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その頃の星の聖地では……

 お久しぶりです。コンゴウですよ。今回は僕の縄張り拡張のためにお父さんも見に来て大物取りとなった。いろいろ過去にあった土地らしく、お父さんの奥さんのお父さん……凄くややこしいな。大地守護龍のアースさんやそれに近い種族のタングステンさんとトパーズさんが来た。……僕一人でもなんとかなるけど、気にしてもらえているんだ。良い事と考えよう。

 めでたく僕の縄張りができた。アースさんや大地の守護龍の皆さんが眷属化されているのに戸惑いつつも、忙しく飛び回るお父さんの小さくなっていく背中を見ながら皆さんと話す。


「貴殿のお父上も本当に面白い」

「そうですね。お父さんは不思議な存在だと思いますよ」

「それは貴公も同じかと思うがな。神獣化できる魔人は本当に限られる。そういう魔人は大概が危険な存在となり、世界に悪影響を出す物なのだが……」

「うむ。クロ殿のご家族は皆が温和だ。……噛みついた相手には容赦ないがな。それは自然の掟。噛みつく方が悪い」

「お父さんは自分をあまり魔人とは考えていないように見えますしね。あの人は事ある毎に『蜥蜴』押しをしますから」


 僕らは笑いながらエリアナ様が用意してくれていたプリセットをいじる。僕はあまり一からの建築が得意でないからね。それを魔法でいじくるのは得意なんだけど。……なんでお父さんの分体が既に居るんだろうか。いや、別に挙手を願った訳じゃないんだけど。まぁ、考えても無駄か。この人はこう言う者だとしておかないと、説明は無理だから。

 さすがに百戦錬磨の智将であるアースさんやその参謀のお2人も、テッテケテ~と駆けて行くお父さんの分体には驚いている。本当にどうやって来ているんだろう?

 そういえば僕がまだジオ姉さんの縄張りの警備をしている時、飛行中に彼らが走っていたのを見た事ある気がする。あの時は急いでいたからあまり触れずにスルーしたけど、よくよく考えたら彼らもけっこう力技でいろいろ動いているんだね。僕が城の意匠を懲りだすのと同時に、その意匠を隅々まで観察した分体達はあちこちに散って魔法で作業を始めた。うん。やっぱアレはお父さんだね。

 アースさん達には大地地母神の聖地を整備してもらっている。僕はあまりあそこに行くメリットもないし、皆さんには思い入れのある土地だからね。僕はそれから1日かけて、僕の象徴のような物であるダイヤモンドで飾りつけ、その飾りを利用して強力な侵入防止と防空の結界を張る。北方のユミル姉さんの城は寒さに弱い翼竜(ワイバーン)などは来ないと思うが、ここはかなり暖かく嵐鷲(ガルダリオン)飛竜(ドラグーン)も生息しているからね。敵性反応を弾くように設定した大規模結界陣を張った。


「これはこれは……やはり貴殿も規格外なことを。星龍殿よりも堅固ではないかな? この結界は」

「お疲れ様です。アースさん。この結界はそこまでではないです」

「いや……これは……」

「タングステン、諦めろ。この方々はそういうご家族なんだ」

「そ、そうだな」


 なんとなくお父さんと同類扱いされるのは少し気になるところがある。

 皆よく知らないと思うけれど、お父さんはアレでいろいろセーブしているつもりらしい。眷属の僕達ですら馬鹿げていると思うようなことを数限りなくやってのけるお父さんだけど、彼は本当にアレで手を抜いていろいろ調整しているんだと思う。そういえばアースさんなら知ってるかな? アースさんなら長くを生きているし、いろいろ知っていると思う。僕もその事と、もう一つ気になることがあるんだ。

 お父さんは何度鑑定しても種族名が『???』となる。その上で、僕や眷属にもレベルという概念が存在しているのに、彼だけは何度鑑定をしてもレベルという文字も数字もないのだ。

 それを休憩中に分体クロ達がお茶を淹れてくれたので、飲みながら訪ねてみた。そのことを聞いた御三方は硬直の後に、最初の『???』のことだけは解るという言葉を重々しく落とす。アースさんも実態を見たことはないと言う。彼もお父上に教えてもらっただけだからだと。前置きを重ねたアースさんの口から洩れたのは、僕らが今生きる時代よりも一括り前の時代との境目に現れた特異点の事だった。僕もツェーヴェお姉さんと古文書を見た時に『厄災』のことは知ったけど、ここまでしっかりとした伝承としては残っていなかった。アースさんが言うにはその時の『邪神』と呼ばれた者も状態鑑定での種族欄が『???』だったという。


「お父さんは『邪神』なんでしょうか?」

「いや、そうとは限らない。確かに彼はいろいろ物を破壊しながら、新たな形に組み替えている。しかし、私がまだ若造だった頃に起きた『厄災』の主犯とはまた毛色が異なるだろう」

