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星降る荒野に立つ魔人

 う~い。お久しぶりです。クロにごぜーます。

 『トラマンタ帝国』でもいろいろとありましたとも。その全ての処理が終わってはいないけれど、これからはあそこに関してはシェイドが間を取り持ってくれると言うので任せた。それよりも伸び伸びになっている息子と娘の縄張りの奪取に同行することになった。また出張かよ……。という感じだが、これもかなり重要なことなのでちゃんと付き合う。子供達の縄張り奪取は中心にある『王祖の迷宮』の安全を確保するのに重要な防衛基盤となるし。

 その上で、今回は東から東北東寄りに広がる荒野を奪取するためにコンゴウと共にそこまで向かう。

 コンゴウは頭がいい。ゲンブのように策謀を巡らせるというよりは柔軟な思考で何かを利用することに長けている。行動原理としては僕の道具の用途を考える事に近いだろうね。ジオゼルグがククルカルナ大砂漠をほぼほぼ完全に掌握し、そこから逃げた大型の魔物や強力な魔物が跋扈する新たに開拓しようと考えている魔境『塩晶の谷』。ここは本当に水がない。人類未踏の地と言うのは魔境に関して言えばよくある事なのだけど、ここは魔人でもそれなりに厳しいだろうと思う。しかし、コンゴウはここが欲しいとはっきり言った。それも聞きたくて、ここに来たのである。


「お父さんは僕が結晶や鉱石系に特化した権能なのは知ってるよね?」

「あぁ、最初に聞いたよ。それがここで有用なのかい?」

「うん。ここは臭うんだよ。かなり希少な鉱石が。お父さんはあんまり魔道具に輝石を使わないけど、魔素の流れや充填速度なんかを上げるのには輝石は凄く有用だよ。たぶんスキルの関係で適さなかったから使ってないんだと思う」


 ほう、いい事聞いたな。息子から教えられたことを考えるとそれは確かに有用だ。僕個人としてはこれ以上の威力上昇や魔素の容量をあげる必要はないけれど、眷属に居る疑似人型生命体(ヒューマノイド)のスミオ達に持たせる武器に使う事はできる。あんまりぎらつくのは好みじゃないが、ワンポイントとかでやりようはいくらでもあるだろうし。

 それにコンゴウの言うところによれば、コンゴウは魔素をかなり必要とするけれど無理やり希少金属を結晶化できるという。スルトにも似たようなことができるが、スルトの場合はさらにそれ以上の魔素を必要とする。口が裂けても有用とは言えない。魔素の過剰消費は僕らにとっては危険な行為でもあるし、使いたがらないので何かしら問題があるんだろう。

 その点もコンゴウが教えてくれた。

 スルトの能力は『火山』に起因している。なので一気に熱で居溶かし、精製という行程を取るので、無駄な魔素を使うとのこと。これは権能に起因している条件のようなもので、変えたくても変わらない。それにスルトの能力では鉱石は錬成できても、岩石の錬成はできない。地下で長い間をゆっくり冷やすという行程をスルトでは行えないので。……という事だ。


「いつそういう話をするんだい? 基本コンゴウは砂漠に居るんだろ?」

「お父さんの分体みたいなものだよ。僕のヤツは時間制限付きだし、条件もかなり厳しいけどね。僕の金剛石の甲羅が成長する時にはがれるんだけど、それの一部が分体として使えるんだ。それであちこちの兄さんや姉さん達と情報交換はしてるよ」


 やべ~。コンゴウが有能すぎる。可愛らしい歩みでポテポテ進むコンゴウ。そのコンゴウが急に止まる。それに合わせて僕も立ち止まった。これ以上行くと大きな反応の魔物にでも気づかれる……という感じだろう。この反応は龍族か? うん。後ろから来た。来たのはラピスラズリのお父さん、アースさんだ。

 コンゴウはアースさんとも繋がりがあるのか。

 コンゴウが呼んでいたらしい。実はここ、大昔は大地守護龍の縄張りだったらしいのだ。しかし、例の厄災のおりにその代の当主が破れ、縄張りを奪われて久しいとのこと。ここに眠るのは厄災のさいにその代の大地龍族、アースさんのお爺さんを破った存在とお父上から聞いているという。それが何なのかはわからない。しかし、アースさんには見届けたいという強い気持ちがあったようだ。いつそういう話をしているのか知らないが、アースさんからすると、コンゴウは同族の同胞のような者。危機とあらば助太刀するのは当然とも。仕事があるので遅れて来るが、タングステンさんとトパーズさんも来るらしい。

 僕の探知でも確かに大きな反応がある。

 何度探知をかけ直してもこれは龍族だと思うんだよね。ただ、並みの龍族ではない。それこそ大古龍と言って差し支えない力を持つ強大な龍族だ。波長は濁りがあるが、アースさんに近い。これは嫌な予感がしてきた。この濁りの部分だ。何度か自身を鑑定した時に出る『???』という表記が出ている。コンゴウ、やりきれるかね~……。


 ~=~


 念の為、僕も武器を構えているが、コンゴウは落ち着きはらっている。後ろから砂煙をあげながら四足系の大古龍が二頭走って来た。タングステンさんとトパーズさんだ。コンゴウは2人とも会話をすると、これまでにない行動を起こす。星龍コスモに匹敵する部厚さの多重層反射結界だ。その上で、これも僕はあまり見ない術式展開である。

