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緊急・お嫁さん会議

 セリアナは『王祖の迷宮』の謁見の間にそこに集まれる全員を招集し、事の報告と意見を求めた。クロ、彼女らの夫にしてこの国の象徴でもある存在。そのクロの箍がついに外れた。ここ最近、自由度が一気に上がりクロぼ数が増えた。普通なら『はあ? 増えた?』となる。けれどここでそれなりに住むとクロの異常さ加減には直ぐに気づく物だ。クロはいろいろと飛びぬけている。それを使って彼なりの工夫をするのだ。

 今回の問題は、彼が迷宮核を利用し、限定的ではあるけれど彼の分身を作ることに成功したこと。

 セリアナはこれまで、娘や姉妹妻達の体の事や精神のことを考えてクロ1人に対して100人以上の妻を宛がった。クロ個人の感想としては、ちょっと節操なさ過ぎて……。と精神的に負担だったのかもしれないが、それ以上に妻の肉体的負担がすさまじかった。これが魔人と人間種が悲恋になる理由の一つだと、姉妹妻全員が体感していることだろう。


「それから、今日は報告もあるの。以前から言っていたのだけど、クロちゃんから私達『お嫁さん会議』の承認した妻なら何人増やしてもいいですよと、ちゃんと了解も得たわ。もう一つ、海を挟んでお隣『サーガ王国』から同士が来てくれるわ。それも60人も」


 普通に考えて『何を言ってるんだ?』という報告であるが、その時の妻全員の反応が『安堵』や『哀れみ』だったことはその妻達の姿が現している。特に酷いのが超越種の代表、『龍族』の妻達。その中でも一際酷いのが『大古龍』と呼ばれる万単位の龍生を生きている面々。コスモを始め大古龍としては一番若い新参のヴォルティアーカも少しやつれている。龍がここまでになると各族の姉妹嫁がかなり心配になるところだ。

 ただ、その辺りはクロの人数が増えたことで逆にバランスを取るようになってくれた。『手加減?』をされているとみるべきだろうが、それは種族的に一律で個々人には配慮されない。なので龍族はかなり皆ボロボロだ。それから魔人から派生した魔族グループもかなりボロボロ。新参のスパレンティナ氏族からも数名志願者があり、組み込んだのだが……。それからカサブランカの実妹5人も何だかんだと連れ込まれ、初エンカウントで絶望を見た。その娘達も。


「皆の姿を見て居ればわかるけど、大丈夫じゃないわよね……」

「はい。軽く死ねます。種族的に配慮してくれているようなそぶりは有難いんですけど。それでも一律に気絶するまでは許してくれませんからね。場合にもよりますが、気絶してからが本番の種族も居ますけど」

「そもそも、アレはどういう事なんだ? 何故いきなりクロ殿が増殖している?」


 基本的に『豊穣の迷宮』で農業と醸造業にしか興味の無い始祖吸血鬼の約30人はげっそりした顔で漏らす。アレだけのことがあったのに……。と、苦笑いの嫁衆も居るが、一応ことの顛末が語られる。クロとしては純粋に『業務の効率化』が目的で自身の分身を作り、事務作業や鍛冶作業での雑務、手の回らないタスクへ手が行き届くようになった。

 問題はクロはやり過ぎるというか、それが何かしら思いもよらぬ変化へとつながる事。

 クロの分身は最初、黒い蜥蜴の姿でのみ動いていた。それが半日するころには人化のスキルを使い、大量のクロが居るという問題が発生。さすがに蜥蜴姿なら目立たないが、皆が知っている人状態のクロが複数人同時に動き回っていれば、住民も不審がる。その上で、ホノカから妖術を習い『分身の術』を駆使した。凄まじい数のクロがあちこちに居るという混沌の様相を呈したわけだ。

 現在、クロの分身は最大人数としても1600人程。常時維持される分身は100程度らしいけど、その内の半分くらいをクロが大寝室に派遣しているらしい。あくまで分身なので本体とほとんど変わらない。多少の劣化はあれど、魔人の中でも規格外なクロだ。通常の生物ではどうしようもない。


「私の考え方として1対100でも厳しいと考えて居たんですけどね。1対100で均衡が取れたとしても、そのクロちゃんが50人。5000対100という戦力比になりますか」

「絶望的ね……。本当に私達いつか死んじゃうかもしてないわよ」

「コスモさんは大丈夫。超越してますから。でも、人間種は本当に数を増やさないと、死人はともかく廃人は出かねませんね。悪魔族の数人が半ば壊れてる気もしますから」


 その辺りはセリアナも目を逸らす。半分くらい彼女が原因なので。

 そこでセリアナは一度咳払いをする。一応今回の御題目は『サーガ王国』からの花嫁団の移入を許可するかどうかの問題であった。相手の立場からして下手な人選は無いと思う。人間的に破綻している者が来るようなら、こちらと険悪になることは解りきっているので。なのでセリアナも書類での審査に留めると口にした。それから詳細の説明として、実質的は妻は3人。王家の三姉妹で残りの57人はその世話役と『サーガ王国』からの気持ちである。

