龍族による空軍構想
は~い。クロで~す。
最近僕が分裂しただのなんだのとうるさいけど、アレは僕の生態を完全コピーしたゴーレムのような物なのだ。騒ぐほどではない。それよりも大騒ぎしたいのはリヴァイアサンのナタロークからの緊急報告だった。痛くも痒くもなかったが、急に空から攻撃されたとの事。一応反撃せずに、僕に意見を求めて来たのだ。様子見していてくれたのか。
それに関して知識があったのは龍族全般。
アレは天使族とか天人族とかいう空に住んでいる翼を持つ人とのこと。獣人系の鷲人とか鳥人は、人で言う腕が翼の種族だ。しかし、天使族は背中に翼がある種族のようである。翼は魔素を放ち飛行する物で、翼だけの力では飛べない。なので胸板も鷲人や鳥人などより薄く、人に近い体つき。それがなんでまたナタロークを攻撃してきているかと言うと……。
天使族は酷く排他的で自分達を害せる物があると片っ端から排除にかかるという。ナタロークは神代龍族でもかなり強いので、天使族の兵器ごときでは鱗に傷をつけるのも厳しいようだ。そもそも古龍に対して人型生命体が傷をつけるのは難しいんだけどね。ナタロークとしては天使族が住まう天空に浮く居住地、『エラ・ピア』と呼ばれる浮遊城塞を撃墜していいか? と問われた。……落とす場所は考えたいので、ちょっと待って欲しい。
ナタロークの居る範囲ではまだエリアナの立体縮尺図の範囲には入らない。せめて『グマンナ首長連邦』の辺りまで来て…来て…入った。計測。あと10分くらいすると、この前ゲンブが整地した場所に落とせる位置に流れて行くと思うので、合図したら必ず撃ち落して欲しい。それに合わせて、風龍のベルトールさんや氣龍のカームなどの高速飛翔龍団、僕の眷属のスミオ、カヨ、ヌレバ、ハグロなどを中心にした空軍が敵対する飛行戦力を駆逐。同時並行で飛翔可能な雑多な龍族に陸上制圧を目的に、魔人戦力の亀魔人氏族。蜥蜴魔人氏族。蛇魔人氏族の各員で城の制圧とできるだけ天使族を無力化。捕虜として拿捕。今回は天使からの宣戦布告なしの攻撃とみなし、問答無用で落とす。
『もう少し~?』
「あと5秒」
『行くよ~! ブルー・キャノン!!』
こちらからも同時にスミオ隊とベルトール隊が飛翔。向こうもこちらが空中戦力を持っていると知ってワラワラと飛び出したんだろうけど……。ナタロークの器用なブレスワークで『エル・ピア』の底面にある巨大な魔道具っぽい器物を掠めて破壊。そこそこ大きな爆発を起こして墜落していく。当然真下に落ちることは無いので、ナタロークのブレスを受けた方向に慣性に従い飛ばされる。そして、綺麗にゲンブが整地した『アルジャレド通商連合国』のど真ん中に墜落。10点がいくつ並んだだろうか。そのまま綺麗に墜落させることができた。
スルトやゲンブからアルジャレドの軍が騒いでいると連絡が来ているが、攻め来るなら潰して良いと言っておく。いい加減にあの連中は鬱陶しいんだよね。やる気も無いのに伝書鳩で再三の脅しにもならない開戦通告と宣戦布告をしてきた両派閥。勝手に両勢力がつぶれてくれるならそれでも構わないと、放置するスタンスだったけどね。動くようならそれも考えようだ。最近では畑の様子やカサブランカの様子が心配なスルトから、『帰っちゃダメ?』と念話が来ることもあった。だから、片付くならそれに越したことはない。
