クロの長期出張・トラマンタ帝国辺境領3
最初はおいて行くつもりだったのに、ミリアンヌもついてくるらしい。1人で残すとエイズミーが心配なんだけど……。と思いきや、昨晩に通信魔道具で呼んでおいたスミオとカヨと……なんで皆で来たの? ヌレバとハグロも来た。その背には1人ずつ見知った顔と、大荷物が積まれていた。名前までは知らないけど、イレーヌが育てた生え抜き人魚と上手い事やったスキュラの娘だ。それと追加でスキュラがもう一人。志願者とのこと。頬が引きつっているエイズミーだが、4人は妹のミリアンヌにも挨拶して既成事実が完成したのでもう逃げられない。本来陸上の生活に向かない人魚やスキュラであるが、そこは僕がご祝儀をこっそりとエイズミーに渡す。最近解って来たんだけど、迷宮核自体は魔境や魔素溜まりでなくとも生きられる。中に一人でも人が居れば大きな規模にさえしなければいいんだよ。屋敷の改造と維持のためにも使った方がいいと説得して渡した。
そのまま僕らも1人一体という好待遇で、かなり堅固な対物理障壁と保護魔法をかけ、かなりの高度を飛んでいく。
トラの三姉妹は足がふわふわする感じがどうにもダメらしく、もう怯え切っている。対してミリアンヌはあの青い顔で儚い感じは霧散し、実に楽しそうに相性が良かったらしいカヨのアクロバット飛行を楽しんでいる。保護魔法があるから落ちないけど、普通はやめた方がいいと注意しておこう。
「こ、怖かった……」
「空は……二度と飛ばない」
「あ、脚が、脚が伸びない……腰がぬ、ぬけて……」
「また乗せてくださいね。カヨちゃん」
エルフ自治区の近くの森に着陸した。
そこで四人はもう一度驚くことになる。4体のゴーレムが急に人型に変身したからだ。スミオを筆頭にした疑似人間型生命体族は新たな魔人級の戦闘力を持つゴーレム派生の種族。美しいながらそのアンバランスな骨格と肉付きに違和感はあるが、その美しい四姉妹にミーム、フェルヘス、ビアンカ、ミリアンヌの4人は呆然としている。
詳しく話しても解らないだろうから、僕の眷属だと説明した。
この言葉で大概の者が『それなら納得』みたいな表情をする。もう慣れたので今更どうのこうの言わないけど、つくづく僕がどう見られているか凄く疑問だ。この前にヴォルティアーカが教えてくれた僕の外聞は本当に酷かったし。目につく物はなんでも殲滅。目につく美女は全て我が物とするとか……。物凄く心外なんだけど。僕、一度も自分から女性を襲ったことはない。お仕置きはしたことはあるが、基本的に迎撃しかしない。このスタンスは崩していない。
そのことをスミオ達が説明してくれている。まぁ、僕本人が何を言おうと説得力ないからね。本人からの申告なんてそんなもんだ。……なんで四人は赤面してるの? スミオ達は何を教えたの? ねぇ? あ、そこで黙秘しちゃうの? お仕置きしていい?
「夜の事情を少し……」
「まぁ、今回は目をつぶろう。それで? あっちは何か変化あった? 大きな変化とか聞くべきことは聞くけど」
「はい。では……」
僕を含めて5人が亜然とした。確かに『サーガ王国』から三姫姉妹が『お嫁さん会議』の選考を受けるって話は聞いてたけどさ。どゆこと? なんで奥さんが60人も増えたの? え? それだけじゃない? あぁ、奥さんになるかは別なのか。カサブランカの古くからの交友のある真祖吸血鬼が2家族移住してきた。うん。これはなんとなく聞いたことある。次。定住はしないが、吸血鬼の一族で行商を生業にしている一族が居て、その一族が御用商人になるとのこと。OK、次。イオが見張っていた魔境『不破の森』からダークエルフが集落ごとに移動し、次々に移入を開始? ダークエルフは初めて聞いたな。思想調査とかがもんだいないようなのでそれもOK、次。同じく『不破の森』からケンタウロス族と近似する種族が数種移入予定。今準備中とのこと。それもまぁ、セリアナさんが見てくれるなら大丈夫でしょ。次。
『凍土の国』で動きあり……か。迷宮核が無くなり、国の基幹産業が消失したので土地を離れる者があとを絶たず、ユミルの魔境『氷の国』内で氷龍に保護される一般人が大量に居るとのこと。それも致し方ないな。その辺りの対応は訓練も兼ねてユミルに任せておこう。くれぐれも要人だけはさせなくちゃな。
大きな連絡はこれくらいとのこと。なので、連絡が必要なところには通信魔道具で抗議文や、ユミルへの指示と激励を送っておく。僕の本業は外務。こういう事もマメにしてないと回らないのだ。そのまま歩く事数分で、森の中に敵対勢力反応がワラワラと動く反応がある。おそらくエルフだろう。一応ロゼリアには通信魔道具で連絡してあるので、それで攻撃してくるならこちらも受けて立とう。
「エルフだね~。でも、弱い。アタシらにかかれば……」
「まぁ待ちなよ。今回は君らの関与は無しで。スミオ達に任せておいて。それから、僕の中級眷属の力も見てもらいたい」
実はスミオ達4人は僕の眷属としては一段階落ちる。そういう意味では淫魔や吸血鬼は下級眷属なのだ。おそらくだけど、眷属としての繋がりがこの関係性に直結しているんだと思う。上級眷属というか、一番力の強い眷属は間違いなく僕の子供達。その次がスミオ達なのだ。関係性としては孫?にあたる。ヨルムンガンドが生みの親であり、僕の因子を持ちはするけれど比較的少ないこともあるだろう。
