船の墓場を焼却処理
は~い。僕です。クロですよ~。お久しぶりですね。たまには僕がお休みして子供達メインの回があってもいい気がするよね。でも、なんでか僕に必ず帰って来るので、何だかんだ僕は働きます。今は北側の凄い風が吹きつける珪砂で遠浅な海岸線を歩いています。空からでもいいとは思うんだけど、ちょっと面倒な事になってて、チマチマとやってますとも。
ここは……迷宮の大安売りだった!!
実はこういうタイプの迷宮があることは僕も知っていたんだよ。物語には多いね。『幽霊船』だ。規模としては小規模迷宮区分なのだけど、この幽霊船の処理に負えないところはこの船その物が迷宮核という所。ボロボロの木造船なので再利用もできないというね。迷宮核と融合している船で、多くは難破船の生れの果て。一部は大暴れした名のある海賊が幽霊船の主となり、迷宮主として彷徨い続ける迷惑極まりない物。
なので、僕は海岸線を歩いて、スケルトンが歩きだして来る崩れかけている難破船をことごとく焼却しているんです。一個でも残しておくと、そこからスケルトン魔物を無限に生み出して魔境が変遷する原因になるので……。虫系の魔境も面倒だけど、アンデッド系の魔境はさらに面倒なのですよ。不死者は負の氣を纏い、生ける者を寄せ付けない環境を作ってしまう。ここは距離はあるとは言え、『ドルツェンハイム分領』の真横の魔境。微粒子レベルでも被害を受ける可能性があるなら、その芽は摘んでおくべきなんだ。普通の魔物もそれはそれで面倒なんだけど、一応毛皮や一部の可食魔物は恩恵もある。……が、アンデッド魔物には百害あって一利なし。本当に。なので僕が潰します。幸い、僕が手助けする必要もなく、ハムシーンはやらかしているので、何とかなるでしょう。
「お~。ハムシーンさんもいい感じにやらかしましたね~!!」
「うん。良い感じ。このぶっ飛んだ感じがクロ一家の特徴。これならここも安泰」
「……あのさ。僕らはぶっ飛んで無いよ」
「旦那様は常識を学ぶべきですね」
ユミルの『氷の城』ではなく、今度は強い陽光をキラキラと反射する総ガラス製の美しい宮殿ができあがった。城の形の特徴としては栗のような屋根が乗っているような形だと思う。白い色ガラスにはツタ薔薇のレリーフがあり、派手ではあるけどいいと思うよ。真っ白い砂丘に真っ白い宮殿。
ハムシーンの方もぼちぼちやってくれればいい。僕もぼちぼちやるので。スケルトンを目印に砂丘に埋まっている廃船も等しく燃やし、探査も掛け合わせて潰していく。その結果、物凄い数の外観の生きている幽霊船が砂浜にあることに行きついて、現在はひたすら爆裂弾で吹き飛ばしまくっている。船の外形が無くなると、スケルトンの維持がされなくなるタイミングが来る。これが迷宮核の破壊と同義のようで、次々と破壊。
……してるんだけど、奥の方にめちゃくちゃデカい船が見えて来た。船の墓場とでも言えるこの場所でほぼほぼ幽霊船の反応が消えたところで、僕とカヨ、ハグロはその巨大な船を見つめている。アレはまだ生きている。……いや、中途半端なキャプテンスケルトンは船ごと吹っ飛ばしているので生きていたのかもしれないけど。アレはもう面倒な空気がもやもやしている。なんか上陸艇みたいな小舟にパイレーツスケルトンが大挙してきた。スケルトンは動きがゾンビよりは速いけど……。所詮はスケルトン。動きが単調で機械的。船を頑張って漕いでいるところに、無慈悲に爆裂弾を撃ち込んで爆散させる。
「しまった。『黒焔弾』にすべきだった。あのスケルトン、海底を歩いて来るぞ……」
「なら我々も海底を歩けばいいのでは?」
「……それ採用」
「いやいや、君らは行けても僕は無理でしょ?」
「大丈夫ですよ。旦那様はいろいろ超越しているので」
それは何の保証にもならないでしょうよ。
しかし、やってみようとは思う。幸い、僕の銃は火薬を使う事は僕はないので、総紅色鋼製のsocomMK109を2丁持ちで蜥蜴姿になる。そのままカヨが録画し始めたので、波間からテッテケテ~ッと海水の中を……中を? 普通に歩けてる。ちょっとふわふわしてるけど、泳げるしこれはいい。たぶん、外套の環境適応も関係しているね。それほど強い魔法ではないはずなんだけど、僕のスキルも活きているのかちゃんと動ける。予想通りに海底をのっそり歩いて来るスケルトンを『黒焔弾』で消し去ります。
ゾンビはいいんだけどね~……。スケルトンは完全に消失させない限りはバラバラになるだけで何度でも再構築するんで……。聖魔法で浄化するのが正解なんだけど、僕らには誰一人として聖魔法は使えない。アポロンには攻撃に聖属性補正があるのでいいけど。ここにアポロンを呼ぶのも憚られたので、魔素に関係する物を消し去れる『黒焔弾』でスケルトンの存在を消し去る。『黒焔』は魔素の繋がりや組成を破壊し、新たな環境に作り変える助長をする物だ。一回真っさらにしてしまう事で、その周囲の環境を創造前の無の状態に直すことができる。
それを魔物に向けると、魔素の循環回路が打つ壊れるので存在を維持できない。
僕個人はこの『黒焔』はそれ程大きな効果はないのだけど、仲間を巻き込まないようにする方が大変だよ。そのまま哀れなパイレーツスケルトンを消失させて、僕は魔素を体に纏い浮力を調整して水面を走る。テッテケテ~っと。