大わらわで墜落した『エル・ピア』から飛び出す天使族に、空軍団が垂直降下しながら背中のMG-HV(重機関銃)で急襲する。バックアタッチメント改造したMG-HVを背負ってもらい、魔力を流すとかなり重い衝撃魔法が飛び出す仕掛けなのでそのまま制圧戦に入る。地上でも『エルフ自治区』から龍族にコンテナごと移送してもらっていた魔人衆の戦士集団の各々が、騎獣に乗って突撃姿勢に入った。そして、コンテナが降ろされた直後から雄たけびを張り上げ突撃。
撃ち落された天使族は逃げようとするのだろうが、MG-HVの衝撃魔法は龍族が使う事を念頭にしてある高威力の物だからね。死にはしないだろうけど、直ぐには立ち上がれない。回復魔法とかで回復しようにも衝撃魔法で脳が揺れてるから視界もはっきりしないだろう。そのまま地上制圧部隊に囚われていく。ついでにこの機を誤ったアルジャレド海浜側の軍が攻め込んで来たらしいが、ゲンブが結界で包み込み、海浜からメリアが咆哮で脅して投降を勧告。もう逃げられんだろう。
「意外とあっけなかったね」
「いえ、『エル・ピア』は複数ありますので、その内本軍が来ます。準備をしておきましょう」
「ほほう……。ベルトールさんも楽しかったでしょ?」
「えぇ、それはもう」
「なら、また『パパ軍団』で虐めませんか?」
「いいですね~」
邪悪な笑顔をしている僕とベルトールさんのこの悪乗りで、空に浮かぶ国が一つ滅ぶこととなる。それはその5日後だった。ちょうど、スルトが脅しまくり、アルジャレドの内陸側の勢力が投降勧告を受け入れた直ぐ後だただろう。以前落とした『エル・ピア』よりも数段大きな物だ。やはり落とすなら整地されている空き地だよね。僕と集まっていたパパさん軍団により、それから空飛ぶ国は絶叫こだまするフリーフォールアトラクションと化す。
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『エル・ピア』が見えて来た段階で僕とリヴァイアサンのギルさん、風龍族のベルトールさんとでPSG-B208(対物魔砲狙撃銃)をヨルムンガンドの縄張りから構えて待つ。この208㎜魔砲を使う元々は対物ライフルを目標に作って……魔砲に難着地した。形状はかなり大ぶりなので、魔人や龍しか使えない。カサブランカなら持ち運びはできたが、魔砲を撃ち出すことは無理だった。反動で鎖骨や肩甲骨、あばら、胸骨などを骨折したそうだ。真祖吸血鬼なので死ななかったが、これは尋常じゃない。
なので僕ら3人が底面の浮遊機構の魔道具と思しき部分を適格に狙撃して墜落させる。アトラクションとしてはフリーフォールだけど。高さとか速度、安全性は担保されないので悪しからず。
その後、最近はストレスが溜まっていたらしいヴォルカニアスさん、アースさんとガトールさんが並んだ。その後ろに新たにクリスとステンのパパさんトパーズさんとタングステンさんが隊列に加わる。正直、この布陣で何をしようとしているか解らないと思う。たぶん大きい『エル・ピア』は僕らの魔砲だけだと高度を落とせても撃墜は無理。なのであのご歴々のブレスで落としてもらう。できるだけ外縁を狙ってもらう。これは完全に力技でプライドをへし折ろうという作戦である。それに天使族はどうも女性オンリーの種族らしく、あまりボコスカ殴るのは男性陣だけではなく龍族の戦士でも気が咎めたとのこと。
全部で13機の『エル・ピア』。以前と同型の小型8機、小型を4倍くらいにしたサイズの中型4機。中型を10倍したくらいの超大型の都市型が1機。
……日頃ストレスに揉まれて、胃が痛いだろうギルさんが真っ先に撃墜作戦を始める。この人は何でかこういう道具というか、銃器の扱いが凄く上手い。その上でベルトールさんもこういう物の扱いは教えれば直ぐに覚えた。ギルさん程ではないけれど、ベルトールさんも素人とは思えない正確な狙撃で小型の『エル・ピア』を優先的に落としていく。僕だけ違うんだけどね。
