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新加入の戦士達

 グマンナの民が到着し、丁寧なあいさつが行われた。

 女王全員が面と向かい、謁見の間には代表者だけが招集されている。だが、それでも数百人の亡命者団だからね。人数はそれなりだ。その中の内訳は戦士の家柄、『士族』出の戦士が3割。『遊牧の民』の牧畜関係で働いていた遊牧民が6割。この遊牧民の殆どが土地に定住を許されず放浪することを余儀なくされていた出戻りの血族とのこと。そして、最後の1割が『士族』と『土地持ちの牧畜氏族』から出ている、僕らで言うところの『精霊魔法使い』で『神官(シャーマン)』だ。1割も居ることに驚きであるが、ツェーヴェ曰くここに居る神官は全員精霊魔法使い。ツェーヴェも契約している水の大精霊程の存在と契約しているのは3人だけだが、それでも強力な戦力となることは間違いない。精霊魔法は本人の魔素を使わずに行使できる精霊を介した自然現象で常世に干渉する魔法。通常の魔法とは比にならない力を持つし、コントロールしにくいことを除けばかなり有用とのこと。

 一度、各氏族に分かれてもらい。姓がある者とない者、これまで虐げられてきた者に対しての感情などもゲンブが調べてくれているので、全員を一度『蛇神神殿の迷宮都市』に移送する。

 僕が一緒に動いたんだけど、本当になんにでも興味を持つ。怯える者も少なからずいるが、爆走魔道列車が一番インパクトがあったようだ。彼らの騎乗動物よりも早く滑らかに進むこの乗り物に勘当していた。……30歳の父親がが一桁の子供達と共に感想を叫びながらはしゃぐ風景はなんとも言えない気持ちになったが。

 そこからゲンブと再会。ゲンブが最初に案内したのは神殿だ。あちこちに自身の像が飾られている神殿の中は、荘厳でもあるが妙に明るい雰囲気がある。その独特の雰囲気に神官の皆や戦士の皆は気を引き締めて中を歩んで行く。


「私は神や精霊ではありませんが、ここを守る守護としての気概を失わぬため、この像に誓って私はこの国を守る。私に、その命をお預け願えますか?」

「「「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!」」」」」」


 性別や年齢関係なく、グマンナから移り住んだ全員が雄たけびを上げてゲンブ像へ賛美の歌をささげた。この瞬間、彼らはこの土地に住まい、この土地の戦士となったのだ。その翌日から、蛇神神殿に移り住んだ彼らに大きな変化が出始めることになるのだけどね。


 ~=~


 僕は早朝に珍しく困惑しているゲンブからの要請を受けて、スミオに騎乗して『蛇神神殿の迷宮都市』へと飛んだ。その報告が容量を得なかったこともそうだが、どうも昨日移入した皆と神殿全体に大きな変化が出ているという。特に害がある変化ではないのだが、あまりにも大きな変化過ぎるので様子を見て欲しいと言うのだ。

 いつも通り、スミオで神殿の上部より入り、着陸。するとそこにはゲンブが戸惑った変化をしており、祠時気な元グマンナの民が数名並んでいた。

 男性の…特に大きく変化していたのはゲンブが部族長に任命したアザガだった。確かにアザガは2mを超える巨漢に厳つい感じの顔つきではあったが、僕の目の前に居るアザガは種族すら変わっている。しかも、全員がゲンブの眷属になり、神殿に精霊があちこちから集まっている。全て水の精霊だ。アザガの体の端々に亀の皮革や爪らしき物が浮き、種族が『亀魔人』となっていた。蛇魔人のクォアやリャエドも困惑顔だし。後ろの神官系の力を持つ女性陣も『亀魔人』化している。

 ゲンブの予想では元から精霊信仰の強いグマンナの民は、そういう継代的な土地からの影響を受けていた。そこにゲンブという巨大な力の持ち主が『主』となることで『眷属化』が起き、位階進化したのだろうという。この変化は何もグマンナの民だけではない。移入当日から、彼らの騎乗動物を厩舎に入れたのだが、その騎乗動物まで位階進化したらしいのだ。その外観は装甲を着込んだ大柄な鹿。その角もかなり凶悪な形で、前方に左右計12本の湾曲した鋭い槍と化している。頭部にワーテルローに使うような頭部を衝撃から保護する目的の、分厚い衝撃緩和兜を被せれば完全に槍衾だ。


「それから、私自身も位階が上昇しておりました。その影響か、神殿各所で大きな変化が出ております。グマンナからの皆さんなどはまだ序の口でして。こちらへ」


 ゲンブに付き従う感じでぞろぞろついてくるグマンナの民の皆。そろそろ名前を新しくつけてあげたら? それを言うと、すぐさまゲンブが木の板にさらさら書いていく。『スパレンティナ氏族』。アザガを代表に移入した者はこれからはスパレンティナ氏族と呼ばれる。アザガは恭しくその木の板を受け取り、拝名を喜ぶ雄叫びを上げた。いちいちうるさいからその辺は躾けてね。ゲンブ。

