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熱砂の猛威

 おいっす~。クロですね~。

 一度、ウスバカゲロウを口から噴き出した『黒焔(中)』で丸々燃やし、その状況で統率が崩れたウスバカゲロウの群れの中心に錐揉み回転しながら突入する。戦闘はスミオ、次にハムシーン、カヨと突き抜けたのを確認しながら僕も『黒焔(弱)』を纏いながら突入。一番魔素吸入量の多い僕が狙いだったらしい。先ほどから聞こえる耳障りな音で、ウスバカゲロウを操っているようだ。

 僕を目掛けて団子状態で突っ込んで来るウスバカゲロウの群れを焼き尽くしながら突き抜け、着地。

 ククルカルナ大砂漠と違い、砂が白い。確か、普通の砂と珪砂ではケイ素の含有量が違うんだったっけ……。ガラス工芸はあまりやらないからな~。スルトなんかはお土産の一品に追加するためにガラスの透明度研究などもしていたけど。先に着地していたスミオ、ハムシーン、カヨと合流。魔素がめちゃくちゃ濃い。物凄い大きな反応も砂丘の中心部にある。まさか虫系の魔物が来るとはね~。砂漠ともまた環境が違うので、知識のない今はあまり無理やり動かない方がいいのかもしれない。ここの砂の中には虫の魔物がうようよ居るし。ここに砂上を動いてる魔物が居ないのはこいつらが理由なんだろうな。蟻地獄だ。一匹がスミオの足に食らいついたが、大あごが負けてた。普通の魔物にはこれはまさに地獄だろうな~。


「どうされますか、お父様」

「う~ん。そうだな~。ハムシーンがここからは隊長をしてごらん。僕も力は貸してあげよう。僕の頭脳以外なら」

「……。解りました。ではスミオさん、御三方を囲むように温度を反射する結界を張ってもらえますか?」

「了解しました」


 スミオが結界を張り終えたことを確認したハムシーンが何度か羽ばたき、咆哮をあげる。その途端、スミオがもう1枚結界を増やした。どうやら対応しきれなかったらしい。ハムシーンはスルトの地盤溶解(ラヴァ・フィールド)と同じような効果の魔法を使い、一気に気温を上昇させているのだ。ちょっとあり得ないことが起こり始めていて3人で亜然。ハムシーンが少し離れたところで今度は風魔法を行使してその熱波をかなり広域に拡散させていく。僕らは丸っと二枚の結界の中に居るので、ダメージは無いけれど……。体が乾燥しきったウスバカゲロウが燃えながら落ちて来る。虫が自然発火する温度ってどうなのよ……。

 それにその熱波を中心に熱がどんどん高まり、珪砂が溶けていく。綺麗な鏡面のガラスにはならないが、どんどん溶ける砂がくっ付き、深くまで熱が浸透していく、砂の中にいた蟻地獄も乾燥と高熱のコンボで発火し炭化……。僕らも結界がなかったらヤバかったと思う。ハムシーンの使える魔法は一つ一つの威力は小さい。しかし、相乗的に効果を上げるようにハムシーンは効率よく魔法を組み合わせている。

 砂魔法+火炎魔法+風魔法。それにここが砂丘で植物すら生えていないこともかなり効率を上げているだろう。順序的には風魔法で空気を攪拌しながら火炎魔法で温度を徐々に上げる。湿度が無くなり、風に寄り攪拌されて濃い魔素による火炎魔法は中級魔法とは思えない火力となった。加えて、砂魔法に寄り珪砂を巻き上げ、この直射日光すら味方につけてガラスが溶け出す温度まで持ち上げたのだ。


「これ、下手に結界を解くと僕らも大火傷だろうね」

「ですね~。表皮が焼けこげるでしょう」

「はい。ハムシーンさんもかなり成長されましたね。これが中級魔法の重ね掛けですから……魔人化してからのことは考えたくないです」


 そのままハムシーンは高度を落とし、風魔法の使い方を変える。今度は急激な温度の変化により、表面が溶けたガラスの大地が軋むような音を出しながら砕けていく。結界を張っているスミオが結界を消したので、僕らも生存できる気温に戻したんだろう。本当に自由自在だな。

 そのままハムシーンは僕らの横に着地。かなりの数の魔物を倒したらしく、かなり魔素の量が増えているね。それでも暴走する程の量ではないのか。ハムシーンはそれこそ魔闘士に適正が高いようだ。僕は彼らの親なので僕の魔素傾向から生まれる眷属は僕が持つ適正のどこかしらかが出る。ユミルにしてもハムシーンにしても……本当に規格外な娘が出て来たものだ。ユミルは少々猪突猛進な感は否めないが、ハムシーンは頭を使う。そういう意味でもハムシーンを敵にすると非常に面倒と言えるだろう。

 うん。僕らを中心に魔物の影がほぼほぼ消えてるね。数体の大きな反応が弱っている。この規模の反応となると、普通の魔境なら主級なのだけどな。それが探査で見た限りで5体は居る。ここは一筋縄ではいかないな~……。それも込みでハムシーンに報告した。


「だいたい4分の1くらいかな? 小粒の魔物は消滅したね。大物は何とか生き残っているけど。これからどうするの?」

「ふふふ。これはあくまで場づくりです。ここからが私の本領発揮ですね」

「……アレより凄い技があるの?」

「ありますよ。ただ、私の魔法はフィールドによる強弱の依存が大きく、このようなホームでの戦いのみあの威力に持ち上げられます。本拠地のように多湿になりますと、風と炎で頑張っても10分の1も上げられません」


