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クロの長期出張・トラマンタ帝国辺境領5

 はい。今日も元気なクロであります。

 僕やロゼリアが『アザル・ダマカサン』に到着すると、何故かシェイドの眷属の鬼族が要塞を守っていた。その鬼族の話を聞くと、ティガーが僕の友人だと知らずにここに攻撃を仕掛けそうになったとのこと。……確かに双方知らないからね。なので今は腹を割って話しているタイミングらしい。

 ティガーから物凄い勢いで謝られたが、今回は僕も悪い。情報を伝えておかなかったのは僕だからね。外交官としては大きなミスである。ここは僕が謝って、改めて2人を紹介。

 シェイドは正式にエリアナから拝領されている僕の息子で、隠密系に適正の高い子だ。ティガーは勇猛かつ勇敢な将軍。おそらく、ここと隣の大領2つは『エリアナ女王国』へ帰属する形になる。なので、シェイドにもお隣さんとして仲良くしてもらえるようにちゃんと伝えておいた。

 今回のファインプレーは鬼族達が防戦に徹し、攻撃意志を見せなかったこと。それに経験豊富なティガーが気づいてちゃんと会話に漕ぎつけた事だ。これからもこういうすれ違いがあるかもしれない。気を付けよう。


「シェイド、この人はティガー・ライゼン=ダマカサン辺境伯。いずれ僕らの側に着いてくれる領主さんだ。かなり勇敢な将軍だから覚えといて」

「おう、ティガーだ。よろしく頼むぜ」

「で、お隣の人がエイズミー・ローベント=タクザムル辺境伯。こちらもいずれ帰属を考えてくれている領主さんだ。覚えておいて」

「紹介に預かったエイズミー・ローベントだ。よろしく」


 他の主要メンバー、ロゼリアやそのお母さんのロゼッタさんを紹介。そのままシェイドが僕に報告と、相談をしたいという。エイズミーもティガーにも直接関係してくるだろうから、しっかりとしておいた方がいいと言われた。それはエイズミーが拝領されたことになっている場所の隣『タクザムルの荒野』のことだ。シェイドが主であったエンシェントボーンや高位のリッチ、ノーライフキングを倒してしまったので、現在は変化を待っているらしい。

 ただこれまでの魔境と異なり、長い間滞留し続けた濃密な魔素と瘴気が混ざり合い、浄化が行われなければ開拓もままならないというのだ。

 それもそうか。鬼族すら入れない強い瘴気と高濃度の魔素。そうなると対応できるのは僕やシェイドなどの高位魔人だけとなる。しょうがないね。ついて来たいと言って来たティガー、エイズミー、ロゼリア、3トラ姉妹、ミリアンヌやロゼッタさんと従者4名を連れて行く。環境適応の外套と魔道具のガスマスクは必須だけどね。エリアナにオープン回線で念話を飛ばす。あとから知られると面倒なメンバーは先に呼んでしまう事にした。空からヨルムンガンドが飛んできたし、爆走してきたらしいスルトが現れた。僕の眷属は状態異常は相当きつくないと効かないので。

 残りのクリエイターは『王祖の迷宮』の立体縮尺図を介して参加するとのこと。構造物の創造ような物はエリアナがどんどんポイントで生産しているので好き勝手にやっていい感じになり、どんどん製作が進んで行く。迷宮内の不思議な創造製作を見れるなんてとても貴重なことだよ。運がいいね。トラマンタの皆はこんな物は見た事はないはずだろうから。それに魔人と言うと戦闘に傾倒しているイメージが強いけど、我が家の魔人はそこそこクリエイティブ系魔人は居る。全くその辺に興味を示さないのはタケミカヅチくらいじゃなかろうか?


「あの子達も魔人なのですか?」

「そうだよ。先に上から落ちて来たのがヨルムンガンド。あとから走って来たのがスルト。どっちも僕の娘だ」

「お母様はどちらに?」

「あ~……ロゼッタさん。魔人は必ず有性生殖で生まれるとは限らないんです」


 一応説明しておく。魔人は有機生命体のように有性生殖をおこなう必要がない。その方が確実ではあるんだけど、僕の場合はまだまだ生まれて半年ほど。魔人としてもかなり若く、成熟の程は知れている。それにこの国の事情があり、一気に戦力の拡充が必要だった時に都合がよかったのだ。スルトはニシアフリカトカゲモドキの魔物から魔人化した焔と大地の魔人。ヨルムンガンドはアミメニシキヘビの魔物から魔人化した豊穣と山岳の魔人だ。

 どちらも僕の血筋ではない。だが、僕の濃密な魔素を余すことなく吸収し、力を蓄えて位階の高い魔物として生れ落ちた存在なんだ。

 魔人は所詮、突然変異の末に生まれる生き物。例が人間種の書籍に残っていないだけで、魔人と魔人の子は魔族になると思うし。形質が固定されて継代されねばその条件には至らないけれど……。それに魔人と他種の子供が精強と言われるのは魔法を使う能率の向上が目覚ましい事や、魔素の循環が強くなり肉体がとても堅固になる。病に強く、怪我の治りは早く、運動神経も向上し頭の回転も速くなる。……生活中にも魔素を使うという弊害は出るけど。