 そのまま地下にある大牧場に行くと、かなり困惑している人間族中心の飼育員が居た。

 うん。困惑も頷ける。確かになったらいいな~。……って軽い気持ちはあったけど、ワーテルローの数体が魔人化していた。全部ではないのはまだ魔素の吸入量や位階が低いのだと思う。ゲンブ曰く、魔人化したのは中でも古参の10体だけで、他は人語を話すように変化した程度だ。それでも凄いとは思うけどね。魔物って言うのは本来なら高い知性は持たない。その器に伴わないと魔物の体内の魔素は体を摩耗させる。結果知能が低い場合が多いのだ。暴れ狂うような挙動もそこから来ている。スパレンティナ氏族が移入し、ちょうどいいので新しく氏族として名を与えて重用すればいいと思う。ここは以前より『エリアナ女王国』の軍事的戦力を育成する中枢拠点。これからもゲンブに任せておけば、斜め上の展開を迎えると思う。

 新たに生まれたワーテルローの魔人は『リキュテータス氏族』。新規移入のスパレンティナ氏族と共にここでの防衛に重要な立ち位置になるだろう。

 スパレンティナ氏族の方は解る。元から乗ってたもんね。けれど、驚くのはリキュテータス氏族の方。まさかのスレイプニールに器用に騎乗する。物っ凄い2氏族間で速駆けし張り合っているが、最終的には下馬し、固い握手の後に篤い抱擁。よくわからない武門同士の繋がりなんだろう。同志を見つけたとばかりにリャエドがその輪に加わっていく。うん。淀みない筋肉の語り合いが始まる。ポージングの際の掛け声も忘れてない。


「斜め上の動きが続くね。このまま軍事訓練として、『トラマンタ帝国』を侵食してる魔境の防衛を任せてみたら。リャエドも指揮官というだけなら妊娠中でも問題ないし」

「え、あ、はい。そうですね。それもいいかもしれませんね」

「リャエドは昔から私達女性の集まりよりも、武門の男性との付き合いが多かったです。これであの子も本来の立ち位置に帰れるでしょう」


 その他も細々した問題はあちこちにあったけど、最初に上がった魔人化という問題に等しい大問題はなかった。その後、いろいろと検証して解ったことだが、蛇魔人は隠密性と魔法の特性が非常に高い。これまで通り斥候や暗部として立ち回ってもらう。

 その上で、新魔人のリキュテータス氏族…蜥蜴魔人はゲンブが歩兵団に組織していた特攻槍兵隊『パルチザン隊』の急先鋒として擁立。彼らは身体強化魔法により体を鋼よりも固くしたまま、鎧、盾、槍を構えたままで速い個体では時速100㎞程で突進できる。武器を槍から破城槌用の持ちて付きの丸太に変えれば、攻城兵器は要らない。

 もう一属の新魔人、亀魔人のスパレンティナ氏族は動きこそリキュテータス氏族程速くないが、頑強さでは段違い。魔法に適しているはずの神官系の亀魔人でさえ、鋼の剣が折れた。女性の柔肌という言葉が裸足で逃げ出す瞬間だったよ。それから地の筋力が全体的に向上しているので、土地の主とかでも集団で来られたら拙いんじゃないかな? と思える一団が完成した。

 ゲンブの篤い鼓舞が重なり、リャエドを指揮官に数日中に出陣するとのこと。あまり無理はしてほしくないのと、直ぐに『トラマンタ帝国』のティガー将軍に案内役を任せなくちゃならない。一応軍なので、勝手に国境を越えちゃいけないから。少し待とうか。昂っているなら怪我しない程度に訓練しながら待てばいいと思うよ。


「僕らも少し話し合う必要があるかもしれないね」

「そうですね。特に何をした訳でもない私の位階上昇。これはしっかりと魔人としてのいろいろな条件を調べておくべきです」

「だよね~。という事は明日は魔人衆と、土地なし魔人も代表者会議を持つべきかもしれない。そういう事も話し合おう」

「了解です」


 ~=~


 という事で『王祖の迷宮』のエリアナ王城、大会議室に関係者が集められた。今回は僕の眷属は全員だ。僕を筆頭にスルト、タケミカヅチ、ゲンブ、ジオゼルグ、ヨルムンガンド、イオ、ユミル、シェイド、アポロン。まだ魔物ではあるが一応ハムシーンとコンゴウも居る。

 加えて僕の眷属ではないが土地持ちの魔人が3人。ツェーヴェ、ヴュッカ、エリーカだ。エリーカはセンテン高地の管理者として土地に認められている。その上位者としてタケミカヅチが居るという感じだ。

 最後に土地なしではあるが魔人のメンバーと代表。蛇魔人の『インディゴ族』で代表がクォア。新規の魔人『蜥蜴魔人』の『リキュテータス氏族』の代表を務めるゴーメス。男性の大柄な魔人だ。世紀末な感じのファッションが堂に入っている。もう一組の新規魔人で『亀魔人』の『スパレンティナ氏族』で代表はアザガ。その内魔人種も増えそうなんで、早めに土地を持たない魔人のコミュニティー意識を作っておくべきだろう。

 魔人は突然変異種だ。その魔人と魔人が交配し、継代的に形質を受け継ぐようになった種族が魔族。ここには呼んでない。既に彼らは人間種のコミュニティーにしっかりと根を下ろしているからだ。そこに魔人である僕が口を挟むべきではない。特に一番脆弱で恐怖に煽られやすい人族がしっかりと受け入れている。この国は特殊なケースなのだろうが、これを基礎に魔族もちゃんと足場ができると嬉しい。こうやってここも僕も成長していくのだろう。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(185日~190日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~



取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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