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星と大地の盟約

 晴れてコンゴウがアースさん達の悲願を達成し、荒れ果てた大地地母神の聖地を取り返した。僕は何食わぬ顔で、4人の所に変える。消滅させた『ソレ』の嫌な感じを忘れるように、久しぶりに聞いたあの声のことを考える。何か理由があるのか、僕が『ソレ』を消滅させた時に再び例の無機質な女の声が聞こえたのだ。今度は何が有るかはわからないけれど、それも込みで今は忘れる。今は無事にコンゴウが縄張りを得たことを喜ぼう。

 結果的に倒したことになるアースさんのお爺さんの遺骸を丁重に埋葬し、大地龍族の文化的意匠があるらしく、その意匠を込めた墓標も作った。

 それから今度はこの荒れ果てた聖域を回復させることにする。……とは言ってもやり方はワンパターンである。ここの主になっているコンゴウに迷宮を作成可能な迷宮核を手渡し、コンゴウの好きに迷宮を作ってもらう。ここは隣にあるシェイドの縄張り『タクザムルの荒野』に隣接していて、砂漠とオアシスの魔境を複数抱える『ククルカルナ大砂漠』とも繋がる場所。さらにここはこの大陸を囲う海に面している。つまり、『エリアナ女王国』はこの南北に長い大陸の東西を貫通するように領有する形になる訳だ。

 誰もここには住んでいないので、全くもって問題ないが魔境を開拓する形でなければ戦争の繰り返しだったろうな~……。そんなことを考えている間にも、コンゴウの城ができ上って行く。これは完全にエリアナが手を加えている。早さが段違いだから。その上でコンゴウもいろいろと手を加えている。コンゴウとスルトの間でも話していたらしい。どうも新しい宝石や鉱石が得られる環境が欲しいとのこと。なのだが、この世界の書籍に記載されるような有名どころの金属は手に入れて居るし、環境的にこの周辺では採掘できない宝石や鉱石以外はもう見当たらない。


「ここに大地龍族や鉱石龍族、岩石龍族のコロニーをつくろうかと考えています。お父さんさえよければですけど」

「僕は構わないのだけど、スルトの方はいいの? 採掘班が減るんじゃない?」

「それは問題ないそうです。お父さんの分体…採掘クロ班長が居るので特に問題ないとのことですよ」

「……もしかしてアイツら、知性が目覚めてるのは知ってたけども。好き勝手しやがってからに。スルトがいいならあとはアースさん達と詰めてくれたら僕は構わない。好きにやるといいよ」

「ありがとうございます」


 アースさん達がその話を聞いてコンゴウに跪いている。やり難そうなので助け船を出す。僕もそうなんだけど、どうしても精神の成長という物はゆっくりなのだ。体つきや知能、スキルは直ぐに成長しても頭でっかちの大人になりきれない子供のままなのである。もう少し精神的な成長が進めばね。こういう展開でもそれなりに流せるようになるんだけど、僕も未だにこういう展開には慣れられない。その内なれるとも思うけどね。

 コンゴウの城は完全にエリアナのテコ入れが入っている。何層も構えられている堅牢は城壁はテンプレート。海から大きく抉り込み、港湾を作りながら城とも出入りを可能にした軍港となる。その横に大地神の聖域を荘厳な雰囲気を持つ石の外壁で囲い、内部にも神殿を用意。聖域とは言ってもここは有用な鉱石が多く産出する鉱山でもある。そこは大地龍族で管理してもらい、許可なしの入場はさせないように頼んだ。僕らは身内に龍族が居るので感覚がおかしなことになっているが、希少金属ってそもそも人間種が使うには飛びぬけて効果が良すぎる。人間種ではその機能を十全には引き出せないのだ。まぁ、一部例外も居るけどね。

 なので別に大量の希少金属が必要かと言えば異なる。『エリアナ女王国』でもそれらを加工できる極まった技術者も少ないし、使う場面も限られるから。今のところは僕の武器や魔人や龍族、一部の特殊な血筋の者に配備する武器や道具以外は使う事もない。便利だからミスリルの包丁とか工具はあるといいんだけどね。魔物の解体に使う解体刀とかはそういう物なんだ。


「ふむふむ。これはエリアナ城と同じ意匠ですな」

「その様ですね。コンゴウはいろいろと合理性を取るようですから、何かに凝り固まるような頭の固さはないようです。なので相談事はしっかり彼に持って行けばすぐさま取り入れる方法を考えてくれるでしょう」

「さすがは貴殿の子息と言う所か。柔軟さが果てしない」

「ははは。まぁ柔軟なことは認めますけど、僕よりコンゴウの方が柔らかな考え方ができると思います。それにこちらからの要望もあるでしょうし……。古い書籍を見れば、反対側にも大陸があるのでそことの応対もあるでしょう」

「そういう事なら我らもお役に立てるでしょう。我々は防御の要。友好的ならばそれに越したことはないのでしょうがな」


 それなんだよね~。なんでかよくわからないが、海をまたぐだけで戦力の感覚などが歪むらしい。あまり詳しくは知らなかったが、なんでもコンゴウが縄張りとする『星の聖域』の近海はリヴァイアサンのギルさんが縄張りとして持っている場所で、その辺りからも情報をもらっている。