「そういう事なんですね~。人間ではそれはできないのですか?」

「おそらく無理かと。その場合は女性の胎内に卵子を常時抑えておく必要と、生活がままなりません。そこから動けませんから」

「クロから魔素?だったか? それを流し込むのはダメなのか?」

「良いところに気づいたけど。それも危険だよ。魔境が人間に住みにくい理由は魔素が濃過ぎるから。魔人側が魔素の供給を間違えれば母体にも大きなダメージになりかねない」

「ひえ~……。なかなかうまい事行かないんだな」


 ロゼッタさん、ミームと繋ぎ、ビアンカがまとめた。そうなんだよ。上手い話はなかなかないんだよ。僕が自分の作業を終えた段階で僕は暇をしているメンバーと会話をしているが、……ヨルムンガンドとスルトが僕の蜥蜴型形態の等身大フィギュアを作っている。フェルヘスはそれをあちこちに配置しているようだ。いや、ティガーとエイズミーもだね。それからロゼリアはそれ欲しいの?

 商品化するかはヨルムンガンドとスルトに聞いて。別に僕は拒否しないけど、そんなのどうすんのさ……。

 部屋に飾るの? 『すちゃっ……』ポーズの僕の蜥蜴等身大フィギュアだけど。え? それだけじゃない? 迷うくらいある? いつの間にやら僕が作った泉型の浄化魔道具にも僕の蜥蜴型の時の彫刻が施されている。こういう作業はカレッサがしてるはずだから、カレッサも悪乗りしたな。それに円形の本堂にドーム型の天井を構えた神殿風の造形。デザインはエリアナ、それに合わせた建築知識と加工はゴードンさんとキールの親子がやってるみたいだ。ミニフィギュア置きすぎでしょ……。

 女性陣は神殿のど真ん中に陣取って、ミニフィギュアを作り続けているスルトとヨルムンガンドに交渉を始めている。特に何のこだわりもなく1個は手渡しているが、それスルトの方は大理石だしヨルムンガンドが作っているのはミスリル粘土だろ? 結構な価格だろうに。

 圧倒的な数が僕のミニフィギュアだから目立たないけど、よく見れば兄妹全員のミニフィギュアがあちこちにある。サイズ的にタケミカヅチの等身大像だけは外にあるけど。それから神像が僕の人化形態なのはやめない? 恥ずかしいし。蜥蜴ならいいけどさ。


「本当にあっちゅうまにできたな。これなら運営開始から半年ってのも理解できるぜ」

「本当だな。私はどうしてもこれまでの常識が抜けなかったから半信半疑だったが、これはなかなかだ。早さもそうだが、クオリティが凄まじい」

「これでここも穀倉地帯となるのか? クロ殿」

「それはシェイドの考え次第ですね。軍事拠点でも、穀倉地帯でも、商業都市でもなんでもいいです。彼の考えでいろいろやってもらいますから」

「意外と放任主義なんだな」

「基本僕は放任主義だよ。目に余るなら手も口も出すけど、できるだけ自由にやらせたいんだ」


 神殿は早くも完成している。天上にも荘厳な雰囲気の『エリアナ女王国』誕生神話的な絵が施され、神像や女神像など、あちこちに精緻な装飾が伺える。

 この神殿を設置した目的はここ『タクザムルの荒野』の浄化にある。

 僕が設置した泉を模した浄化の魔道具がメインである。それを飾り付ける為だけにこれだけの神殿が出来上がったんだよね~。悪乗りというか、それなりの装飾に留めればいいのに誰一人手を抜かないから……。恐ろしい物ができてしまった。探査スキルで周囲を確認している感じ、物凄い速度で瘴気渦巻く毒沼が浄化されて行く。人型、獣型関係なくアンデッドが次々にアンチアンデッド効果で押し出されたり、浄化の光に巻かれて消えていく。怨嗟の念とかだけを消す低位の浄化ではない。骨や腐肉すら全て消えてしまう。ここまでやられると、かなり高位のアンデッドは近づけないんじゃなかろうか?

 そこにシェイドがエリアナとスルトに念話を繋いで何かを頼んでいる姿が目に入る。

 皆が興味深々だ。これだけ大規模な神殿の周りをシェイドがどう管理するかは見ものだ。現状のシェイドの管理能力では、この広大な瘴気に包まれていた魔境を一挙に管理するのは難しいと思う。どうするつもりかは解らないけれどね。数日で『タクザムルの荒野』は浄化されると思う。シェイドがエイズミーとティガーを呼んでぴょんぴょん跳ねながら彼の構想を伝えていた。なんだか2人も面白そうに笑っている。何をするつもりかは解らないが、あまりはでなことはしないで欲しい。


「一体全体次は何が起きるんだろうな? うぉぉぉ?!」

「ちょっ!! 地面揺れてッ!!」

「つ~かッ! 盛り上がってるぅ~ッ!!」


 トラ三姉妹が喧しいが、シェイドが隣領の領主2人に何を言ったのかがなんとなくわかる動きが起きた。シェイドは自分の縄張りとは言えど『タクザムルの荒野』を独り占めする気はないのだ。エイズミー、ティガーに人手を出してもらい、小山の麓に大穀倉地を作るつもりなんだ。まだまだ2人の領地に隣接する場所が浄化されるまでは数日かかるだろうけど、それでも不毛の地を有用な土地にできるのはこれ程なくいい事だろう。水源は神殿から清浄な湧き水が流れ出し、低い場所もどんどん浄化されていく。このまま上手くいくといいな。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(200日~205日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~


取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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