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思わぬ加入者達

 う~い。クロだぞ。スルトの真似をしてみたが……僕では可愛くないね。

 炎龍ヴォルカニアスさんの妹さん、炎龍ヴォルティアーカさんが『王祖の迷宮』でお嫁さん会議の審査を受けるために同行することとなった。そこからヴォルティアーカさんが足の代わりをしてくれると言ってくれたが、その直前に思わぬ人達から『エリアナ女王国』へ亡命したいという懇願を受けた。

 ゲンブの話では僕を呼び止めた先頭の男性は先ほど、アルジャレド軍との戦場に居たとのこと。そこまでよく観察していなかったが……。その代表の男性の名はアザガ。ギュグソフク士族といういわゆるところの豪族の嫡男だったという。そのアザガは以前から『グマンナ首長連邦』の風土的文化に疑問を感じ、父親と大喧嘩して出奔してしまったのだという。このアザガの父親が治める区域は最も南方で悪魔族とも戦う勇猛な戦士を多数輩出する有数の武門。……なのだがとても強く土着の風習に執着している。それが生贄文化や人肉職文化。彼はあまりその辺り、特に生贄文化には好感がなく、以前から疑問に思っていたとのことだ。


「ふむ。それでアザガ君、ここに居る数百は居ると思う若いグマンナの民は、全員が君の出身部族の所属なのかい?」

「いえ、ここに居るのは私の意見に同調したり、居場所の無い者達の寄り合いです。あの地は徹底した身分社会と土着の精霊信仰、英霊信仰が根強く新しい考えは排斥される風潮が強いので」

「それで、君はどうして出奔を?」

「そ、それは……」


 ギュグソフク士族は5年に一度、土地の精霊に感謝し、供物を供する精霊信仰がある。それ自体は問題ないのだが、その年の生産物と……生贄を差し出すという物がある。その年の生贄は彼の士族長の末子である妹だった。占いで選ばれると言うが、意図的に占い師が選んでいるような雰囲気もあり、以前から疑問だったとのこと。コイツ、シスコンだな……。

 その妹さんも連れてきているという。

 その他の部族にもそういったことに不満がある者も多く、アザガが北上するにあたり、ついて来たとのこと。また、奴隷とまではいかないが、グマンナの中ではかなり肩身の狭い外部の血を受け継ぐ住民も同行を希望。そのままグマンナの土地を抜けたため、かなりの強行軍となって人数も増えた。

 凄く疑問なのだけど、僕達の足でかなり速く走っていたのに、よく追いつけたものだ。……あぁ、君の妹さんの能力と? 森の精霊の力を借りて、森の中であれば連絡や会話、移動もほぼノータイムで人数も関係なくできると……。その代わりかなり霊気?を使うとかでかなり衰弱していた。ゲンブ曰く、単なる魔力切れとのこと。なので、ゲンブに説明させ、アザガに上級魔力回復薬を手渡し、徐々に投与するように指示。そうしないと、魔力というか魔素過剰症になってしまうので。


「うん。君達を受け入れることはあっちでもいろいろ手を回さねばならない。代表者達と会議をしなくてはいけないからね。それから、ここからはかなり距離がある。大丈夫かい?」

「戦いならば私や士族の者が多くいます。上位の魔物以上はさすがに厳しいですが、中位程度ならば私個人でもなんとかなります」

「へぇ、凄いじゃないか。……君達の素行調査と考え方の問題だけだとは思う。それよりも君達の親御さん達からの報復はあり得るのかい?」


 アザガ曰く、よっぽどのことが無い限りそれも無いという。『グマンナ首長連邦』は土地に執着する文化で、一度その土地から出た者は外の者として認知され、仲間とは認められない。たまに出戻りが居るらしく、それが虐げられている物達となる。なのでそちらに関しても特に問題はないという。

 特にアザガは『英霊の祝福?』という物にとてつもなく強力な力があり、通常の戦士などでは相手にならない。その点からも特に困ることは無いと断言。

 それから『英霊の祝福』とはスキルのことのようだ。確かにアザガは広域攻撃が可能なスキルが満載だ。先天的なスキルがかなり有用で、後から修練して得たスキルもかなり研ぎ澄まされている。完全な戦士だ。他は多少の野営に有用なスキルが生えているくらいだな。おそらく、このグマンナからの亡命者はそれ程大きな問題にはならない。頭から抑えるつけることさえしなければ、それほど反骨精神も育ってないようだ。文化が元々部族主義というか、共同体主義であるためそういう傾向が低いのだろう。

 それに不安そうな子供もそれなりに居るようだ。

 ゲンブの勧めでこの平地を突っ切り、アポロンに協力を得ようという。戦艦に乗せてエルフ自治区方面からの移送の方が安全だ。それからスルトとヴォルティアーカさんだけは先に『王祖の迷宮』に帰還してもらいたい。途中までは僕も同行するが、事情をそこそこ聴きだしたところで、僕だけエリアナに強制送還してもらい『王祖の迷宮』へ帰る。その後はスルトの管轄区域を移動しながらゲンブが引率してくれるという。


