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増え続ける醸造系女子

 さすがに最後の発言で吸血鬼の真祖筋の皆さんが気絶していたが、スルトの尾に殴られて無理やり覚醒していた。その間にエリアナから念話が飛んできて、一応急造で人口分の住居は吸血鬼区画に増やしたけど、足りない物があったら言って欲しいと言う。

 僕が中継ぎしてカサブランカに問うと、自宅にしている洋館の地下にワインセラーが欲しいとかアホなことを言われた。

 なのでスルトが殴ろうとしたのだが、カサブランカ曰くこれも醸造関係の事らしい。どうも醸造蔵で全てのワインを均一に熟成させることは難しいし、最近ではいろいろな変化があるので日々味の変化や色合い、風味を見る為にも品質管理用のセラーが欲しいという。自分の趣味のセラーなら自分で作ると言うからね。本気度が違う。

 そこまで言われるとスルトも引き下がれず、エリアナの代わりにノエラが転送されてきて視界を共有しているようだ。そのまま地下に研究用のセラーが作られた。個室がたくさんあり、全て微妙に温度が異なる上に、部屋の隅に何やら特殊な魔道具を運び込んでいる。そうとう入れ込んでるな……。だからこそこの一族のワインで白金貨が動くんだろうけどね。カサブランカのワインは以前なら国と等価と言われても過言ではなかったらしい。環境も整わないし、住まいも借りた場所である。お世話になっているダフネ用に作って、時たま金稼ぎように流していただけだからプレミアがついてもおかしくない。


「うんむ。スルも最初は驚いた。今の稼ぎ頭は間違いなくこのワイン。まだ若いワインだから値段も上がんないけど、仮にこれが20年物とかになったら戦争が起きる」

「そんなになんだ。僕はカサブランカ達が作るぶどうジュースのが好きだけどね。アルコールはどうにも好きになれないんだよな~」

「それはパパが人寄りの姿に魔人化したからじゃないか? スルはドワーフ寄りに人化したからお酒は美味しく感じる」


 ふ~ん。確かによくよく考えたら全員僕の眷属はそれなりの変化がある。

 僕はスルトの言う通り人型に近い。スルトはドワーフ。タケミカヅチはドラゴニュート。ゲンブは……何なんだろう。人かな? ジオゼルグも人型ではあるけど、ラザーク人のような強い褐色だ。ヨルムンガンドはエルフのような耳があるのでエルフ系。それはアポロンもだ。シェイドは角があるから鬼族で、イオはよく見ないと解らないけど、虫の複眼っぽい変化があるらしい。眷属によっても変化があると見た。もしかして、スルトってドワーフを眷属化できるのか?

 できるようだ。面倒だし、別にするメリットがないのでやらないだけ。やろうと思えばやれるとあっけらかんと言い放った。そういう情報は早めに欲しいぞ……。

 とりあえず、研究用セラーができた次はカサブランカではなく、他の姉妹数人が勢いよく挙手。吸血鬼は別にワインだけを好む訳ではないことがここで判った。アルコールは揺ぎ無く好きなようだが、その好みは個々人の物。蒸留酒が好きな者も居れば、そこから派生する漬け置き酒が好きな者、元から造り方の違う酒を好む者も居る。なので、それ用に別々の蔵が欲しいとのこと。エリアナもこういう手合いに現実を突きつけても時間の無駄なことは知っているので、なすがままにカサブランカ邸と同じものを複製して設置。カサブランカ邸は住みやすさではなく、作業のしやすさ重視だので、メインは酒蔵、居住施設は二の次だ。というか、カサブランカと娘の4人、アリア、コッピア、ツーリオ、カルテは僕の屋敷に定時に必ず帰って来るけどね。我が屋敷が一番料理が美味いとのこと。酒にもよく合うので、それだけは欠かせないらしい。


「そういえば、君らは樹龍の皆みたいに太らないんだな。スルも気にしてたけど最近はヨルが指南したヨガ?で元の体系に戻って来てるから安心してるけど」

「あ~……まぁ、その……なんだ。私達の場合は、旦那様から容赦ない格闘訓練に参加を要請されるだろ? その時に自己再生を加速させるから、かなり魔素もエネルギーも燃えるんだよ。絶体太ることはない。痩せることはあると思うけど」


 へ~。吸血鬼の回復力もそういう所があるんだな。

 それからカサブランカの話を詳しく聞くと、エネルギーを使い過ぎると体の維持が難しくなる。そうなると体の体積辺りの維持ができなくなるため、幼児化していくという。年齢の後退の意味が解らないのだが……。その辺は体が縮むと同時にその時分の自身の体に戻るようになっているとのこと。吸血鬼は魔人から派生した魔法生物。体の維持管理に多くの状態魔法が展開されていて、強力な反面、消耗も激しい種族とのこと。

 そもそも吸血鬼をそこまで消耗させられる種族自体がほとんどいない。龍族やそれこそ魔人クラス、後は『天界人』や『古代人魚族』くらいだろうと言う。今、聞きなれない種族の名前が聞こえたが? 

