この辺りで魔人について整理しよう
ほい。クロです。
今日は正直面倒。一日中、小難しい話が続くので……。話の中心に立つのはツェーヴェとヨルムンガンドである。今日は珍しくエリアナやセリアナさんの関与はない。僕ら魔人だけに関係する事ですからね~。ただ、全く無関係でもない。僕を筆頭にエリアナの従魔扱いで、『王祖の迷宮』の迷宮核と繋がりのある魔人はかなり早く位階上昇する。この位階上昇が何回か行われると位階進化を起こし、何らかの恩恵が起きる。スキルが増えたり、全体的に強化されたりだね。最も大きな変化はそれこそ『種族進化』である。
僕は魔物からの派生魔人。エリーカは妖精族からの進化で魔人化している。そして、今回初の事例なのだが、人族から魔人化したのがアザガ含めた元グマンナの民だ。
魔人が魔人足り得る大きな条件それは膨大な『内包魔素量』と『突然変異』にある。本来見られない種族的変化を起こしている事。最も起こりやすいのが魔物から魔人へ変化することだ。魔境と呼ばれる魔素溜まりには魔物が生息している。元々から魔物は野生動物が濃密な魔素の影響を受けて突然変異した存在だから、生まれるべくして生まれている訳である。
「結論から言うと、迷宮核は智識を共有しているわね。その智識と魔素を得た分の累積が条件としてあるんだと思う」
「そだね。僕も同意見。お父さんの位階進化の異常な頻度を考えると、経験という面が非常に大きいと思う。それからエリの従魔である事も大きい。エリは先祖返り。たぶん、『王祖』はそういう能力を持つ魔人だったんだと思う。仲間を強化していく系の権能というか」
「それなら納得できますね。王祖の先祖返りのエリアナ姉様が迷宮核に知識を蓄積し、その智識と魔素を利用して私達を進化させる。この形態が一番筋が通せます」
エリアナは魔人ではない。人族だ。……現在は何族か怪しいところはあるけれど、僕らが一気に進化を重ねたこの約半年の間に彼女が関わるのは解る。最後まで従魔化されていなかったエリーカでさえかなりの速度で位階の上昇が見られているから。
それから土地持ちの魔人と土地なしの魔人には大きな差がある。
魔素の供給量というか、土地との繋がりからか魔素の内包量が大きく違うのだ。それは『蛇神神殿の迷宮都市』と共にエリアナの参加に参入したクォア達を見ても言える。確かに魔人だから普通の人間族と比べて強いのは是非もない。人間族が魔素をわざわざ魔力へ練り直すのは、人間族の軟な体で扱える安全な物に変換し直すことが必要だからだ。僕ら魔人は魔素は魔素のまま使える。練り直すためのタイムラグもいらないし、魔法の威力も跳ね上がる。……その分制御が難しいっていう難点は無きにしもあらずだけど。
魔法だけに留まらず、魔素は体を活性化させる。その分の耐性も必要なので一概にはそれだけで強いとは言えないが、魔人化するという事はそれをクリアしたという事なのだ。
それが理由で3種族の魔人達はそれぞれ違う。アドバンテージがあり、伸びしろが一番大きいのがワーテルローから位階進化した『リキュテータス氏族』だ。最初からゲンブの眷属であり、魔物から生まれていたわけだからね。かなり若い種族で伸びしろも物凄く長い。この先が楽しみでもある。
「そういう意味では隠密に特化している私達インディゴ族は野生動物から長い時間をかけた分だけ、その道に特化しているんですね」
「我々スパレンティナ氏族は人族よりの昇華ですので、以前の職分依存の能力組成になりやすいという事ですな」
両族長が言う通りだ。魔人は環境依存の変化をする。それこそ突然変異種だから。
ただ、関係しているのは集束する魔素の濃度が一定以上の場合だ。その魔素の供給源はこの魔境という環境と、迷宮核。やはり迷宮核の存在は大きい。むしろ単なる魔境で生まれる主が魔人化しないのは、近くに迷宮核がないからと言えるだろう。魔人が出現する場所は迷宮核の存在が必須か。
……そうなると凄く嫌な予感がする場所がある。
現在の『サタナニア魔王国』である訳だ。ツェーヴェも懸念があるようで、少し焦っている。まぁ、焦ったところで進まないし、魔人の傾向として知性が高い。敵に付くならそれまで、暴れるようなら『トラマンタ帝国』から伝令が来るように言ってある。既に龍族が距離を置いて防衛する布陣を敷いている。現場指揮官にはアースさんがついているのでその点は安心だ。あの人、めちゃくちゃ謀略が得意な軍師タイプらしい。もちろんあのごっつい2mを超える筋骨隆々の体つきからして前線にも立つ。とても安心だ。余談だが、ヴォルティアーカの件で少しナイーブになっているヴォルカニアスさんは僕の言葉を汲んでここに残ってくれている。その代わりなのか、アグニアスと一緒にDIYをしながら日々を過ごしているそうだ。
話がそれて来たが、魔人は突発的に生まれる。特に魔素の濃い場所で野生動物の変異で生まれる事例が多い。多いが、他がないという事もない事は目の前に実例としてあるわけだ。目を背けることはできない。僕自身、蜥蜴姿から人化したのはエリアナと出会ったことが大きく関わっていると思う。そんでもって僕が成長しないのも、エリアナの願望なような気がしないでもない。
「それは貴方個人の考えだけど……。迷宮核と位階進化の影響は切っても切れないわね。あと、眷属化。これも切っても切れないわ」