 『儀式召喚魔法』だ。文化的には人間の使う魔法で、数百人が非常に堅固な術式に魔力を流しいれる超大規模術式である。普通はね……。まず、普通はこんな言い方はしないけど、1人で使える魔法陣術式を小規模術式。2人から5人程度の規模で少し大きめの陣を用いる術式が中規模術式。その上が2人から50人で執り行う簡易儀式魔法、またの名を大魔法とか大規模術式。陣と詠唱が必須となり、隙も大きく、かなりリスキーながらその反面威力は人間種が出す軍の大隊から師団を撃滅することが可能な魔法だ。

 その上が超大規模術式。普通は使われない儀式的な物で、人間が神と交信する折に使うという魔法らしい。物語では勇者を異世界から召喚するなどと言うが、異世界と繋ぐほど膨大な魔力となると龍族が100人は必要だ。それを単一で行使するコンゴウ。この子も術師タイプか。

 僕は平然としているが、後ろでは上空を見て三人のゴツいおっさんが生唾を飲んで固まっていた。

 僕も上空を見て少々驚かされたとも。あれはどこから召喚したんだろう。かなりの高さにあるので厳密な大きさは解らないが、以前に撃墜した『エル・ピア』など比較にならない大きさだと思われる。僕は急いで念話魔法で飛行中の哨戒している龍族を近くの安全な陸地に降りるように伝え、ゲンブにもそこそこの厚みを持つ対衝撃結界の展開をさせる。これは危ないね~。


「い、いつも思うが、貴殿の眷属はどの個も規格外だな」

「うむ……。星降りを昼間に見ることになろうとはな……」

「アースよ。我らも防御障壁を張らねば拙いのではないか?」

「いや、この直下は問題なかろう。しかし、空と地続きの場所は危うい。クロ殿の判断が最良だ」


 コンゴウが使った超大規模魔法に名前を付けるなら『星降(メテオ)』だ。その岩石の巨大な固まり。島と見紛う固まりが岩塩の鋲が屹立するすり鉢状の巨大な谷へ吸い込まれるように落ちた。うん……。これはヤバい。僕も食らったらぷちっとなるだろう。絶対痛い。

 そして、その岩塩の谷の中心からまさに満身創痍のボロボロの龍が出て来た。

 何だろう。凄く嫌な感じがする。アースさんも凄い憤怒の表情だ。嫌な予感が当たったかぁ~……。何かがアースさんのお爺さんに取り憑いたんだ。何が憑いているのかは知らないが、僕からすると凄く嫌な感じのする気持ち悪い感じだ。それにアースさんのお爺さんの意識は既に壊れているんだろう。動きにキレはなく、ひたすら威嚇のような咆哮をあげるのみ。後ろからも怒りに満ちた唸り声が聞こえるが、まだコンゴウの攻撃は終わっていない。僕は三人に前に出ないように抑え、コンゴウの連続術式が発動するのを見守る。

 術師と言っても、いろいろ居る。僕やヨルムンガンドも術師と言えば術師だ。しかし、僕とヨルムンガンドは『錬金術師』という術師だ。対するコンゴウは完全なる『魔術師』である。これで魔法を他人に教えられる造詣深さがあれば、もう『魔導師』だけどね。

 そのコンゴウの張っていた反射結界に例の龍が突撃し、跳ね返されたのを見るやコンゴウの反撃が始まる。龍の足元から巨大なダイヤモンドの腕が生え、龍を押さえつける。その上からまたもダイヤモンドの鋲が雨あられと撃ち込まれた。ちょっと気になって脂汗を流しているアースさんに聞いてみる。アレを食らって生きられるかと……。僕? 僕は……避けていいならいいけど、食らい通しは無理。死ぬ。


「御三方はアレ、食らって生きてられます?」

「いや、不可能だろうな。超大質量を持つリヴァイアサンを除けば我らは龍族で最高の防御力を持つだろうが……。金剛石の鋲に魔素を乗せて撃ち込まれれば、龍殺剣など比にならぬ威力となるぞ」

「うむ。……アースで2発? 3発なら何とかなるかもしれぬが、私とトパーズでは即死だ」

「間違いないな。貴公のご子息は一体何者なのだ?」


 その時にちょうどいつもの変化が起きた。僕の時は無かったんだけど、僕の子達は全員光りながら魔人化する。魔人化する前とした後では、内包している魔素の総量が倍以上変わる。暴走することはないだろうが、僕も一応見届ける。外見はやはり5歳程。空色の美髪を一本にまとめたクールな印象の少年が立っている。髪が長いのといくらクールな印象とは言え、5歳程の見た目なので一見しただけでは女の子のようにも見える。しかし、コンゴウの性別が男性であると僕らは知っているので、その美男子がここの主に成ったことを確認。

 そして、僕はコンゴウをお祝いを言いに来た御三方に預け、最後の〆を行う。アースさんのお爺さんの肉体を奪おうとして、何かに封印されていた『ソレ』。グズグズに溶けている腐った肉塊にぎょろりとした眼球が二つ。僕は最新版の合金。『紅色鋼(ベニイロカネ)』で作ったsocomMK109に魔素添着弾用のマガジンを入れる。そのまま一発分の威力を調節し、逃げようとおたおたべちょべちょしている『ソレ』を消し去った。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(200日~205日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~


取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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