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一方…その頃のサーガ王国では

 その頃、『サーガ王国』では王の執務室で三人の美少女と父王、各派閥の重鎮を交えた会議が行われ……大いにもめていた。もめているのは3人の美少女。この『サーガ王国』の3姫姉妹である第一王女クリスティーナ、第二王女ロッテンハイマー、第三王女カルカッテだった。他の面々は特にもめてはいない。決まっていないのは誰が『エリアナ女王国』に存在する大魔人に嫁ぐかという点だけだったからだ。

 その不毛な姉妹喧嘩の横では現在のジンベック国王と、王弟のフリッツ辺境伯、外務大臣のアイゼンが最終的な確認を詰めている。『エリアナ女王国』は一国家としてのスタンスは『融和』を推進し、女王個人の見解としては平等を重んじているらしい。この国では王党派が強く、他の勢力はほとんどフリッツの軍閥と、弱小の財務派閥のみだ。他は日和見を決め込む個人勢力ばかりで纏まりがない。それゆえに強国ともなれなかったわけだが。

 その王党派の代表は言わずもがなジンベック国王。ジンベックとしては別に誰が嫁いでもいい。しかし、その嫁いだ者の裁量が大きな力を持つことは言うまでもないので、それをどう動かすかというだけなのだ。その考えは王弟のフリッツ辺境伯も同じ。彼は軍閥とは言えど、長い防衛戦争で疲弊している集団を取りまとめているに等しい。人望があるため議会としての力は強いが財力や商売などの方面では後手。兄の王党派と組むのが最良の手である。外務大臣のアイゼンは元から王党派の1人であり、特に異論はないのだ。ただ、この三人にも腹の内に隠している部分がある。


「お姉様はこの国にのこらねばならないでしょう。女王となり次代を支えねば…」


 今発言したロッテンハイマーは軍閥の叔父であるフリッツの派閥に属している。個人の女性騎士団を設立し、治安維持を主任務に主要都市を周回している行動力のある第二王女である。ショートカットの金髪に浅黒く日焼けした活発な印象のスポーツ美少女だ。そのロッテンハイマーの後ろには1人、同年代の少女が付き従っている。同じく金髪のポニーテールで、日焼けしている。彼女も騎士団に所属している……フリッツの長女であるネリアという。騎士団でも副官で猪突猛進の気が強いロッテンハイマーのお目付け役もしているので、ロッテンハイマーが嫁ぐ場合は彼女もついて行くことになり、お手付きになる可能性は大きい。


「それを言うならば騎士団に所属しているロッテ姉様もでしょう? この荒れた中を無責任にお嫁に出るのですか? 元から大した職位の無い私くらいでしょう。嫁いでも特にダメージがないのは」


 次に声は小さくとも突き刺すように相手の弱点を突くように声が飛ぶ。三女、第三王女のカルカッテだ。カルカッテは外務大臣と財務大臣と付き合いがる。日和見貴族の動向をつぶさに見ており、彼女が社交界ネットワークを用いて1人歩きしないように、日和見貴族の統制を取っていた。これは公にはなっていない。それから弱小の財務大臣派閥をわざと生かしているのもカルカッテある。力が集中し過ぎることを抑える措置でもあるが、財布をカルカッテが握っているという事だ。そして、彼女の後ろには外務大臣の娘のエローラと財務大臣の娘のヘンリッタが居る。どうでもいい事だが、実は外務・財務の両大臣は仲良しの双子。なのでほとんど財務も王党派。


「……なら、三人でと言うのはどう?」

「はい?」

「……真意を問います」


 クリスティーナ姫は父や叔父を説得する方面に舵を切る。ジンベック国王には男児は居ない。そして、妃も病で亡くなっている。ジンベックも歳なのでもう次は考えておらず、王弟のフリッツにはまだ幼いが男児がいるのである。そして父であるジンベックは心を折り、益を取る王だと娘達は理解していた。それは王弟のフリッツも同じ。現状では上陸作戦を取られてはおらず、国土的な被害はない。だが、それは『エリアナ女王国』の庇護あってこそ。数日前より近海に出没する巨大な蛇龍は尽く『バール魔王国』の哨戒船や、時には迂回路を取る陸軍でさえもその超大質量で押しつぶす。

 属国となる事は拒まれたが、『サーガ王国』との友好は続けると言う態度はしっかりと見られる。そうなるなら王家はより着実な方向へ繋ぐべきだ。

 ジンベックとフリッツは15歳程離れた兄弟で、先王の長男と末子にあたる。幸いにも2人の仲は良好で、フリッツにもそれなりの信頼がおける経験と実力があるのだ。ジンベックが退位したらば、フリッツが中継ぎしその子に繋ぐ方が不和も少ない。何よりも…クリスティーナは自分も必ず嫁ぐと決めていた。そうでなければ返せない。伝説級の存在をポンと貸し与え、国と言う規模をあっという間に救う存在に。そのエリアナが選ぶ男はさぞ有能なのだろう。人柄も悪くなく、力もある。頭も悪くない。……1つ、魔人であることが懸念点ではあるが。