「そうなんですか……」

「うむ。貴殿の父君は『邪神』とは違うな。しいて言うなら……『破壊神』とでも言おうか? 常識を尽く破壊していく、我々の知るところにはない存在だ」


 『破壊神』も見方によっては『邪神』と変わらない気もしますけどね。

 アースさんが更に続けるところによると、『厄災』はさまざまな場所に影響を出した。良い影響はなく、あの時は多くの種族が絶え、世界の在りようが大きく変わった。歪み、傷つき、膿が溜まったとアースさんは苦々し気に言う。どんなに力のある種族、龍族が努力しようと世界の在りようは変わらなかった。最後の最後まで寄り添い続けた風龍の一族も最終的には匙を投げたのだ。

 アースさんがお父さんに目を付けたのはその時だったという。

 やはりアースさんは物知りで分別ある大人な人という認識があるらしく、風龍族の若い長であるベルトールさんから相談を受けたそうな。普通は若い独立主の龍族でも誕生しなければ、大きな縄張りの変調はない。ないのだけど……。お父さんはそれをやってのけた。エリアナ様のこともあるんだろうけど、お父さんはスルト姉さんやタケミカヅチ兄さん、ゲンブ姉さんと共にあの周辺の魔境を瞬く間に掌握。その間に人間ともことを構え、大暴走を一撃で抑え込んだりとおかしなことを続けたのだ。

 特に魔境を一撃で荒野に変え、その一瞬で我が物と変えたその力は大古龍でも恐れから冷や汗が止まらなかったともアースさんが言う。そのお父さんとの初対面ではなお驚かされた。アースさん達が現在縄張りにしている土地から見て南南東に位置する『魔の森』に突如として現れた若い土地主の『蛟』を妻とした……。それと同時に人間種も妻にしている。蛟は龍族の中でも恐れられていた凶暴な土地主であり、独立主。フラッと出かけては何やら買い物をし、『魔の森』に帰る。その途中に喧嘩をすると言う危険極まりない存在……。


「それ、一部誤解がありますよ」

「そうなのか?」

「ツェーヴェお姉さんの話だと、しつこく付き纏われたので殴っただけらしいです」

「……それなら言い分としては認めてもいいかもしれんが、タコ殴りにされていたぞ? 確かに被害者も素行のいい者とは言えなんだが」


 ツェーヴェお姉さんのことはこの辺にしよう。話が逸れてきている。

 アースさんやタングステンさん、トパーズさんが言うにはお父さんがこの世界に何か悪い影響を出しているなら、この世界は既に混沌極まる状況になっているらしい。人間種、特に人族の蛮行と加速度的な繁栄の裏には、多くの少数民族や同じ人間種にも絶えた種族はある。『厄災』の後にそれを抑えようと尽力した種族は弱体化し、その力がなく逃げ隠れているだけの種族はその後に増えた。その淀みで世界は恐怖による支配と戦による混迷が包んだ。龍族は力こそあるが、今の人族を潰しまわる程に数もおらず存続するだけで精一杯な種族も多い。

 そこに自身を魔人というのに、気の抜けた少年が現れた。

 気の抜けた……。確かにお父さんはそんな感じかも。分体クロから抗議の声が上がるけれど、そこは息子の僕も否定できない。済まない。

 彼が魔人と言うならば、自身の血族を送り込むも一興。そう考えて、食事会でお父さんを観察して結論を出した。底抜けのお人よしだと。争う事を否定しないのに、自らことを構えることを嫌う……。そこは違いますね。少々ズレが有りますよ。お父さんは『めんどくさがっている』だけです。それでも自分から侵略戦争を起こし、荒廃を伝播させるような存在でないのだから在りようとしては変わらないですけどね。


「お父さんはのんびり過ごすのが好きですからね」

「あれだけ忙しく飛び回っておるのにか?」

「それは考えの相違がありますよ。父はのんびりするために、周囲を優先して押し固めているんです。今回の僕の縄張りを手に入れた時も、お父さんは最後まで手を出すことはなかったですよね」

「確かにな」

「まぁ、彼も元は魔物なので、時には暴れたい時もあるようです。アポロン兄さんの縄張りを手に入れた時は前線で戦っていたらしいですし」


 それからも僕と御三方は分体クロを交え、開拓作業をしたり休憩でお茶をしたりと楽しく過ごした。その間、西の方面でお父さんの『黒焔』の閃きが何度もちらついた。たぶん、ハムシーンの縄張りを奪取するのに苦労しているんだろう。援軍が欲しいなら言ってくると思うし、僕らは気にせずに次々集まって来る大地の眷属を出迎え、住み着く場所を作り管理しやすいようにしていく。迷宮って本当に便利だ。

 そして、アースさんがボロボロの人間種の団体を保護して来たことを皮切りに、北方にいるユミル姉さんと共に動くことになる。もちろん、忙しいお父さんも参加すると言うけれど……。ホントにあの人はのんびりするつもりがあるのだろうか? アレでのんびりしているつもりならば、常識の齟齬が著しいんだけど……、納得はできる。そうやって納得しないと彼のことは本当に理解が難しいね。我が父ながら……。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(200日~205日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~


取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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