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絶望のフリーフォール

 その時、天使族の王族は大絶叫の中を次々に墜とされる自分達の領土を見つめることしかできなかった。『エル・ピア』は古代文明の遺産。神より天使族が賜った至極の要塞都市であり、崇高なる天使族の繁栄の地である。……と、思っていたのだ。しかし、それはとある日に揺らぐこととなる。『エル・ピア』は堅固な結界魔法に守られ、かなり高い高度にあるので並の存在では攻撃することはできない。できるとすれば龍だけだ。ただ、天使族としても面倒な争いは避けたいので、見渡す限り空、雲、海という寂しい場所に何千年と浮いて争いらしい争いも無かった。

 それが数日前に途切れた。

 いきなり哨戒任務中の小型『エル・ピア』が何か巨大な生物を発見し、威嚇攻撃。その直ぐ後にその哨戒をしていた『エル・ピア』からの伝令も定期通信も途絶えた。異変を感じ、王族や各島を管理している一族とで会議を行い、哨戒していた島は撃墜されたと考えられると結論が出てしまう。そして、戦支度をし、意気揚々と進路を北東にとり遠征を開始したまでは……よかった。


「な、なんじゃアレはッ?! 一体何が起きておる?! 龍族の姿は見えるが、攻撃しておるそぶりも見えんではないか!!」


 喚き散らす女王が見ているのはヴォルカニアス、アース、ガトール、トパーズ、タングステンである。哨戒島すら探知前に撃墜しているので、嬉々として狙撃しているギルの存在や、途中からギルに任せているベルトールとクロの存在など気づく事すらできない。そのまま近づき過ぎた最後の一機、超大型都市の本島にまで魔の手が伸びる。やはり、クロの予想通り彼らの一撃では撃墜できず、それを見て人間姿のままの『パパさん軍団』は各々魔法で器物を作り出す。

 まず、豪快に助走をつけて飛びあがりながら巨大な火炎球を投げつけたヴォルカニアス。この一撃で進行方向の正面側が爆炎に包まれ、底面の魔道機関部が制御不能になる。島全体を船と考えるならば船のバランスを整えるために、残りの制御を受け付ける魔道機関部が動き出す。動き出したが、破壊された部分に巨大な土の塊がぶち当たり、そちらの方向に張り付いて重量が増す。急激に重量が変化したことで制御機構に負荷がかかって飛行が安定せずにどんどん高度が下がって行く。そして、ガトールは吸っていたパイプの頭部を捻って外し、矢玉のような物を一つ詰める。そのまま息を吹き込んで破壊された魔道機関部の左側の魔道機関部が爆発した。

 直接的に攻撃を受け、もう飛行はままならないだろうが、トパーズとタングステンは各々の何か金属や鉱石で武器を造形。トパーズは長大な投げ槍だ。ヴォルカニアス並に豪快な助走と共に雄叫びを張り上げ、魔道機関部の後部を。それとほぼ同時にその場で遠心力をマシマシに乗せる回転運動中のタングステン。ヘッド部分に重量のある大ぶりな鎚が空高く飛んでいき……。残りの一機に一瞬遅れて着弾。

 超大型の『エル・ピア』も撃墜された。小型9機、中型4機、超大型1機を尽く撃墜した『エリアナ女王国』所属の古龍連盟が勝利の雄叫びを上げる。……天使族の王族は恐怖のどん底に落ち、打ち震えていたらしい。そのまま、陸の種族の制圧兵に蹂躙され、墜ちた空の島『エル・ピア』と、同時に残っていた『アルジャレド通商連合国』が滅んだ瞬間だった。


 ~=~


 は~い。僕です。クロですよ~。

 今回は本当に酷い幕開けだった。ナタロークは何のダメージも無く安心だったけど、今回滅んだ『アルジャレド通商連合国』と『天使王国』という2国。以前からこの周辺国の4国に迷惑をかけ通しだった『アルジャレド通商連合国』に関しては、各国の首長に話を聞いてからにしなくてはいけない。まぁ、今回は中枢の狸爺共と、あくどい商売をしていた連中を擂り潰すいい機会なので、厳しくやっていいと思う。特権階級の連中のみ暴利を貪り、無体な行いも普通に起こりうる腐った状態だった。そこから解放された一般階級の市民は、一度『エリアナ女王国』が設営する開港都市へ全員移送。ゲンブの脅威により押し込められてそれが原因で弱い者は死んでしまったらしく、かなり目減りした国民だったがゲンブに対しては特に悪感情は無かったとのこと。むしろ特権階級に大きなダメージを与えたとして称えられていた。

 その港湾都市は鬼ヶ島の管理者でもあるアポロンに追加で迷宮核を提供し、管理をしてもらう事になる。

 その上で問題になるのは『エル・ピア』。天使王国という天使のみが住まう国家で全体としては10000程の天使族が住んでいた。今回、宣戦布告なしのいきなりの攻撃、こちらからの声かけは完全に無視というか……。攻撃し通しで聞く耳持たなかったからね。こちらが武器を降ろすように声かけしていた事すら知らないと思われる。

 そのことも重く見ており、セリアナさんとケイラが王族や特権階級の天使を『教育』するというので一旦身柄を任せる。一般人は不老の種族という天使には一律にゲンブや魔人の氏族長達に全員預けられ、とにかく苦しい軍事訓練や牧畜農耕などを中心に労役囚人として働いてもらうとのことだ。