「確かに…な。返せぬよな」

「それを言われちまうと、誰もいいかえせねえよ。クリスも言うようになったじゃねーの。おいちゃん嬉しいぜ」

「今は茶化さないでくださいまし。姫3人、私の腹心とより抜きの従者。ロッテの白薔薇の乙女騎士団。カッテからは態度の好ましい娘を……そうですね。15名程用意して。嫁入りはあくまで私達だけではありますが……一大勢力に輿入れします。見栄と……予備選力は確実にしておく必要がありますから」


 その日、娘の思わぬ強引な所を目撃した父王ジンベックは、思う所はあれど口は挟まなかった。これまで特に大きな事をしてこなかったクリスティーナが、これ程思いっきり舵を切ったのだ。これがどのような事態に発展しようとも、彼は娘の判断を見ていこうと否定はしなかった。その場に居た男性陣は、フリッツが少し困惑気味な事を除き好意的に事の流れを受け止めている。実際、『サーガ王国』には防御戦力にリヴァイアサンを貸し出してくれた対価を払うような余裕はないのだ。それを良好な関係維持の為の人身御供として贈る形になる。対外的には……だ。本当の所は、大使として出向いた三姉妹とお付の少女。外交的な対談の際に訪問したフリッツとアイゼンは国力の高さを知っている。

 住めるなら、あちらの方が格段によい暮らしができるのだ。

 また、3姫姉妹はクロをかなり気に入っている。特にそういう年齢層の男子が好みのクリスティーナには最高の相手だ。相手としては願ってもなく、女王のまとめ役のエリアナや法務大臣のセリアナからも友好的な接し方をしてもらった。悪いことは何一つない。対外的にも2つのアピールに繋がる。強国との揺るぎない縁。そして、『サーガ王国』からの贈り物。国内もバタつきはするだろうが、荒れる事はないと思われる。

 そして、ジンベックには自身の限界も見えていた。

 この『サーガ王国』は表向き悪いところは無いように見えるが、1人が背負い込む政治形態が抜けきらない。他の貴族の上昇意識が低いことを喜べばいいのか、嘆くべきところなのか……。男系の王族が少ない当代の国王一家ではどうしても3姫姉妹に頼らざるを得なかったし、一度は王家から離れた弟の力を借りざるを得ないありさま。それでもやりきれる賢君であると驕るつもりはジンベックにはない。自分の底や、成長の限界をまざまざと見つめて来たこの20年余りは本当に重かった。そのように思い耽るジンベックを他所に話は進む。


「父上にもまだ頑張ってもらわねばなりません。私達はしかと支えねばならないのですから」

「そうね~。あっちの技術をこの国に入れればまだまだ持つ。フリッツ叔父さんとこのアーロイが王になるのは2代先だからそれまでに体制を安定化させて…」

「それだけではならんだろう。外交はもちろん、国防も……」


 その部屋は懐古し、これまでの苦難を思い返す男性陣など目もくれず。嫁いでさえも故郷のことを支えんとする3人の姫と、そのお付きの女性陣が喧々諤々と語り合う姿が夕刻まで見ることができた。男性陣はこの時思っていたことだろう。女性は強いと。


 ~=~


 翌日、フォートサーガの王城に緊急の招集を受けた貴族の子女や白薔薇騎士団の面々は当惑していた。全く関係ないとまでは言わないが、あまり関わりの濃い派閥とまではいかない派閥の子女が軒を連ねている。最初は何かのサロンかと思いきや、集まる集団にはまるで統一感もない。

 白薔薇騎士団は武門貴族の子女や平民出でも武に優れた女性が多い。その中からロッテンハイマーを含めて20名が選抜された。まだ100名居る白薔薇騎士団は既に業務の引き渡しと新団長、新副団長の任命もロッテンハイマーから直々に行われた。理由も合わせてだ。

 さらに本当に派閥も爵位も家柄も領有地域も全く関係ない貴族の子女集団。一番戸惑っているのはこの集団。集まっていないと不安なので一応情報収集するべく塊になっているだけの集団だ。その人数は19名。カルカッテを合わせて20名だ。人数に関してはロッテンハイマーに張り合っただけである。

 最後に有数の貴族名家から選りすぐられた侍女教育を施された19名とロッテンハイマー、カルカッテを引き連れたクリスティーナが会場にしているダンスホールに入場。急いでそこに居た全員が整列しようとしたが、直後にクリスティーナはそれを止めた。その場に居る子女の困惑すら構わず、クリスティーナはロッテンハイマーへ丸まった羊皮紙を手渡した。それを読み上げると、そこに居る子女は各々の表情をする。騎士団の子女は概要だけ聞いているので、最後の文言以外は既に聞いていた。それ以前の段階で驚いているのはカルカッテが集めた、優秀な貴族子女で次女以降の者達である。他はほとんど驚かない。


「……それでは我々が『エリアナ女王国』へ向かう最後の目的となるが、私達3名がお相手の象徴であるクロ陛下に嫁ぐこととなる。その際の同行者だ。つまり『予備戦力』という事だから、そのつもりで取り組んでくれ。以上!!」


 クリスティーナの侍女たちもさすがにこの展開だけはそ全く想像していなかった。一国の王女が3名も同国の男性に嫁ぐ異例の事態というか、珍事に等しい状況。加えて自分達までその範囲に居る。『サーガ王国』の先行きに直結する事案でもある……。とまで言われては逃げられない。彼女らは覚悟を決め、3姫姉妹と共に『エリアナ女王国』へと赴くことになるのだった。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(185日~190日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~



取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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