閑話休題53『その後の生命神たち』
やあやあ、僕は生命神だよ。
直接僕が彼についてを話すことは初めてになるのではないだろうか? 僕は半ば彼の産みの親だからね。何せ彼は『半魔神』として生れ落ちたのだから。
彼が生まれるまでならばなんとか修正できたのだけど、彼はそのまま生まれてしまった。『魔人』とは魔物や魔法の神である。この魔人も大昔に思い上がり、創造神に喧嘩を売って滅ぼされており存在しない神だ。その空位なことも関係したのだろう。彼がまず知性ある『魔物』として生まれ、2日から3日で人族のような文明的な生活を求めるような存在になったのもこれが原因だ。
彼は『本能』と称し使っている不完全な彼の記憶が生きているのも『半魔神』として生まれたのが原因。全て僕のミスが原因だ。しかし、彼は僕が考えていた最悪の方向へ舵を切ることはなく、まさか彼と古く関わりのある魂を見に宿した者と再会。本人達は思い出せないだろうけど、僕は運命を感じた。それからも僕は彼を観察し続けた。仕事以外はほとんど彼を観察し続けた。本気を出せば世界のバランスを簡単に壊せる存在が、世界を壊さずに平穏を求めようとしてトラブルを引き起こしている生活を見続けている。僕はとても楽しくなっていた。なので、本当は越権行為だし、勝手にやってたら首が飛んだだろうけど……。父神に許可を求めて僕が彼に限定して一つだけズルをした。
僕が彼に与えたのは、無限の精力。頑張ってこの荒廃し壊れ始めてしまった世界を彼の色で染め直して欲しい。僕は現在位階第一位として、それ以上は彼を観察し続けることにした。他の神にもそれは話してある。彼が僕らがまともに管理できなかった世界を作り変えてくれることを願って。
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僕は半年間彼を見て来たけど、ちょっと後悔している。ステータスが馬鹿げているからだ。たぶん、下手したら神も一撃で殺せる力を彼は有しているだろう。他世界の娯楽で言う所のチートとかそういう訳ではない。これは完全に父神の無茶ぶりと、僕の急ぎ仕事によるミスが引き起こした事態だ。僕はその彼を今も見ている。彼が様々なスキルを得る度に、いろいろな神から僕は苦情を受けた。最初に僕に苦情を持って来たのは学芸神。僕の妹神で現在位階第二位の神である。その神からの苦情は……。
「生命神様? そういう情報はちゃんと言っておいてくださいよ!! いきなりこの世界に無い知識をぶち込まれるのは困るんですよ!!」
……とのことだった。文明的におかしな速度で彼が彼の周りの物を改造し、文明的な生活を実現している。これが兵器などではないのが救いだと学芸神が告げるが、たぶん直ぐにそれは兵器方面に行くフラグだと思うよ? ……と妹神へ心の中でつぶやいた。それからは行き過ぎが無いかどうかを妹神…学芸神も見るようになった。
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次に苦情を持って来たのは鍛冶神と戦神だ。
鍛冶神と戦神は双子の神で仲が良い。その弟神たちが僕の職場に殴り込んで来たので、学芸神と一緒にビビり倒した。厳ついおっさんみたいな神に詰め寄られたらそりゃビビるよ。まぁ、予想はしていた。学芸神が見つめるようになってから、彼女は知識探求に情熱を注ぐ魔人に加護を与えている。ちゃんと父神…創造神に報告してから。その蛇魔物から派生した魔人ツェーヴェに学術神は『審眼』という鑑定スキルの最上位スキルが使える破格の加護を与えているのだ。
そして、弟神たちが殴り込んできた理由が、過去に存在した転生者のようにこの世界の文明レベルにそぐわない兵器を開発し、戦闘に利用しだしたから。
「おい!! 生命神の!! ありゃなんじゃいこらぁ!! この世界でアンチマテリアルライフルなんぞ作り出す阿呆が居って堪るか!!」
……とのこと。
ごもっとも。僕も妹神も『あちゃ~……』とは思っていた。けれど、彼はアンチマテリアルライフルだけではなく、ガトリング砲なども作っている。基本的な小銃や拳銃も。その上で彼は半神だ。しかも魔法における。彼は神器級の器物を作ってしまっているのだ。僕は包み隠さずに彼らにも彼の来歴を伝える。すると戦神は留飲を下げ、なるほどと呟いた後にこう言った。
「これは某も注視せねばならんな。かの者の一手で世界が揺らぐ大戦争に発展しかねん」
それから僕ら四柱の神は1人の規格外な転生者を見ることとなった。彼は根本的に勘違いしているところがあるが、いくら伝説級の魔道具を使ってもできるのは伝説級の何かしらまでだ。彼の力が神クラスの物だから故に彼の製作物は神器級になっているのである。