 それでも十分だと思うけどね。僕は一撃は強い攻撃を放てても、空間や環境に一時的にでも影響を出せる技を持たない。『黒焔』だって一撃必殺の技で長時間の使用はかなりきついんだよね。そういう意味では僕の子供達の方が見方によっては優れている。

 そのまま僕らは飛行してハムシーンがガラス化させた砂丘の端くらいの位置に来た。さすがに蟻地獄。どれだけ近寄っても動きもしない。待ち伏せがスタンダードだからな。……でも、この大物は何を食ってこうなった? このサイズの魔物が自身を維持するとなると、いくら待ち伏せでも無理があると思うのだが。

 そんなことはどうでもいいとばかりにハムシーンは空気を圧縮し、その中にガラスの破片と火炎魔法の術式を込めていく。凄く器用だな。イメージ的には縁日の綿あめ製造機を球体でやってる感じ。溶けてるのはガラスだからそれなりの温度なんだけどね。そのまま……ハムシーンは圧縮している空気の弾の1か所に穴を開けた。空気は火炎魔法で熱されて膨張し続けている。さらに魔法で加圧されていた空気の球体だ。一気にその穴から熱気と溶けて糸状になったガラスともども螺旋を描き放出される。珪砂の砂地を抉りとりながら扇状に振るわれた。その範囲に居て探査で目につく巨大な蟻地獄は全て上部を削り取られて死んでいる。それから吹き付けられた糸ガラスのせいで、何かの龍だろう骨の正面がキラキラとして綺麗なのだけど、これ……サメ肌とかそんなレベルじゃないぞ。僕らは問題ないけど、人間種ではズタボロになるんじゃないか? 硬質ガラスだもんコレ。


「外観は綺麗なのですけどね」

「完全にやすりですよコレ」

「ふ~む……ここ、もしかしたら大規模の迷宮が4つあるかもね」

「それはそれは……攻略しがいのありそうな場所ですこと」

「どうしたもんか……。ハムシーンの縄張りにするのは決まってるんだけど、フーム……よし、ここは僕も出ようじゃないか。ハムシーンとスミオ組で海を正面にした視点で左側、南側の方を頼んだ。僕とカヨで迷宮攻略と西北西、北の攻略を試みる。ちょっと練習ステージにしては規模が大きすぎるから」

「了解です」


 スミオは少し不服そうだが、カヨよりも僕とあちこちを飛んでいる分の経験があるからね。今回はハムシーンの姉役を頼みたい。そうやって言うと、今度はカヨの頬が膨れるけど君はあまり1人で飛んだことないだろ? 姉のスミオは僕とけっこういろいろなところを飛んでるし、いろいろな迷宮を一緒に散歩している。カヨにもそういう経験を積んでから他のメンバーのアシストに入って欲しいのだ。

 スミオ達4姉妹にはこれからもいろいろな場面でアシストに入ってもらうことが増えると思う。そういう意味でいろいろな経験を積むことは必要なんだ。

 という事で二組に分かれる。コンゴウの時とはまた異なる大物との戦いになるだろう。一体の個体が強大な場合も面倒この上ない。今回のように少数で広大な範囲を潰しにかかるのは、人手の意味で1人のウエイトが重くなるので非常に面倒とも言える。そういう意味でも僕とカヨの組は多めに攻略する予定なのだ。僕や魔人級の戦力であるスミオとカヨは良くとも、ハムシーンの体力はそれ程高くないので長期戦も……あ、そうか僕の眷属なら呼べるんだからヌレバとハグロを呼ぼう。


「という事でヌレバとハグロがどっちかが僕と、どっちかがハムシーンと行って。今回はハムシーンの訓練の意味合いもあるからあんまり手を出し過ぎちゃダメだからね」

「では私がハムシーンさんの方に着きましょう。ハグロはご主人様とカヨの方へ行ってもらえますか?」

「了解。支援する」

「よし、それじゃプランを確認しよう」


 ハムシーンを隊長にスミオとヌレバがアシスト。外部の魔物を掃討しているのにハムシーンの縄張りになっていない個々の迷宮を探して攻略。おそらくそれでここはハムシーンの縄張りになる。その後に南側で魔物の掃討と迷宮の捜索、攻略だ。余裕があるならば西北西側の範囲から魔物の掃討を中心に状況を見て進めて欲しい。今回は僕もフルで動くのでフレンドリーファイアをお互いに注意して欲しい。

 僕らはここから直ぐに北方面の範囲の魔物を掃討する。掃討後は同じように迷宮を捜索し攻略していく。僕らはハムシーンの縄張りの確保を優先するので、手加減なしで殲滅していく。ただし、フレンドリーファイアや、無いと思うが原住民が居た場合を考えてあまり広域破壊はお勧めしない。


「原住民ですか……いますかね?」

「人とは限らないぞ。もしかしたら知性のある魔物の場合もある。問答無用で砂まみれとか焼き殺すのは勘弁してあげた方がいいからな」

「そうですね。私もそれは望みません。探索中も気にしておきます」

「そうそう。じゃ、頑張ってね」


 ハムシーンの頭を撫でて、僕も蜥蜴姿になりジャンプ。『黒焔』を纏い、速度を調整しながら北側の範囲を目指す。ハムシーンも無理せず頑張ってくれればいい。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(200日~205日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~


取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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