 『エリアナ女王国』在住の者は感覚が麻痺しがちだが、リヴァイアサンは世界を守る神獣の一柱に数えられる種族だ。それを一国家の防衛にポンと貸し出したのだから。普通なら返せるような対価を支払えない。与えすぎというのも正常な国交を悪化させる要因になりうる。気を付けねばならない。

 その上で、今回はファインプレーにつながるのだが、『グマンナ首長連邦』と『トラマンタ帝国』の間の森である魔境『不破の森』の近郊にはダークエルフが住んでいた。最近、悪魔族の蛮行が目に余り、移住したいという話を羽妖精の代表が持ち込んだのだ。それから種族的には交配は不可ではあるがケンタウロス族やユリティーサという鹿型のケンタウロスも移住希望者が居るという。その他、本家本元の風妖精や様々な種族が一挙に移入を考えているらしい。


「助かるわね。クロちゃんも何の気なしにいろいろするけど、もう少し私達のことを考えて欲しいものだわ」

「……たぶん、クロも同じこと考えてるわよ? あの子はまだ精神が育ち切ってないから、受け入れきれていないところもあるし」

「それも慣らしていかなきゃね……」


 セリアナのその発言に全員がため息を吐きながら、深々と頷く。

 その上で、ダークエルフと風妖精の加入は大きい。ケンタウロスとユリティーサも受け入れに関しては問題なし。話がまとまり次第、クロと魔人に動いてもらえばいいと思う。その直後、カサブランカから挙手がある。忘れていたという感じだ。

 吸血鬼一族は真祖というその血統毎の最初の一人目が居る。真祖の以前の開祖は1人らしいが、その開祖の子がかなりの数居るので、真祖の血族もそれなりに残っている。その内の2族の祖が移住希望しているという。それから移住だけではなく、行商の拠点として構えたいという変わり者の真祖一族が来る予定だという。まだまだ時間はかかるだろうから、来たらエリアナとセリアナに会わせると連絡を告げた。

 本来、一国家としても一気にこれだけの移入者は厳しいところがあるはずなのだが、この迷宮の中はそれもほとんど問題にならない。

 エリアナの才能という面も大きくはあるが、産業面が安定した上で特産品が次々と生まれ、広大な領地を守る戦力の拡充も目覚ましい。現在では陸、海、空の戦力が確立しているので『エリアナ女王国』はとても強い。人間種の脅威となる悪魔族でさえ後ずさるような戦力がある人間種の国などほとんどない。その上でクロの掲げる方針として、拡大戦争は引き起こさないという。こんな奇特な話は無いのだが、クロは面倒事をとにかく嫌う。対人関係で揉めることほど彼の中では面倒なことはないのである。

 それもあり、クロは妻を平等に扱い、種族、職分、性格などの全てを考えてちゃんとスキンシップを取ろうとマメに立ち回る。……妻達としてはそこまで几帳面にしなくてもいいのだけど。彼はそういう所が真面目なので、ツェーヴェやエリアナが知る辺りでは誰一人ないがしろにはしない。生活中に溶け込みまくっている羽妖精族や家令精霊たちとも付き合いはあるし、最近では屋敷の金ぴか鎧…リビングメイルとも交友がある。その鎧は男性の鎧なのでおそらく男性だが。


「本当に彼は不思議よね~。もうちょっと気を抜けばいいのに」

「それはやはり性格の問題でしょうね。最初のクロ様は一夫多妻も少し疑問があったみたいですから」

「確かに、ホノカの言う通りかも。けど、最近は凄い速さで順応してるわよね? 何でかしら」

「精神の成長…という事でしょうか? 彼が大人びていると言うか、物言いがやけに達観しているので忘れがちですが、クロ様ご自身はまだ生後半年ほどですよ」

「そうじゃったの~……。その子供?に100の妻を抱えよと言うのは酷じゃったか」

「それすら呑み込んでますけどね。本当に怖いのはこれからかもしれませんし」


 最後の時空龍族ディオの発言に『フラグ……』と数名がつぶやいた。この世界にはフラグという現象が絶対ある。神や何かが刺しているのか知らないが、その旗が立つと何かしらの変事が起こる。それがいい方向なのか悪い方向なのかは別だけれど、何かしらの変事が舞い込むことは確実。

 それを全員が『あ~あ……』と言った表情で見やるが、誰もそれに対して非難はしない。

 なぜなら、この場に居る参加しゃ全員がそうやって考えたからだ。この場にはハーマ以外の監視役はもう参加していない。ハーマもセリアナの侍女であるから参加しているにすぎず、この100を優に超える同じ穴の狢を眺めているだけだ。ハーマも娘世代?の者達が身篭るのを嬉しそうにしている。中には孫世代も居るのだが、ハーマは一律に喜ぶ。スルトではないが、ハーマは剣聖であった頃の凛とした雰囲気だけでは無く、母性というか……祖母のように柔らかい表情をしてノエラやグリム、アンネと戯れている。緊急の会議として開かれたが、ハーマとしてはそれ程問題とは感じていない。心の中では、自分の孫や曾孫のような子を増やせとばかりに期待しているのだった。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(195日~200日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~



取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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