鍛冶神は最初こそ彼が造り出す物を見る度に滅ぼせだとか、つまみ出せとうるさかったけれど……。今では興奮して楽しそう。そしてうるさい。また、戦神も呆れていた。何故かと言えば彼は武技系のスキルの管理もしているのだけれど、半魔神のクロ君は武器を数日握れば達人級の腕前を身に着ける。そして研鑽を積むことで神技を習得してしまう。戦神は彼がとても温厚な事や争いを基本的に嫌う事を、快く思っており彼の中でも最近のお気に入りのようだ。密かに武神の加護を与えている。鍛冶神もね。妹神もだ。
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「生命神様、最近……中央大陸が騒がしいのですが何かありまして?」
「おう、その近海も騒がしいぞ。なんぞ知ってんだろ?」
「空も騒がしいね~。僕の眷属が落とされたみたいなんだけど~?」
予想していたので、僕と共にいい娯楽として楽しんでいる三柱の神も説得というか、論破に協力してくれた。
まず、特に怒っておらず純粋に土地が富み、彼女の神域が解放されて力が回復した『大地地母神』に大地の力が戻っていることの説明を行った。例の彼、『半魔神クロ』が元ファンテール王国近隣の土地を生き返らせる計画を彼の眷属としていること。そして、大地地母神の聖地を彼の眷属が解放したからだと告げた。
次にかなりお怒りの海神には戦神と鍛冶神も喧嘩腰に対応。元々の原因は海神の管理が適当過ぎる故に、海の生態系が狂いその眷属である人魚が横暴な行動を取っているのだと。ぐうの音も出ない海神に戦神が畳みかけに入る。その驕り高ぶる種族を皆殺しにされないだけ、クロ君の眷属には慈悲がある。また、彼の眷属が海を間接的に治めるようになれば、その近海も平和になるだろうと鍛冶神も繋ぐ。
最後の『天空神』は学芸神にボロカスに言われていた。そもそも天使族を作ってほったらかしにしたのは天空神で、その天使族が地上の勢力に喧嘩を吹っ掛けただけなのだ。それを返り討ちにされて撃墜されただけなのだから喚くな!! とのこと。
「まぁ、例の堕ち神事変の影響で転生させた転生者なんだよね。彼」
「転生者か。また学術神のような恐慌にはならね~のか?」
「大丈夫じゃないかな? 彼は自発的な攻撃を嫌うみたい。言っちゃアレだけど、ヘタレだよね。ハーレムでウハウハなのに嬉しくないみたいだし」
「それは生命神のあんたが嬉しいだけだろ? 下界に生命が満ちることはあんたにとっちゃこれ以上ない喜びだろうからな」
「200人も奥さんが居れば心も潰れますよ。彼、大丈夫ですか?」
「なら君らも加護を与えれば? 創造神様から彼だけという特例が出ている。どのみち、彼が世界を壊そうとかする時は……それこそこの世界がそういう世界だったってことなんだよ」
僕の最後の言葉でそこに集った僕の弟妹神たちは黙った。否定できないよね。新たに来た三柱は知らないだろうけど。僕と楽しんでいた三柱はそう思ったことだろう。僕ら七柱の神はこれからも彼や彼の眷属を見て行こうと思うよ。それが生み出し、世界を導ききれなかった者の最低限の責務だと思うから。
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NEW
鍛冶神
下界の工作物やその技術を管轄する文明派の高位神族。他の細かい権能を持つ眷属神を多数管理しているため、基本的には忙しい。現在も権能の衰えが少ない数少ない神族。クロが異界の知識から作り出すブツを気にしているが、徐々にクロの性格に慣れて受け入れて行く。現在では面白おかしく見ている。
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大地地母神
下界での農産物や鉱物、植物などのあらゆる大地に関わる物事を管理する中級神。生命神が長をしている『自然派』の神族でもある。聖地が呪われ、一時眠りについていたが、スルトとヨルムンガンドの出現、何より聖地の開放で目覚めた。
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海神
下界の海に関することを管轄する中級神族。生命神の派閥に属し、2人存在する海神の片割れ。現在は彼のみ。ヨルムンガンドの行動やリヴァイアサンの行動により神力が回復しつつあり、目覚める。ポセイドンとネプチューンを注視し、加護を出すか悩み中。
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天空神
下界の空域、天候を管理している神。学芸神に言われたように、ある程度の管理しかしない職務怠慢気味なところがあった。タケミカヅチやゲンブの出現で一気に神力の上昇を確認しつつも特に何もしていない。あとから生命神にこってり絞られることとなる。また、天使族を直接生み出したにも関わらず、長い事ほったらかした張本人。