 あまり気にしても仕方ないので、醸造系女子の新施設をある程度見学する。一番増えたのは酒蔵だ。その酒蔵もタイプが異なる。発酵醸造までは酒は似ている物が多いけど、樽で保存するか、水瓶で保存するかなど、酒の種類によっては細かい保存のケアが必要。それから米から作る酒などは水によってもできが全く異なる。そこも考える必要があるともいう。こういう拘りぬくところはここの迷宮の住人共通だよね。たぶん、近日中にツェーヴェが招集されるだろう。ツェーヴェも美味い酒が飲めるなら文句はないだろうし。それから火精霊の皆もアルコールの濃度が高い酒が好きらしく、少し離れた場所にあるが似たような施設に集まり始めている。かなり大きな規模の蒸留施設と、漬け置き蔵だね。

 これまでの蒸留施設よりもいろいろとパーツが多いけど、コレはどういう事か……聞いても解んないから口には出さないが、ドワーフも興味を持って来てるね。まぁ、頑張って。


「こういう拘りはいいんだけどね~……。カサブランカはそれ以外が適当だから」

「食事と酒があれば特に不自由しない感じだしね」

「本当にそれ……。農業系女子とか言うなら、もっと自活もちゃんとして欲しいものだよ。新ジャンル?の醸造系女子でもいいけど、ちゃんと私生活も両立して欲しい」

「ははは、確かにね」


 それから僕とスルトはエリアナに今回の珍事を報告。吸血鬼が1500人も居た事に驚くエリアナをよそに、さらに増えることをスルトがつぶやいていた。しかも真祖の残りが強い分家ではなく、真祖筋の本家が2家は来るかもしれないのだ。ここに住んでいると物語の中に登場する主人公級や悪役級の存在がポンポン現れる。

 吸血鬼のことはエリアナも了解とのこと。次はグマンナからの亡命者集団のことだ。スルトはここで離席。カサブランカから目を離すと大変なことになるとのことだ。

 ゲンブがこまめに念話を飛ばしてくれているとのことで、状況は逐一入ってくる。その中で判ってきたことはグマンナの民の半数は武門の出。残りの半数が正式な土地を持つことを許されず、採集や遊牧、狩猟などで生活していたとのこと。武門側はゲンブが全員引き取る予定であるが、残りの狩猟民族の方が農耕にかなり強い興味を持っているらしい。現在はエルフ自治区を経由してスルトの大農園区画を真東に移動中。男性陣は酒にも興味を持っているし、女性陣は甘い果物にくぎ付けだそうだ。完全に集団はお上りさん状態で、見る物全てに興味深々。また、凄く丁寧な民族らしく出会う氏族ごとにしっかりとあいさつを欠かさないので、移動に時間がかかって仕方がないと、嘆き節も聞こえるそうな。確かにアザガは生真面目な感じだったしね。

 素行調査も思想調査も詳しく終わり、問題らしい問題がなさ過ぎてゲンブが暇とのことだ。しかし、案内役は必要、さらに一応配置の関係もあるのでゲンブは離れられないのだろう。その辺りはゲンブに頑張ってもらうとして、僕は返事が来ていたヴォルカニアスさんの為にカサブランカからいいワインをもらって別荘へと向かった。ヴォルカニアスさんは火酒が好きではあるけど、真昼間から開ける酒じゃない。アレを昼から飲ませると大変だからな。


 ~=~


「おう、すまね~な。いつも」

「いえいえ、本当は僕からコンタクトを取らねばいけなかったのですけどね」

「そいつは違う。ヴォルティアーカについては俺が長い事放置したのが原因だからな。まぁ、それなりに複雑な事情ってもんがあんのよ」

「複雑?」

「あぁ、長いがいいか?」

「大丈夫です」


 ヴォルカニアスさんとヴォルティアーカは年の離れた兄妹とのこと。それも腹違いの兄妹で、仲は悪くないく縁を切るような間柄でもないとのこと。しかし、ヴォルカニアスさんのお父さんである先代が亡くなる直前。ヴォルカニアスさんのお母さんが無理にヴォルティアーカと他の火系龍族と縁談を持ち上げた。ヴォルカニアスさん本人は仲の良い妹でも、お母上は違った。そのお母様も今は亡くなっているし、影響力のある出だったそのお母様の案を断り切れなかったお父上も気に病みながら亡くなった。

 当主としての地位は自分が継承し、見合いというか縁談も本人が行方不明なので当然立ち消え。相手のメンツがつぶれて一時期険悪にもなったが、それも既に落ち着いている。なので早めに呼び戻せたはずなのだが、その時に一切庇ってやれなかった自分が許せず、顔も合わせずらかったとのこと。

 いかにもヴォルカニアスさんらしい言い分だった。お父上と実のお母上の事ながら、隅っこに居ても一応彼も当事者だったのだ。何か言えたのではないか? ……と、ずっと気に病んでいて、それを見かねて奥さんや娘が仲介となり様子見はしてくれていたのだ。不器用というかなんというか。たぶん、ヴォルティアーカの方も、ヴォルカニアスさんのこういう所を知っているから顔を出しにくかったんだろう。不器用兄妹である。酒でも飲みながら懐古を挟めばすぐに解決する気もするのだが。それを僕が言うのは違う。こういう物は時間が解決してくれるだろう。8000歳程の古龍であるヴォルティアーカだ。まだまだ寿命は長い。ヴォルカニアスさんも大古龍だ、かなり長寿である。長い目で頑張って欲しい。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(185日~190日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~



取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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