 逆に反対側方向の『サーガ王国』近海からさらに沖の方向にも群島地帯があり、そこを抜けたところがメリアが縄張りとして持っていた場所とのこと。今はメリアの15番目の娘が当代のリヴァイアサンを名乗り、そこで縄張りを主張していると聞いている。リヴァイアサンは水中、海中では無類の強さを持つ。龍族はおろか人間ではどうしようもない存在であるはずなのだ。それなのだが人間種の国家がよくわからない行動をしていると言うのをメリアから聞いた。

 離れた大陸の連中なんてどうでもいいのいに、相手から攻撃してくるようではこちらも反撃せざるを得ない。幸い、僕と数名の鍛冶師や工芸家、科学者、魔人により空中の拠点もできつつあるので。まぁ、今はコンゴウとハムシーンの縄張りを構築し、他の国家の動向を見ていくのが優先だ。完全に無視している感じだが、『凍土の国』も瓦解が進みもうどうにもならないところまで来ている様子である。ユミルが密偵を送り込んでいるらしく、いろいろなことが解ってきているとも報告は受けていた。ただ、僕の耳に入れておくべきことは少ないとも同時に聞いている。龍殺剣を用いて龍を狩り、迷宮を増やして魔素結晶の採集量を増やそうとしていたことは重要だった。が、久々にこの言葉を使うが『愚王』とか『暗君』の存在は正直どうでもいい。これまでの傾向としてその内自滅するだろうから。


「ふむ。確かにな。魔素結晶は商売道具としては有用だが、それを失うという想定をしていないことは施政者としては落第点だろう」

「まったくその通りですね。魔素結晶は高額で、どこでも使われている日用品や軍需物資に繋がる物。それで利を得ることを考えるまでは良いとも言えませんか……。やり方がアウトですから」

「そうだな。国宝の龍殺剣まで使って、国策として行うには少々度が超えている。しっぺ返しの方が大きかろうな。超常の生物に手を出す事がどういう事に繋がるかを忘れてしまったのだろう。氷龍の大翁が穏健故の凍土の繁栄……」

「う~む。考えさせられる。我々も過度な欲を張ってはならんだろう。これは真理かもしれぬな」


 大地を守護する龍族の重鎮である御三方からは重みの違う発言が飛び出す。やはりこういう面では僕はまだまだ軽い。言葉の重みが足りないのだ。雰囲気とかもあるんだろうけど、僕はちんまいから割となめられやすいし。

 それは横に置くとして、ここはコンゴウとアースさん達に任せた。僕は眷属召喚でスミオを呼び出し、コンゴウと御三方に別れを告げて『王祖の迷宮』へ飛ぶ。動きやすさの問題でコンゴウの方面を優先したが、この後にもう一方向の縄張りを奪うために飛ぶのだ。コンゴウと同時期に生まれた兄妹のハムシーンがお気に召した場所を攻撃する。今度は『王祖の迷宮』を挟んで反対側にある『リヴィアンチェンの砂丘』だ。

 古文書を紐解く限り、そこは『海龍の墓場』とも呼ばれ、大昔は遠浅の海だったという珪砂の砂丘である。面積としては『ククルカルナ大砂漠』よりも広大で、潮汐により変わるが最大面積は二倍を超える。また、砂丘と言うだけあり、丘だ。それなりに高さもあるようで、僕の『黒鋼の森』が生まれる以前は『ファンテール王国』を侵食し続けていた悩ましき害悪でもあった。今では主の力が明らかに高い僕が居るので押し返しているが、その侵食力を考えるとそれなりに強いのだろう。


「お帰り、クロ」

「ただいま。本当に長らく空けた気がするよ。……それよりも僕の分体共が勝手に何かやってるんだって?」

「うん……まぁ、そうだね。いろいろやらかしまくって溶け込んでるよ」

「いきなり取り上げる方が問題を招きそうだね。仕方ない。無視の方向で行こう」

「それより、夜の寝室に来る人数を1人にできないの?」

「それは今後の態度しだいだね~。一応数は徐々に減らしてるよ。まぁ、頑張ってくれたまえ」


 そのまま僕はエリアナ城の広場でハムシーンと合流し、スミオとカヨの2機編成で飛んでいく。今回はハムシーンも万全で行ってもらいたいからね。『王祖の迷宮』から飛び立ち、そのまま西方へ飛ぶ。風が強い。これが浸食の理由か。ニナリアから聞いていたから出張版『黒鋼の森』を防風林に見立てて配置したけど、こういう事か。しかもなんだ? この魔物の密度は……。虫だね。ハムシーンも気づいた。

 こりゃ、最初は空中戦か……。

 大量のウスバカゲロウが飛んで来る。それを体に硬質ガラスの鎧をまとったハムシーンが突っ込んで行く。コンゴウにしてもハムシーンにしても賢い。ハムシーンは戦闘形態としてはユミルに近い。魔素の回転のいい近接魔法職だ。その代わりと言うと少し違うけど、本体の防御力が心許ないと言うのは気になるので、僕とスミオ、カヨも加わる。僕も遠慮なく『黒焔(弱)』をふりまける火炎放射器を使い、ウスバカゲロウを一網打尽にしていく。スミオとカヨは騎竜形態では口からブレスとして放てるので、彼女らも首を振りつつ燃やしていく。


「父上、様子がおかしいです」

「そうだね。こいつら何かに統制されてる。厄介だな」

「一度着陸しましょう。空では数にて劣る私達が劣勢です」

「解った」


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(200日~205日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~


取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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