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魔の森が魔境と言う所以

 ここは魔の森。ここが魔の森であるのはもう何度も話している。

 そして、魔の森以外にも『魔』のつく場所はいくつもある。このファンテール王国はそういった『魔』のつく土地が多い。冒険者などの探索者たちの良い稼ぎ場になっている反面、それらが魔境と呼ばれるにはそこが魔境たる理由があるのだ。

 僕らの住む魔境、『魔の森』。僕らの住む森はその中でも滞留する魔素の濃度が格段に高い土地として有名だ。それはさまざまに理由があるのだろうけど。……僕の仮定では『主』の存在がある。

 この魔の森は2000年以上続くファンテール王国の歴史上一度も開拓が成功していない土地で、化外の地と呼ばれるにふさわしい土地。最近住民となったエルフのカレッサが言っていた。この土地は人間よりも魔素耐性に優れたエルフすら入植を諦めた土地。蛟の護る魔の森はそれだけ危険な土地なのだ。


「もう何が起きてもおかしくないわね~」

「そうじゃのう。クロぼうやが狩りに出て持ち帰る獲物も、日に日に危険度の高い魔物に成り代わりよる」

「ですな。コレが魔の森が魔境と呼ばれる理由なのですね?」

「さよう、魔の森だけとは言わぬが、主の折る魔境は生きておる。無理に手を入れようとすればそれだけのしっぺ返しを受けるのじゃ」


 どうも、僕は毎日のルーティンとして狩りと森の探索をしています。これは今の魔の森ではとても重要なことだ。現在の魔の森は緊張感に満ちている。僕は必要だからそれなりの装備で肉や植物を得る為に狩りを行うけどね。これは相応の力が僕にあるから許されているだけ。ツェーヴェの指示でエリアナやセリアナさん以下人族の5名とカレッサは、迷宮第二層からの外出を禁止されている。それだけ森が荒れていて、迷宮の第一層、ツェーヴェの穴蔵にも時折侵入者が入り込むからだ。

 ただ、僕らが何も対策をしていないわけじゃない。

 今回はスルトさまさまな状況だ。ツェーヴェやカレッサ、セリアナさんなどのもともとお隣の街『辺境都市フォレストリーグ』から、知人だけでも非難をさせるための措置を頼まれたのである。別に知人じゃなくてもいいけど、今回はツェーヴェの穴蔵ではなく迷宮二層へ直接移入させるため選別も兼ねているのだ。そのためにエリアナも忙しく迷宮の改装をしている。迷宮を改装するのに必要なポイントは潤沢……。というか、何に依存しているのかわからないけど、ツェーヴェとカレッサ、僕が3トップで断トツ、次がスルトだ。


「それにしてもケンベルクのアホも限度があろうて。この森を焼こうなどと言い出した時は何の冗談かと思ったがの」

「この森がそんなに簡単に焼けるなれば、我らが現役より食料困窮などに見舞われることなどありませんでしたからな」

「はい。魔の森には魔境たる所以があるのですよ」


 カレッサ、ヨハネスさん、ハーマさんと繋ぎ、調理場はにぎやかだ。僕も最近は早めに帰宅し、肉の加工や畑仕事に精を出している。……僕は畑仕事ではなくてプランター仕事だけど。

 現在、魔の森の前、フォレストリーグ近郊にガハルト公爵領軍が集結しつつある。

 元からガハルト公爵の手勢がお隣の人間の国、ラザーク王国を侵攻するにはここから魔の森を大きく迂回して攻める必要があり、悪路と兵糧面で攻めあぐねていたのだ。しかも、ラザーク王国との国境は魔境か湿地帯。湿地がなくぬかるみでの戦闘に慣れていないガハルト公爵軍が不利のは覆らない。それでも王命が覆らないので長きに渡り、ガハルト公爵軍は新たな方法を考えていたのだ。

 そして至ったのが『魔の森開拓』だ。開拓とは言うが、要は侵攻路用の穴をあけられればいい。森による魔素の滞留が弱まれば人間に住みよい土地になったという例はあるため、完全に的外れではないのだけど。それは小、中の魔素溜まりの話になる。今、ガハルト公爵軍が手を出そうとしている森は本当の意味で魔境だ。ツェーヴェの縄張りが例外的に安全なだけで、それ以外の魔の森は本当に誰からも影響を受けない魔物が跋扈する魔境なのだ。


「クロ、お帰り」

(うん。解体もヨハネスさん達のおかげでらくちんだね)

