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砂丘の姫

 はい、引き続きハムシーンがお送りいたします。

 私達は上層の『G』の大群が居る小迷宮を攻略し、その真下にできていた20階層の迷宮も私との相性が良すぎるので散歩気分で攻略。そのボス階層と思われた階層は迷宮主の管理室で、玉座の前でリッチクイーン?が土下座してました。そして、そのリッチクイーン?と話した結果。

 この存在は生かすことにしました。一考の余地ありと判断したので。……というか、眷属化って主が願わなくても相手の願いが強いと、主の意志関係なく強制的に発生するんですね。目の前の存在は厳密にはリッチクイーンではなく、そこから魔人へ派生している存在でした。肌が真っ青で、触れても体温が感じられないこと以外は全て生きている魔人と何ら変わりません。特筆していうとすれば、吸血鬼族に近いところはあります。生肉や血液からの魔素吸収の効率がとてもいいくらいですね。

 いつから意識をもっていたのかは思い出せないらしいですが、彼女は太古に滅びた王国の姫だったようで、政争に負け追放刑の憂き目にあった。そのまま海上で嵐に巻き込まれ、同時について来た家臣や従者と共に衰弱死。後ろには最後まで生かすために隠していた家臣と従者のアンデッド派生の魔人が10名ほどいます。姫様ということもあり、全員が女性ですね。


「で、では、暦や日時の符号も取れない程に時間が経っているのですかッ?!」

「その通りでしょうね。皆さんの知識の中に『厄災』や『星降り』の言葉が見受けられない点から考えても、単純に考えて8000年よりも前という事です」

「……な、なんということ。では、我々はどうしたら」

「お気づきでないのですか? 貴女方はこちらのハムシーン様に従属しています。そのままこの方の手足として働かれることが賢明かと。この方は大魔人のご息女に在らせられます」


 畳みかけるために大仰な雰囲気にしていますけど、別にお父様も私も大した存在ではありませんよ。私達は力はありますが、それだけで生きているのではありませんから。私達の行動理念だけは説明しておきましょう。既に眷属化されているのでいろいろ遅いのですが、私の考え方について来れないとなれば処分せねばなりません。それも寄り親の責務です。

 ……杞憂でした。この魔人は性格がまっすぐというか、なんでも信じる優しすぎるところがあるので政争で負けたのでは?

 そのままアンデッドの迷宮の管理権を委譲され、私の位階が上がりました。途端に私の体が輝きだします。魔人化ですね。何度か見ているので直ぐに思い至ります。服装などもその魔人の性質に左右され、文化や外観との相性は関係ない。私は全身を包み、目元だけを出す真っ白な服に包まれていました。なんという服なのかはわかりませんが、生地はさらさらで通気性がいいです。掌を見てみますが浅黒いので、ジオ姉様のような砂の民寄りの外観なんでしょうか。武器は……鎖の付いたお鍋? いえ、チェーンフレイル? 使ったこともないのですが……。


「「おめでとうございます。ハムシーン様」」

「ようやっとですね。ですが、まだまだこれからです。では、皆さんにもしっかり働いてもらいましょう。南の魔境も収奪します。いきますよ」


 こうして、私とアンデッドという特異な魔物から魔人化した新たな原住民(ナカマ)?を得て、迷宮を大幅に改造します。私のガラスの城を造ってしまいましょう。……こういう細かい作業って苦手なんですけどね。まぁ、何とかなると思います。足場は着実に組み上げましょう。そのまま南も収奪します。

 ……。スミオさんとヌレバさんが背後でお腹を抱えて笑っています。

 はい。やらかしました。私の不器用さが前面に押し出された城ができあがりました。最初は地上に可愛らしい小ぢんまりしたお城を想像したんです。それが……どうでしょうか。ユミル姉様のお城と同じような規模の全面ガラスのお城ができあがりました。全面鋼の弾丸を跳ね返す硬質ガラスですよ。しかも白色の色ガラスで、あちこちに薔薇の意匠が入った壮麗なたたずまいです。美しいことは美しいのですけど……。地下の迷宮まで全て取り込んで、ガラス製のお城です。ここまで望んでいませんが、何故か魔道昇降機までついています。

 あ、スミオさんにお父様から念話でコメントが来ました。

 『迷宮の改変や創造は脳内で行うと、勝手に迷宮が最上級の機能を選択するので注意しようね』とのことです……。やる前に言ってくださいよ。スミオさん曰く、やらかしたこの現状から推察してコメントしているらしいので、それは難しいだろうとの事。まぁ、やらかしたことは事実です。幸いなことにハイゼルという名前らしい元姫の魔人やお付きの皆さんは大変な賛美をくれるので……。結果オーライという事にします。問題は迷宮のポイントがすっからかんなので、早めに何とかしなくてはいけませんね。


