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クロの長期出張・トラマンタ帝国辺境領1

 は~い。乙です。クロですね。

 勝負?はまぁね。一瞬です。正直、魔人に冒険者が勝てるなんてことは無い。ティガーもその辺りは説明したらしいんだけど、全く聞く耳持たずという感じだったようだ。冒険者ギルド会館の闘技場で1対3の真剣勝負。武器、魔法あり。審判は同じく特級冒険者の有資格者であり、この度辺境伯に正式就任した兄のティガー・ライゼン=ダマカサン辺境伯が務める。正直武器なしで良かった気がした。

 開始の合図と共に投げナイフを三人の脚元に投げ込んでその爆風と言うか、ぶつけた瞬間の衝撃波で跳ね飛ばされて壁に激突、失神して戦闘不能。終わり。

 内容が酷過ぎて、ティガーすら目頭に手を当てていた。実際、僕にパーティー勧誘というか、それ以前に冒険者勧誘の嵐が吹き荒れ……、そうになったところを2m程の偉丈夫であるティガーが仁王立ち。そこで然るべき立場の人間。ようはギルドマスターなどの役職持ち、特級冒険者にだけ説明した。その集団から二度見されたが、手を振り返しておく。一応、このなりで国家の象徴なんでございやす。


「ま、マジかよ。つ~か最近話題の『殲滅の大魔人』がこの人なのか」

「可愛い顔して凄い実力者なのかよ。世の中不公平だぜ」

「僕もできればお兄さんみたいに少しはゴツくなりたいよ。このみてくれだとなめられてしかた無いんだ」

「お、おう……。そうなのか…ですか」

「普通にしゃべってくれていいよ。僕もやりにくい。元々は魔物で魔人がいきなりこんな立場でやりにくいったらないよ」


 僕がかなりフレンドリーに話しかけたので、ティガーと知り合いの特級冒険者の面々とは直ぐに打ち解けた。それから、ギルマスが僕を勧誘するのは禁止事項として掲示板に張り出している。『やんごとなき身分のお方に付き注意』とのことだ。『生も可・死も可』とか書かれて無いか少し心配だったが、なんともない。そういうお約束もないし。むしろ面倒なのは、このなりのせいで女性冒険者に追い回されることだ。

 なので、ティガーに肩車してもらう事にした。眺めもいいし、めんどくさい付き纏いも無い。

 そのままティガーはギルマスに軽い感じで挨拶し、妹さん三人を引きずって帰って行く。そんなぞんざいに扱わんでも……。

 意外とティガーは子供にモテる。めちゃくちゃなつかれていて、相手をするのに戸惑っている感じだ。ティガーは子供にモテるが、子供に慣れている訳ではない。子供達とこの辺の情報交換をしながら歩き、そのままアザル・ダマカサンの彼の家になったらしい豪邸に入る。その間、妹さん三名はずっと引き摺られていたんだけどね。子供達すら突っ込まないという……。

 中も綺麗だね。妹さん達を適当に部屋の隅に投げ込んで、彼自身は……あれってカレッサが特別生産していたワイン用の温度管理魔道具だよね? 買ったんだ。

 僕が酒を飲まないことは知っているらしく、魔道具セラーの下にあったぶどうジュースの瓶をくれる。グラスもワイングラスと、僕はコップだ。彼なりのもてなしと受け取り、形だけ屋敷に引っ越したという彼に妹さん達のことを改めて問う。一応『女王会議』には連絡しなくちゃいけないので、それは確定事項だけど、僕には皆とくに文句はない。妹さん達の性格はこれから躾けて行けばいいと思うし。


「お前さんのそういう所を少し羨ましく思うぜ」

「そう? 年齢の割に達観し過ぎてて気味悪がられるけどね」

「はははッ! そりゃそうだろ~よ。それから、エイズミーのヤツからも来るぞ。アイツの方は文句なしの子なんだが……アイツ、手放せるかな~」

「もしかしてエイズミーも出すの?」

「アイツも形だけは出さなならんからな。それは受け止めてやって欲しい。俺もやんちゃな妹共を引き取ってもらわなくちゃならんからな。家のお転婆未婚三姉妹は地元でも有名なんだ」


 どうもティガーの妹のミーム、フェルヘス、ビアンカの三姉妹は、実家のある土地でも暴れん坊でどうしようもない存在と認知されていたらしい。まごう事なき不良娘だったと言うのだ。実家は男爵家だから特に男坊主が被害に遭い、最終的には父親には何も言わずに冒険者になっていた。しかもここ最近特級になっていたそうな。軍務めの兄としては心配で、本当はもっと大人しくして欲しかったのだが……。母親からしてそういう性格だったので、完全に母からの刷り込みだろうという。

 『女王会議』にはくれぐれも頼むとのこと。粗暴で暴れん坊ではあるが、一通りのことはできるというのは保証してくれた。自活できない龍共よりはマシかもしれない。

 そして、その晩に僕を夜襲してきた三姉妹を散々に打ち負かし、ティガーには呆れられたが三姉妹には首輪をつけてドナドナした。もう二十歳も過ぎたいい大人なんだから、兄ちゃんに迷惑かけるような妹は卒業するようにと躾けよう。