「ほほほ、我々もクロ殿の声が聞ければよいのですがね」

「そうね~。エリアナにできないか聞いてみましょうか。迷宮内の限定機能になるけど、可能な気がするのよね」


 ハーマさんと氷室がある場所から城の居住区に帰って来た。

 そろそろ僕は偵察に出る時間だ。自室として用意してもらった僕の部屋で外套を着込み、偵察用の身軽な装備を身に着ける。討伐じゃないからね。今の森で必要以上に魔物を刺激すると、『大暴走』の引き金を引きかねない。今はまだエリアナが特設した第二層に地下トンネルを、迷宮の領域を拡張しながらフォレストリーグへ向けて掘っている段階だ。

 セリアナさん達4人が来てから、エリアナはとても明るくふるまうようになった。やはり寂しかったのだろう。父親のことは知らないが、セリアナさんとはとても仲が良いようだからね。セリアナさんや僕らの事もあって、この土地を守る強い意志を感じているらしい。エリアナはフォレストリーグに繋げるための地下道の建設で忙しいのか、今は見当たらない。スルトと今も地下道を設営しているんだろう。

 この地下道の終着点は許可を得て、フォレストリーグで僕らが一泊した『九尾のお宿』の地下倉庫に繋げる予定になっている。本来、こういう事で差別をするのは良くないのだろうけど。僕らにもそれほど余裕があるわけでもない。ここは身内の救助が優先だ。名も知らない人間には悪いが、何事にも限界があるのだよ。


「ふぃ~……。皆~!! つながったよ!」

「頑張ったわね、エリ。お疲れ様」

「お疲れ様にございます、エリアナ様。お怪我などはありませんか?」

「お帰りなさいませ、エリアナ様。本当にご立派になられまして……」


 僕が出る直前に新たにつくられた第二層特設エリアにある地下道入口から、エリアナとスルトが顔を出した。少し汚れているが、疲れは見当たらない。まさか、スルトに鍛冶スキルが生えて、岩レンガを作り地下道を作り始めていた時は驚いた。スルトもさすがに疲れている。やっと身長5㎝を超えたスルトはフニフニの柔らかい尻尾をゆったりと揺らしながら、ハーマさんからおやつの果物をもらって喜んでいる。かわいい。

 一応エリアナとスルトにも声をかけて、僕も第一層『ツェーヴェの穴蔵』から出て、森にいくつか用意した野営ポイントを基準に探索して回る。この『王祖の迷宮』を中心に大体等距離に6角形になるように作ってある。僕のような狩人というか、魔物や野生動物を狩る職業の者は基本的に森にある安全地帯を知っている。というか、用意しておかないと手負いになった折に、身を隠すことすらできない。今まで怪我らしい怪我は、ツェーヴェとの模擬戦くらいでしか負ったことはないけども。

 何にしても定点のキャンプがあるならばそれを活用するのは当然。機材面でも倉庫として人が増えて、僕レベルが2人以上いるなら、詰め所にしてもいい。ちょっと前に完全気配遮断のスキルを得ているから、よっぽどの魔物でなければ気づかれないようだ。さすがに鼻先で煽ったら気づかれたけど……。


(ただいま。どんどん緊張感が増してるね。フォレストリーグの受け入れ可能な住民を優先的に移送した方がいいと思う)

「そう、『アレ』は動いたの?」

(その兆候はあるよ。あれだけ人間が群がれば、生命力を貪欲に欲するアレが動かないことはないと思う)

「まさか、魔獣がおるのか?!」


 カレッサがかすれた声で叫びそうになったのを抑えている。それもそうだ。魔獣という存在は本当に恐ろしい物だろうからね。今の僕やツェーヴェなら一対一でも余裕で勝てる。味方が増えても巻き込むだけだから一対一の方がやりやすいくらいだ。特にツェーヴェが本気を出すと、ロケーションの問題で災害が起きる。下のフォレストリーグを巻き込むことは望まないので、できれば魔獣が動かないことに越したことはない。

 魔獣は魔素と生命力に反応する。災害級の被害を出すトラップのような物で、それ以外の時は休眠しているらしい。休眠期間が長いと魔獣は自然消滅するらしいから、触らぬ神に祟りなしなんだよ。

 頼むからケンベルクのアホが煽り過ぎて、魔獣を呼び込む事だけは回避してほしい。ガハルト領軍が被害を受けても自業自得と言ってやるが、フォレストリーグの無辜の民を巻き込んでは寝覚めが悪い。それにヨハネスさんとも約束しているし。できる限り民間人にはアホなことさえしないなら生き残ってほしい。


(どうする? 警告くらいする?)