「そういえば、ケイラも前からかなり高いピンヒール履いてるけど、大丈夫? 慣れないと転ぶんじゃない?」

「大丈夫。これは好きでやってるから」

「そう? まぁ、無理はしないでね」

「ふふふ。ありがとう」


 ケイラはおっとりしている元獣人国の姫である。見た目はほとんど人。耳と多少目が人族とは違うくらいで、毛深い感じはない。獣人族はモデル差や個人差が激しいからね。コスズなどは割と毛深いと言うか、女性獣人にしては全体の獣毛の面積が大きい。足も太ももまでが猫の足だし、手の甲や首筋、項、胸元などに白い猫の毛が生えている。手入れが大変そうなんだよね。

 こうやって奥さんと戯れているだけの時は幸せである。

 ネコ科の獣人は何でか猫じゃらしに凄く飛びついてくるんだ。一度、コスズをおちょくっていたら、『豊穣の迷宮』居住の猫科獣人の皆に追い回される羽目になった。因果応報ではあるんだけど、獣人族の本能は凄いと思った。それからセラの可愛らしい姿が一番収穫だったかも。36歳の奥さんが娘と一緒に猫じゃらしにじゃれつくのはなんかほっこりした。……親子ともども赤面していたのも可愛かったし。

 ただ、こうやって普通に遊んでられるだけならいいんだけど。今はそれどころじゃない。元アルジャレドの民の殆どはほぼほぼ罪科に値する履歴が見つからなかった。人海戦術で鑑定魔道具を使い調べぬいた。大小の罪科のある者にはその罪状に合わせて労役囚にしたり、追放刑で国外へほおり出した。これが一番多かったと思う。最後に中枢の特権階級の者は一族郎党、5親等までの血族に追加、免罪の判断を細かくした上で幅広い刑に処した。アルジャレドを腐らせていた特権階級はほとんどが処刑。処刑にもいろいろあるが粛々と行われたよ。数が多かったんで。エリアナがこういう刑罰を推すのは珍しいとも思ったが、ちゃんと最後まで看取り、アルジャレドのことは若干の尾を引きながら終息。

 そのまま『エル・ピア』のことに繋がる。最初エリアナは天使王国の王族も処刑しようと言ったが、なんでかセリアナさんが拒否の意向。……気になったが、責任をもって管理してくれるとのことなので、ケイラとセリアナさんの管轄で引き続き任せる事にした。


 ~=~


「本当にすまない」

「まぁ、バランスも必要ですよ。それにティガー伯爵の妹さんなんでしょ? なら大丈夫だと思いますから」

「国のことは抜きに、兄としてアイツらには幸せになって欲しいとは思うんだが……。思うんだが……。今回ばかりはアイツらの方に問題があるんだ。ちょいと長くなる」


 想定していた事なのだけれど、『サーガ王国』から3人の王女を嫁にもらう事が決まった。そうなると、メンツもある事なので『トラマンタ帝国』ももちろん噛んで来る。ティガー曰く、『老害会議』の出した案ではティガーやエイズミーの近親者から人身御供を出すことと……。王女3人に吊りあう嫁を出すという名目でまさかの決定が下った。本人がかなり乗り気なのも一因であるが、現皇帝のロゼリア・ファン・シルファリオを嫁がせるという事になったそうな。老害会議は目の上のたんこぶと言うか、思い通りにいかない女狐を排除したという感覚らしいが。

 ただ、僕がこういう条件を出した。

 ロゼリアが嫁ぐことに関してはうちの『お嫁さん会議』……対外向けには『女王会議』を通して許可が下りた時から相談。それからロゼリアが『エリアナ女王国』に嫁ぐという事の意味を考えてから、その決定を本決まりとして書面に残せと言ってある。いくら任命制の皇帝とは言えども、一時を皇帝として、しかも在位期間がまだ3年も残っている状態。その状況で外に出すという事は、国政の管理を完全に丸投げしたと受け取られても否定できない。

 ティガー曰く、老害会議では現在の国をまとめることはできないだろうと言う。その状況下なので、彼の妹も思い切って嫁がせることにしたのだと。


「ホントに長かったね」

「すまん。家の家内事情はこれからなんだ」


 まじめでお堅い性格のヤツは本当に話が長い。政治関係の話と切っても切れないからな。

 ティガー伯爵は僕に妹を3人…3人? う、うん。続けてもらおうか。3人出すことで辺境伯へと一気に昇進する。妹を人身御供に出したことがかなり強いのだ。領地としては『城塞都市アザル・ダマカサン』を含む最北方の都市群。ようは僕らとのいざこざにならないようにティガーを壁にした訳か。

 その上で一応高位貴族の血縁者なのだが、その3人が3人とも冒険者をしていて特級冒険者らしい。凄いじゃないか……。

 で、問題は今すぐにその旦那候補と戦わせろとうるさい事。今僕はティガーに呼ばれてそのアザル・ダマカサンに居るんだけどね。僕らが政治傾向の赴きが強い話をしている最中は、飲み食いしていると決めたらしい女性のトラ獣人が3人いる。タイプ的にはコスズに近い。ちょい毛深気味の女の子3名。一応皆20歳超えてるらしいけどね。若く見える。母方の遺伝だそうな……。さて、どう動いたもんかね?


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(195日~200日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~


取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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