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殲滅の大魔人

 今回はスミオに騎乗するのではなく、カヨ、ヌレバ、ハグロの3人も加えて、黒焔を部位強化した翼から噴き出して音速を超えて飛ぶ。大古龍と古龍3名で拮抗する魔人となると、かなりの力を持つと思う。なので僕が上空から急襲すると共に4人をスミオ達が回収。僕も然るべき範囲の力を用い、早急に該当する魔人を討伐する。もしくは会話可能だったりするならばいいのだが、会話可能でも意識の乖離が激しければその意味もない。僕も仲間を守らねばならないのだ。

 見えて来た。一応、危険な状況ではないと見える。アースさんが手堅くガードし、アリアドネが素早く叩く。この戦法で魔人の前進は抑えているようだ。たぶん軽微な手傷を気にしないのであれば、アースさんなら叩き潰せるのだろう。だが、僕が来るまで判断を保留にしてくれたのは彼なりの配慮だと思われる。

 僕も魔人だからね。ただ、今回の魔人は説得は不可能だと思う。完全に目が逝ってる。

 以前にどのタイミングか忘れたけど、魔物の暴走について話したことがあったと思う。魔人にだってあるんだよ。その魔人の器、内包できる魔素量を大幅に超えると、魔素が過剰になり神経や脳の中枢が壊れる。魔物や生物派生の魔人に共通しているのは、結局のところ生物的な要素から離れられないという点だ。弱点や生理現象はそれに近い。都合良く改変されている部分もあるにはあるが、肉体の構造などはほとんど変異前の生物依存だ。


「アースさん、ご無事で何よりです。時空龍の3名と一緒に退いてください」

「相解った。武運を祈る」


 4人をスミオ率いる騎竜ゴーレムが手伝いながら逃がす。攻撃されるからね。退避や逃亡は一番被害を受けやすいんだ。防御がしにくく、ひたすら攻撃にさらされる。スミオ達なら魔砲を用いて牽制もできるから、今回は擁立した。人の姿で機敏に飛べるのも彼女らの強み。

 おそらく、何かの条件が整い、悪魔族が迷宮核と同化して魔人化したんだ。しかし、ベースとなった悪魔族の器が小さすぎたんだろう。迷宮核が取り込んだまではいいが、上手く扱えずに暴走。以前のヴュッカの時とは逆だ。ヴュッカの場合はヴュッカの器が多き過ぎ、迷宮核がコントロールできなかった。最終的に何の偶然か、スルトが完全に殺さなかったことが幸いし、迷宮核もヴュッカも無事だったんだ。今回はどっちも無理だろうな~。魔素の濃さに耐え切れず、組織の崩壊が顕著。その上で暴走してその力を無暗に使うもんだから、迷宮核の方にも負担が行って、胸に埋まっている迷宮核の色がおかしい。

 これまでの迷宮核を見て来ても白色の明滅は見て来たが、赤色の明滅は初めて見る。それにあの迷宮核とのリンクが、宿主の意識が崩壊した時から切れないようだ。もう、迷宮核ごと破壊するしかない。それと何が起きたかを相手側に聞かなくちゃいけない。普通ならこんなことは起きないんだ。いくら悪魔族でも迷宮核に魅入られるような者がそれほど多くいるはずがない。自分から魅入られたのなら、こんな状況になることはないだろう。もっと凄惨な状況になっていただろうから、被害が拡張しなかっただけ良かったのかもしれないけどね。


 ~=~


「本当に規格外ですね~。旦那様は」

「武器を使うところは久々。将軍は勝てそう?」

「無理だろうな。私の力で硬化しても限度がある。あのキレでククリ刀を振りぬかれれば、盾ごと一閃されてしまう」

「アース将軍ですらそうですか。本当に何者なんでしょうね」


 空から急襲。敵の魔人を蹴り、悪魔族の軍隊方面へ押し込む。こちら僕の背後、『トラマンタ帝国』側に被害は出したくないのでね。それからこの悪魔に仕掛けを施す。あまり気は乗らないが、『凍土の国』でやった忍者アクションの時に作ったアダマンタイトの短剣を投擲し、避けるそぶりすらない魔人に突き刺す。短時間しかできないだろうけど、弾かれるまではこの魔人の深層意識にアクセスする。

 そこから僕がこの魔人と目の前の軍を叩き潰すかの判断をしておかねばならない。

 いきなりことを構えることは好ましくないが、この魔人を『トラマンタ帝国』側へ押し込んで大暴走と暴走魔人のダブルパンチに見舞おうとかなら……。『大魔人』と呼ばれ始めた僕の力を見せてやろう。お前達が無駄に弄んだ命の分、数億倍にして消し炭以下にしてやる。

 深層意識にアクセスしている最中は魔人は動かなかった。必要な情報は読み取れたので、彼を自由にする。不動の状態の魔人の胸にある、縮んでいる迷宮核を掴み引きずり出した。その段階で一瞬だけ笑顔を僕に向けた悪魔族の男性は砂となり散って行く。僕はセリアナさんが供養を行う際に行う作法を真似て、十字を切っておいた。これが正しいのかはわからないが、何もしないという気は起きなかった。僕は初めてだろう猛烈な怒りを感じている。これが憎悪というヤツか。僕はこの感情を感じ得た事の小さな喜びと、その感情の性質のままに魔素を前方に解き放つ。

