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貫かれた国と思わぬ余波

 ほいほい僕です。クロですね。はい。

 今回、ゲンブがちょっとやらかしまして……。ご迷惑をおかけしますが、魔人は生きる災害ですのでどうか静かに見守ってやってください。人間のひき肉は作らなかったけれど、国を北方から南方へと突貫。最終的に『アルジャレド通商連合国』を挟んで反対の国、『グマンナ首長連邦』の国境までもを広範囲に整地した。ゲンブが歩んだ場所は都市や人の住んでいた面影は一切なく、瓦礫や文明の痕跡など全てが等しく真っ平に均されているのだ。ここまで徹底的だと何も言う事はできない。

 それからゲンブは最低限のルールは守った。ここがゲンブと他の兄弟姉妹の違う所だろう。真面目というか、几帳面というか……。タケミカヅチでもそうかもしれないが、そもそもタケミカヅチはこう言う手段は嫌う。ゲンブはゲンブなりに自制し、一切の人死にを出さなかった。そこに座り込むような人間がいないことも予想していたのだろうけども。

 最終的にゲンブはアルジャレド軍が砦を作り、グマンナの戦士と交戦中の区域のど真ん中で警告。ここでゲンブに敵対した場合はどちらも敵とみなし滅ぼすと。先に退いたのは自然信仰のあるグマンナの戦士。彼らは魔人が自然の守護者である事を知っているとのことで、守りに徹っする構えに切り替えていた。あくまでも彼らの敵はアルジャレド軍という古来よりの隣人のみ。険悪な事この上ない2つの勢力は、ゲンブによる圧力で戦線が崩壊。アルジャレド軍については補給路も絶たれ、長期間の駐屯は現実的ではないので撤退。グマンナの戦士はそもそも土地を犯されないと解れば戦う意味もない。すぐさまに国土の奥地へ引っ込んで行った。


「古道信仰思想が根強いだけで、あちらは戦を好むスタンスにはありません。文化が極めて排他的であるというのが原因なのでしょうね」

「理解はできない……。けど、グマンナはそういう所なんだろう」

「だろうね。僕も理解はし難いけど、そういう国だと飲み込んでしまう方が合理的だと思う。僕らも帰ろう」

「は~い」

「了解です」


 その帰り道の途中……。いきなり真紅の鱗の龍がこちらへ急接近しているのが目に入った。ゲンブが居るので今は3人一塊になり陸上を走っているのだが、僕の索敵スキルが常態化している。なので直ぐに気づいた。ただ、不審な点がいくつかある。以前、明らかな敵対思想で僕らへ突っ込んできた痴女龍ブランジェリア……。もとい、白龍王ブランジェリアとは毛色が違う。それと似たようにこちらへ一直線に飛んできているのに、そのマーカーの表示は超友好的。僕の索敵スキルは意識すると脳内に近隣マップがイメージできる。慣れないと酔う。それのマップ外でも2種類のマーカーが点灯すると、無理やり拡大されて表示されるようになっているのだ。

 その2種類と言うのが『絶対的敵対意思』と『超友好』である。

 これはある意味緊急事態の場合と僕が応対する時に目印に使う程度の物だ。なので日常生活中ではあまり見られない。僕の妻とかその親族筋の皆さんくらいしか、超友好的と言うのは見たことがない。なのにマーカーに表示されている名には覚えがないのだ。種族には心当たりがあり過ぎるが、初対面でこれまで関係すらしてきていないのに今更というか、何の要件だろうか? と言うのが本音である。

 そして、空中から人化を行う作業着姿の……女性か? その陰は僕とゲンブを完全に無視し、スルトの目の前にスライディング土下座をかますというダイナミックかつ凄く器用な着陸を行う。僕とゲンブは絶句であるも、その龍は構わずスルトの目の前で耳が痛くなるような大声で叫んだ。