 僕の速度で走ると三人が死んでしまうので、ペースを落としてジョギングくらいのペースなのだが。三人共もう死に体だ。30分も走ってないぞ……。仕方ないので三人を担いで走る。三人共大人しく担がれている。大人しくしてないと、落ちた時に酷い目に遭うだろうからと言い含めておいた。実際、今の速度の状態で落ちたら大けがで済めばいい方で、下手すれば全身骨折とかの生死の縁を彷徨う事になる。魔物が来てもsocomMK109で撃ち殺しながら走った。途中から三人共意識がなかったけど、急げば日の高い内にエイズミーの屋敷にたどり着けるだろうから、そのまま走る。

 エイズミーに拝領予定の領地はティガーの領地に隣接し、シェイドの縄張りである『タクザムルの荒野』に隣接している。同じく辺境伯となった。完全に左遷でもあるよなこれ……。


「おっす。ちょっと寄った」

「あのですね。急に来られても……」

「いや、顔見せに来ただけ。ティガーに拝領の話と……。その妹さんの話をきいたんだ。嫁に出したくないなら、形だけっていう手も……」


 その瞬間、いつも落ち着いていて真面目そうな感じのエイズミーが、鬼気迫る顔で僕を見つめる。別に僕はこれ以上増えても増えなくても変わらない。100過ぎたら1人程度変わらんよ。だったら、エイズミーが手放したくないと言うならその方が僕としてもいいのだ。……と言おうと思ったんだけど、ぜひ貰って欲しいと言われた。

 なんでも変なところに嫁に出すよりもよほど安全だし、環境も良いからという事だ。

 ああ、うん。それは認める。『エリアナ女王国』の環境は凄くいいと思う。住み着く人多すぎるから。なんでもエイズミーの妹であるミリアンヌは病弱らしい。病弱と言うか、虚弱体質であまり激しい運動はできないとのことだ。原因不明でこれまでもいろいろ苦労してきたが、何とか嫁に出せるまでに育ってくれた。花嫁姿はみたいとのことで……。

 コイツ、ヤバいシスコンだな。半ば諦め、浅い茶髪に碧眼のエイズミーの色素を全体に薄くしたはかなげな少女が中で掃き掃除をしている。確かにエイズミーも細面で凛々しい感じの美談だからな。ミリアンヌも少しやせ気味でツリ目なのに、柔らかな表情が相まってこれぞ『深窓の令嬢』って感じだ。然るべき家柄なら凄くモテただろう。虚弱体質も……ちょっと実験してみるか。


「なぁ、エイズミー。妹さんなんだが、似たような症例を見たことがあるんだ。少しずつ、これを飲ませてみてくれないか?」

「な、なんだとッ?! それで治るのか?!」


 離れろシスコン兄貴!! とりあえず、彼女の症状の説明をする。エイズミーもそうだが、かなり有用なスキル構成で、まるで『半妖精』のような組成をしている。それはミリアンヌには顕著と言えた。これはセリアナさんと同じ症例だと思う。セリアナさんが病弱だったのは、単純に魔素が欠乏していたから。おそらく、ミリアンヌもこの薬である程度魔素を回復したら変化が出ると思うぞ。

 エイズミーのスキル組成からして、大昔に何かしらの妖精族との混ざりがあるんだろう。ようは先祖返りのようなものだ。

 飲み薬を少しずつ飲んでもらうだけで大きな変化がでる。青いと言った方がいい程窶れ、痩せていたミリアンヌの頬に赤みがさして明らかに活力がみなぎる感じがするのだ。たぶんエイズミーもアレを飲めばもっと能力に向上が見られるはず。妖精族や魔人の血を引き、血が薄まった人族の家系には時折こうやって先祖返りが生まれる。セリアナさんもそういうタイプの人で、あの極まった記憶能力や回転の異常によい頭脳は魔人由来の要素だと言えよう。

 その事実を一応説明しておく。

 2人も複雑な血筋なのかもしれない。別に貴族だとかそういう関係じゃなくてもありうる話だ。王祖が建国したファンテール王国近辺の人間が住まう土地には、魔人や妖精問わずに精霊信仰を取り上げた御伽噺は多い。そのうえで妖精や魔人が土着の民に力を与え、守護に任ずる御伽噺は本当にたくさんある。実はこの数ある御伽噺……。どう考えてもモデルとなった人物が特定できる物が数点あった。間違いなくツェーヴェがモデルの物が数点見受けられて、隠してあったのを僕がもらった。かなり美化は入っていたが、確実にツェーヴェの事だった。


「あ、あの、兄さん? この子は?」

「ミ、ミリア、驚くなよ? この方は子供に見えるが、魔人様だ」

「ま、魔人ッ!?」

「落ち着け。大丈夫だ。この方は無思慮に暴れまわるような方じゃない。俺やティガーを友人として扱ってくれる気さくな方だよ」

「……それもそうですね。こんな近くに居て何も起きていないのですものね」


 魔人のことは御伽噺などで伝わる実態からするとこういう反応が普通である。なので僕もそれほど気にしない。気にしていても仕方ないので。とりあえず、最近ようやっとここに引っ越して来たらしく、掃除もまだらしい。ちょうどいいじゃん。人手には事欠かない。一日前に舎弟に仕立てた三人も動員して掃除を始める。

 エイズミーは面識があるんだな。大丈夫。僕が躾けたから。アホな事をするようなら尻を叩いて外に吊るしておいてやるよ。こう言っておけば、ただの脅しだとしても忠実な下僕であってくれるので便利なことだ。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(195日~200日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~


取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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