのでしょう。そのお爺様の言うところに寄ると、このクロノーサちゃんの魔法は『次元魔法』と言えるだろうとの事。次元……一次元、二次元、三次元、四次元などという点、線、立体、時間経過を意味する区間を現した表現です。クロノーサちゃんの魔法は本当に難しい物で、これをのほほんと使っていることすら恐ろしいという。クロ様が帰還したらばすぐに縄張りを与え、訓練しつつ主にした方がいいだろうとのこと。

 この子の性格だから危険はないが、これまでの眷属の皆さん同様かなり強くてヤバい存在らしい。

 本人はよくわかっていないみたいだけど、凄まじい力をよくわからず使っているというのは確かに危険なことだ。この子がもう少し成長して理解力を付けた頃に、本格的に学術的な知識教導を行うとお爺様は言う。お爺様やお祖母様はこの世界の真理を知っている血筋の1つであるが故に、深遠な考えがあるのだと思う。私にはまだわからない世界だ。

 それから時間になったので、私がクロノーサちゃんを預かり、ジュネさんの所に送る。ジュネさんはクロ様のお屋敷の料理長に就任してから、凄く熱心に料理を研究したり創作している。そのお母様のお仕事の姿を見るのが一番楽しいらしい。蜷局を巻いて、鎌首もたげた小さな白い蛇が頭をフリフリしながらご機嫌にシュルシュル言っている。時たまつまみ食いのようにジュネさんから一口で食べられるサイズのお肉の塊をもらったりしているので、それも目的の1つでしょうか。まぁ、私は見て見ぬふりです。


「クロノーサはどう?」

「えぇ、とても優秀な子ですよ。私達が教えることはもうないです」

「……早くない?」

「はい。私達も困ってます。まぁ、クロ様がお帰りになってから、どこかの縄張りを宛がう方向にシフトしたいと思ってますよ」

「そうね。それがいいわね。魔人化したら、可愛いと思うからちょいちょい遊びに行く」


 ジュネさんも妊娠が発覚してるんですから……。実の子が生まれる前から母性が目覚めていらっしゃる。というか、私達もそろそろ怪しいですけどね~……。確か、炎龍家のアグニアスちゃんと大地守護龍族のラピスラズリちゃんが確定。大古龍の皆さんは全員確認が取れてます。なんせ私達の壁に徹してくれてましたからね。毎晩ありがとうございました。ディオ姉様もですし、ベラドンナさんも。年ごろの皆さんはほとんどです。最近加入されたキアント=ミアさんのお母様らしいキアント=レア様なんて初日で当てたらしいですよ。龍族って本当は妊娠率が低い種族で、繁殖率も低いはずなんですけどね~。

 まぁいいです。ジュネさんがこの様子ならクロノーサちゃんが悪い子になることは無いでしょう。そもそもクロ様がそういう非行に走らせる教育をするとは考えられませんからね。さて、私も配膳を手伝いましょうか。家精霊の皆さんが頑張っているので。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(210日~215日)

伴侶 エリアナ・ファンテー

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~


取得スキル

~取得済み省略~


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