「弟子にしてくださーいっ!!!!!!」

「え……。ヤダ……」

「ガビーン……」


 探索や探査のスキルの主観をスルトに切り替えても初対面らしい。あまりこういう事はマナーとしては良くないのだけど、初対面で目の前に居る女性?の龍を鑑定して素性を調べた。うん。身内…というかめっちゃ関係者でした。関係者だったけど、僕も初めて見るよこの龍は。まさか、大古龍で『古龍連盟』の重鎮、ヴォルカニアスさんに妹が居るなんて思いもよらないでしょ。

 いや、長く生きているし兄弟の1人や2人ぐらい居てもおかしくはないんだけどね。彼と付き合いがちゃんとある妹さんなら、直ぐにでも『豊穣の迷宮』辺りには来ていてもおかしくない。けど、この人はこれまで一切姿を見たことがない訳だ。ヴォルカニアスさんの性格を考えても何かあるのかもしれないね。詮索はしないけど。

 恰好からして鍛冶師とか工芸家だ。腰に巻かれた革製の道具ポーチから見るにいろいろと手を出しているんだろう。けど、メインは鍛冶師だ。しかもかなり特殊だと思う。いわゆる刀匠。刀鍛冶という人種だ。スルトはその辺りは拘らない。造りたい物はなんでも作る。楽しければなんでも手を出す。実際、スルトは料理から服飾、工芸、文芸なんでもござれと言う感じだ。

 で、少しずれているけど、スルトにずっと食い下がる鍛冶師の女性。炎龍族のヴォルティアーカさんは、突き崩せないと感じたのか僕の方を見た。嘗め回すように見られている。ゲンブには一切興味を示さないが、僕には興味があるようだ。まぁ、一応僕も工芸系のスキルは多い。僕の眷属、クロ一家の傾向として、修練習得が可能なスキルはかなりの速度で取得する傾向にあるので、何かしらは持ってるけど。ただ、僕はスルトの方面とは完全に毛色が違うんだけどね。スルトは工芸メイン。僕は付与メインの時々工芸をする程度。何を考えているのかはしないが、ヴォルティアーカさんは凄く困惑している。


「え? 父親? 兄弟じゃなくて?」

「あぁ、そうだね。僕は父親であり、眷属と親の関係での親だよ」

「…………ってことは、例の黒蜥蜴?」

「その噂のような物をあまり聞いたことはないんですけどね。僕ってそんなに有名なんですか?」

「ゆ、有名も何も……」


 凄く誇張されてる。確かにいくつかの魔境を瞬間消失させていることは認めるけれど……。僕は目に入る者をなんでも消し炭にする『殲滅の大魔人』とあだ名されてるらしい。特に一族から離れている孤高の龍や、元々の独立主は戦々恐々としているらしく、最近では縄張りでもかなり大人しくしているとのこと。大きな一族同士の戦争はここ最近ないが、個人間の喧嘩は絶えない。

 なのに僕に目を付けられるのが怖すぎて、龍の独立主ですら縮こまっているとのこと。

 それから、その大魔人は出であった未婚の美女は手あたり次第に手籠めにし、食い散らかすという恐ろしい存在だと根も葉もない噂が独り歩きしているらしい。……こらこらスルト。笑うでないよ。冗談じゃないから。僕がいつそんな自滅するようなことをしたと言うんだい。ゲンブがそれとなく説明してくれた。確かに力があることも確かだし、妻が多いことも事実ではあるけれど、それはその力に魅入られた女性。僕が能動的に口説き落として妻を増やしているという事は一切ない。……とゲンブがちゃんと説明。明らかにホッとしているヴォルティアーカさん。え? 僕に襲われるとでも思ったんですか?

 物凄くしっかりと頷かれたんだけど。

 まぁ、見なかったことにして、とりあえずなんでスルトの弟子になりたいのかを聞いてみることにした。スルトは弟子入りを拒否することはない。『勝手にしたら?』というスタンスだ。それが何故拒否したのかを聞いてみたかったという僕の興味がある。……暑苦しすぎるらしい。暑苦しい同僚はアグニアスだけで十分。2人もいらないとのこと。そのアグニアスという名を聞いて、ヴォルティアーカさんが覿面に反応。なんでもスルトのことを聞いたのはアグニアスかららしいのだ。そこから発展し、アグニアスと僕の関係を問われた。僕の妻の1人ですが? え? あれ? アグニアスが結婚した事聞いてないの?