 悪魔族は人族とは違い、魔素にかなり左右される生態をしている。人族はその感受性は強くなく繁殖力が高い代わりに脆弱な種族。悪魔族は種族的に強い代わりに環境に左右されやすく、迷宮などにより調整された空間でもなければ清純な濃い魔素に晒されると衰弱していくのだ。感じてみるがいい。捨て駒に使われた者の心の奥底を。体感してみるがいいさ。死へと続く絶望という一本道をね。


「あ~。あれですか? 今、収束しているヤツ」

「いやっ!! 違う。龍族は総員防御結界を張れっ!! 他の種族は龍族隊員の背後に逃げ込むのだッ!! 急げッ!!」


 あ、忘れてた。怒りという感情は制御が難しい。いかんいかん。アースさんや他の龍族が準備を終えるまで僕は一応待つ。加えて、空からスミオ、カヨ、ヌレバ、ハグロの4体に魔素反射結界を展開してもらう。コスモも呼んどけばよかったな~。

 ここまでの威力は初めて使う。ここはギリギリ大規模の魔境だ。吸入できる魔素量も十分。僕はスミオ達の準備が終わった瞬間に、蜥蜴化している状態で『黒焔(中)』を放つ。『黒焔(中)』はこれまでの『黒焔(弱)』とのその拡散範囲からして異なる。弱火程度だと前方だけだけど、中火となると反動が僕の体にもある。蜥蜴化して肉体を強化していないと大火傷しているところだ。僕は目的地ギリギリになるように黒い焔なのに、一瞬だけ世界が白色に染まる特大の被害をもたらす、僕の息吹を噴き出す。

 そして、その結果としてここの魔境が『消失』してしまった。僕が『黒焔』を放射するために吸収し、転換したせいで魔境足り得る魔素が足りなくなったのだ。普通なら大暴走が起きてもおかしくないのだけど、僕が放った魔素の反射波で並みの魔物は溶けた。急激な魔素変動で体内の機能を焼き切られ、死んだんだ。僕は人化し、ギリギリのところで調整した地点に飛ぶ。そして、そこにいた悪魔族にこの作戦の意図を問う。


「貴様らの目的は『トラマンタ帝国』への大暴走誘発と暴走魔人の投下で相違ないか?」

「な、ななななな、なな、なに、なな何も、何者だ!!」

「答えよ。貴様ごときが我と問答する場ではない。貴様はその口で聞かれた事のみ答えよ。さもなくば」


 肥え太っていた悪魔族の将校の腰巾着だろう悪魔族が、僕に睨まれて逃げ出そうとしたので懐から取り出した投げナイフで頭部を破裂させた。威力が強すぎたな。刺さるくらいに調整したつもりだったのに、意外と悪魔族と言うのも脆い。

 それに怯え切り、腰を抜かして這いずり逃げようとする肥えた悪魔族の、右腕の肘からしたを切り落とす。それだけでバランスを崩し、痛みに悶えて泣き叫ぶ。ダメだな。こいつはコネと金、親の立場なんかで高い地位に居たんだろう。使えない。他にいるか……いないか? 居るね。明らかに敵対勢力の悪魔族の隠密兵。この状況で隠れているという事は、こいつとは別派閥なのかもしれないが関係ない。隠蔽魔法で隠れているその悪魔族へナイフを投擲。左足を奪うと共に返し付きのアンカーフックワイヤーを投擲してその悪魔の体の一部に食い込ませ、引き摺り寄せる。

 あぁ、女性だったか。でも悪いとは思わない。さぁ、じゃべってもらおうか? この肉団子悪魔族の目的やお前達の国がどうなっているのかを。ことと次第によっては、僕の脅威を見せて奥必要がある。セリアナさんにも言われているが、人族でも時と場合によってはマウンティングが必要なのだ。上下関係は必要。その知的生命体が友好的ならいいんだけどね。それが叶わないなら。僕は大魔人であろうが、大魔王だろうが、邪神だろうがなってみせよう。ただ、僕は自ら争いを望まない。融和を望む。それだけだ。


「ほう、そういうことね~。『サタナニア魔王国』は2分されていて、この肉団子の勢力が優勢なんだ。そんでもって国土拡大に意欲的と。お前らの所も『バール魔王国』と戦争中。『バール魔王国』を圧迫しているのはお前らか……」

「ヒッ!!」

「スミオ、すまないがコイツにメッセンジャーをさせる。カヨを護衛につけるから、『サタナニア魔王国』でコイツの派閥の代表に突き出して。無理はしなくていいから」

「承りましたッ♡」

「ヌレバも済まない。この肉団子を同じように派閥の代表に突き出して。無理はしなくていい。無事に帰還してくれ」

「御意にございますッ♡」


 僕はもやもやしつつ。心配してくれていたらしい龍族や、他の皆さんに出迎えられた。アースさんや他のメンバーと、『トラマンタ帝国』の皇帝ロザリアに報告する。これはティガー将軍の判断だけでは収まらない。国家間のいざこざに発展している。一応ティガー将軍へ先に相談しているが、予想通りに彼の裁量ではどうしようもないので皇帝のアポ取りに動いてくれた。

 緊急事態だから、直ぐに謁見できるだろうと言われ僕らも動向しているけどね。こちらはティガー将軍の案内でアースさん、ディオ、ピオン、アリアドネが居る。僕としては代表のアースさんだけでいいのだが、3人は別の目的があるとかで来ているらしい。なんでも僕に色目を使ったハーフエルフの女狐を一目見に行くと。……それって皇帝じゃない? 頼むからアホなことはしないでくれよ?


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(185日~190日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~



取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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