「今更だとおもうわよ~」

「そうじゃな。どの道、あのケンベルクの阿呆は止まらぬ。文字通りイノシシ武者であるからな。魔法兵であるのに……」


 カレッサの言葉にケンベルクのことを知るメンバーは呆れや悲しみ、怒りと様々な表情だ。どうもケンベルクは22歳にもなるのに、性格は子供のような奴で癇癪持ちらしい。純粋な魔法の実力と面はいいことから、猫を被れている間は問題ないとのこと。社交の場では猫かぶりで乗り切ってるんだね……。

 しかし、家族の前や家臣の前など、自身が一番上で本性がばれても問題ない場では傲岸不遜も甚だしいクズとまで言われている。ちなみにハーマさんの言。

 セリアナさんも妹になるエリアナも、目をそらしているだけでフォローもない。これはこれは……。まぁ、ヨハネスさんとツェーヴェがフォレストリーグまで向かっているから、僕も相応に準備をしなくちゃいけない。

 現在、スルトを含めて僕の『子』と呼ばれる蜥蜴っぽい子は3個体いる。

 まずはニシアフリカトカゲモドキのスルト。次に長男? のモデルがサルバトールモニターで背中から竜翼が生えている……なんかキメラみたいな存在で『翼竜』ってことにしてあるタケミカヅチ。三体目は次女でカミツキガメの形なのだけど、尻尾が蛇みたいな感じのゲンブ。基本は王祖の迷宮で待機してもらって居るが今はタケミカヅチだけ、かなりの上空から魔道具で空撮している。


(どうかな? ゲンブ)

(お疲れ様にございます、父上。未だ動く気配はございませんが、森からの圧力は時を追うごとに増していますね)

(このままだと『大暴走』も避けられないかもしれないね。ツェーヴェが帰ってきたら戦端の相談をしよう)


 王祖の迷宮、急造の第二層へ続々と『亜人』と呼ばれる人々が中心に入って来る。ここは所謂待機スペース。僕らの居住区を第三層にしたのもそういう目的がある。さて、これからどうなることやら……。


~=~


・成長記録→経過

クロ 

オス 生後50日程~55日

主人 エリアナ・ファンテール

取得称号

・森の管理担当代理 ・

・森の救済者    ・

・迷宮の家令    ・稀代の開発者(・稀代の鍛冶師 ・稀代の魔道具師 ・上級錬金術師)

・幼き三児の父   ・

・お嬢様の婿(仮)  ・エクリプスアサシン   

・森の主の婿(仮)  ・迷宮の人気者(・老エルフ/老騎士/侍従長のお気に入り)

NEW 侍従長の夫(仮) ・無音の観察者

???族

全長12㎝……身長7㎝

取得スキル

+隠密機動(+身体強化 +隠密 +完全気配遮断)

+特殊兵技(+狙撃 +発破技師 +立体起動 +絶対回避)

+匠(+開発者 +名工 +上級錬金術 +装飾 +裁縫)

+マタギ(+弓術 +狩り術 +解体術 +探索)

+行商人(+交渉 +詐術 +観察)

+鼓舞

+爆裂魔法

+武神(+剣神 +天賦/未発現)


~=~


・14話終了時の記録

スルト

メス 生後5日程~10日

主人 エリアナ・ファンテール

取得称号

・お嬢様の従魔 ・お嬢様の親友 ・迷宮出身者 ・クロの娘 ・侍女長の娘

NEW ・灼熱 ・絢爛豪華

ラヴァーゲッコー族 モデル=ニシアフリカトカゲモドキ

全長3㎝……身長2㎝→全長7㎝……身長5㎝

取得スキル

+火炎魔法(上級) +地魔法(上級) +探査 +農耕 +鼓舞 +鍛冶 +調理 +熱砲ソーラーフレア(固有スキル) +地盤溶解ラヴァー・フィールド(固有スキル) +結晶砲ジュエルキャノン(固有スキル)


 ~=~

NEW

タケミカヅチ

オス 生後1日程~5日

主人 エリアナ・ファンテール

取得称号

・お嬢様の従魔 ・お嬢様の息子 ・迷宮出身者 ・クロの息子 ・轟雷の翼 ・嵐渦の翼

サルバトールキメラ族 モデル=サルバトールモニター

全長40㎝……翼幅1m

取得スキル

+風魔法(上級) +雷魔法(上級) +騎乗飛行 +遠視 +隠密 +立体起動 +雷撃砲(ライトニング・スプレッド)(固有) +嵐砲(ブラストキャノン)(固有)


 ~=~


・14話終了時の記録

ゲンブ

メス 生後1日程~5日

主人 エリアナ・ファンテール

取得称号

・お嬢様の従魔 ・お嬢様の親友 ・迷宮出身者 ・クロの娘 ・蛟の娘

プレートアニマ族 モデル=カミツキガメ

全長10㎝……甲高5㎝

取得スキル

+水魔法(特級) +結界魔法(下級) +水域探査 +漁業 +水質浄化 +高圧水砲(ウォーターキャノン)(固有) +金剛鎧(ダイヤモンド・メイル)(固有)



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