「え? あの子結婚してたの?! いつ!?」

「1か月は前かな」

「……もしかして、お相手は…ユー?」

「そうだよ。さっきも言ったと思うけど僕の奥さんの1人」

「………め、姪に先を越された? た、確かに婚活も何もしてなかったけど。……ま、まさか、服に気を遣うようになったのも?」

「そう、スルがアドバイスした。パパとデートしたり、遊ぶための外出着は必要でしょ?」


 地面にでっかいクレーターを作る勢いでorz体勢をとるヴォルティアーカさん。手を突く威力を手加減できないくらいに打ちひしがれたようだ。そして、いきなりグリンッ!って感じで首を回し、僕に纏わりついてくる。必死過ぎて怖いし、その後に続く言葉は既に予想しているので、言われる前に止める。


「NO!」

「ちょっ!! 一言も言う前に止めんなよ!! 先読みして人の逆プロポーズをへし折んな!!」

「あ、あのですね。ヴォルティアーカさん。父上との婚姻にはそれなりの条件がございまして」

「な、なんだとっ?! ど、どんな条件だ? 体を差し出すか? 下僕になるかっ!? 奴隷にでもなればいいのかっ?!!」


 さすがのゲンブでもドン引きしている。対するスルトは大爆笑。どこに笑える要素があったのだろうか? 

 ……でも、丁寧にゲンブが説明してくれた。最初のビビり方とは真逆の反応をされて僕も凄く困惑が深いけど、結婚に必死になる女性ってこんな感じなのか? 『水源の迷宮』の人魚で売れ残りなどと揶揄される皆さんは皆こんな感じで目が血走っているし、ぎらついている。落ち着いてもらうために、とりあえずはゲンブが間に入ってくれているので休憩も兼ねて少しお茶にでもしようか。

 まず、僕との結婚の第一条件は僕との交流と、親族間での交流。ヴォルティアーカさんの場合は完全に初対面なこと以外は特に問題ない。

 次に、僕の妻達からの審査。これは審査会に回さないと解らないので、現状は説明のみ。あとはお見合い。というステップを踏む事である。

 めっちゃ鼻息荒く内容を確認しているヴォルティアーカさん。ツナギ姿でバンダナで髪を押さえつけているが、真紅の美しいストレートヘアと、ツェーヴェ並のスタイル。成熟しきった女性龍のスタイルである。ゲンブ曰く、このまま連れて帰れば『女王会議』は100%通されると思いますが……と、言われた。まぁ、別に1人増えようが関係ないので、とりあえず、このまま『王祖の迷宮』に帰ろうかとしたその時だった。


「待ってください!! 待ってくださ~い!!」


 ん? なんかゴツイ角の草原鹿を狩る騎馬の集団がこっちにまっしぐらで突っ込んで来る。こっちは目標が僕らであることが解っているようで、直ぐに速度を落として下馬?下鹿?してくれた。黒褐色の濃い肌に独特の染料で塗られている派手な民族的な化粧。男女共にしている。代表は先ほど大声を上げていた男性だ。

 物凄くごつくて身長も2mは余裕で超えている。

 龍族のヴォルティアーカさんと見比べてもゴツイ。ザ・蛮族という鹿の頭蓋骨を流用した戦兜を脱ぎ、跪いたその男性は……自分達を一緒に連れて行って欲しいと懇願してきた。……休憩のお茶は延長するしかなさそうだ。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後半年(180日~185日)

伴侶 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~取得済み省略~

NEW

・破壊の権化 ・殲滅の大魔人 ・2つ名持ち 


取得スキル

~取得済み省略~


 ~=~

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