その4人は最初期の規格としては全員スミオと同じ形式で作られた。しかし、メンテナンスをしてくれているヨルムンガンドによると、4人は全員違う個性が出てきていると言う。まず、長女となるのだろうスミオは3人の統括指揮を執り行える。リアルタイムの複雑な挙動や3人の損傷具合と行動の履歴から最適解を導き出し、敵を確実に殲滅する名軍司だ。武器としては騎竜形態の時に使っていたバックアタッチメントをそのまま流用した衝撃魔法弾のMG-HVを二門装備した面制圧形態。障壁魔法との併用は無類の固さと火力を誇る。出す時に背中のジッパーを下げるのはどうにかして欲しいのですけどね。
残りの三つ子も各々違う。まずはカヨ。カヨはどこにでも入り込める中衛をこなす。時と場合によりスミオの指示を通し、2人の姉妹との中継ぎをこなす前線指揮官の役割。武装はG-36というモデルをベースにしたアサルトライフルでG-228Kverだ。魔法弾と実弾を両方使える特殊な機構を盛り込み、連射力を落とさずにある程度の狙撃も実現。問題としてアダマンタイト製なので重すぎ、魔人や龍族などでもないと取り回しが悪すぎる。
ヌレバは特攻攻撃に超特化した格闘と近接射撃戦闘のエキスパート。彼女の武器はUSP-LV.Nverと内蔵式黒閃ナイフだ。この銃は完全はな魔法弾仕様で、ヌレバの扱いやすいように握りを調整もした。その上で魔素添着弾を使用した爆裂弾が撃ちだせる。威力は僕のよりだいぶ低いが、人間種相手には過剰過ぎる威力。最後の黒閃を短時間のみ15㎝程度展開できる特殊機構。あまり多用されると壊れるかもだが、基本筒袖の中にある仕込み刃で戦うヌレバだから使う事はほとんどない。
最後のハグロ。ハグロは完全な狙撃手。一応USP-cは護身用に持つが、10㎞単位の遠距離から狙撃できる精密射撃に特化させたPSG-44MK5Hverがメインウェポン。今回は狙撃による戦闘は無いので、筒袖に隠されている仕込み刃と20㎝はあるピンヒールの仕込み刃で格闘戦を行うんだろう。
「ねぇ、強くね? アレで中級ってマジ?」
「おおマジ。というか、あの子ら遊んでるよ。エルフ相手だから本気は出せないからね。わざと派手に攻撃して見せつけてるんだ」
僕の奥さんにはよくある事なんだけど、戦闘中に僕にチラッと視線を飛ばしてくる。その上で投げキッス、パンチラ、無駄に体を動かして揺する、わざと燃えやすい攻撃だけ受けて服を焦がしてみるとか……。魔人組と龍族がよくやるんだけど。誰から聞いたか、自分達で考えたか? そこらへんはいいけど、念話で真面目にやるように言っておく。お仕置きは嫌だろうから。
それからはもうほとんどエルフは行動すら起こせなかった。
魔人から見れば少し遅いんだけど、それでも人間種では反応すらできない速度だからエルフは50人近く居たのに物の数分で撃退。全員を安全面と晒しものにするために岩で錬成、硬化させた急造の檻に詰め込んで放置した。カヨが騎竜化して走れないミリアンヌを乗せる。3人も地面を駆けるだけなら並の馬より格段に速い3人に乗ってくれた。飛ばないなら凄く楽しそうだな。
僕はその異様な雰囲気に気づく。屋敷の離れのようなところにロゼリアと数名の反応がある。めんどくさいな。なんとなく事の経緯を推察し、離れを襲っているだろうエルフ集団に僕が漏出している魔素で全員締め上げる。真っ青な顔をして倒れていくエルフ達の間を歩いて抜けて、通信魔道具でロゼリアにメッセージを飛ばす。すると中から大きな反応があり、6人程の女性と共に現れた。1人が人族で30前後かな。残りはロゼリアと全員がハーフエルフだ。何があったのかはわからないが、僕は門前の方面から来た招かれざる客へ割と強めの魔素を放つ。今度の刃いつものとは違うぞ。魔王は何とか耐えたが、お前達はどうかな?
「クロ、ありがとう」
「かまわないさ。それから、あのエルフの軍隊っぽいのは敵ってことで構わない?」
「あぁ、私達を秘密裏に殺そうとした輩だからな。兄妹らしいが、知ったことか」
最後にロゼリアに確認を取り、スミオの指示で魔素反射結界を近くに居る10人程度を囲えるように張ってもらう。そうしないと後ろのメンバーも怪しいからね。僕が魔素をそれなりの規模で放つと、その場は魔境と化す。時間は短時間だけどね。ここが魔素だまりではないから。濃い魔素は人間種には本来有害。僕らの場合は迷宮内のように調整されているなら影響はない。しかし、目の前の彼らが感じているのは、悪寒とか寒気、怖気は飛び越している。明確な恐怖と死だ。濃密な魔素に囚われ、手を出したことを後悔しながらそのまま死んで行く。……前に虫の息で解放してやる。この方が後々面白いことになる。それをこの周辺に集まったエルフの大群全てに行う。絶望を見ればいいんだ。
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・成長記録→経過
クロ
オス 生後半年(200日~205日)
伴侶 エリアナ・ファンテール
身長130㎝
全長17㎝……身長12㎝
取得称号
~取得済み省略~
取得スキル
~取得済み省略~
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