さっきも言ったけど、PSG-B208は対物ライフルを作ろうとしていろいろな物を盛り過ぎて失敗し、魔砲というコンセプトに難着地した形の未完成な銃。それを元来僕が個人で使う事を起点にしている銃に直し、機構の圧縮化と簡素化を行った結果がコレ。
「その銃、小さいけどこれより強いの?」
「この銃は剛性をメインに組んだ超頑丈な銃なんです。ついにできたんですよ。オリハルコンとヒヒイロカネの合金が。『紅色鋼』で、造られたこの銃に弾丸が例の魔法添着弾なので、かなり凶悪な狙撃用です」
今回はPSG系の外形から離れた。そしてHK417EVをベースにバレルを1.5倍に伸長、二脚を標準装備、銃身をごつくした。ストックも可変伸張式から通常カスタムに戻してある。それから弾丸は5.56㎜から10.00㎜になっている。どう頑張ってもこれ以上小さい魔法添着弾では、狙撃仕様に変えることができなかった。途中で術式の負荷に耐え切れずに破裂するんだよね。
弾丸こそ208㎜から約半分になっているので、そちらに一度慣れると見た目は少し頼りないが、威力は十分。正直過剰かも……。という事で、ファイアッ!!
魔法添着弾とか魔素添着弾とかいう弾丸。僕や龍族、エルフ族や内包魔素の量が多い種族が使える特殊弾だけど、魔法添着弾の方が安全安心だ。魔素添着弾はハンドガンとかじゃないと怖くて使えない。飛距離を伸ばせば伸ばすだけ魔素との干渉が多くなり防護が不安定になる。不安定になるという事は暴発のリスクも高い。そんな危ない弾は使いたくないよ。なので安パイを取り、魔法添着弾で中型の『エル・ピア』の底面部分を狙った。濛々と黒煙を上げて斜めに落ちていく。うん。良い威力だ。
それからなんでこの新作HK417-MSL(魔導狙撃銃)が僕の私用になるかと言うと、魔法添着弾はその個人の魔法特性が大いに関わるから。なので火炎などならいいのかもしれないが、水とかだと威力が物理的な水の重みのみなのであまりうまみがない。僕は属性魔法の適性スキルは無い。その代わり、爆裂魔法とかいう意味の解らない適正スキルが生えているのでね。爆裂魔法は爆破魔法の上位系。強すぎて普通は使い難い。それもこういう使い方なら使いやすくもなる。考え方、使い方次第なんだ。
「おお~。これはすごいね~」
「でも、そういう違いがあるんだ。魔素添着弾、そんなに危険なんだね」
「208㎜はそれ程危険ではないですよ。大ぶりなだけ保護するための鋼とミスリルの保護合金も分厚いので」
「……ミスリルを使う弾丸か。なかなかなお値段……でもないのか。ここは産出国だもんね」
「そういう事です。それに鋼20に対してミスリル1、触媒も必要ないのでそこまで高額ではないです。使えるのも龍族くらいですし」
僕とベルトールさんが内向きな財政や用途、製法などの話をしている中、ギルさんは取り憑かれたように『エル・ピア』に208㎜魔砲を撃ち込んでいる。撃つ時に誰かしらの名前を言っているところから、誰かしらを仮想標的にしてヘッドショットする妄想にでも浸っているのだろう……。うん。ストレス発散してください。今度、威力を下げたやつを用意して射撃場をVIPのために完備しとこ。ギルさんのために。
~=~
・成長記録→経過
クロ
オス 生後半年(195日~200日)
伴侶 エリアナ・ファンテール
身長130㎝
全長17㎝……身長12㎝
取得称号
~取得済み省略~
取得スキル
~取得済み省略~
~=~