「私とハイゼル達でここは防衛しますので、スミオ姉さんと一緒に南の攻略にいかれては?」

「そうですね。それがいいと思います」

「……では行ってきます。くれぐれもここのことはお願いします。ヌレバさん」

「はい。お任せください」


 という事で私とスミオさんで砂丘の魔境、南方を開拓しに向かいます。


 ~=~


 もう面倒なのでスミオさんに探査をお願いし、私は3属性の複合魔法『熱晶風(ラヴァジェレイド・バースト)』で広範囲を焼きます。南方は風の関係で砂丘が高く私の熱風も届きにくい。スミオさん曰く、ここは感じられるところでは全く魔物以外の生命反応がないとのこと。不自然な反応も一か所にしかないので、そこが迷宮だろうとのことです。

 先ほどの失敗のこともあるので、少しイライラを込めて発動。このやるべない気持ちを発散させるには魔物にあたるくらいしかないんです。そうですよ~。どうせ私は不器用ですよ~だ。私とコンゴウはお父様の眷属としては珍しく、クリエイティブな活動には向きません。コンゴウは魔法での加工は得意らしいですけど。私は苦手。なんでもかんでも大味になってさっきのような失敗も絶えません。その代わり魔法を空間に解き放って戦うのは得意です。かなり細やかな調整もできますよ。

 そして、いろいろ説明は省きますが、スミオさんが死なない程度の温度まで下げたので、ガラスの砂塵を生き残った巨大蟻地獄に放ちハリネズミにしていく。魔法を駆使して魔石だけ回収します。虫の解体方を私もスミオさんも知りませんし、したくないので。そのまま迷宮へ到達しました。今度の迷宮には『G』が居ない事を願います。


「ハムシーンさん、フラグという現象はご存知ですか?」

「……はい」

「たぶん、旗は刺さりましたよ。お覚悟を」

「はいッ!!」


 我ながら子供ですね……。スミオさんの明らかな煽りにキレました。

 見事にフラグも回収し、一階層から『女王G』が3体纏まっているモンスターハウスという鬼畜仕様です。虫が好きとか嫌いとかそういうレベルの話ではありません。さすがのスミオさんも小さく悲鳴を漏らしていました。共感できます。物凄い数ですもん。という事で、スミオさんに害が出ない程度に気温を上げ、空気を乾燥させながら熱波で『G』をことごとく燃やしていきます。汚物は消毒です。

 そのような精神的な衛生状態をボロボロにする、悪意しかないような階層を10階抜けました。今回は長いです。さすがのスミオさんでも心に疲弊があるのか、ちょっとげんなりしているようですね。

 ボス階層では私が扉を小さく開いて、熱波を流し込むという方法で大量の魔石だけを目にしました。超大きな魔石が1つ、大ぶりな魔石が4つ、小さな魔石が無数にある。女帝(エンプレス)系が居たんでしょう。外見のことは考えないようにし、魔石だけを魔法の袋に吸い込んでここでも同じような段階を踏みました。この下層も腐臭から考えてゾンビ系です。ですけど……。毒沼にゾンビ。凄い迷宮ですね。スミオさんも呆れています。ここまで手の込んだ迷宮を組むとなると、こちらもかなり位階の高いアンデッドが主でしょう。お隣は魔人にクラスチェンジしてましたけど。

 ここは竜系のゾンビ、俗にいうドラゴンゾンビですね。そのドラゴンゾンビの中でも毒竜(ポイズンドラゴン)。……あぁ、ベラドンナさんとはまた違いますよ。ベラドンナさんは龍。位階の高い高等生物群に毒を持つ存在が居るので特異なんです。ここに居るのは所詮は地竜の亜種である『毒竜(ドクトカゲ)』です。体内で毒を精製するのではなく、食べた物の毒を蓄積するタイプであまり強くありません。加えて、沼の中にも反応が有ります。シーサーペントのゾンビですね。海と隣り合っているので無きにしもあらずとは思いますが、迷宮とは本当になんでもありですね。


「本当に環境依存とは言え、その魔法は便利ですね」

「細かい制御が必要なので、誰でもできるかと言えば異なりますがこれは便利です」

「近づいて来る疑似魔物も魔物も勝手に燃え尽きていきますからね。同時に空気の流れを操作して毒素や臭いもシャットアウトできるのですから」

「そこは私の実力です。燃やすところまでは火炎魔法と風魔法の適性が中級まであればできますよ」


 こう言った途端にスミオさんに大きなため息を吐かれました。

 なんでも、先天性の魔法適正スキルは普通は生えない物で、1つでも生えて居れば人間種では一生食うには困らないとのこと。私、3つ生えてますね。加えて隠しスキルのような特性が実は存在していて、私は魔法操作系の何等かの隠しスキルがあるだろうと。そうでもないと説明できる範囲は飛び越えて精密ですしね。それから魔力量もいくらお父様の眷属とは言えどもかなり多め。こういう類い稀なる才能を持つのだから、多少不器用でも受け止めるように……。とのことです。いえ、ここまでぶっ飛んだ技よりも少しでも不器用なところを改めたいのですけどね。

 残念ながらそれは叶わないでしょう。お父様の前例を見ても、どこかしら何かしら私達はやらかすんです。私はこういう所なんでしょう。ネタには事欠きませんが、何とかならない物でしょうか?


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(200日~205日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~


取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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