「アザガさんは部隊長待遇で私がもらおうかともらいます」

「士族だからだね」

「えぇ、彼の能力はリャエドさんにも匹敵します。土地なしとは言え、魔人に近しい戦力は貴重ですから。国軍の軍人として立場も得られ、良い方向へ向くかと」


 ゲンブの推察では彼らは悪習と言うような部分には否定的であるが、信仰心が低いという事はない。一部は知らないが、殆どの者は臣従してくれるだろう。『エリアナ女王国』はそういう意味で疑似的な王権神授説の構築を推し進めている。都合がいいのだ。ここには神にも等しい存在には事欠かない。龍族という存在など特にそうだし、最も顕著なのは僕自身だ。他の魔人と比較しても数段抜け出している。僕が頭を張っている我が国は、彼らの拠り所としては最高の立地だろう。

 それからセリアナさんからもう一つの報告が来ている。

 僕らとしては初めての事例だったことだが、友好的でない移入者候補との問題である。セリアナさんは彼らを完全に害悪として見ていた。それこそ厄介な寄生虫のような見方をしていたと思う。その悪魔族の代表だったメッサーリアや主犯の一部の様子を見て欲しいとのことだ。嫌な予感も少なからずあるが、どうもかなり苛烈な教育を強行して反骨精神を叩き潰したと言うので……。セリアナさんとエリアナはこういう所が似ている。やる時は徹底的なんだよね。

 僕やゲンブの会話が移入に肯定的であることから、アザガはかなりホッとしている感じがある。その陰には妹さんらしき子も姿があった。それから彼らが移入するなら、代表はそのまま彼だ。アザガは現在32歳で既に奥さんが居る。しかも4人。夫婦仲も良いし、子供もいるので落ち着けるならば安心なんだろう。『グマンナ首長連邦』は部族ごとに法といわれる概念が異なる。リーダーの宣言がそのまま方針に転じる首長絶対主義とでもいうのか? そういう統治であるので連邦となっているらしい。


「思想もかなり穏健だね。外に出られないし、出る場所も無いから毒されてない部分はあるだろうけど」

「そうですね。彼らはいい働きをするでしょう。ふふふ。楽しみです」

「組み込む先があるからね~。はてさて、悪魔族はどうすべきか……」

「そのことですが、セリアナ様の報告以前に絶対的な立ち位置を決めてしまうのも手かもしれません。支配と似てはいますが、何事にも越えられない壁という物はあるものですから。人は龍や魔人には敵いません。父上に敵わないと押さえつけることも、時には必要かと思いますよ」


 知的生命体相手にそれは避けたいんだけどね~。

 僕は強制送還直前にゲンブからされたアドバイスに、頭を悩ませながら『王祖の迷宮』のエリアナの執務室に強制送還された。そこでまず報告されたのが、ヴォルティアーカさんが正式にお嫁さん会議での選考を通過したことだった。

 お見合いというかファーストコンタクトは既に済んでおり、後は僕がヴォルカニアスさんに挨拶するだけなんだけどね。そのヴォルカニアスさんから挨拶がエリアナにあったらしい。僕と直接合わせる顔がないとのことで、伝言だけ残された。はねっ返りの愚妹であるが、よろしく頼むとのこと。エリアナが聞いたところによると、ヴォルティアーカさんは先代のお父上の代に勘当された形で、一応は奥さんや嫁伝いに生存確認はしていたらしい。本当なら自分が引き摺ってでも家に帰らせるべきだったところを、甘やかした兄の不甲斐なさから来る複雑な思いで僕とは顔を合わせにくかったとのこと。よくわからんが、今度飲みましょうと手紙を書いて羽妖精便に頼んで別荘に送ってもらう。

 次に僕の方からグマンナからの亡命者を受け入れることについてだ。素行、思想共に人族としてはとても穏健だった。武門の出のアザガですらとても穏やかな気性で驚かされたほどである。いきなりは難しいだろうが、『蛇神神殿の迷宮都市』で少しずつ文化の面でも、徐々に慣れてもらうようにしていこうと思う。……と報告。エリアナもゲンブに任せるならば問題ないと快諾。

 はい、ここからが最大の懸案事項。以前問題を起こした悪魔族の代表との面会である。エリアナはここまでで、リビングプレートに案内されてセリアナさんの待つ地下の拘置所に向かう。


「待ってたわ~。どう? 従順になったでしょ?」

「え、えぇ……。でも、何をしたんですか? 目が死んでるのに、笑顔だけ清々しいですけど」

「単純よ。クロちゃんは嫌がるけど、人間社会にもマウンティングは必要なの。強者に弱者は従うしかない。それは世の中の定義よ」


 メッサーリア筆頭に各悪魔族の面々は見て解るほどに表情が硬くなる。その上で蒼白になっていた。それから、視線を一瞬下に向けてちょっと後悔した。全員の足の甲に血糊?や血が滲む包帯が巻かれている。手の甲にも似たような痕がある者が数名いる。特に酷いのがメッサーリアさんだ。

 その上でセリアナさんから相談があった。

 この悪魔族、特に魔王族と古代悪魔族は希少種なので、繁殖に協力して欲しいと言うのだ。僕はジト目でセリアナさんを見つめるが、セリアナさんからは『借り1でいいから~』と言う宣言まで出た。彼女らの労役は僕の体力無双から、妻集団を守るためのサンドバッグとのこと。それから立場のある2人、メッサーリアとミゼラについてはそこそこ強いので、訓練試合のサンドバッグにしてもいいと言う。ホントにこの人容赦ないな……。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(180日~185日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~


取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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