そうなんだよね~。最近も好例が散見している。最新がゲンブの眷属であるリキュテータス氏族とスパレンティナ氏族の例である。それから一度もそんな話は聞いていないが、蛇魔人もゲンブの眷属化されている。なので、彼女らもかなりの狂戦力と化しているとのこと。
それと僕がここ最近眷属化した疑似人間型生命体のスミオ達4体。元は騎乗用の騎竜ゴーレムだ。それが僕の眷属化により位階進化して有機的な生命体へと変異。魔人と区分して良いかは微妙だが、半ば魔人化しているとヨルムンガンドの言。あと数種の魔族。淫魔族と吸血鬼は僕の下級の眷属だ。カサブランカ曰く、最近かなり体が強靭になった気がするというし、オフィリアやセレナーデもかなり魔法が使いやすくなったという。眷属化はこのように能力面、外面を大きく変化させる。主との契約により、氣の繋がりが生まれ、進化に必要な魔素が通常より多めに供給されるらしい。これはツェーヴェが調べた。その上で経験も主が迷宮核と繋がるこの土地の魔人の眷属。そりゃ強くもなる。
それからここからはツェーヴェ個人の学説になると言うけれど、僕という面でもここの魔人は異常だと言い出した。
ツェーヴェは蛟となるにあたり500年は時間をかけて成長した。その間にスキルの能力が伸びた実感は薄い。それが僕と出会ってから、物凄いスピードで成長したと言う。エリアナと僕が掛け合わさったからと言うことだ。僕の『本能?』のことを言いたいのかな? まぁ、それはそれだ。僕にも解らないことなので、掘り詰めるだけで時間の無駄である。
「魔人は本当に難しい種族よね。突然変異なのに、ある程度の一貫性があるから」
「そうなのかい? 人型くらいしか共通点はない気がするけど」
「それだけでも大きな差よ。普通の突然変異って言うのは、何の共通点もないくらいなのに。人の姿で魔素を使う理性のある生命体。これだけでいかに規格外な生物か……」
「お父さんはその中でも輪をかけて規格外だけどね。そういう意味だと、お父さんは魔人という括りには入らないのかも」
僕の眷属やツェーヴェ、半分寝ていたのに起きたヴュッカ、エリーカからも深い同意の声が聞こえる。他の魔人からも聞こえてくるね。新参のアザガはまだよく理解しきれていないようだが、隣のクォアから僕の戦績というか、いくつの魔境を制圧して来ているかを聞いたようだ。わかり易く顔を蒼白に染めた後は、自分達が着くと決めた勢力は世界を取る物だと、確信したようにキラキラと表情を輝かせる。
うん。期待してくれるのはいいけど、僕の方針としては必要に応じてだからね? 意欲的に侵略行為はしないし、みんなの命が最優先。魔人は確かに強いが不死の存在ではない。老いることはないが、死なない訳ではないのだ。僕の為に命を賭けて戦う的な考えの皆も居るだろうけど、僕はそれは望まない。命を賭けて守って欲しくはあるけど、命を賭けて相手から奪う事を僕は肯定したくないんだ。
こうやって僕はフラグを立てるんだろう。エリアナから緊急の強制送還が魔人衆全員にかかる。最近移入したメンバーが大慌てだが、問題ないから落ち着こうか。
『トラマンタ帝国』のティガー将軍からの緊急伝令だった。アースさんと龍族が悪魔族ではなく、とてつもない戦力と交戦中。ただ、悪魔族も同時に薙ぎ払われているので、『サタナニア魔王国』の勢力ではない模様。アースさんやディオ、ピオン、アリアドネの4人で拮抗。このままでは周辺被害が多きすぎてしまう。それからもう1点。
これは直接は関係ない事であるが、何故か『アルジャレド通商連合国』で内紛が発生。火山方面に面した勢力と、海浜の勢力とで戦を始めそうな雰囲気。エイズミー伯爵の暗部が入り込んでいるので、その情報から戦端が立つのも時間の問題とのこと。あの周辺で大暴走の前兆はないと思われるが、できれば魔境『不破の森』の監視をお願いしたいという事だ。
「貴方の規格外なところはこういう所かもしれないわね。タイムリーにいろいろ起こす能力」
「それはトラブルメイカーと言いたいのかい?」
「う~ん。どちらかと言うと企画者?」
「ヨルムンガンド、それはトラブルメイカーと同義では?」
今回は三面作戦だ。今、荒れている北方のユミルとその補助のタケミカヅチは直ぐに縄張りへ帰還。ハムシーンとコンゴウは予定通りに、自分の縄張りを得るために動く準備。今回はここで待機。ジオゼルグとヨルムンガンドもここで待機。防衛組に回って欲しい。
今回の『救援』は僕が1人で行く。たぶんその方が戦いやすいから。その上でスルトは火山側からヴォルティアーカと共に南方勢力を監視。ゲンブとリヴァイアサンのメリアで海浜側の勢力の監視を行う。イオにも動いてもらう。魔境『不破の森』の探索を頼む。吸血鬼と樹龍を貸しだすので無理なくこなして欲しい。以上が今回の作戦となる。皆、無理をしないように。
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・成長記録→経過
クロ
オス 生後半年(190日~195日)
伴侶 エリアナ・ファンテール
身長130㎝
全長17㎝……身長12㎝
取得称号
~取得済み省略~
取得スキル
~取得済み省略~
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