「いい画が取れました」
「水面って走れるんですね」
「たぶん僕の組成を受け継いでいる君達も走ることはできると思うよ。歩くのは体積の問題もあるから無理だと思うけど。僕もこの体格だから歩けるし、気軽に動き回れるだけだね」
そのまま僕とカヨ、ハグロは海面を走って……これよく観察したら海賊船じゃないぞ。軍船じゃん。かなり古いね。現在の建造技術よりも数世代前の船だ。艦隊ごと行方不明になった事例なんてあるんだろうか? 無きにしもあらずかもしれないが、僕は知らない。しかも、手前の船は言うなれば中型船で、後方には旗艦だろうクッソデカい艦艇がある。しかも面倒なことに、ここはそれぞれの船に迷宮核がちゃんとあり、全てが連結しているようだ。つまり、これは海上の大規模迷宮。規模とするならば、『水源の迷宮』と同等。かなり広大な範囲だ。
そうこうしている間に、録画しているカヨは動かないがハグロが格闘戦で雑魚のスケルトンをばらばらにしていく。再構築されるってさっき言ったんだけど……。
僕は後退してきたハグロが僕の背後に来たのを確認したところで、口から『黒焔(弱)』を吐き出す。スケルトンどころか船が噴き出し型に削り取れた。……船もアンデッドの魔物判定なのかな? 細かいことは考えずに、今回は自重を忘れることにした。カヨにも小型化してもらい、頭に録画用の小型機材を搭載。隠密の外套を3人で纏い、船内を進む。
「やっぱり船の内装はかなり古いね。どう見てもこの大陸の船ではないね」
「えぇ、意匠もなにもかもがデータベース内に存在しません。ただ、船舶の構造から推測するに以前から『サーガ王国』の港を経由してきている隣大陸の勢力かと。かなり古い仕様にはなりますが」
「国が生き残ってるかも微妙だね。なら、仕方ないから迷宮核を残念忍者アクションで取りさらいながら全部潰そうか」
「「了解です」」
うようよしているスケルトンの足元を、テッテケテ~とポッテポテ~と走り抜ける僕ら。
アンデッドがどういう感知方法をしているのか知らないけど、完全認識阻害のスキルは恐ろしいスキルだ。ツェーヴェ曰く、1億分の1という天文学的レベルに超絶レアなスキルらしいけど。何の気なしに使う僕と、それを享受する僕の身内が他の派閥に恐れられるのはこういう所なんだろうね。
この船は軍船だから金銀財宝みたいなお宝はない。ないんだけど、僕にとってはお宝が意外とある。旧式だけど、迷宮に取り込まれたせいで風化していないマスケットライフルや大砲などがゴロゴロあるんだ。砲弾も。金属は自分で作れるけれど、あるに越したことは無い。それらをあらかた吸い込んでおく。鉄材や鋼材の補填には凄く役に立つね。剣や他の備品も良いね。そのままいろいろ探したけど、やっぱり船長室にあるんだろう。この船の艦長らしき豪華な服装のスケルトンがワタワタ慌てていた。コイツには自我があるのかもしれないが、鑑定した結果キャプテンスケルトンだったので普通にスルーして迷宮核を奪取。迷宮化の呪縛から解かれた艦船が一気に風化腐敗して崩れていく。僕と2人は落ちて来る瓦礫も何のそので、隣の船へと飛び移る。
こうやって10隻は艦艇を潰し、最後の長大形船の艦長室に入った。これだけ迷宮核が露出している迷宮も珍しいよね。やはり魔人とかそういう展開はなく、ノーライフキング化していた提督っぽい。ノーライフキングは知性が多少あるので面倒なんだ。……まぁ、見えてないらしいので、魔石を抜き取って消滅させた。完全認識阻害は接触するまではその存在を感知できなくなるスキル。僕はアダマンタイトのククリ刀を突き入れながら、魔石だけ抉り出したのさ。
「やはり旦那様は恐ろしいですね。ノーライフキングって言うと、出現した場合は国家の移転を考える魔物なんですけどね」
「まぁ、旦那様からすれば等しく『骨』なんでしょう」
「スケルトンと同格とは思わないけど、それほど強くないとは思うよ」
ジト目を向けられたが、僕は個々が再び船の墓場的な魔境になっても困るので『黒焔(中)』で燃やし尽くす。この辺は他の生物は居ないようだ。やはりアンデッドの作る不毛の魔境は、生者には悪い影響を出すんだろう。アンデッドが絶対悪とは言わないけど、存在としては害しかない。できれば怨嗟のない緩やかな思考で昇天して欲しい物だ。
北方の魔境はこれが原因だったようで、ハムシーンの縄張りになった。その内、小規模な城もあちこちに作らせて拠点化させとかないとね。
僕達はそのまま爆走して北北西の区画へ向かっていると、遠くからハムシーンが何か龍族を従えた雰囲気で飛んできた。僕らも今終わったところなのでちょうどいい。情報の擦り合わせをしないといけないし、ハムシーンも魔人化している。これからのことも話さなくちゃね。
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・成長記録→経過
クロ
オス 生後半年(200日~205日)
伴侶 エリアナ・ファンテー
身長130㎝
全長17㎝……身長12㎝
取得称号
~取得済み省略~
取得スキル
~取得済み省略~
~=~




